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地域の製造小売ビジネスが持つ特徴と課題
日本の地域(地方ではありません。東京も1つの地域です)には、数多くの製造業・小売業そして、製造小売ビジネスがあります。地域の製造小売ビジネスの特徴と課題としては、下記が挙げられるでしょう。
- 特徴
地域に根差したビジネスで、地域の顧客に愛されて支持されていて、その知名度をベースに観光客にも購入されている場合があります。
- 課題
商品を作る技術要素はあるけど、顧客の変化(周りの環境からの価値観と購買行動の変化)に対応できていない(価格と価値の見合い)場合があります。
商売=「商い:あきない」の基本は、顧客にとって価値のある商品を作って(ここには、技術と思いがあるからこそオリジナルなのです)、適切な価格でご購入いただくということです。「商い=飽きない」と言われているように、絶えず時代と顧客とともに変化をしているからこそ、やれること、やること、がたくさんあるビジネスでもあります。
地域の製造小売ビジネスが成長するために必要な3つのステップ
そんな、地域の企業からのコマースビジネスのご相談を受けている中で、一番強く感じていて、アドバイスとして強調していることとしては、
- 商売の仕組みは、通信販売(ダイレクトマーケティング)の仕組みを店舗に応用できることに気づく
- 通信販売(ダイレクトマーケティング)、デジタルマーケティングで使われているビジネスの仕組みを導入するだけで、会社全体を良くしていくことができる
ということです。
これらができるようになるために、次の3つのステップに分けて取り組むといいでしょう。
ステップ1:リアル店舗の顧客データを活用して再成長
ステップ2:通信販売(ダイレクトマーケティング)への拡張
ステップ3:デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大
小売店舗を持つ企業では、既に、コロナ禍対応前からも、「2」と「3」を手がけている場合もあると思います。
製造企業では、卸(toB )をメインで、「1」がなく、「3」を、toC(消費者) 向け、またはtoB(卸や企業)向けに手がけている場合もあるでしょう。
一方で、デジタルコマース(日本でのD2C)から始まった企業であれば、デジタルからリアルへの展開が1つの成功パターン化になりつつある中で、「3」から「1」への応用で同じように会社全体を良くしていくことができます。
この連載コラムでは、各ステップについてポイントと、それを支えていくためのシステム=ツールの選定ポイントについてお話しをさせていただきます。なぜなら、システムツールありきでビジネスをするわけではないからです。
顧客に、商品をどう伝えて、どのようにお届けするのか。
その基本をおさえて、システムの機能で実現できることをする、ギミックとカスタマイズという付加価値のないフローテクニックには走らないということがますます重要になってきているからです。
今回は「ステップ1:リアル店舗の顧客データを活用して再成長」についてお話しします。
ステップ1:リアル店舗の顧客データを活用して再成長
ここでは、製造業の中の「もの」づくりで、まだBtoC(消費者)の経験値が浅く、今後、BtoC事業を柱にしたい方、BtoCをしているが、通販(オフラインのダイレクトマーケティング)はまだ軌道に乗っていない方あるいは、直売店は持っているけど、うまく運用できてないという方(「館(商業施設:百貨店・SC・駅ビル」などにテナント出店されている場合は、オフラインダイレクトマーケティングは制約事項があるので別の成長施策のポイントになります)でも理解できるように説明をしていきます。
結論からお伝えしますと、製造業であれば、工場での、イベント販売、直売店、または、お店を持っている場合は、このリアル販売チャネルと、カタログ通販(オフライン)と、Eコマースとのハイブリッドで行くべきです。
カタログ通販も、Eコマースも、専業でやっているとか、思いっきり、D2Cに振り切っている会社には、ちょっと物足りない話かもしれません。これは後日「ステップ3」でご案内します。
製造小売業が直販をすると、閑散期の2月などでは、しっかりと工場や店舗やスタッフを回していくことができていきます。そして、通年で、卸(toB)のチャネルに頼らないで、「売上」をしっかりと作っていくことができるのです。
たとえば、地域で愛されている食品製造・小売(酒、発酵食品、菓子、加工食品など)事業を商いとして経営されて、数十年、ひょっとしたら、東京日本橋の老舗と同様に、百年越えの企業だとします。良い食品を作っていて、いい食品だから売れるとか、 美味しいから売れるだとか、値段が値頃感であるから売れるとか、いろいろと、売れている理由があるでしょう。
この集客して販売した顧客のリストから、リピート施策としての再来店、それから、売り上げになっていくっていうことは、チャネルが違っても、顧客視点からは同じことになります。
いろいろな会社の案件をお伺いさせていただいたときに何をしていたかというと、ここの基本的な活動と機能が、錆びついていたり、1つの機能がないというそういった部分を、経営者とスタッフで、顧客の声を通じて商品の価値を知りながら、付け加えていく作業になります。
①顧客データを活用する
②「顧客データ=顧客の声」から商品・サービス(CRM)を開発する
③顧客に一番近いスタッフが顧客と商品を開発する
それそのものが、通信販売(ダイレクトマーケティング)であり、D2Cと全く同じことです。この世の中にたくさん情報が溢れている仕組みを1つ1つ導入していくことです。詳しく見ていきましょう。
①顧客データを活用する
「商い」で、起点になるのは、顧客リストです。
江戸時代には「火事になったら、顧客台帳(顧客リスト)を持って逃げろ」と、言われたそうです。 顧客リストというのは、それだけ当時から大切だと言われてきています。
今に置き換えて見ましょう。
お客様が来店しなくなる理由はよく知られています。それは、集客を一生懸命しても、顧客リストとして顧客データを取得して、再アプローチできなければ、ザルに水を注ぐことになり、お客様は顧客になる前に流出していくということになります。(お客様とは、商品を購入いただいている特定できないデータのない状態、顧客とは、特定できデータを蓄えて、活用できる状態として使い分けています)
顧客リストを活用するとこんなことが見えてくる
顧客リストを活用していくと、顧客からその前のお客様の解像度も高まっていきます。どのようなお客様が私たちを必要としてくれているのかが、すごくわかるようになってきます。
リアル店舗のお客様を「顧客」にするためには、お客様を「知る=特定する」ことからです。店舗で顧客データ(ポイントメンバー・○○会員・SNS・LINEの友だちなど)として取得することは良く知られている手法だと思います。
その顧客に、DM(ダイレクトメール・郵送)を送付したり、LINEやメールなどを送信して、店が混まないように、顧客リストを分けながら施策を実施していく、反応率が50パーセント近く出るような状況を目指して売り上げを作っていくことです。
リアル店舗で売り上げを作っていくデータになっていくためには
顧客のリスト化というのは、どの会社でも、商い基本の性質上ちゃんとできていて、それに対するリピート施策ができていることが大切です。
ここのフェーズとしては、再集客施策がまるごと抜けていることが多いので、この再集客ができやすいようにするためには、いろいろ商品を分析して、今の時代に合うような商品を開発して、再集客を行っていくことが大切になります。
ところが、老舗であればあるほど、商品の「機能的価値」は充分過ぎるほどあります。しかし、扱っている商品が同じであれば、時代とともに顧客の「情緒的価値」に合わなくなってきているということです。
顧客は、「飽きない」わけではありませんから、売り上げが減ることは当然です。
また、製造して、卸だけをしていると、顧客のことがわからないので、マーケティングの基本的なことの考え方を知らない、体験をしていないので、どうしていいのかわからないということもあります。
顧客データを集めることはいろいろな手法でできる時代です。
視点<視座<視野の目的を持って活用することです。

②「顧客データ=顧客の声」から商品・サービス(CRM)を開発する
多くの企業は、なんとなく顧客リストをLINEなどで活用して取得して、ネットで話題の施策であったり、代理店からの提案などのいろいろな施策を実施していると思います。
あまり反応が良くない場合がほとんどですが、「なぜか」を顧客視点では探らないで、結果の数字だけを見ていることで、成功した、失敗した、良かった、悪かったとの判断を、代理店などの言い訳などを聞いて判断していると思います。
よくある話では、
- 52週販促イベントで、あのイベントだけは反応があったので、そのイベントの案内
- 誕生日を祝う案内とクーポンをプレゼント
- ちょっと安くなりますと、クーポンなどを配布
- ポイント失効しますよと案内
- 昔よく言われた、離脱する前とか、1年来店・購入されないタイミングに案内
などの、CRM的な施策をなんとなく回しているかと思います。
顧客視点での施策の事例としては下記があげられるでしょう。
- 無料会員と有料会員をつくる
有料会員は、Amazon、コストコなどや、それ以上のプログラムを設計する。
入会金3,000円いただき、ポイント5,000円を付ける。 - スタッフの判断でCXを提供
たまたま、入会月に誕生日のお客様がいたら、速攻でハガキをお送りして、 誕生日祝いクーポンをプレゼントする。そうすると、「そんなお店なかなかないっていうので、ものすごく喜ばれる」ことに。
F2転換をリアル店舗でも実施すること
早く自分たち(スタッフ)に接してもらって、早く楽しんでもらって、早く関係性を作っていくことが、CRMの基本です。
製造小売業の場合だと、リアル店舗で体験していただくのが1番だということです。
購入や、登録入会していただいたお客様は、一番期待値が高く満足度も高い状態です。そのタイミングに案内をお届けします。その後には、定期的なご案内が行われます。これは、通販などで言うと、購入後体験と配送完了後のDMやメルマガ施策です。
製造小売業のビジネスモデルであれば、D2Cで言われたように、「集客商品」が「利益商品」になりやすい構造です。顧客の注意を引き(トラフィック)、購買意欲を高めること(ブランドのメイン商品とイメージの向上や、顧客の関与と会話)によって、他の商品やサービスの売上を促進し(クロスセリングとアップセリング)、最終的に利益を生むため(競争優位性の構築で、価格競争、同質競争にならない)です。
だからこそ、製造小売業は、直販をぜひやるべきなのです。
製造小売業は、地域直販、地域通販で売り上げを作りやすいという傾向があります。その理由は、認知度が高いからです。
いきなり全国規模の通販・マーケットプレイス・デジタルコマースに参入してしまうと、いろいろな先発・競合企業があります。なので、そこでの競争優位のためのUSPを作ってから、参入していくことのほうがスムーズです。地域からやることによって、「あの会社ね」ということで、すごく顧客にはわかりやすいメッセージになるとも言えます。
顧客の声から商品開発するということ
わかりやすい事例としては、地域のお客様とは別に、観光客(他の地域)へ購入促進をするケースに関しては、一度(トライ・まとめ買い)や、都度購入としての動機はありますが、そのままでは、取り寄せするまでの購買動機がありません。LINEなどを活用した、顧客データの取得からの販促も、そのときのクーポンがほしいからだけでブロックされることが多いことはよく知られていることです。
顧客の購買動機、アトリビューション=情緒的価値に応じて、商品を開発することが重要なポイントです。それはパッケージデザインと、ストーリーテリングで表現することと、価格で差異化することができます。
それではどうやって開発していくのでしょうか。少し紐解いていきましょう。
③顧客に一番近いスタッフが顧客と商品を開発する
通販(ダイレクトマーケティング)では、当たり前なものとして言われている、カスタマーサポートでの顧客との会話内容、コンタクトリーズン(理由と原因)を取得して、対策と結果、コメントを入れた状態をフラグ化して、VOC(顧客の声)としてKPI測定しているはずです。
それを、たとえば、新規の顧客が商品の評価を確認するために、広告に活用したり、SNSで活用したり、ウェブでは社会的証明として活用したりしています。
リアル店舗はより顧客とのコンタクト密度が深い(顔の表情が確認できたり、ボディランゲージが確認できたり、より重要なのは、顧客のコーディネートや、ご一緒されている方などから全体感を知ることができます)なので、購買動機や購入後のご利用シーンが明確化できていきます。
この貴重なタッチポイントの情報を活用して、それを感じているスタッフが顧客視点で考える商品としての表層的ではない、インサイトに基づいた訴求ポイント、価格、デザイン、容量商品セット、商品修正などは、顧客のニーズ、課題、ペインなどを反映しているものです。


次回のコラムについて
「ステップ1:リアル店舗の顧客データを活用して再成長」について、説明させていただきました。次回は「ステップ2:通信販売(ダイレクトマーケティング)への拡張」について解説します。
※本記事は執筆にあたって株式会社東計電算にご協力いただいています。
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