DAISOアプリ開発の裏側とリテールメディアの未来!顧客体験を変革する「ダイソー」のDX戦略【セミナーレポート】
イベントの概要

Growth Summit 2025にて、株式会社大創産業(DAISO)と株式会社DearOneによるセッション「アプリによる顧客体験とダイソーが取り組むリテールメディアの未来」が開催されました。 圧倒的な商品数を誇るDAISOがいかにしてアプリによる顧客体験の向上を実現したのか。企画背景から、短納期での開発の裏側、そして顧客接点を活かした「リテールメディア」の活用まで、その戦略の全貌が語られました。本記事ではセミナーの要点をピックアップして紹介します。

【登壇者】
矢ノ目 和人さん
株式会社大創産業
ダイソーグローバル社長室 グローバル情報システム部
グローバルDX企画課 次長

塚田 康太さん
株式会社DearOne
プラットフォーム事業本部 ビジネス推進部
メディアプロデュースグループ グループマネージャー

【ファシリテーター】
近藤 圭佑さん
株式会社DearOne
プラットフォーム事業本部 ビジネス推進部
第2カスタマーサクセスユニット アカウントマネージャー

「どこにあるかわからない」を解消せよ。顧客の「不」から生まれたDAISOアプリ

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション
AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

近藤さん:まずは貴社の取り組みと、今回のテーマである「DAISOアプリ」についてお話しいただけますでしょうか。

矢ノ目さん:株式会社大創産業は設立から50年を超え、現在は国内4,600店舗、海外約1,000店舗と、世界26か国・地域へグローバル展開に力を入れています。今回ご紹介するDAISOアプリは、大きく分けて「商品検索機能」「在庫検索機能」「お買い物リスト機能」の3つの機能を持っています。

特に「お買い物リスト機能」はお客様のご意見から生まれた便利な機能です。欲しい商品を複数選択して、それらが全部揃っているお店はどこか、といった検索も一発で可能になっています。

近藤さん:なぜこのアプリをリリースすることになったのか、その背景もお聞かせください。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, アプリケーション, メール
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矢ノ目さん:「アプリを作ろう」からスタートしたのではなく、「お客様がどういった『不(フ)』を抱えているのか」を考えるところからスタートしました。DAISOの商品は多くのメディアで取り上げていただきますが、テレビで見て「いいな」と思っても「どこに売っているかわからない」「お店に行って在庫がなかったら損した気分になる」といった課題がありました。膨大な商品数がある中で、在庫の有無で失敗したくないというお客様の思いを解決する手段として、アプリを考案しました。

機能を絞り込み、「在庫検索」のリアルタイム性を追求

近藤さん:アプリを作るうえで、どのような機能を特に重視されましたか?

矢ノ目さん:メイン機能である「在庫検索」のリアルタイム性を重視しました。通常、在庫更新は日次(夜間バッチ)で行われることが多いですが、それだと夕方には在庫の乖離が大きくなってしまいます。完全リアルタイムではないものの、可能な限りリアルタイムに近づけることを目指しました。また、多機能にして便利さを追求するのではなく、「在庫の場所がわからない」という課題解決に一点集中し、機能は限りなくシンプルにしています。

塚田さん:企画段階では、検索体験(UX)にもこだわりましたよね。ユーザーが検索したワードをナレッジとして蓄積し、例えば「き」と入力するだけで「鬼滅の刃」がサジェストされるような機能もご提案・実装させていただきました。

会議室に集まる人々
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パートナー選定の決め手は「実績」と「開発スピード」

近藤さん:アプリ開発にあたり、パートナー選定ではどのような軸を重視されましたか?

矢ノ目さん:「短納期での開発能力」と「実績の豊富さ」です。短納期で開発しようとするとさまざまな課題が出てきますが、実績が豊富なパートナーであれば解決策の提示も早いです。数社比較させていただいた中で、DearOne様を選定しました。

塚田さん:セールス担当として、「実績」を評価いただいたのは非常に嬉しいですね。ちなみに「短納期」とおっしゃいましたが、実際プロジェクト開始からリリースまではわずか6か月でした。

3ブランドのデータ統合という難題を乗り越えた「伴走力」

近藤さん:開発プロセスで苦労された点はありましたか?

矢ノ目さん:当社は「DAISO」「Standard Products」「THREEPPY」の3ブランドを運営していますが、開発当初はこれらのブランド別・店別の在庫データ管理が完全には整理できていない状況でした。どう仕分けをするか非常に悩ましい課題だったのですが、DearOne様にご相談したところ、「あるデータを送ってくれれば、あとはこっちで何とかします」と言っていただきまして(笑)。私が苦労するというより、DearOne様に苦労をかけて解決していただきました。

塚田さん:社内では「絶対できるよ」というマインドでやり遂げましたね(笑)。

現場のオペレーションも変革。アプリがもたらした「コミュニケーションコスト」の削減

近藤さん:2024年2月のリリース後、実際にどのような反響がありましたか?

矢ノ目さん:お客様からは厳しいご意見もいただきますが、「在庫検索ができるようになって非常に便利になった」という声を一番多くいただいています。私たちが捉えていたお客様の課題と解決策がマッチしたのだと評価しています。

また、社内からもポジティブな変化がありました。最近は商品名が複雑で従業員も即座にわからないことがありますが、お客様がアプリの画面で「この商品」と見せてくださることで、スムーズにご案内できるようになりました。お客様とのコミュニケーションコストが下がり、情報共有のあり方に大きな変化が生まれたのです。

近藤さん:数値としても、リリース3か月で100万ダウンロードを達成するなど、非常に好調ですね。

矢ノ目さん:具体的な数字はここでは控えさせていただきますが、直近でもダウンロード数は右肩上がりで伸び続けており、非常に多くの方にご利用いただいています。

トップダウンではなく徹底した「顧客起点」で進化するアプリ

近藤さん:リリース後のアップデートや改修の優先順位はどのように決めているのでしょうか?

矢ノ目さん:一番は「お客様の声」です。それに加えて社内の「従業員の声」、そしてApp Storeの評価レビューも全て拝見しています。これらを全て並べ、定例会で「次はどれをやるか」を決定し、実装して反応を見てまた声を拾う、というサイクルを回しています。

塚田さん:これは本当に素晴らしいことだと思います。多くの企業では、どうしても社内のトップダウンや各部署からの要望が優先されがちですが、DAISO様は本来あるべき姿である「エンドユーザーの声」を吸い上げて改善に反映されています。

近藤さん:直近の機能追加である「お買い物リスト」の改善や、お正月などの「トレンドワード」機能なども、まさにユーザー目線での開発ですね。

生成AIと画像検索で「探せない」をなくす。DAISOが描く次なる顧客体験

近藤さん:今後のアプリの展望について、どのようにお考えでしょうか。

矢ノ目さん:今後は「生成AI」を組み込んだパーソナライズを進めていきたいと考えています。また、検索機能の強化として「画像検索」も構想しています。「言葉でどう表現していいかわからない商品」を写真に撮ってアプリで探せば、商品と売り場がわかるといったストーリーを描いており、機能を拡充していきたいですね。

4,600店舗がメディアになる。DAISOが挑む「リテールメディア」の巨大なポテンシャル

近藤さん:次に、昨今注目されている「リテールメディア」についてお伺いします。DAISO様ではどのように活用されていますか?

塚田さん:まず、リテールメディアについて簡単にご説明いたします。リテールメディアとは小売企業(リテール)が持つ購買データや属性データを活用し、外部メディアや自社のオウンドメディア(アプリやサイネージなど)に広告を配信してマネタイズする事業のことです。DAISO様には、弊社のリテールメディアネットワーク「ARUTANA(アルタナ)」をご活用いただいています。これは複数のリテールアプリへ横断的に広告配信ができる仕組みで、MAUにして4,750万規模に成長しており、ナショナルクライアントの広告予算を獲得できています。

近藤さん:DAISO様全体として考えたとき、メディアとしての価値はどういった点にあると考えていますか?

塚田さん:DAISO様はPB(プライベートブランド)だけでなく、お菓子や日用品などのNB(ナショナルブランド)商品も多く取り扱っています。そのため、食品・飲料メーカー様などが広告主になり得ます。また、国内4,600店舗という圧倒的なオフライン拠点を持っています。店舗内のサイネージや音声広告などを活用し、店舗横断でリーチできるメディアとして自社販売すれば、大きなマネタイズのポテンシャルがあると考えています。

まとめ:「顧客の『不』の解消」こそが最強のグロース戦略である

本セミナーで語られたDAISOのアプリ戦略は、単なるデジタル化の事例にとどまらず、多くのEC事業者にとって重要な示唆を含んでいます。

特筆すべきは、「アプリを作ること」を目的にせず、「顧客の『不』の解消」を徹底して追求した点です。機能をあれもこれもと詰め込むのではなく、コアとなる課題解決(在庫検索)に集中し、UI/UXを研ぎ澄ませたことが、結果として短期間での爆発的なダウンロード数増加と、店舗オペレーションの効率化という双方のメリットを生み出しました。また、社内の都合ではなく「顧客の声」を最優先して改修サイクルを回す姿勢は、変化の激しい市場で選ばれ続けるための必須条件と言えるでしょう。

さらに見逃せないのが「リテールメディア」への展開です。アプリで顧客との強固なデジタル接点を築き、それを店舗というリアルな場と掛け合わせることで、新たな収益源を創出しています。「顧客起点のUX改善」と「資産(データ・店舗)のメディア化」。この2軸を両立させるDAISOの戦略は、今後のリテール・EC業界が目指すべき一つのモデルケースとなるはずです。

本セミナーはアーカイブ配信を実施しています。記事内では紹介しきれなかった資料や数字などをご覧いただけるので、気になる方は下記URLよりご参加ください。

▼申込ページ
https://attendee.bizibl.tv/companies/cojSFBcfIOCY

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