
現代のスキンケアをはじめとするビューティー市場では、単なる製品の提供にとどまらず、顧客体験(CX)を重視したアプローチが求められています。消費者は、製品の効果だけでなく、ブランドとの関わりや購入体験にも高い期待を寄せているのです。
そこで、「スキンケアブランドにおける商品開発と顧客体験」をテーマに、事業戦略・商品企画を支援する松崎淳さんと、EC特化型CRMツール「EC Intelligence」を提供する株式会社シナブルの曽川雅史さんにお話しを伺いました。
パーソナライズがもたらす新しい顧客体験
――ECの「顧客体験」はマスではなく、パーソナライズが重視されるようになりました。ビューティー業界におけるパーソナライズとはどのようなものなのかお聞かせください。
松崎さん:デジタルの世界におけるパーソナライズとは、 購入前の段階でウェブ上でカウンセリングを受けられる仕組みです。例えば、アンケートに回答することで、複数の選択肢の中から「自分に最適な商品」が提案され、納得感を持って購入できるようになります。
私自身は、このパーソナライズの流れは非常に良いと考えています。選択肢が多すぎる中で、広告にも一日中晒される環境では、どれを買えばいいのかわかりにくくなっているのではないしょうか。そのため、能動的に自分の情報を提供し、適切な商品を提案してもらうことで納得感のある購買体験が生まれます。
広告などを見て、衝動買いした商品が届いたとき、「待っていました」ではなく、「これ買ったっけ?」と感じることがあるでしょう。しかし、パーソナライズを経た購入では、自分で選んだという実感があるため継続的に使用してもらいやすくなります。また、マイページでそのとき自分に合った商品を都度注文することもできます。
価値観が多様化する時代において、パーソナライズは非常に適したビジネスモデルであり、今後さらなる成長が期待される分野です。
パーソナライズの核はデータ活用
――CRM・CXでもパーソナライズは、AIも加わり非常に注目されているかと思います。もう少し詳しく、噛み砕いてお話しいただけますか?
曽川さん:パーソナライズとは、要は、「一人ひとりのお客様に最適な体験を届けること」です。それを実現するための根拠となるのがデータになります。
従来のCRMでは、顧客プロファイル(年代・性別・肌質など)と購買履歴(購入商品・購入感覚など)を組み合わせて、「勘」に基づくレコメンドが行われました。しかし、現在ではウェブサイトの行動データや外部データ(CDP・DMPなど)を組み合わせることで、より高度なパーソナライズが可能になっています。
これを実現するためにはテクノロジーの活用が不可欠です。例えば、購入前と購入後のアンケート結果を比較し、推奨する商品を変えることも一つのパーソナライズです。また、閲覧した記事の内容に応じた商品をおすすめする仕組みもあります。
このような仕組みを活用することで、EメールやLINEを通じて適切な情報を発信し、ブランドの個性を生かしたパーソナライズを実現できます。そして、ブランドの差別化=パーソナライズなのです。
1SKUのブランドでもできるパーソナライズ
――単品リピートやスタートアップでは、商品ラインナップが1SKUの場合も多いですが、その場合のパーソナライズのポイントは何でしょうか?
曽川さん:商品数が少なくても、パーソナライズの余地は十分あります。例えば、コンテンツの活用です。「お客様の声」もコンテンツの一部として分類し、同じ年代やライフスタイルのタグを付与することで、適切な情報を届けることができます。
また、CRMを活用し、EメールやLINE、同梱物などで、似た属性のお客様の感想を紹介すると、共感を得やすくなります。「共感」はブランドへの帰属意識を高め、「好き」になってもらうきっかけになるでしょう。
インタビューを終えて
コマースビジネスでは、プロダクトアウトの視点に偏りがちですが、パーソナライズを取り入れることで顧客とのエンゲージメントを深めることができます。
CRM、マーケティング戦略を構築する際には、時間の節約・リーチの最大化・新規顧客の獲得・既存顧客の維持といった4つの主要なアプローチを意識し、全体のビジネス目標に沿ったプログラムを開発することが重要です。まだまだお聞きしたいことが尽きませんが、松﨑さん、曽川さんこの度はありがとうございました。
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