TikTok Shop国内提供スタート、企業の使い方と工夫を探る!EC関連ニュースまとめ【2025年7月】

日々の業務でニュースをキャッチアップする時間がなかなか取れない方もいらっしゃると思います。そこで、2025年7月のEC・ネット通販関連ニュースをまとめました。今回取り上げるテーマは、「TikTok Shop」です。

本記事とは別に、運営堂の森野さんとニュースの詳細解説をポッドキャストにて配信しております。お時間がある方はこちらもあわせてチェックしていただければと思います。

TikTok Shopとは?「動画からそのまま買える」新しいEC導線

ショートムービープラットフォーム「TikTok」は、2025年6月30日より日本国内で「TikTok Shop」の提供を本格的に開始しました。アプリ内で商品を発見し、そのまま購入まで完結できるEC機能で、新たな購買体験として「ディスカバリーEコマース」を掲げています。

従来から「TikTok売れ」と呼ばれるように、ユーザー主導のトレンドが購買行動につながる現象がありましたが、TikTok Shopはその流れを後押しする仕組みです。ショート動画やLIVE配信に商品をタグ付けし、視聴者がその場で購入できる導線を提供します。

企業アカウントには「商品ショーケース」と呼ばれるショップページが設置され、商品一覧やレビューを確認して購入することも可能です。さらに今後は、TikTokアプリ内に「ショップタブ」が追加され、検索、注文管理、プロモーション情報の確認などができるようになる予定です。

そのほか、以下のような機能も順次展開されています。

  • クリエイターとセラーをつなぐアフィリエイトプログラム
  • TikTok Shop専用の広告配信機能(2025年7月中に開始予定)
  • 外部決済サービスとの連携による安全な購入体験
森野さん
TikTok Shopが始まって、どんな商品が出ているのか見てみたんですが、若年層向けの商材が中心で、自分が購入したくなるような商品はほとんど出てきませんでした。現時点では、アルゴリズム的にもユーザー層がかなり絞られている印象です。
舟本
僕の場合は筋トレグッズとかお酒とか、日常で見てるテーマに引っ張られた商品が出てきます。でもどれも、“わざわざTikTokで買う必要があるか”と考えると、正直そこまでの魅力は感じません。
森野さん
TikTokは“検索して買う”のではなく、“たまたま見かけて欲しくなる”という導線なので、その場の体験設計が肝心ですよね。ただ商品を載せるだけでは購入までつながりにくいと思います。
竹内
今のところ、ライブ配信を中心に使っているブランドが多いイメージです。臨場感やリアルタイムの盛り上がりで引き込んで、そこで買ってもらう流れは、TikTokと相性がいいですよね。“瞬間的な熱量”に乗せる活用法が先行していると感じました。

TikTok Shop本格展開に合わせた企業の取り組み事例

夢展望:新規顧客との“初回接触”を狙うTikTok戦略

アパレルECを展開する夢展望は、主力ブランド「DearMyLove」「bohmal」でTikTok Shopに出店。ショート動画を起点に、ブランド未認知層との接点づくりを図っています。

LIVE配信やインフルエンサー施策、広告などを組み合わせた運用を進めており、既存のファン層とは異なるターゲットへのリーチ拡大を目指しています。TikTok内の“発見”から購入へと自然につなげる設計は、自社ECやモールだけでは届きづらいライト層へのアプローチとして、他のアパレル企業にも参考になりそうです。

I-ne:動画体験から始まる“体験起点型EC”を実践

I-neは、Z世代を中心に広がる動画コマース市場に対応すべく、TikTok Shopに「& Habit」公式店を開設。社内に専任プロジェクトチームを立ち上げ、体制を整えての参入となりました。

SNS起点の接点づくりやインフルエンサー施策を重視する同社は、TikTok Shopを単なる販路拡大ではなく「体験を通じたブランド理解」を促す場と捉えています。検索から始まる従来の購買行動とは異なり、動画を通じた感情や気づきから始まる導線の構築に取り組んでいます。

インアゴーラ:高単価ニッチ商材で成果を出すライブ活用

越境ECプラットフォーム「豌豆(ワンドウ)」を展開するインアゴーラは、スマート水槽「Biorium」をTikTok Shopで販売。日本初のTikTokライブも実施し、最大同時視聴者数50名の中で平均単価2万円の商品を19台販売するなど、早期に成果を上げています。

自社制作動画・ライブ配信に加え、インフルエンサーとの連携やアフィリエイトセンターの活用など、複数の施策を掛け合わせた運用が特徴です。中国版TikTok(Douyin)での成功実績を背景に、ノウハウを日本でも展開。高単価商材でTikTokに挑戦する企業にとって、販売手法や初期指標の参考になる事例です。

TikTok Shopを使わない選択:竹虎の“動画×自社EC”戦略

TikTok Shopには出店していない竹虎は、動画投稿から自社ECサイトへの自然な遷移を設計した事例として注目されています。

同社は、TikTokの「誘導先リンク機能」を活用し、視聴者を公式ECサイトの商品ページへと誘導。特に「竹炭マドラー」を紹介した動画は7万回以上再生され、音や動きといった視覚・聴覚体験を通じて興味を喚起しました。

伝統工芸のようなニッチ商材であっても、動画による体験訴求とEC導線を組み合わせることで購買行動につなげることが可能であると示す好例です。TikTok Shopを使わなくとも、自社ECとの連携次第で販促チャネルとして十分に機能することがわかります。

森野さん
TikTok Shopが注目される中で、あえてShopを使わずにTikTokを活用する判断は、運用負荷を抑える選択肢として理にかなっていると思います。受注処理の仕組みを新たに整えるのは、すぐには難しい企業も多いのではないでしょうか。
舟本
TikTokから自社ECに誘導するスタイルは、決済に慣れていないユーザーにも馴染みやすく、事業者にとっても段階的に取り組みやすい選択肢だと感じました。まずは動画発信やアカウント運用に集中するのも一つのアプローチですね。
森野さん
そうですね。“今ある仕組みで始められる”っていう点では、TikTokを起点に自社ECにつなげる方法は現実的ですし、無理がないと思います。
竹内
僕が興味深かったのは、竹虎さんのリリースがTikTok Shopの本格提供直後に出たことです。動画視聴層の拡大を見据えて、自社の土俵で買ってもらう導線を設計しているのは戦略的だと感じましたね。

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米国でのTikTok Shopの展開事例をもとに、日本市場でどう展開されるかを考察するコラムです。米国ではキャンペーンによって一気に立ち上がった一方、日本はより緩やかな立ち上がり方をしている点が印象的でした。TikTok Shopの今後の見通しを整理するうえで参考になるのではないでしょうか。

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