なぜ、お客様の声を収集しても活用できないのか? VOCに正しくテキストマイニングを取り入れる3つの考え

お客様の声の重要性

さまざまなビジネスを行う上で、最も大切なことの一つとして、商品やサービスを購入してくださるお客様の気持ちを知ることがあります。販売の全てを対面で行っている事業者は、お客様がどう感じているかを、肌感で知ることができるでしょう。しかし、コロナ禍によって、対面販売が減少し、ネットを使ったビジネスが増加した今、お客様の気持ちを理解することが難しくなったと感じます。

マクドナルド、はとバス、丸亀製麺、雪印メグミルク、八芳園など、名だたる企業の成長やV字回復の裏には、消費者目線・顧客志向・お客様の声の活用など、お客様起点にビジネスを再構築した結果であるとされています。

売上を作るためには、新規のお客様の獲得と既存のお客様のリピート購入が必要です。新規のお客様は、既に購入したお客様の声が決定要因となるため、お客様の支持する声がなくては、売上が獲得できないことになります。

一方で、ネットでは、誰でも自分目線で、自由に商品やサービスの評価を行う時代になりました。いわゆるお客様の声(クチコミ)が溢れかえっています。新規のお客様の7~8割は、このクチコミを確認して購入を決めるといわれています。

また、自然言語理解(テキストマイニング)の世界では、AI(人工知能)の発展により、クチコミ解析が行われるようになりました。しかし、残念なことに、これだけクチコミが溢れているのにも関わらず、さらに、AI技術の発展にも関わらず、お客様の声をしっかり活用できている企業は、ほんのわずかであると感じます。

今回は、なぜお客様の声を収集しても、活用できないのか、根本的なところに着目し、テキストマイニングを有効に活用するために、必要な考え方について記載したいと思います。

知っておくべきテキストデータと数値データ

お客様の声といっても、2種類の方法で取得されています。1つは数値データで、もう1つはテキストデータです。比較サイトや旅行会社のお客様評価は、1~5の数値アンケートと自由記載欄がセットになっています。最近よく行われるNPSなども、数値データと自由記載欄がセットになったアンケート形式です。

この2つには特徴がそれぞれあります。数値データは、集計がしやすく、さまざまな計算を行うことで、分析には適しています。しかし、回答者は、例えば5段階評価であれば、4と5に偏ることが良く知られています。また、設問を作成するのは事業者側なので、そもそも設問以外のことはわかりません。

その点、自由記載欄には、お客様は感情を含めて記載するため、詳細なお客様の気持ちが表れます。これをテキストマイニングツールで解析することによって、お客様の気持ちを理解することがテキストマイニングなのです。基本的なテキストマイニングは、日本語を形態素解析で、文章を品詞ごとに分解し集計します。品詞ごとに分けられた単語は、その個数を数えるだけでも、十分価値はあります。また、重要な単語を集めて、肯定・否定に分けることにより、ネガポジ分析ができるようになるのです。

何もツールを使わなくても、人がその文章を読み、仕分けしていく方法もあります。ただ、人が大量のテキストデータを読み、仕分ける作業は、想像以上に大変な作業です。仕分けする人の体調や感情によっても、異なる結果がでます。また、人が変われば、違った仕分けになるでしょう。

そこで、AIによるテキストマイニングが登場することになります。しかし、既存のAIシステムは、まだまだ人の感情を詳細に仕分けできるものは少なく、一般的な機械学習ではなかなか結果が出ません。また、機械学習のAIは、とても優秀ですが、万能ではないです。特に、日本語は、同じ言葉でも別の感情を表現することがあります。

例えば、恐怖を表す「やばい」と感動を表す「やばい」は、テキストに落とすと同じひらがなで、同じ文字数になります。機械は、これを恐怖と感動に分けることが苦手です。余談ですが、唯一、徳島大学発ベンチャー企業の言語理解研究所の感情分析ツール「エモレポ」が、比較的簡単に、人の感情を高度に解析できるツールです。

このように、数値データとテキストデータには、共に長所と短所があります。お客様の真の声を理解するためには、やはりテキストデータを収集し、分析することが必要になるのです。

しかし、いくら高度な解析ツールを使っても、データ自身に問題があっては、役に立ちません。そこで、お客様の声を活用するために必要な、私が考える「テキストマイニングで必要な3つの考え」をお伝えします。

1.お客様の声を収集する時点で必要な考え方

先に、ネットにはクチコミが溢れていると記載しました。誰からの指示もなく、書き込まれたデータは、とても有意義なデータになります。しかし、誰もがクチコミを書くとは思えません。いかに自然体で書かれたテキストを集めるかが、第一の課題になります。

対面の場合は、目があったときに、「美味しかったです」や「幸せな気持ちになりました」など、直接言ってくださる方は、比較的多いと思います。しかし、ネットの世界では、お客様のほとんどの方は、自ら発信することは、一部のお客様を除き、いません。

不満がなく購入を決定する優良なお客様の多くは無口です。逆に、不満を持つお客様の多くは、「サイレントクレーマー」といわれ、何もいわずに継続購入を辞めてしまします。満足しても、満足しなくても声を出していただけるお客様は数少ないです。

米国の経営コンサルタントJohn A・Goodmanが提唱する「グッドマンの法則」の中で、不満を持つお客様で、「声を発するお客様」:「サイレントクレーマー」の割合を、4:96と報告しています。

また、「サイレントクレーマー」になる理由は、

①言っても改善されない
②どこに伝えたらいいのかわからない
③言ったら、仕返しを受けるのが怖い

とのことでした。

例えば、アンケートの数を集めるために行われるのが、オファーを出す方法です。「このアンケートに回答いただければ、●ポイントをプレゼントします」などです。この方法を使えば、回答数は増加します。ただ、問題はプレゼントをもらうことを動機に回答する人が、ストレートな不満を返すことができるかという問題があります。どちらかというと、もう取引したくない、他社の商品・サービスを購入したいと思っている方は、余計なことに巻き込まれるのが嫌だと感じるのではないでしょうか?

要するに、そのアンケートは、偏った意見を持つお客様でしかなく、内容は忖度している可能性があります。忖度したお客様の声を分析しても、何の価値も生まれません。もし、解約が多くなったときに、本当の理由がわからなければ、結果、事業は撤退することになりかねません。

では、どうすれば良いか?

大きく2点、
①声を出しやすい環境を整える
②歪のない声を収集する
を考える必要があります。

1つの方法に、社長宛のアンケートに回答していただくというのがあります。これは、先に記載した「はとバス」がⅤ字回復したときに活用した事例です。株式会社はとバス元社長の宮端清次氏が執筆された『はとバスをV字回復させた社長の習慣』(祥伝社)に記載されています。実際にこの方法を使って、実験したことがあります。1つは代表者宛て、もう1つはアンケート係の宛先を記載した返信用のはがきを、とある通信販売の会社の商品に、ランダムに2,000枚ずつ同梱させてもらいました。

代表者宛てのはがきの返信率は、2倍になりました。その内容をテキスト化して、解析したところ、要望や質問に該当する項目が、約4倍の記述率になったのです。社長であれば、言っておこうと思うお客様が増えたことになります。この結果、グッドマンが提唱したサイレントクレーマーになる理由①②③を、緩和する効果があったことを実証しました。この方法で取得したアンケート結果は、解析する価値のあるデータであるといえます。

その他の方法として、アンケートに答えてもらえれば、「慈善事業に寄付する」というオファーを出してアンケートを行うことや、今流行りのNPS(第三者に推薦したいか?)とアンケートを行うことで、価値のあるデータを回収することができます。

2.収集したお客様の声を、目的によってどう仕分け、活用するか

次に、収集したお客様の声を活用するためには、活用の目的に合わせて、仕分けしていくことが必要です。逆にいえば、目的に合わないデータは、捨てる覚悟が必要だと考えます。例えば、フリーテキストで収集したお客様の声は、4つに仕分けすることができます。①質問・要望②感謝・応援③苦情・クレーム④悪質クレームの4項目です。

④は、企業によっては、滅多にある声ではありません。テキストマイニングにおいては、無視して良いレベルだと思います(現実には、対策を講じる必要、ケーススタディで理解する必要があります)。

質問・要望は、企業が商品開発・改善やサービスの向上に役立つ内容が入ります。お客様の声を元に商品・サービスを改善することは、まさにお客様目線で考える企業となります。

感謝・応援は、お客様からのありがたい言葉です。お客様からの感謝・応援は、純粋に社員のモチベーションUPを行えるほか、新規のお客様へのPRに使えます。ただし、オファーを出してアンケートなどを収集すると、これら忖度した声が返ります。忖度された声をより多く集めても、実際の企業経営から乖離することがあるので、注意が必要です。

苦情・クレームの声は、現場では即座に対応する必要があります。テキストマイニングで、仕分けされた後は、社内改善に活用するほか、社員教育のために活用します。苦情・クレームは、完全なマニュアルは存在しません。事例研究として、どう対応するべきかなど、ワークショップに活用することを勧めています。また、苦情・クレームには、要望が隠れているケースがあるでしょう。問題の本質を読み取って、要望として考えていくもの必要です。

3.分析によってどう活用するか考え実行する

最後に、仕分けされたテキストをどう活用するかを、考え実行することになります。仕分け作業は、高性能なAIによって行うことは可能です。しかし、よくある勘違いは、活用までを、AIが出してくれると思いがちなところです。活用するためには、人の気づきが必要になります。良く仕分け作業を、分析という人がいますが、仕分け作業は単なる集計作業です。分析とは、仕分けたデータを理解、活用することです。この部分は、まだまだ人が行うことが必要です。そこで、集計されたデータについて考えていきたいと思います。

集計されたデータは、グラフ化して分析(可視化)するのが一般的です。このとき、人はどうしても多数意見に目が付きます。多数意見が売上を作るのは紛れもない事実なのですが、企業側にとっては認知していることが多く、目新しい発見にはつながりません。そのため、テキストマイニングは、あまり利用価値がないと思われることが多いです。

つまり、新しい発見・新しい価値は、多数意見ではなく、少数意見のほうにあります。他のお客様とは違う感性をもったお客様が、気づきを与えてくださるのです。既成概念にとらわれた社内の人間は、目新しいことはなかなか気づけません。そんな中で「なぜこのお客様は、このようなことをあえて言うのだろうか?」と思える意見が存在することがあります。

本来は、この言葉を掘り下げて考える必要があります。これは、5WHY(ファイブホワイ)などのフレームワークで、人の気づきを掘り下げる作業を行うことが必要です。他人の気づきが頼りになります。この分野は、まだまだAIだけではできません。

これらのように、テキストマイニングは、とても重要なものなのですが、多くの方がイメージされるAIが全て活用してくれるというのは、まだ先のことかもしれません。

さいごに:金額に対するお客様の要望や苦情について

あと1点、重要なことがあります。本文の2-①質問・要望・③苦情・クレームでマイニングしたときに、金額に対するお客様の要望や苦情があります。商品代金をもう少し安くして欲しいとなれば要望に入り、販売価格が高いとなれば、苦情・クレームに仕分けされるでしょう。ただし、共に金額が高いという意見になりますが、これだけで安易に値引きを断行するのはNGです。

値段が高いという声は、価値観の違いになり、良く考えた価格設定であれば、価値を十分理解してもらっていないことになります。世の中には、安易に価格をさげることで、最終的に破綻した事例もあります。価格が適正か検討することは良いですが、過去多くの企業のお客様の声を確認してきた限りでは、必ずと言っていいほど存在します。価格に見合う価値があるのであれば、価格を下げるのではなく、もっと価値を説明する機会を増やしてください。

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