
みなさんこんにちは。主にShopifyを利用するお客様向けの拡張サービスを提供する、株式会社Stackで営業責任者をしているOscarこと、大原です。
前回のコラムでは、「なぜ今、会員プログラムが重要なのか」という背景と、4つの型についてお話ししました。ありがたいことに、多くの方から「自社のプログラムがどの型に当てはまるか整理できた」といった反響をいただきました。
さて、第2回となる今回は、より「現場寄り」のドロドロした(?)お話です。実は、会員プログラムにおいて本当に大変なのは、制度を作ってリリースすることではありません。リリースした後の「運用と改善」です。
「鳴り物入りでスタートしたものの、会員数は増えても売上につながらない…」「ポイントは貯まっているけれど、使われないまま失効していく…」
そんな“会員プログラムの形骸化”に悩むブランド担当者の方を、私はこれまで数多く見てきました。一方で、運用フェーズでグングン数値を伸ばし、会員プログラムをブランドの成長エンジンに育て上げている企業には、明確な共通点があります。
今回は、200近いブランドの支援現場で見てきた「うまくいくブランド」の裏側を紐解いていきます。
大原 祐太(通称:Oscar)
株式会社Stack
新卒からEC業界に携わり8年目。「ささげ・越境EC・オンライン接客」など多様な支援会社でB2Bセールスを経験し、2022年12月より株式会社Stackに入社。コマースオペレーションプラットフォーム「SQ」や、Shopifyアプリ「Appify-モバイルアプリ」「VIP-会員プログラム」などの営業を担当しながら、広報活動にも従事。日々ブランド支援に携わる中で感じた“現場目線のリアル”を発信していきます。最近はファッション熱が高まり、毎月『POPEYE』を愛読中。
会社ホームページ:https://stack.inc/
X:https://x.com/yuta_o_hara
この記事の目次
「作っただけ」で終わってしまうブランドの落とし穴
会員プログラムをリリースした直後は、新規登録キャンペーンなどもあり、会員数は順調に伸びます。しかし、3か月、半年と経つうちに、多くの担当者がこんな壁に直面します。
- 「会員登録はしてくれるが、2回目のお買い物に来てくれない」
- 「特典がマンネリ化し、お客様の反応が薄くなってきた」
- 「結局、値引きしないとお客様が動かない」
なぜこうなるのでしょうか? 理由はシンプルで、「会員になる理由」は作ったけれど、「会員であり続ける理由」をアップデートできていないからです。
会員プログラムは、植物と同じです。水をやり、土を耕し、季節に合わせて手入れをしなければ、すぐに枯れてしまいます。運用フェーズで差がつくポイントは、まさにこの「手入れ」の精度にあります。
運用フェーズで見るべき「KPI」
運用を改善するためには、まず「何を見るか」を正しく設定する必要があります。総会員数だけを追っていても、実態は見えてきません。私が現場で推奨しているのは、以下の3つの指標です。
① 会員売上比率
全売上のうち、会員による売上が何%を占めているか。この比率が低いのであれば、ユーザーにとって会員登録のメリットが薄い、または特典が認知されていない可能性が高いです。皆さんは、カート内で「今登録すればこれだけお得(あるいは便利)」というメリットを、購買意欲が最も高い瞬間に提示できているでしょうか?
例えばサントリーグループの「カーヴ・ド・リラックス」では、商品ページやカート内で会員登録のメリットを直感的に訴求し、未会員ユーザーの取りこぼしを防いでいます。

https://www.cavederelax.com/
② アクティブ会員の「接触頻度」
単なる購入回数だけでなく、「アプリを開いた」「レビューを書いた」「店舗に来店した」といった、購買以外の接点頻度を見ます。これらが活発なブランドほど、中長期的なLTVが高い傾向にあります。
Shopifyなどを用いる場合、各アクションとポイントを「Shopify Flow」を用いて自動で紐づけることができます。「次はこれをしてみよう」という接触を演出しやすくなるのが、今の時代の強みですね。
また、「ブレインスリープ」が実施している「レビューコンテスト」のように、ユーザーの熱量を可視化する施策も有効です。これは単なるフィードバック収集に留まらず、社内の開発チームにとっても強力な指針となります。

https://brain-sleep.com/pages/review_contest
③ ポイント・特典の「消化率」
意外かもしれませんが、「ポイントが使われない」のは大きなリスクです。ポイント消化は、お客様が「次もこのブランドで買おう」と意思決定した証。消化率が低いなら、特典に魅力がないか、使い方がわかりにくいかのどちらかです。
「ポイント還元率」などの根本的な見直しも必要ですが、意外と抜けているのが「通知」の徹底です。付与時や失効前にメール、LINE、アプリでしつこいくらい通知を送る。実のところ、消化率が高いブランドほど、リピート率も高くなる傾向にあるのです。

差別化を狙った“複雑化”の罠 ―マイル制度の是非
ここで、最近よく相談を受ける「制度の設計」についても触れておきたいと思います。他社との差別化を意識するあまり、会員プログラムをあえて複雑にしてしまうケースが増えています。その代表例が「マイル制度」の導入です。
背景には、お客様の購買行動の多様化があります。従来の「購入金額」だけでなく、レビューやSNSシェアといった「アクションポイント」を重視する企業が増えた結果、それらを統合して管理する「マイル」という概念が注目されました。
たしかに、ブランドを応援してくれるファンを平等に評価できる「いい仕組み」に見えます。しかし、会員プログラムは複雑になればなるほど、お客様の関心から外れてしまうというリスクを孕んでいます。
象徴的だったのが、「無印良品」によるマイル制度の廃止(ポイント制への統合)のニュースです。あの大手ブランドでさえ、独自の「マイル」と「ポイント」が並立する複雑さを解消し、より直感的な仕組みへと舵を切りました。 (参考:新しい会員プログラムに切り替わるまでにためたMUJIマイルはどうなりますか? - 無印良品)
アクションポイントを採用してKPIを柔軟にコントロールするのは素晴らしい戦略です。ですが、「ランク算出のロジック」や「ポイントの利用方法」までセットで複雑にする必要はないと私は考えています。お客様がパッと見て「自分が今、何をすれば得をするのか」が直感的にわからない制度は、運用フェーズで必ず失速します。KPIをコントロールするためにロジックを組むのは運営側の仕事ですが、ユーザー体験はシンプルであるべきです。
成功企業の共通項:お客様の「熱量」を逃さない仕組み
会員プログラムの運用がうまくいっているブランドには、共通して回している「サイクル」があります。
定期的な「体験のアップデート」
成功しているブランドは、1年以上同じ特典を放置しません。 例えば爆発的人気を誇る「アークテリクス」では、特典を一気に放出せず、いくつかは「Coming Soon」として期待感を煽りながら、お客様のニーズに合わせて定期的に見直しています。イベント企画の拡充や、商品を長く愛用するための「Re BIRD」プログラムなど、常に“特別感”を更新し続けています。

https://arcteryx.jp/pages/stageprogram
オンラインとオフラインの垣根をなくす
「ECで貯めたポイントが店舗で使えない」。これ、お客様からすると一番ガッカリするポイントですよね(笑)。逆に、店舗スタッフが「お客様、あと10,000円のご購入で次のランクですよ!」と笑顔で声をかけられる状態。この「一気通貫の体験」があるブランドは、エンゲージメントが圧倒的に高いです。
以前は巨額のシステム投資が必要でしたが、現在はShopifyとPOSシステム(スマレジなど)の連携ハードルが下がり、中規模ブランドでも「オムニチャネル化」が当たり前になっています。
しかし、ここで多くの担当者が新たな壁にぶつかります。オムニチャネル、OMO、ユニファイドコマース。こうした言葉が世に出て久しいですが、実態として「完璧に対応できている」と言い切れるブランドは、未だにそれほど多くありません。
「理想はわかっているけれど、自社のシステム構成でどう実現すればいいのか?」「データ連携の不整合が起きないか?」と、不安や悩みを感じる担当者の方も多いはずです。
もし、その一歩で足踏みしているなら、ぜひ僕たちのようなベンダーを頼ってください。 複雑なパズルを解き明かし、ブランドにとって最適な体験を一緒に作り上げることこそ、僕たちの専門領域であり、一番の喜びですから。
まとめ
会員プログラムは、システムを導入してゴールではありません。むしろそこからが、お客様との本当のコミュニケーションの始まりです。まずは自社のプログラムが、お客様にとって「ワクワクするもの」になっているか、現場の視点で見つめ直してみてください。
もし、「もっと面白いことがしたい」「技術的な不安を解消したい」と思われたなら、いつでもお気軽にご相談ください。お客様がワクワクするような最高のプログラムを、共に築いていきましょう。
会社ホームページ:https://stack.inc/
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