
OMOやオムニチャネルのような言葉が一般化し、当たり前のものとなりつつある中で、小売業にとって欠かせない存在となってきているのがアプリです。
キャッシュレス化がすすんで財布すら持ち歩かない人も出てきていますから、スマホを持っているだけでクーポンやポイントカードを携帯できるアプリは、時代のニーズにも合っているといえます。
ただ、そのアプリはすべての年齢層が対象となるのか、という疑問というか不安を抱く方も多いのではないかと思います。
筆者はこれまで多くの小売業向けアプリ開発に携わってきたのですが、実際にそういう話はよくテーマとしてあがってきます。今回はそのような懸念点について、データをもとにお答えしてみようと思います。
篠田 健吾
株式会社アイリッジ
IT系企業での新規事業立ち上げや、アプリプラットフォームの企画・開発に携わり、2025年に株式会社アイリッジ入社。
小売系アプリの企画・提案実績が豊富で、自身のスマホに研究目的でインストールしているアプリの数が1,000を超えるアプリマニアでもある。
アイリッジ アプリ成長支援サービス
https://iridge.jp/service/app_growth
シニアが置いてきぼりにならないか
アプリはすべての年齢層が対象になるのか、というのはまず「スマホを持っていないシニア層はどうするんだ?」という話につながってきます。
ですが、この心配はほぼ杞憂と言っていい状況になりつつあります。
まず、NTTドコモ モバイル社会研究所から2025/8/28に出されているレポートによると、60代は94%、70代でも84%がスマホを所持しており、10年前との比較調査(2025/3/24) を見るとこの間に劇的に変化したことがわかります。
シニア世代へのスマホ普及を後押ししたのは、らくらくスマートフォンに代表されるシニア向けスマホだったと思いますが、それすら過去のものとなりつつあることがNTTドコモ モバイル社会研究所の調査データに出ています。

実はシニア向けスマホは60代にはほとんど使われなくなっており、9割はiPhoneまたはAndroidの一般的なスマホを利用しています。70代でも3分の2は普通のスマホを使っています。
らくらくスマートフォン系の端末も中身はAndroidなのでアプリの利用も問題なくできるんですが、店員が慣れていないため使い方やインストール方法を聞かれたときに困るといった心配事が以前はありました。
しかし、データを見てみると状況は変わっています。この傾向はこの先さらに加速するでしょうから、シニアがスマホを持っていないとか、iPhone・Androidじゃないからサポートできないといったことを懸念する必要はもはやなくなっています。
シニアはアプリを使いこなせるのか
シニアの方が聞いたら怒り出しそうな話ですが、そもそもアプリをインストールしたり、提供しているクーポンや会員証の機能を使いこなせるのかという心配事です。これも比較的よく聞かれる部類の話です。
これに関しては弊社が2025年に行った調査で面白いデータが出ています。

複数回答ありのアンケートなので併用が多いことも考慮する必要がありますが、実はアプリ会員証を最も多く使っているのは60歳以上のシニアなのです。
以前、あるスーパーマーケットのアプリ担当者から、シニア層の方に現金チャージ型の自社ペイメントを理解していただくのが非常に難しいという話を伺ったことがあります。先に現金を取られてしまうのがどうしても納得できないと。
ただ、レジでその日のお買い物額より少なめにチャージし、その場で即時使い切る体験をしてもらうことで、決して現金を取られているわけではないということを理解していただき、さらに支払ったあとポイントがたまっていて、そのポイントが現金の代わりになってお買い物ができるので常に割引がされてるのと同じようなことになる、といった話を丁寧に説明して理解いただくと、それ以降は熱心に使っていただけるようになるとのこと。
この一度覚えてしまえば実は最もロイヤルカスタマーに近い存在なのがシニア層であるという話が、調査データを見たときに筆者の中で話がつながって、自然と腹落ちしたのを覚えています。
シニアはキャッシュレス決済も使いこなしている
スマホが普及し、アプリ会員証のような便利機能もしっかり活用するようになったシニア層ですが、同じような話はキャッシュレス決済に関する調査データからも見てとれます。

これも弊社が2025年に行った調査データですが、スマホアプリを使わないと利用できないQR・バーコード決済の利用率は年代別であまり差がなく、シニア層でも6割以上が利用しています。
シニアは現金主義が主流というイメージを持たれている方も多いのではないかと思いますが、タッチ系の決済やクレジットカードの利用率も高く、現金一本主義の比率はシニア層でも極めて低くなっています。
QR・バーコード決済の普及はマイナポイントの配布や大規模な還元キャンペーンが後押しとなって、利用のきっかけとなる動機がシニア層にも生まれたことが大きかったように思います。
実際、特に女性のシニア層ではPayPayの利用比率が突出して高くなっていることがこの調査でわかっており、使い始めたきっかけがそのようなものであったことが推察されますし、
一度使って便利さを体感できればそのサービスを使い続ける傾向もこのデータから見て取れるのではないかと思います。
まとめ
まず、シニアがスマホを持っていないのでは? という心配は、すでに単なる思い込みになりつつあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
シニア層がメインで使うスマホはiPhone・Androidが主流になっており、他の年齢層と差はありません。QR・バーコード決済もアプリ会員証も使いこなしています。
説明して理解していただくのに少し時間がかかるという傾向はいまでもあるかもしれません。しかしそれを乗り越えた後、使い続けてもらえるようになる可能性はむしろ他の年齢層よりも高い傾向があるように感じます。
実際、弊社でクーポンの利用に関する調査も行ったのですが、シニア層はクーポンによって別の店舗を利用するより、いつも行っている店舗のクーポンを計画的に使う傾向が強く、利用率も他の年代に比べて高いことがわかっています。
これらを踏まえて考えると、シニア層に対するアプリサービス提供を不安視するよりは、むしろ積極的にアプローチしていくべきと考えた方がよいのではないでしょうか。
弊社ではそういった戦略策定をデータに基づいて支援し、アプリ開発まで一貫してお手伝いできる体制を整えております。
新規でのアプリ開発だけでなく、すでにアプリを提供している事業者様からのご相談も多くいただいております。お気軽にお問い合わせください。
アイリッジ アプリ成長支援サービス
https://iridge.jp/service/app_growth
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