極寒ブリ
インタビューの概要

ふるさと納税のランキングを見ると肉や米、海産物など一次産業の返礼品が並んでいます。脚光を浴びる機会がなかった自治体がふるさと納税により歳入を増やした次のステップに、寄附金に依存しない、継続的に地域経済を活性化させる仕組みづくりをすることが理想的だと株式会社イミュー(以下、イミュー)の黒田さんは話します。今回は2021年に全国で4番目にふるさと納税の寄附を集めた白糠町と共同でブランド開発をしている黒田さんに、ふるさと納税を通して地域経済を活性化させるために必要なことを伺いました。

ブランド開発で継続的な経済活性化に

株式会社イミュー 代表取締役社長 黒田康平さん
株式会社イミュー 代表取締役社長 黒田康平さん

――自治体、事業者ともに、寄附額を増やすための競争が加熱しているように思います。デザイン性の高い返礼品のページが増え、一般の小売り店舗と比べて遜色がなくなってきていますが、直近の動向についてはいかがでしょうか。

黒田さん:寄附額を最大化させる目先の目標がありながら、ふるさと納税は”小売り”ではなく、あくまで"地域の魅力を発信し寄附を募る"取り組みです。

そのため、総務省からも過度な宣伝広告は禁止されており、自治体側も派手に装飾された商品ページやバーゲン色の強い販促活動に抵抗を示す傾向は大いにあると感じています。

参考:ふるさと納税に係る指定制度について(総務省)

しかし、寄附額を増やすため”小売り”のように競争が激化していることも一定数あるでしょう。その現状を打開するために、よく用いる例として、穴の空いたバケツの話をしています。穴が空いているバケツに水を注いでもこぼれていきます。まずはバケツの穴を埋める、注いだ水が効率よく貯まる手当(仕組みや魅力)が必要です。

バケツの穴を埋める、注いだ水が効率よく貯まる手当(仕組みや魅力)が必要

黒田さん:つまり地域の魅力を作ることが重要です。地域の魅力はさまざまですが、日本全国でいえることは食・食文化が素晴らしいことです。観光での魅力創出が見込めなくても食ブランドを作っていくことは比較的多くの場所で実践できる取り組みではないかと感じています。

いずれにせよ、寄附がある程度集まった次の打ち手として、ブランドを創出する取り組みが非常に重要になると私は考えています。ブランド開発により、その産品が知名度を上げていき地域経済が活性化されるからです。

ブランドが資金をもたらし、設備投資や雇用を生み出し、人口増加にも繋がるでしょう。それが法人税や住民税となり、再現性のある地域経済を回すシステムになると考えています。ふるさと納税に依存しない地域経済を確立することが重要だと思います。

ブランド開発で継続的な経済活性化に
イミューのHPより抜粋

黒田さん:自治体によっては別の歳入を確保する方法として、地域の特産品を紹介するECサイトを立ち上げたり、新しく道の駅を作ったりしています。ふるさと納税でつながった寄附者との距離間を縮める動きは正しい方向性だと思います。

しかし、ECサイトや道の駅はバケツの例でいくと水を流すことにほかならず、バケツの穴が空いていない前提で有効な戦略といえます。お客様(寄附者)が欲しいと思えるものを創ること、ここでいう一次産業が作り出した食のECで勝ちパターンを作ることは、日本の市場全体にとって、重要なアクションと捉えて活動しています。

白糠町による産品・ブランド開発の事例

寄附者と共に作る新しい返礼品の形

――その土地に根付いた特産品に加え、新しいブランドに成功すれば、ふるさと納税にとどまらず、経済に与える影響は大きくなるでしょう。では、実例としてイミューが白糠町と実際に共同でブランド開発に取り組んだお話を伺えますか。

黒田さん:私は前述の通り地方再生には強いブランドが必要だと考えていました。白糠町さんも良質な魚という資源がありながら加工せずにそのまま安く外に出してしまっている課題があり、その点で合致したことが始まりです。

取り組みの第1弾は秋鮭でした。「しらぬか秋鮭」としてお礼の品に登録しています。

白糠町には太平洋に注ぐ3つの河川があり、秋鮭がよくとれる場所です。北海道の秋鮭は世界的に知られたブランドではあるものの、日本国内においては好まれることが少ないです。産卵期のメスは栄養が卵にとられるため脂が乗っておらず、身がパサパサで美味しくないと評価されることがあり、河口に近づくにつれ体に婚姻色が出てくるブナ鮭は、身色が白く水分を含むために味も格段に落ちると言われています。

このような背景から秋鮭を美味しく、愛されるブランドになればという想いで白糠漁業協同組合と共同でブランド開発を行いました。脂が乗ったオスの秋鮭を厳選し、味の監修に懐石料理で確かな腕を持つ料理人に入ってもらいながらOEMで調理までの工程を調整しています。2022年9月に加工した秋鮭を4種リリースしているので、ぜひご賞味いただきたいです。

第1弾の取り組み:しらぬか秋鮭
第1弾の取り組み:しらぬか秋鮭

黒田さん:目的は返礼品開発をすることではなく、ブランドとして大きく育てることです。産品の魅力だけでなく、そこで働く人の顔や地域の魅力もセットで届けることを意識してマーケティング戦略をたてています。このことを弊社では地域D2Cと呼んでいます。

通常のECページでは、どうしても味や匂いなど商品の価値を伝え切ることが難しく、ディスカウントや倍量などお得を前面に出す「機能的価値」の訴求で差別化を図ろうとするものが多いと思います。

しかしふるさと納税や地域創生にはもっと情緒的な価値が多分に含まれており、機能的な価値よりももっと伝えるべき背景があると考えています。

機能的価値と情緒的価値

黒田さん:弊社が取り組んでいる地域D2Cとして、白糠町で実践しているものは「産品開発プロジェクト」と呼んでおり、初期フェーズでは早く改善サイクルを回すために寄附者や関係者からフィードバックをもらえることを重視しています。 具体的には、この「しらぬか秋鮭」を寄附すると、お礼の品にQRコード付きのチラシを同封しており、産品の改善に活かせるアンケートに回答できるようになっています。秋鮭を早い段階から支援し、ご意見いただいた寄附者の方には、ただ商品を楽しめるだけではなく、作り手の思いや地域問題の解決などいろんな文脈での地域体験、地域貢献ができます。そのような中で寄附者の方と一緒にブランド開発をしていけたらと考えています。

プロジェクト参加方法

地域一丸となって白糠のブリを全国へ

――産品開発から寄附者とのコミュニケーションまで、冒頭お話していた理想を形にしていますね。第2弾の産品開発は予定していますか。

黒田さん:第2弾として、11/28(月)14:00からブリの提供を開始しました。北海道では、海水温の上昇などが原因でブリの漁獲量が年々増えており、2000年と比べ、漁獲量が15倍になっています。白糠町でもその傾向は強く出ています。また白糠町で水揚げされるブリは極寒の地で取れる天然物なので脂のりよく身の締まりも良いことが特徴です。このブリを「極寒ブリ」とし、白糠漁業協同組合との共同ブランドにしました。

地域一丸となって白糠のブリを全国へ

黒田さん:ブリは日本各地でブランド化され、価格が高騰している中、北海道白糠町のブリは最近採れ始めたこともあり、まだクオリティに対して値段が追いついていません。 他の地域のブランド品と比べても引けを取らないブリを今回は贅沢に漬け丼にしました。

第2弾の取り組み:極寒ブリ
第2弾の取り組み:極寒ブリ

極寒ブリ

黒田さん:また先日の11月24日には、町長が主導となり、地元の婦人会の方をはじめ、地域の方を招いて試食会を実施しました。ふるさと納税では、自慢の産品を実は地元の方が知らないということはよくあります。私たちが目指しているのはあくまで地域が主役のブランド立ち上げですので、全国に広める前に地元の方に食べていただき結束を固めたいという思いから、白糠町役場に依頼して試食の場を設けさせていただきました。

当日は、町民の方からの極寒ブリに対するフィードバックをいただけて、非常に有意義な場となりました。

Yahoo!ニュースにもブリのブランド化について取り上げられる

地域の方々を招いた試食会の様子
地域の方々を招いた試食会の様子

一次産業のブランド化が競争ではなく共創へ

――続々と産品開発が進んでいて今後の展開から目が離せませんね。今回、白糠町と共同産品開発をしていますが、一次産業のブランド化により日本全体の地域経済が活性化するために必要なこととは何でしょうか。

黒田さん:地域の資源を活かしたブランドの開発が必要です。化粧品やサプリのような商品は広告をどう活用して販売するかの視点が重要ですが、食品が広告だけで伝えられる価値は少ないと感じています。それ以上に、作り手の気持ちや魚の価値などを伝えるにあたって、PRやブランディングが大事だといえるでしょう。つまり、成分や原料を表示する機能的価値ではなく、商品そのもの自体の背景やストーリーの情緒的価値に目を向けるべきなのです。

ブランドづくりは容易なことではないため、自治体や事業者だけではなく、地域の方々も一丸となって価値を理解し、共有できる環境が地域経済を盛り上げることになるでしょう。関係人口の最大化が自治体にとってキーワードとなる中で、イミューはその環境づくりの黒子として、ご一緒している地域の方々と一緒に自治体、事業者、寄附者が相互に応援し合える関係を作っていきたいです。

イミューのミッション
イミューのHPより抜粋

インタビューを通して:地域と密接にかかわる関係人口を着実に増やす

自治体、事業者、寄附者がふるさと納税を語る上で欠かせない登場人物になります。しかし、地域経済を活性化させるためには、ふるさと納税の文脈だけでは登場しない地域の方々とともに盛り上げることが重要です。観光地に行くと、その土地ならではのお土産は道の駅やサービスエリア、お土産屋さんなどどこに行っても見かけることができます。

今回の話に挙がっている産品開発によるブランド化は、すでに知名度のある産品と肩を並べられるだけの人気を得られるよう、イミューが黒子となって白糠町の方々と共同で進めています。今後ブランド開発を進め、継続的に経済を支える柱となる産品を作りたいとお考えの自治体は、ぜひイミューに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

▼株式会社イミューへのお問い合わせはこちら
https://www.immue.co.jp/

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