
ユーザーとしてアプリに接している皆さんが目にすることはあまりないかもしれませんが、世の中には従業員向けに作られたアプリというのも多く存在し、企業のDX推進の一端を担っていたりします。
有名どころではヤプリ社が提供しているUNITEなどがあります。このプラットフォームを利用して作られるアプリは、従業員同士の交流や情報共有を目的としています。小売業の分野においては、店頭スタッフの業務を効率化したり、接客の質を高めたりするために作られ、成果を上げているアプリもあります。
こういった従業員向けアプリの利用実態について弊社で調査を行い、その調査結果をまとめたホワイトペーパーを先日公開しました(記事末尾のリンクからダウンロードできます)。今回はこの調査データをみながら、普段は触れる機会が少ない従業員向けアプリについて、事例を交えて考えてみたいと思います。
篠田 健吾
株式会社アイリッジ
IT系企業での新規事業立ち上げや、アプリプラットフォームの企画・開発に携わり、2025年に株式会社アイリッジ入社。
小売系アプリの企画・提案実績が豊富で、自身のスマホに研究目的でインストールしているアプリの数が1,000を超えるアプリマニアでもある。
アイリッジ アプリ成長支援サービス
https://iridge.jp/service/app_growth
満足度は高いが普及率は低い

実際に従業員向けアプリを利用しているかどうかという質問への回答では、『利用している』が25%にとどまっており、この分野へのアプリ導入はまだあまり進んでいないことがわかります。
ただ、実際に従業員向けアプリを利用している人に対してその満足度を質問したところ、5〜6割が『とても満足』『やや満足』という回答でした。導入すればそれなりの成果が期待できるといえそうですが、そこまでの投資には踏み込めていないという現状が見て取れます。
優先順位の問題もあると思いますが、従業員向けアプリの有用性をもっと周知していく努力が、われわれアプリ事業者にも求められているということでしょう。肝に銘じておきます。

教育の効率化はニーズが高い
従業員向けアプリで解決したい課題として圧倒的に多かったのは「人手不足/スタッフ教育の効率化」でした。

このニーズはアプリならではというより、現場の困り事として定番といえます。そして小売業に限った話ではありません。
ただでさえ人手不足で困っている中で、スタッフの教育に人員が割かれ、しかもその役割をベテランのスタッフが担わざるを得ないことが、現場としては大きな痛手であることがアンケート結果からも推察されます。複数回答ありの結果とはいえ、この課題が内訳の半分以上を占めています。
アルバイトの比重が高い業種になると、この課題はさらに深刻になります。マニュアルなどの整備だけでは、スタッフ教育に人手が割かれる問題は解決しきれません。また、アルバイトスタッフの入れ替わりがあるたびに発生する業務なので負担は相当なものになります。
スタッフの負担を減らし、可能な限り人手をかけずに新人教育をできるようにする試みはスマホが登場する以前からありました。もう15年以上前になりますが、日本マクドナルドが当時人気のあったゲーム機『ニンテンドーDS』で動作するアルバイト研修用のソフトを作り、全店舗に配布して現場で活用していた事例があります。
日本経済新聞:マクドナルド、全店で「DS」使いバイト研修 専用ソフト開発

これは実際にアプリを導入している企業へのアンケート結果ですが、教育・研修系の結果を見ると、『スタッフ教育の効率が上がった』と感じられている方は一般スタッフにも管理者層にも多くいらっしゃいます。アプリ導入で一定の効果が得られることは期待できそうです。
最近はタイミーやスポットバイトルで募集されているような、単発で働くスポットワークと呼ばれる働き方が広がりをみせていますが、その普及に合わせて教育の効率化はさらに重要度を増してくるように思います。スマホやタブレットを活用したアプリによるサポートのニーズはさらに高まっていくことが考えられます。
期待が高いコミュニケーション系機能

もう少し踏み込んで、従業員向けアプリに今後期待することを聞いた質問では、営業支援系でのAI活用によるFAQ・問い合わせ対応やスタッフ間でのシフト調整などが要望として挙がってきています。
営業支援の面ではGoogleのNotebookLMのように、既存の社内資料やデータをアップロードすることで、属人化しがちな営業ノウハウや整理が大変な提案書のような情報を取りまとめ、容易に引き出せるAIツールが出てきています。
こういったものを営業同士のコミュニケーションツールと組み合わせていけば、AIを活用した業務支援アプリとしてさらに有効なものになっていくことが期待できます。
スタッフ間のシフト調整については、特にアルバイト比率の高い現場で負担の高い業務となっています。「らくしふ」のようなシフト調整のサービスが人気を博しているほどなので、当然ニーズが高いと考えられます。
ただ、こういった調整作業においてLINEのようにプライベートでも使っているSNSを使うことに抵抗感があるという意見は多く、2026年4月に施行予定の改正労働基準法で策定が検討されている、いわゆる「つながらない権利」のガイドラインの面でも課題が大きいものとなります。
参考資料:ディップ株式会社・株式会社アイリッジによる共同調査をもとにした分析資料『個人SNSで「つながらない権利」-アルバイト・パートの場合-』
このような課題を解決する、アルバイト向けのサービスとして開発された「バイトルトーク」は、プライベートなSNSとは隔離された専用のコミュニケーションツールとなっています。
シフト調整のツールも統合され、今後もさまざまな機能が搭載されることがアナウンスされているので、アルバイトする側にも雇う側にも必携のアプリとして普及が進んでいます。
従業員向けアプリは従業員だけが使うものというイメージが強いと思いますが、今後は従業員発信で外部とつながっていったり、ユーザー向けのアプリと連携したりと、進化していくでしょう。バイトルトークはその先進事例の一つといえるかもしれません。
共用から個人へ、課題となるアカウント管理


従業員向けアプリのニーズとして、コミュニケーションツールなどの個人ベースでの利用用途が増えてくると、それを利用する端末やアカウントの管理の面で別の課題が出てきます。
実はこういったアプリの利用状況についてヒアリングすると、現状では共用端末の利用が最多になっています。
単にマニュアルを参照し、在庫情報を確認するといった用途であれば、店舗に配置された共用端末でも用は足ります。しかし、バイトルトークのようなツールを活用する場面や、接客中でもすぐ使えるといった利便性を考慮すると、今後は私物のスマホ活用も含めた形で、一人ひとりが端末を持って従業員向けアプリを利用していくニーズがさらに高まってくることが予想されます。
スマホを利用する場合は最適なUI・UXの提供が業務効率に直接影響するため、この部分を妥協せず作り込めるかどうかは導入検討時の判断材料になってくるでしょう。
また、個人のスマホを利用する場合は、アカウント管理がしっかりできるアプリとして設計することが、情報管理の観点からも欠かせない要素となってきます。
社員のアカウント管理は企業ごとにさまざまで、一筋縄ではいかないことも多いので、この点でカスタマイズした作り込みや連携処理をしっかりできるかどうかが、今後の従業員向けアプリ開発において重要なポイントとなってきます。
また、社員アカウントや部署情報との連携がしっかりできていれば、アプリの利点であるプッシュ通知も個人別・部署別にセグメントして配信できるようになり、活用の幅がより広がってきます。今後はHR分野のサービスとの連携によって、いままでメール中心だった連絡手段をアプリに置き換え、アプリにすべての情報が集まる形へと進化していくことが見込まれます。
さきほど例に挙げたバイトルトークは弊社がディップ社と共同で開発したサービスですが、もともと弊社は10年以上にわたってアプリ開発に携わっており、設計・カスタマイズはもちろん開発まで一貫してお手伝いできる体制を整えております。
DXだけでなくEX(Employee Experience=従業員体験)向上にもつながる従業員向けアプリについても、これまでの経験・知見を生かしたご提案が可能です。
すでに他社製品を使って導入済みのお客様からの相談も多くあります。まずはお気軽にお問い合わせください。
https://iridge.jp/service/app_growth
▼本文で利用した調査結果(ホワイトペーパー)は下記からご覧いただけます。
https://iridge.jp/content/2025_employee_app_usage/
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