
世界の小売業ランキング2022がデロイト トーマツ グループより発表されました。ランキングに反映されている売上の対象期間は2020年度(2021年6月30日までの会計年度)です。世界と日本でどのような企業が選出されているか見ていきます。
▼ 出典元:「デロイト トーマツ グループ『世界の小売業ランキング 2022』」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-business/articles/dis/gpr.html
この記事の目次
新型コロナウイルスが世界経済と小売業に与える影響
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、原材料の調達・生産・物流とサプライチェーンの広範囲に渡って影響を及ぼしました。
その結果、サプライチェーンは混乱し、物価の上昇(インフレーション)を招き、小売業にネガティブな影響を与えています。間もなく、サプライチェーンの混乱はピークを迎え、収まる兆しがあります。それに伴い、物価の上昇が落ち着くのではないでしょうか。
プラスの側面でいうと、ロックダウンにより消費が在宅中心となったことから、食料品・飲料、ホームセンターなどのセクターが恩恵を受けています。
上位10社の小売企業
順位 | 企業名 | 主な業態 | 売上高成長率 |
---|---|---|---|
1 | ウォルマート | ハイパーマーケット/ スーパーセンター | 6.7% |
2 | アマゾン | EC | 34.8% |
3 | コストコ | キャッシュ&キャリー/ ウェアハウスクラブ | 9.2% |
4 | シュワルツグループ | ディスカウントストア | 10.0% |
5 | ホーム・デポ | ホームセンター | 19.9% |
6 | クローガー | スーパーマーケット | 8.3% |
7 | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | ドラッグストア/ 薬局 | 1.5% |
8 | アルディ | ディスカウントストア | 8.1% |
9 | JD.com | EC | 27.6% |
10 | ターゲット | ディスカウントデパート | 19.8% |
2020年度の世界の小売企業上位250社の総売上高は5兆1,000億米ドル(前年度は4兆8,500億米ドル)に対し、上位10社の総売上高は1兆7,690億米ドル(前年度は1兆5,830億米ドル)と35%近くを占めています。
EC企業が大きく成長
新型コロナウイルスの感染拡大により、消費者がオンラインでの購買に移行したことで、EC企業が大きく成長しました。中国で大手ECサイトを運営するJD.comが昨年より順位を4つ上げ、中国企業として初めてトップ10入りを果たしています。売上高成長率は27.6%となっており、Amazonの34.8%に次いで高いです。両社とも他社と比べて、純利益率が高いという特徴があります。
上位250位にランクインした日本企業
順位 ( )は 昨年順位 | 企業名 | 主要な業態 | 売上高 成長率 | 事業展開 国数 |
---|---|---|---|---|
14 (14) | イオン株式会社 | ハイパーマーケット/ スーパーセンター | 0.7% | 14 |
19 (18) | 株式会社セブン&アイ・ホールディングス | コンビニエンス/ フォアコートストア | -0.8% | 17 |
55 (51) | 株式会社ファーストリテイリング | 衣料品専門店 | 3.6% | 22 |
65 (66) | 株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス | ディスカウントストア | 17.4% | 8 |
70 (67) | 株式会社ヤマダホールディングス | 家電専門店 | -1.4% | 4 |
119(128) | ベイシアグループ | ホームセンター | 3.8% | 1 |
127 (135) | 株式会社ツルハホールディングス | ドラッグストア/ 薬局 | 11.7% | 2 |
140 (132) | 株式会社ビックカメラ | 家電専門店 | 1.3% | 1 |
147 (166) | 株式会社ケーズホールディングス | 家電専門店 | 4.2% | 1 |
148 (106) | 株式会社三越伊勢丹ホールディングス | 百貨店 | -8.9% | 8 |
152 (160) | 株式会社エディオン | 家電専門店 | 2.1% | 1 |
154 (165) | 株式会社ライフコーポレーション | スーパーマーケット | 4.4% | 1 |
159 (170) | 株式会社ヨドバシカメラ | 家電専門店 | 0.9% | 1 |
160 (173) | 株式会社コスモス薬品 | ドラッグストア/ 薬局 | 10.2% | 1 |
162 (184) | 株式会社ニトリホールディングス | その他 | 9.4% | 4 |
170 (185) | 株式会社バローホールディングス | スーパーマーケット | 7.4% | 1 |
175 (167) | 株式会社イズミ | ハイパーマーケット/ スーパーセンター | 0.2% | 1 |
176 (190) | 株式会社サンドラッグ | 薬局 | 4.7% | 1 |
182 (140) | エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 | 百貨店 | -6.2% | 2 |
191 (143) | 株式会社高島屋 | 百貨店 | -6.5% | 6 |
193 (211) | スギホールディングス株式会社 | ドラッグストア/ 薬局 | 7.8% | 1 |
200 (192) | 株式会社ローソン | コンビニエンス/ フォアコートストア | 3.7% | 6 |
206 (219) | 株式会社アークス | スーパーマーケット | 2.1% | 1 |
207 (197) | 株式会社マツキヨココカラ&カンパニー | ドラッグストア/ 薬局 | 0.7% | 4 |
212 (218) | 株式会社しまむら | 衣料品専門店 | -0.1% | 2 |
223 (241) | 株式会社大創産業 | ディスカウントストア | 5.9% | 25 |
226 (249) | 株式会社ヤオコー | スーパーマーケット | 9.4% | 1 |
236 (220) | 株式会社ファミリーマート | コンビニエンス/ フォアコートストア | 2.1% | 8 |
241 (-) | 上新電機株式会社 | 家電専門店 | 3.6% | 1 |
上位250社中、日本企業は29社ランクインしました。そのうち17社は昨年と比較し、順位を上げています。昨年ランクインしていた企業数は28社でした。今回の発表により上新電機株式会社が新しくランクインしています。
成長率の高い企業と低い企業
著しい成長率の企業としては、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(+17.4%)と、株式会社コスモス薬品(+10.2%)が昨年に続き、そして昨年は7.5%の成長率だった株式会社ツルハホールディングス(+11.7%)が二桁成長を遂げています。
日本の小売企業はECへの対応が限定的であったため、一時的な店舗閉鎖やパンデミックによるその他の影響が売上高に及ぼす影響が大きかったです。結果、ランクインした29社の総売上高が昨年よりも3.3%の減少となりました。特に、百貨店については引き続き、ランクインしている全3社の成長率が昨年を下回る形となっています。
まとめ:アフターコロナに向けてモノ消費からコト消費に
アメリカでは、アフターコロナに向けて徐々に外食や旅行・観光とコト消費に支出がシフトしています。そのため、モノ消費は自ずと減少するといわれています。
日本でも、アメリカに続いて人流が回復しつつあり、コト消費に向かうと思われます。コロナ禍で購買がオンラインに移行しましたが、今後はオフラインで買い物をする機会が増えていくでしょう。そのため、EC専業の小売事業者はポップアップストアなどを活用しながら、ブランドを体験・経験してもらう動きが出てきています。
一方、もともと実店舗を持っている小売事業者は、BOPIS(店舗受取)やポイント連携など、OMOやオムニチャネルに注力しているように思われます。OMOやオムニチャネルの推進にあたっては、オンラインだけではなく実店舗のオペレーションを構築することが欠かせません。企業規模によっては社内の浸透に時間がかかることもあるため、まだ準備ができてない事業者は先を見据えて手を付けてみてはいかがでしょうか。
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