
この記事の目次
- 1 ステップ3:デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大
- 2 ①デジタルコマースで顧客と繋がるには、2つのチャネルがある
- 3 ②オフラインでの経験は、デジタルでも活用できる
- 4 ③マルチチャネルからクロスユース、オムニチャネルは結果で目的ではない
- 5 ④事業をサポートするための運用デザインとシステム選定のポイント
- 6 次回のコラムについて
ステップ3:デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大
地域の製造小売ビジネスが成長するために必要なステップとして、次の3つが挙げられます。
ステップ1:リアル店舗の顧客データを活用して再成長
ステップ2:通信販売(ダイレクトマーケティング)への拡張
ステップ3:デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大
これまでのコラムで、ステップ1とステップ2を解説いたしました。今回はステップ3についてお伝えいたします。
デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大にあたって、次の4つを意識するといいでしょう。
①デジタルコマースで顧客と繋がるには、2つのチャネルがある
②オフラインでの経験は、デジタルでも活用できる
③マルチチャネルから、クロスユースへ、オムニチャネルは結果で目的ではない
④事業をサポートするための運用デザインとシステム選定のポイント
①デジタルコマースで顧客と繋がるには、2つのチャネルがある
マーケットプレイス+自社コマースサイトを可能なら展開
「Amazonや楽天市場などのマーケットプレイス(モールは日本的な表現です)と、自社コマースサイト(オリジナルドメイン)と、どちらが「良い=売れる」のですか?」とよく聞かれます。
結論は、どちらも売れるでしょうし、どちらも売れません。
基本的なことですが、自身の購入行動を思い出してください。ほしい商品があれば、どう出会ったり、探したり、どのように比較検討して、購入判断しますか?
「なに」を売っているのであれば、マーケットプレイスでも良いでしょう。
「なぜ」を提供しているのであれば、自社コマースサイトが良いでしょう。
自社コマースサイトで商品のアドバンテージ(商品の特徴がもたらす優位性など)を確認して、より手軽に、より簡単に、より使い慣れた、購入できる場所として、マーケットプレイス・リアル店舗を選択すること(その逆も)はよくあります。
マーケットプレイスで実施することは自社コマースサイトでも実施
デジタルコマースで実施するべきことは、次のようなポイントになります。これをわかりやすく、Amazonというマーケットプレイスで説明していきます。
ポイント1:商品リスト作成と最適化ポイント
ポイント2:広告施策の設計
ポイント3:在庫管理とフルフィルメント
ポイント4:購入後体験とレビューと評価管理
ポイント5:データ分析とレポート
ポイント6:競合分析
ポイント1:商品リストと最適化
商品リスト作成と最適化は、Amazonでの販売成功の基盤となります。キーワードリサーチを行い、それを元に商品タイトルや商品の説明文、バレットポイント(リスト形式で情報を整理する際に使用する点や矢印のこと)などを最適化していきましょう。
また、複数の商品画像や3D、商品説明ビデオなどを用意することで、顧客の商品への安心感を提供して、購入意欲を高めるようにします。
ポイント2:広告施策の設計
広告施策の設計では、Amazon PPC(Pay-Per-Click)広告の運用がポイントになります。キーワード選定から広告予算の設定、広告のパフォーマンス分析までを行います。これは、広告におけるROI(投資対効果)を最大化することが目的です。
ポイント3:在庫管理とフルフィルメント
在庫管理とフルフィルメントでは、FBA(フルフィルメント by Amazon)を最適に活用するのがポイントです。Amazonが提供している、配送予定日の提供、配送状況の提供は、重要な顧客とのタッチポイントになります。
在庫レベルを適切に維持することで、在庫切れや過剰在庫を防ぎます。これは利益率の確保だけでなく、顧客満足度の向上にも貢献するでしょう。
ポイント4:購入後体験とレビューと評価管理
Amazonではフォローアップメールを送信することができます。Amazonのメールポリシーには厳しい制限があるため、販売者はメールをカスタマイズする自由がありませんが、購入者に有用な情報を提供することで、顧客満足度とエンゲージメントを高められます。
・注文確認メール
注文がまだ発送されていない場合、注文確認メールを送信することができます。このメールには、商品ガイドや教育・啓蒙情報、活用ヒントなどの有用な情報を提供することで、エンゲージメントと適切な期待値を高めることができるでしょう。
・配達後数日のフォローアップメール
注文が届いてから数日後にフィードバックリクエストメールを送信することができます。このメールには、直接フィードバックを求めるのではなく、顧客の体験に焦点を当てることが重要です。
・商品レビュー依頼メール
購入者に商品レビューを依頼することができます。ただし、Amazonは、肯定的なレビューのみを求める言語を禁止しているため、注意が必要です。顧客からのフィードバックを最大限に活用する方法がポイントです。良いレビューを得るためのフォローアップメール施策や、悪い評価を改善するための対応策などが重要になります。
ポイント5:データ分析
データ分析とは、販売データ・広告データ・顧客行動データなどを、鳥の目で俯瞰した分析、目的に応じて、虫の目での詳細分析をします。
これはレポート・報告のためではありません。ビジネスの強みと弱み、改善点、新たな顧客からのビジネスチャンスをより早く実施するためにするものです。
ポイント6:競合分析
マーケットプレイス内の競合他社やその商品を調査していきます。この情報を基に自社の商品や施策を調整することで、マーケットプレイス内での競争力を高めることが可能です。
マーケットプレイスでは、商品の機能やスペックがメインの訴求になっていることが多いかと思います。これを、自社コマースサイトから得られる、顧客行動や販売データなどから改善していくことが重要な施策のポイントです。
②オフラインでの経験は、デジタルでも活用できる
ここまで、リアル店舗・オフラインで商品と、それを必要とする顧客にお届けする方法や、顧客とのコミュニケーションから、さまざまなフィードバックを得て商品、カスタマーサービスの改善に役立てていくポイントについて解説してきました。
リアルとオフラインでのマーケティングは、デジタルマーケティングに比べて、より直接的なアプローチが可能であるとお気づきだと思います。チラシは、店舗やイベント会場で直接手渡すことができ、ターゲット層に直接アプローチすることができるのです。
チラシの経験は、デジタルコマースでは、ECサイトのデザイン・LPで役立ちます。POP、リーフレットなどの経験は、クーポンなどのオファーや、PDP(商品詳細ページ)、同梱物で活きてくるでしょう。店舗接客のノウハウは、CRM・カスタマーサポート、メールマガジンで活用することができます。
③マルチチャネルからクロスユース、オムニチャネルは結果で目的ではない
「オムニチャネルを推進するとロイヤルカスタマー化が促進されて、売上が増えるのですよね」と聞かれることがあります。
これは、一部真実で、多くは間違っています。ロイヤルカスタマーが、オムニチャネル化する可能性が高いから、そう見えているだけです。
よく顧客の購入行動をみてみましょう。
デジタルコマースだけで購入体験を続けていただけるロイヤルカスタマーはいますか?
リアル店舗だけで購入体験を続けていただけるロイヤルカスタマーはいますか?
そうです。お気づきのように、これはマーケットプレイスと同じように、顧客は購入しやすい場所=チャネルで購入と体験をするということです。そして、購入後の体験としてのコミュニケーションを、顧客が望むタッチポイントチャネル(Eメール、LINE、SNSのDM、郵送DM、TELなどのVoice:音声、ChatなどのNo-Voiceなど)でタイミングよく行うことがより重要になっているのです。
オムニチャネルより顕著な顧客行動はクロスユース
先ほども顧客の購入行動について、マーケットプレイスと自社ECサイトでの1つの事例をお話しています。
コスメでは、リアル店舗で商品を探し、自社コマースサイトで商品特徴などを調べて、マーケットプレイスなどで、口コミと価格を確認し、リアル店舗で購入する顧客行動はよく知られているケースです。(その逆もあります)
また、アパレルでは、リアル店舗で素材とサイズを確認して、オンラインでサイズの登録をし、ARなどでコーディネート・試着(アトリビューション)を楽しむことも、よく知られた購入行動でしょう。
さらに、スニーカーなどシューズや、アスレジャーなどでは、リアル店舗での試用をするかのように、数多くのシューズをとり寄せて、気に入ったものを購入してその他は返品する行動を推奨することは有効な購入体験です。返品とLTVの関係で顧客(ロイヤルカスタマーとシリアルリターナー)を定義することが可能になっています。
顧客がどこで商品を選択して、購入するか。購入後の体験として製造・小売事業者とコミュニケーションするかが重要な設計ポイントになります。そのポイントとしては、下記になります。
・柔軟性と便利さ
顧客は自分の好みに応じて異なる購入チャネルとコミュニケーションチャネルを利用できることで、それぞれのチャネルが提供する利便性を最大限に享受します。たとえば、商品をオンラインで検索し、店舗で実際に見てから購入することなどです。
・パーソナライズドなエクスペリエンス
顧客のデータが異なるチャネルで共有されることで、よりパーソナライズされたエクスペリエンスが提供されます。顧客は個別に適した情報や提案・レコメンデーションを受け取ることができるのです。
・リアルタイムなコミュニケーション
クロスチャネルユースを実現することで、リアルタイムでのコミュニケーションが可能になります。
たとえば、顧客がモバイルアプリを使用しているときに特定のプロモーションを提供し、その後、ウェブ上で同様のプロモーションを継続することができるなどです。顧客は異なるチャネルを切り替えても、その購入体験の移動がスムーズであり、購入プロセスが中断されないことで、ストレスが少なくなります。
④事業をサポートするための運用デザインとシステム選定のポイント
ポイント1:ヘッドレスのフロントサイドは顧客ごとのパーソナライズとセルフポータル機能で選定
重要なのは、それを支える、バックオフィス機能の柔軟性
コマース事業を顧客視点とスタッフ視点で購入体験をサポートするためには、変化に対応できる適切な運用設計とシステム選定が必要不可欠です。その際に、注目すべきポイントは、ヘッドレスのフロントサイドとバックオフィス機能になります。
ヘッドレスのフロントサイドは、顧客ごとに異なる(顧客一人ひとりに最適な)パーソナライズ機能や、セルフポータル機能が必要になります。これで、顧客の利便性や満足度を高めることができます。
一方、バックオフィス機能は、在庫管理や注文処理などの重要な機能が含まれます。そのため、安定した動作が求められます。また、適切なデータ解析やレポート機能を備えることで、ビジネスの意思決定に役立てられるかが重要です。
また、ヘッドレスのフロントサイドは、変化と衰退を繰り返します。複数のデバイスや、チャネルに対応するような柔軟性が高く、対応できるように、今後の拡張性にも配慮することが大切です。
したがって、コマース事業をサポートするためには、ヘッドレスのフロントサイドとバックオフィス機能をバランスよく選定することが重要なのです。また、柔軟性や拡張性、データ連携・解析機能なども重視し、ビジネスの成長に合わせたシステムの機能パーツの入替・選定を行うことが望ましい時代となってきています。

ポイント2:マーケットプレイスのマルチチャネル業務、注文処理の効率化
マーケットプレイスで展開するということはマルチチャネルになります。どうしても注文処理が業務上のボトルネックになります。マーケットプレイスでは、出荷のスピードを出店社の評価基準にしていることが標準化している中では、マーケットプレイス各社のフルフィルメントサービスを活用するか、それに劣らない注文確定、出荷処理をする必要があります。
これを、業務システムと一元管理サービスで連携して実施することは、一般的には良く知られた解決方法です。最終的には、出荷処理をマーケットプレイスの管理システムとデータ連携を実施することになりますので、一元管理システムなしで、業務システム側で処理できることが最適な解決方法になります。
なぜなら、2つのシステムでデータを処理することの手間だけではなく、マーケットプレイスの注文・出荷データはある一定期限後には特定できないように処理することが決められているからです。
そのため、「商い」の基本であり、再購入への手段のひとつである、「顧客情報のデータベース化」や「顧客情報の共有」は、リアル店舗のUnknownのお客様と同様の扱いになります。
しかし、デジタルであるメリットとして購入行動履歴や注文、配送先エリアなどの擬人化したデータとして活用することはできます。このデータを活用して、広告やSNSで活用することは意外とされていないことです。
ポイント3:販売可能在庫の連携と各場所からの出荷指示作業ができること
店舗と倉庫と工場の在庫と、各マーケットプレイス、自社コマースサイトで活用
在庫管理は、企業にとって非常に重要な業務の一つです。特に、店舗や倉庫、工場など、異なる場所に在庫がある場合、それらを効率的に管理する必要があります。このような場合、在庫管理のためのシステムを導入することが必要になります。
このシステムには、各場所の在庫情報を集約して一元管理する機能が含まれています。そして、各マーケットプレイスや自社コマースサイトなどのチャネルに割り当てている仮想販売可能在庫としての連携機能も備えていることになります。これにより、販売可能な在庫数をリアルタイムに把握し、迅速かつ正確な出荷指示を出すことができます。
さらに、このシステムは、在庫の最適化にも役立ちます。たとえば、ある商品が特定の店舗で売れている場合、他の店舗の在庫をその店舗に転送することや、他の店舗からの発送などができます。これにより、セット販売での要素商品の在庫管理や、トップスはA店から、ボトムはDCからなどの出荷で在庫のムダを減らしたり、在庫コストを削減したりすることが可能になるのです。在庫管理と出荷指示システムは企業の業務効率化に大きく貢献します。

さらには、返品は、顧客にとっての安心と信頼の保険機能です。返品可能な商品・サービスであれば、セルフUIでの返品処理機能だけではなく、返送品の受入れ、グレーディング、単一SKU管理機能などで素早い再販売へのプロセスが実現でき、収益を確保することできます。このワークフローが実装できれば、修理プロセスも実装が可能になります。
こういったサービスがあることで、toB経由で購入していた隠れたロイヤルカスタマーとのタッチポイントを提供することができるでしょう。
ポイント4:マーケットプレイスは顧客データを持てないが、顧客・販売動向は大切な資産
自社オンラインとリアルの販売データとともにしっかりとおさえること
マーケットプレイスにおける販売データは、販売者にとって非常に重要な資産です。顧客データを持てないという制約がある中、販売データを分析することで、販売者は自社商品の売れ行きや需要の変化を把握することができます。また、販売データから得られる価値は、自社商品やサービスの改善にもつながります。
たとえば、商品の売れ行きが低く、販売データからその原因が明らかになれば、販売者はその改善点を把握し、商品の改良を行うことが必要です。ここでは、CRMからCXの観点への移行が重要なポイントになってきます。
CRM(顧客関係管理)は、企業が顧客とよい関係を築き、継続することを目的とした企業視点の言葉です。顧客視点で表現すると、顧客が自社の商品やサービスを利用する際に、よりスムーズで快適な体験(CX)を提供できるためのツールです。
「優れたデータベースを作ること」ではなく「少ないコストで優れた顧客対応(カスタマーサポートとカスタマーサクセスの2つのCSと従業員満足度のES)を実現すること」です。
そのために、従来の通販業務基幹システムの顧客分析機能が不足しています。そこでマーケティングオートメーション(MA)で対応するようにします。業務システムではサマリーとして顧客データに格納していきます。
ポイント5:CXを実現するためのMA機能には2つの大きな役割がある
役割1:カスタマーサポート機能
顧客の疑問やクレームに対して少人数で素早くかつ的確に対応するためのサポート、ヘルプデスクを提供する機能です。コールセンターなどでの導入はよく知られています。
代表的な機能は以下の通りです。
- 問い合わせに対するチケット管理機能
- サポート担当者間でのメール共有機能
- 問い合わせステータス管理機能
- レポート機能
下記2点は外部連携もあります。
- チャット機能
- FAQナレッジベース作成機能
役割2:マーケティング&コミュニケーション=カスタマーサクセス支援機能
このマーケティング&コミュニケーションの機能を取り込んだものがほとんどになっています。顧客データベースと連動して顧客のカスタマーサクセスとコミュニティを通じて共創していきます。
代表的な機能は以下の通りです。
- 顧客情報、ステータス管理機能
- レスポンス管理機能
- メール・LINE・DM配信コンタクトスケジュール管理機能
- キャンペーン・オファーパーソナライズ管理機能(メールだけではなく、サイト・アプリなど)
カスタマーサポートをCRMとして定義している事業者も多いです。しかし、顧客が求めているのは、カスタマーサクセスのサービス機能です。ここで情緒的な価値としての「差」がついてきます。
次回のコラムについて
今回は「ステップ3:デジタルコマース・マーケットプレイスへと拡大」について、説明させていただきました。次回は、これまでお話ししたことのまとめになります。
※本記事は執筆にあたって株式会社東計電算にご協力いただいています。
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