「楽天受賞アパレルECに異変」と「越境ECに広がる関税リスク」EC関連ニュースまとめ【2025年4月】

日々の業務でニュースをキャッチアップする時間がなかなか取れない方もいらっしゃると思います。そこで、2025年4月のEC・ネット通販関連ニュースをまとめました。今回取り上げるテーマは、「楽天受賞アパレルECに異変」と「越境ECに広がる関税リスク」です。

本記事とは別に、運営堂の森野さんとニュースの詳細解説をポッドキャストにて配信しております。お時間がある方はこちらもあわせてチェックしていただければと思います。

楽天受賞アパレルECが相次いで倒産

「イーザッカマニアストアーズ」を運営していた有限会社ズーティーが自己破産を申請したニュースは、アパレルEC業界に大きな衝撃を与えました。同ブランドは、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを複数回受賞し、直近の2024年度にも受賞していた人気店舗だったからです。

このほかにも直近では、「HAPTIC」を運営していた井上通商株式会社や、「ZIP FIVE」を手がけていた株式会社ブリックスなど、同じく楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞歴のある店舗が倒産に至っています。以下、各社の経緯です。

・イーザッカマニアストアーズ(有限会社ズーティー)
ティーンから20代女性向けにスタートし、近年は30代・40代女性向けにもターゲットを広げながら、レディースカジュアル商品を中心に成長しました。2018年には売上高約40億円に達しましたが、物流トラブルや円安、融資返済負担が重なり資金繰り悪化。2025年4月15日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入りました。負債総額は約30億円(推定)です。

▼参考
レポート 有限会社ズーティーなど4社(帝国データバンク)

・HAPTIC(井上通商株式会社)
ナチュラル系カジュアルファッションブランド「HAPTIC」を展開しており、30代〜40代のナチュラル志向の消費者に支持されていました。衣料・雑貨・日用品などの輸入販売を手がけていましたが、コロナ禍による売上減少や架空取引発覚による信用失墜で経営が悪化。2025年2月7日に事業停止し、同年2月14日に破産手続き開始決定を受けました。負債総額は約42億円です。

▼参考
レポート 井上通商株式会社(帝国データバンク)
レポート 井上通商株式会社 続報(帝国データバンク)

・ZIP FIVE(株式会社ブリックス)
メンズ・ユニセックス向けカジュアルファッションを展開。トレンドを取り入れたデザインをリーズナブルな価格で提供し、20代〜30代男性を中心に支持を集めていました。2005年以降、ネット販売に本格的にシフトしましたが、低利益体質と投資不足により財務管理が悪化。2025年3月26日に負債総額約12億円で自己破産申請の準備に入りました。

▼参考
倒産情報 株式会社ブリックス【北海道】(信用交換所)

森野さん
負債の額が大きくて驚きました。コロナ禍で受けたダメージを回収しきれなかったことも影響していそうですね。
舟本
いずれも楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞していた店舗で、売上規模も大きかったのですが、それでも経営が立ち行かなくなったわけです。
森野さん
仕入れコストは上がるけど、日本では商品に転嫁しづらい。そのうえ、大きな資本が入っていないと厳しいかと……。
舟本
ブランドに認知があっても、この負債額では再建を引き受ける企業を見つけるのは難しかったのかもしれないですね。

トランプ関税が越境ECにもたらす影響

2025年4月2日(日本時間4月3日)、米国のドナルド・トランプ大統領は「相互関税」の実施を発表しました。この発表は世界の金融市場に大きな衝撃を与え、発表直後には主要株価指数が急落、日経平均株価も大きく下落しました。

日本には24%の関税が課される予定でしたが、その後90日間の一時停止が決定され、現在は10%の関税が適用されています。今後、再び24%に引き上げられる可能性もあり、経済への影響が懸念されています。

トランプ大統領の発表した相互関税の実施は、越境EC事業者に大きく影響を及ぼします。株式会社ワサビが実施した調査によると、パートナー企業13社のうち72.7%が今回の相互関税に「反対」と回答し、賛成は0%でした。「価格調整や顧客対応に手間が増える」「関税支払い拒否が懸念される」といった声が寄せられています。

アメリカに海外販売(越境EC)をする際、通常は購入者(アメリカ現地の消費者)が関税を負担します。今回の関税引き上げにより、日本から商品を輸入する際のコストが上昇し、結果としてアメリカ国内で代替品を選択する動きが強まるでしょう。

そのため、日本のEC事業者は価格競争力を維持するだけでなく、商品の差別化やオリジナリティ強化が一層求められる状況にあります。

現在、日本から輸出される800ドル以下の商品についてはデミニミスルールにより関税が免除されていますが、トランプ大統領による対中国措置でこのルールが変更された前例もあり、リスクが顕在化しています。

市場動向をいち早くキャッチアップし、柔軟な戦略転換を図ることが、今後の越境EC事業において不可欠となりそうです。

森野さん
いろいろ対策を講じても、その先の状況が読めないのが難しいところ。結果的に徒労に終わる可能性もあるわけですからね。
竹内
アメリカにのみ販路を持つ事業者にとっては非常に厳しい局面でしょう。現実的な制約はあるものの、他国市場への展開も視野に入れる必要があるかもしれません。
森野さん
もともと越境ECは、国ごとの法律や情勢に左右されやすいビジネスです。ただ、これだけ変化が激しいと事業としての対応が難しいですよね。
竹内
関税だけでなく、この短期間でドル円が約10円も変動しており、資金管理や収益へ大きく影響していると思います。

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お時間がありましたら、下記の記事もご覧いただければです。事業者さんや支援事業者さんによる、事例を踏まえた内容となっていますので、日々の業務に何かしらお役に立つかと思います。ポッドキャストでは、配信者のお気に入りの記事について、コメントや取材の裏話をお伝えしています。ここではその一部を紹介しますが、気になる方はぜひお聞きください。

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