NFCタグを使った顧客体験づくりのヒント(後編)"まだ買っていない顧客"と繋がる、NFCの基礎知識とOMO戦略

前編ではNFCタグを使った事例をベースにさまざまな活用パターンを紹介してきました。後編では、実際にNFCタグを使うにあたって基本的な情報や注意点、技術的なお話から、最後にNFCタグを活用して顧客体験向上につなげていくヒントなどをまとめていきます。

前後編に目を通していただければNFCタグ活用について基本的な情報は網羅できると思います。みなさんが店舗施策やアプリと連携した顧客体験づくりのアイデアを考えていくためのお役に立てば幸いです。

この記事の執筆者

篠田 健吾
株式会社アイリッジ

IT系企業での新規事業立ち上げや、アプリプラットフォームの企画・開発に携わり、2025年に株式会社アイリッジ入社。
小売系アプリの企画・提案実績が豊富で、自身のスマホに研究目的でインストールしているアプリの数が1,000を超えるアプリマニアでもある。

アイリッジ アプリ成長支援サービス
https://iridge.jp/service/app_growth

NFCタグを使うと何ができるのか

まず、そもそもNFCタグはどういうものなのか、お目にかかる機会も少ないと思うのでよくわからないと思います。

これは筆者の手元にあったNFCタグのシールと、大きさ比較用にクレジットカードを並べて撮ったものです。だいたい4cmくらいですが、もっと小さい2cm程度のものや角型でさらに小型のものも販売されています。

このタグに情報を書き込んでおくことで、それを読み取ったスマホにさまざまな動作をさせることができるようになります。

NFCタグはシール状の製品として売られていることが多く、ポスターなどの販促品や、普段仕事に使っている机やPCなどに貼って利用することができます。ただし、金属に貼ると動作しなくなるので専用のものを使うか、金属対応用のシールの上にさらにNFCタグを貼るなどの対策が必要です。

QRコードでできることはだいたいできる

では、実際にどんな動作をさせることができるのかという話ですが、かなり語弊のある表現をあえてしてしまうと、「QRコードでできることはだいたいできる」と理解するのが一番手っ取り早いと思います。

というのも、世の中で提供されているQRコードを使ったサービスは、なんらかのURLの情報がコード化されたものであることがほとんどだからです。

これはNFCタグにも容易に設定することができるので、QRコードで提供されているサービスはほぼNFCタグに置き換えられると考えてよいと思います。

前編で事例として紹介したJCBのNFCタグ決済やLINEタッチも、タグに書き込んでいるのは単純なURLの情報で、スマホのNFCリーダーでこのURL情報を読み取ってサービスを起動させる流れになっています。

NFCタグの活用についてはさまざまなアイデアがネット上に公開されています。単純なURL以外の情報も登録できるので、「NFCタグ 活用法」などで検索をかければ個人でもできる非常に多くのネタが見つかります。

QRコードからの置き換え事例

これまでWebサイトへの誘導を行う際、「○○で検索!」といった周知方法やQRコードを掲載するパターンが多くありましたが、最近はNFCタグを使って誘導する事例が出てきています。

1つめは筆者が4年ほど前に上越新幹線に乗ったときにたまたま遭遇した事例ですが、座席のテーブルのところにNFCタグを仕込んだステッカーが貼られていて、スマホをかざすだけでその情報にアクセスできるというものです。

つい先日、東北新幹線に乗ったときもこのステッカーは残ってました。このNFCタグからの流入であることがわかるように、設定されたURLには広告用のutmパラメータがついていたのも確認できています。

※筆者のスマホで撮影

もう1つは2026年2月に実証実験を行うという形でプレスリリースが出ていた国際興業バスの事例です。

画像出展:国際興業社プレスリリース素材

いずれも公共の交通機関内の事例で、ユーザーがスマホを利用することが多い場面であることが想像できます。広告に書かれた検索キーワードを入力したり、カメラを起動してQRコードを読むことに比べると、かざすだけでアクセスできる利便性がどの程度アクセス向上に寄与するのか、筆者も結果が気になるところではあります。

NFCタグを使うメリット

さて、QRコードでできることはだいたいNFCタグでもできると雑な説明をしてしまいましたが、それならわざわざNFCタグを使う必要ないのでは? QRコードで十分では? と思う方もいらっしゃるでしょう。実際、どんなメリットがあるのでしょうか。

QRコードに比べ操作ステップが少ない

前編のLINEタッチの紹介でも触れましたが、メリットの1つめとして挙げたいのは操作ステップの少なさです。

QRコードの場合はコードを読み取る操作にカメラが必要なので、スマホのカメラアプリか、アプリ内に用意されたQRコードリーダーなどの機能を起動させる必要がどうしてもでてきます。

しかし、単純なURLを読み込むだけの場合、NFCタグ経由だとアプリやブラウザを立ち上げる必要がありません。OSレベルでタグに反応してアプリを起動したりブラウザでURLを開いてくれます。この操作ステップの少なさがメリットの1つです。

下の動画は弊社WebサイトのURLをNFCタグに書き込んで、iPhoneとAndroidで読み込んでみた場合の動作の様子をおさめたものです。

iPhoneの場合はPush通知と同じような挙動で画面上部から通知が表示されるので、それをタップするだけ。Androidの場合は端末の設定にもよりますが、タグを読み取ると即Webサイトがブラウザで開かれるのがわかると思います。

iPhoneの場合
Androidの場合

あらかじめ端末のロックを解除しておく必要はありますが、URLを開くタイプのサービスであれば、NFCタグを使うことで非常にスマートな操作体験を提供できることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

ちなみに、前編で紹介したジハンピの場合は独自のデータ形式でタグに書き込んでいるので、ジハンピアプリ経由で読み込まないとスマホは何も反応しません。マイナンバーカードやカード型Suicaを、アプリなどを起動していない状態でスマホにかざしたところで何の反応も起きないのも同様です。QRコードの場合でもアプリで読み込まないとなにも反応しない独自形式のものはありますので(例:ポケモンGOのフレンド登録用のQRコード)、それと同じイメージで考えてよいと思います。

読み取りが安定している

NFCタグを使うもう1つのメリットはこれです。

QRコードの場合はカメラを使うので、フォーカスが合わないと読み取れない場合があります。NFCタグはスマホのリーダー部分を近づければ反応するので、こういったストレスがありません。

また、周辺の明るさに影響されない点もNFCタグに利点があります。QRコードは暗いところで読み取るのが難しくなりますし、逆に明るすぎたりQRコードに光が当たって反射したりしてしまうような場面では非常に使いづらくなります。NFCタグはそういった環境に左右されないという点も見逃せません。

NFCタグの技術的な話

ここからは実際にNFCタグを導入していこうと思ったときに気になる入手方法やコスト、設定方法などのお話をしていきたいと思います。

タグの入手、コスト、容量について

NFCタグを店頭で見かけることは少ないかもしれませんが、Amazonや楽天市場のほか大手家電量販店でも入手は可能です。

最も手に入れやすいのはサンワサプライ社の製品だと思います。この記事を書いている時点では、10枚入りで税込み2,310円です。Webサイトでさまざまな活用法の紹介もありますし、タグに情報を書き込むためのアプリも提供されています。とりあえず試してみたいというときには一番オススメです。

©サンワサプライ株式会社

筆者がNFCタグを購入するときによく使っているのは秋葉原に店舗がある愛三電機です。オンライン販売もありますし、店頭でも販売されています。

安く買えるというのもありますが、筆者の経験ではタグにある程度の大きさ(4cm程度)がないとスマホで読み取る操作がスムーズにできないと感じており、それに見合った製品を扱っているという理由もあります。

また、用途によっては注意しておきたいのが容量の話です。市販されているものの多くは書き込みできるユーザーエリアが144byte程度の中容量タイプなのですが、クエリパラメータ付きの長いURLを書き込もうと思うと不足しがちです。大容量タイプ(888byte)であれば、こういった心配はほぼなくなりますのでおすすめです。

書き込みはアプリで簡単にできる

NFCタグへのデータの書き込みはアプリを使ってスマホで簡単にでき、App StoreやGoogle Playでも多くのアプリが提供されています。

筆者はNFC ToolsというアプリをiOSでもAndroidでも使っていますが、タグに情報を書き込むだけであればどのアプリでも特に問題ないので、いろいろ試して使いやすいものを選ぶのがよいと思います。

ただ、用意するNFCタグが大量になってくるとアプリで1つずつ書き込むのは大変なので、業者に依頼するほうがいいかもしれません。

サンワサプライ社のWebサイトにはこういったデータ投入サービスも含めた特注サービスの案内があります。

また、筆者がNFCタグ製造のメーカーに相談したときは、NFCタグの手配からデータ投入、袋詰めなどまで一貫して対応いただけるというご提案をいただいたので、量が多いときはまず相談してみるのがよいでしょう。

セキュリティ面の配慮

前編のLINEタッチの紹介のところでも少し触れましたが、プレスリリースなどではQRコードの持ち出し(スマホで撮影して持ち帰ってしまう)による不正を防ぐといったことが書かれていました。NFCタグならこういったことが防げるのかというと、必ずしもそうではありません。

QRコードの場合は写真を撮って持ち帰るという手法が誰にでも思いつくので、不正をしやすいという点が大きな課題となるのは間違いないでしょう。

ただ、NFCタグもアプリを使えばどんな内容が書かれているかは容易にわかってしまいます。この情報を持ち帰って自宅でNFCタグに書き込めば、QRコードによる不正と同じことができてしまいます。この点は注意が必要で、仮に情報を持ち出されたとしても不正がしづらいサービス設計をすることや、不正を検知できる仕組みを用意することが肝要です。

また、NFCタグの運用で気をつけないといけないのは、スマホアプリで誰でもタグの内容を書き換えできてしまうということです。

以前、QR決済のバーコードをこっそり貼り替える不正事件の記事を見かけたことがありますが、NFCタグの場合は書き換えても見た目でわからないので、ある意味QRコードより厄介です。

こういう不正の対策法として、NFCタグには設定後の書き換えをできなくするロック機構があります。商用利用する場合はこれは必須と考えた方がよいでしょう。

NFCタグを活用した顧客体験向上のヒント

記事中で「QRコードでできることはだいたいできる」と書いたとおり、いまQRコードで提供されているさまざまなサービスは基本的にNFCタグに置き換えることができ、操作の手間も減らせるというメリットがあります。これだけでも顧客体験の向上にはつながりますが、単なる置き換えだけでは少々面白みに欠ける感はあります。

NFCタグならではのタグに触れるくらい近づけないと反応しないという特長を活かした案として、たとえば以下のようなものがあります。

  • 店頭でスマホをNFCタグにかざすと抽選販売の権利が得られ、抽選に参加できる
  • NFCタグにかざすことでイベントの整理券を入手できる

行列ができるようなイベントなどで、スタッフの目の前でNFCタグにスマホをかざしてもらうようにし、以降はアプリ経由で連絡取れるようにしておけば、お客様をずっと行列に並ばせたままにしなくても済みますし、スタッフの負担も減らすことができます。

実は弊社もNFCタグを使った新たな顧客体験の提供にチャレンジしています。

つい最近ですが、店頭で商品をお試しいただく『未顧客』のお客様とNFCタグで接点を作り、『匿名マーケティング』という考え方でお客様とコミュニケーションをとっていく体験起点型のCRMソリューションの提供を開始しました。

店頭で商品に触れた瞬間、まだ"買っていない顧客"とどうつながるか。これまでのCRMは購買を起点としてきましたが、実際にはブランドとの関係は「試す」、「触れる」、「気になる」といった購買前の体験から始まっています。

この店頭での体験をデータ接点へと変換し、活用していこうと考えられたのが今回の体験起点型CRMソリューションです。

サンプリングやモニター施策を通じて、匿名のままでも関心や意向データを取得し、購買後のコミュニケーションへと接続する。購買後のCRMではなく、購買前から関係を設計する。これが、これからのOMOに必要なアプローチだと我々は考えています。

体験起点型CRMソリューションに関するお問い合わせはもちろんのこと、これ以外にもNFCタグのような技術を活用し、ニーズに合わせたさまざまなアプリ開発を行うのは弊社が最も得意とするところですので、この記事をきっかけに「こんなことはできないか?」といった相談からお気軽にお問い合わせいただければと思います。

https://iridge.jp/service/app_growth

※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です

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