
野嶋 友博
株式会社オプト
2015年新卒でオプトへ入社。SNSを中心とした広告運用に携わり、幅広い業種のクライアントを担当した後、2021年よりEC・教育・人材業界を専門とするアカウントプランニング組織に異動し、十社十色のマーケティング施策創出に向け日々邁進中。LINEマーケティングサービスの認定講師「LINE Frontliner」資格を保持。
株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/
この記事の目次
加速する縦型動画プラットフォームの進化
スマートフォンの普及とともに、縦型動画はマーケティングをするうえで欠かせない存在となりました。各プラットフォームの動きは、その重要性を如実に示しています。
- Meta(Instagram)
- 2018年6月:Instagramが縦型動画プラットフォーム「IGTV」をリリース(当初は長尺動画を想定していたが、後に短い縦型動画へとシフト)。
- 2016年8月:24時間で消える「Instagramストーリーズ」機能導入開始(縦型フルスクリーン表示に対応)。
- 2020年8月:「Instagramリール」機能を全世界で提供開始。
- 2023年以降:「Instagramリール」の収益機能が本格化。クリエイターや企業が「Instagramリール」を活用した収益モデルを構築。
- TikTok
- 2023年7月:「TikTok Lite」リリース(従来のTikTokよりもデータ通信量を抑え、より幅広い層へリーチ。40代以上のユーザー増加に貢献)。
- LINE
- 2021年7月:「LINE VOOM」(旧タイムライン)開始。
- 2024年5月:「LINE VOOM」の収益化が開始(企業やクリエイターが広告掲載などを通じて収益を得られるようになった)。
- YouTube
- 2021年9月:「YouTube ショート」が日本で正式リリース。
- 2023年2月:「YouTube ショート」の収益化開始。
- 2024年以降:「YouTube ショート」への9:16動画の優先表示など、アルゴリズムの最適化が進む。

これらのアップデートは、各プラットフォームが縦型動画をいかに重視しているかを明確に示しています。
「リアリティ」の追求とその限界:UGC風広告の台頭と課題
2021年以降、デジタル動画広告のトレンドは大きく変化し、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)風の動画広告が主流となりました。
この背景には、デジタル動画広告の初期(2010年代前半)にはテレビCMのようなプロが制作した高品質な映像が主流だったのに対し、SNSの普及とともに一般ユーザーが作成したコンテンツに親しみを感じる層が増加したことがあります。
まるで友人や知人が撮影したかのような身近な雰囲気を持つUGC風広告は、視聴者がコンテンツを「自分ごと化」しやすく、高いエンゲージメントを醸成することに成功しました。
しかし、UGC風広告が広く普及するにつれて、いくつかの課題も浮き彫りになってきました。
多くの広告主が同様の表現手法を採用した結果、類似クリエイティブが増加し、ユーザーの目にはどれも同じようなものと感じる「見飽きる」という状況を生んでしまいました。
その結果として、広告効果が低下するケースも増えてきました。さらに、意図的に素人感を演出した「わざとらしさ」が透けて見えることで、かえって逆効果となり、ユーザーに不信感を与えてしまう事例も見られるようになりました。
トレンドの循環と「ダイレクトショートドラマ」の登場
ファッション業界でトレンドが循環することはよく知られています。
最新のスタイルが登場し、多くの人に模倣され、やがて同質化が進むと、そこから違いを打ち出すための新たな変化が生まれ、それが新しいトレンドとなる…
このサイクルが繰り返されます。実は、この現象は広告クリエイティブの世界でも同様に起こっており、一定の周期で「揺り戻し」が発生しています。

広告クリエイティブのトレンド変遷:具体例
このトレンド循環の具体例として、近年の広告クリエイティブの変遷を見てみましょう。
- 高品質(プロ制作)時代:デジタル広告の黎明期には、テレビCMのような、プロが制作した高品質な映像が主流でした。
- UGC風(素人感)時代:SNSの普及とともに、一般ユーザーが作成したような、親近感のあるUGC風の動画広告が台頭しました。
- ダイレクトショートドラマ(プロ品質+広告訴求)時代:そして現在、UGC風広告の「見飽き」や効果低下を受け、「ダイレクトショートドラマ」という新たなトレンドが注目されています。

「ダイレクトショートドラマ」は、単に高品質な映像を制作するだけでなく、視聴者の具体的な行動を促す(Call To Action:CTA)要素を明確に組み込んでいる点が特徴の1つです。これは、単なる「揺り戻し」ではなく、過去のトレンドの要素を融合させ、より洗練された広告フォーマットへと進化した結果といえるでしょう。この潮流は今後も継続し、さらなる進化へとつながっていくことが予想されます。
「ダイレクトショートドラマ」成功のポイントと効果:視聴者を行動に導く新戦略
「ダイレクトショートドラマ」は、その名の通り、単なるショートドラマとは一線を画します。
「ダイレクト」という言葉には、視聴者に具体的な行動を起こしていただく、という明確な意図が込められています。
ここでは、その成功のポイントと、実際に得られる効果について詳しく紹介します。
心を掴み、行動を促す:構成のポイント
「ダイレクトショートドラマ」の最大の特徴は、巧みな構成によって視聴者の心へ届け、自然な流れで行動へと促す点にあります。
- 前半:感情移入を誘うドラマパート
- 魅力的なキャラクター設定やストーリー展開によって、視聴者の興味を引きつけ、感情移入を促します。ここでは、広告色を極力抑え、純粋にコンテンツとしての面白さを追求することが重要です。
- 後半:行動を喚起する広告訴求パート
- ドラマパートで高まった視聴者の感情や興味を、商品・サービスの紹介へとスムーズにつなげます。具体的なメリットを提示し、「今すぐ詳細をチェック」「期間限定キャンペーン実施中」といった明確なCTAを提示することで、具体的なアクションを促します。
- この前半から後半への自然な流れ、つまり「感情」から「行動」へのアプローチのスムーズな転換が、「ダイレクトショートドラマ」の鍵となります。

ダイレクトショートドラマの広告成果
「ダイレクトショートドラマ」は、適切に制作・運用することで、以下のような高い効果を発揮します。
- 広告効果の改善例:教育系企業の事例
- CV(コンバージョン数)136%:従来のUGCクリエイティブと比較して、より多くの視聴者が購入や申し込みなどの行動にいたっています。
- CPA(集客など成果に対する、顧客一人当たりにかかった費用)86%:より低いコストで顧客へアプローチができています。

プロの技術と戦略が不可欠:制作上の注意点
「ダイレクトショートドラマ」は高い効果が期待できる一方で、制作には高度な技術と戦略が求められます。
- プロフェッショナルチームの編成:
- 質の高いドラマパートを制作するためには、脚本、演出、撮影、編集など、各分野のプロフェッショナルによるチーム編成が不可欠です。
- キャスティングの重要性:
- ドラマのクオリティを左右するだけでなく、ターゲット層との親和性も考慮して、慎重にキャスティングを行う必要があります。
- ストーリーと広告訴求のバランス調整:
- 最も重要なのは、ドラマとしての面白さと広告としての訴求力のバランスです。ドラマに寄りすぎると広告効果が薄れ、逆に広告色を強く出しすぎると視聴者は離れてしまいます。
「ダイレクトショートドラマ」は、これらの注意点をクリアし、適切に制作・運用することで、従来の広告手法を凌駕する効果を発揮する可能性を秘めた、強力なマーケティングツールと言えるでしょう。
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