【決算解説】楽天グループ25年通期決算発表|Eコマース事業は順調なのか?

楽天グループが2025年12月期の通期決算を発表しました。売上収益は2兆4,966億円(前年比+9.5%)と29期連続で過去最高を更新し、一見好調に映ります。

しかし最終損益は▲1,779億円と7期連続の赤字が続き、国内EC流通総額もQ4単体ではYoY▲5%と失速しました。流通総額の伸びがモバイル契約者増加による下支えに依存している可能性を踏まえると、楽天市場の成長の質には慎重な評価が求められます。

本記事では、連結業績の構造・楽天モバイルの現在地・楽天市場の流通総額と実務示唆を解説します。

この記事の執筆者

米原 広兼
ジャグー株式会社

新卒で楽天株式会社へ入社。ECコンサルタントとしてSOY受賞店舗などをサポート。在籍中、2万人の社員の中から楽天賞MVPを受賞。2020年 ジャグー株式会社を設立し、EC運営の実行支援を行う。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonで累計200店舗以上のコンサルティングを担当。担当企業のうち、累計9店舗が楽天SOY受賞。2店舗がYahooショッピング年間ベストストア受賞。

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楽天グループ2025年通期連結業績:売上最高更新の裏には…

営業利益の「見かけの減少」と実態

※2025年度通期及び第4四半期決算短信より引用

楽天グループの2025年通期における連結売上収益は2兆4,966億円となり、前年比+9.5%の増収を達成しました。フィンテックを中心に全セグメントで増収を果たし、29期連続の過去最高売上更新となっています。売上規模の拡大自体は継続していますが、最終損益は▲1,779億円と7期連続の赤字となりました。売上が伸びながら最終損益が赤字という構造を理解するには、営業利益とEBITDAを分けて読む必要があります。

IFRS営業利益は144億円と前年の530億円から大幅に減少していますが、前年には一時的な再測定益1,069億円が含まれていました。この特殊要因を除いたNon-GAAP営業利益で見ると、前年の70億円から1,063億円へと約15倍の急増となっており、こちらが実態に近い経営成績といえます。

最終損失▲1,779億円が続く理由

営業利益が改善しているにもかかわらず最終損益が大幅赤字にとどまる背景には、複数の要因が重なっています。楽天モバイルへの先行投資に伴う金融費用と減損損失、楽天カードへのみずほFG出資後の連結納税外れによる法人税負担増、そして楽天シンフォニーのOpen RAN事業(約205億円)や楽天マート・ロジスティクス事業の固定資産減損を含む合計約683億円の減損損失が重なっています。最終損失の絶対額は前年の▲1,624億円から拡大しており、Non-GAAP営業利益の改善が最終損益に反映されるまでには時間を要します。

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

EBITDAは4,359億円(前年比+33.7%)と過去最高を記録しており、キャッシュ創出力は改善傾向にあります。ただしEBITDAの改善と最終損益の赤字拡大が同時進行しているという事実は、財務構造がいまだ過渡期にあることを示しています。EC事業者として楽天グループの財務状況を読む際は、EBITDAとNon-GAAP営業利益の両軸で判断することが実態把握につながります。

楽天モバイル2025年通期:EBITDA初黒字化の意味と限界

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

黒字化の前進と残る課題

今期のモバイル事業における最大のトピックは、EBITDAが288億円の黒字化を達成したことです。前年は▲363億円の赤字でしたから、651億円の改善となります。楽天モバイル単体の売上収益は3,747億円(前年比+32.0%)と大幅増収となり、EBITDA単体でも129億円の黒字を達成しました。楽天シンフォニーも今期初めて通期Non-GAAP営業利益の黒字化を果たしています。

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

ただし、Non-GAAPベースの営業損失は依然として▲1,618億円あり、会計上の黒字化はまだ先です。さらに2026年度は2,000億円強の設備投資を計画しており、前年実績629億円から大幅な増額となります。通信インフラ事業は設備投資負担が大きく、EBITDAの黒字化を前進として評価しつつも、投資負担が続く構造は変わっていません。

契約回線数とARPUの実態

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

契約回線数は2025年12月末時点で1,001万回線(前年同期比+171万回線)を突破しました。ただしこの数値にはBCPプランなどの法人回線やMVNE・MVNOが合算されており、MNO純増ペースは月間13〜15万回線程度にとどまっています。

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

正味ARPUは2,467円(前年同期比+59円)ですが、算定にはデータ通信売上に加えモバイル契約者による楽天グループ全体の売上押し上げ分も含まれています。Q3からQ4にかけてARPUは4円減少しており、足元の伸びは鈍化しています。モバイルの収益は「契約回線数×ARPU」の掛け算で決まるため、大手3キャリアと比較してARPUの水準がまだ低い現状では、ARPUの引き上げが収益改善の鍵を握っています。

楽天市場2025年通期:流通総額+3.9%成長の質を問う

国内EC流通総額6兆3,452億円をどう読むか

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

インターネットサービスセグメントは通期で増収増益を達成し、国内EC事業のNon-GAAP営業利益は1,224億円(前年比+12.6%)と利益面では着実な改善が続いています。一方、2025年通期の国内EC流通総額は6兆3,452億円で前年比+3.9%にとどまりました。日本国内全体のBtoC EC市場の年間成長率が約3〜4%とされる中で、楽天市場が市場平均を大きく上回るペースで成長しているわけではありません。

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

Q4はふるさと納税ポイント付与ルール改定による駆け込み需要の反動が出て、流通総額はYoYで▲5%の着地となりました。2年前のQ4との比較でも+3.9%にとどまっており、前年反動を差し引いてもQ4の伸びは力強さに欠けます。

出店店舗数・アクティブユーザーの二重鈍化とモバイル依存

流通総額は「ユーザー数×購買単価」で決まります。この両軸に鈍化の兆候が出ていることが、楽天市場の構造的な課題です。

※決算資料 年間経営指標データより引用

出店店舗数は2023年をピークに減少が続き、直近では55,000店舗台で推移しています。店舗数・商品数の減少は購入者の選択肢を狭め、長期的な流通総額の伸びに影響します。

※決算資料 年間経営指標データより引用

月間アクティブユーザー数も前年比+4%前後と2024年以降は伸び率が鈍化傾向にあり、新規ユーザー獲得が頭打ちになりつつある中で、既存ユーザーの購買頻度と単価の引き上げが流通総額維持の実質的な課題となっています。

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

こうした状況を補完しているのが楽天モバイル契約者によるエコシステム貢献です。モバイル契約者の平均年間流通総額は非契約者比+48.8%であり、楽天市場の月間アクティブユーザーに占めるモバイル契約者比率は16.4%(前年同期比+1.4pt)まで上昇しています。モバイル契約者増加の効果を除いた純粋な楽天市場の成長力は、表面上の数字以上に限定的である可能性があります。

なお、楽天ポイントは毎年約6,000億ポイントが新規発行されており、ポイント付与率の変更が流通総額に直結するリスクは今後も注視すべき点です。2025年Q3の駆け込み需要とQ4の反動は、ポイント施策の変更が流通総額に与える影響の大きさを改めて示した事例といえます。

EC事業者が今期決算から読み取るべき実務判断

2026年の重点施策と店舗への影響

※2025年度通期及び第4四半期決算資料より引用

楽天市場の2026年の重点施策は、モバイルユーザーとのクロスユース促進・AIコンシェルジュの本格活用・ロイヤルユーザー育成の強化の3点です。AIについてはすでに成果が出始めており、パーソナライズ検索の導入により年間255億円のGMS貢献が見込まれ、楽天AIコンシェルジュを体験したユーザーは未体験ユーザーの7倍の頻度で再来訪するデータも示されています。AI施策の恩恵を受けるには、商品説明の網羅性・正確性・画像品質といった店舗コンテンツの整備が前提条件となります。

店舗が今すぐ取り組むべき3つのアクション

今期決算を踏まえ、楽天市場出店事業者が優先すべき実務アクションは3点です。

第一に、AIコンシェルジュに対応した商品ページの整備です。エージェント型AIが購買を補助する環境では、商品情報の質が検索露出と購買転換に直結します。既存ページの見直しを計画的に進めてください。

第二に、モバイル契約者・楽天カード会員を意識した販促設計です。「楽天モバイル×楽天市場×楽天カード」の三角連携を活用するロイヤルユーザーが今後の流通総額を左右します。ポイント倍率の高いイベント時だけでなく、平常時の購買動機を作るコンテンツ投資を優先してください。

第三に、Q4の流通総額鈍化を自店舗の数字と照合することです。市場全体のYoY▲5%が自店舗の実績とどう乖離しているかを確認し、カテゴリ特性やイベント依存度を踏まえた販売計画の見直しを進めてください。

まとめ|楽天ECの構造変化を読み解く

2025年通期決算の本質は、国内EC流通総額という観点では伸びが弱かった1年間だと言えます。ただし、楽天グループは国内EC流通総額10兆円を中期的に目指すと公言しており、

その実現に向けあらゆる対策を行っています。

事業者および支援事業者としては、楽天グループの意向を正しく理解した上で、引き続き魅力的な商品の開発と、地道な運営改善の積み重ねがより重要になってくると考えます。

株式会社ジャグー
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