購入後の顧客サービス+CRMで本当の商品力を実感:スキンケアブランドのデータ駆動型CX【Part3】
インタビューの概要

「スキンケアブランドにおけるデータ駆動型CX(顧客体験)」をテーマに、パーソナライズスキンケアブランド「COCO.skin」を展開する株式会社Skin Code代表の三輪みゆきさんと、EC特化型CRMツール「EC Intelligence」を提供する株式会社シナブルの曽川雅史さんにインタビューしました。

前回は、「購入前・購入中における購買体験のポイント」についてお話しいただきました。今回は「購入後の顧客サービス+CRM」を中心にお聞きします。

専門家に相談しやすい環境づくり

――COCO.skinではカスタマージャーニーにおけるCX要素として、どのような顧客サービスを提供しているのでしょうか。

三輪さん一人一人の肌に寄り添い続けるため、COCO.skinでは購入者がスキンコンシェルジュに肌やスキンケアの悩みを相談できるようになっていますが、より質問しやすくなるようにチャットを導入しました。質問を受けているのは皮膚科学や処方開発の専門家で、診断結果をもとに個別カウンセリングをご提供しています。

今までは、LINEを使ってコンシェルジュサービスを提供していましたが、それだと、LINE連携が必要だったり、質問する際にサイトから離れたりするため、購入へのモチベーションを下げてしまうリスクがありました。サイト上のチャットから質問できることで、今までよりも質問していただける方が増えています。

提案させていただいた商品についてのご質問や、「今のスキンケアに加えるとしたら?」や、「この成分とこの成分は一緒に使っても良いのか?」など、現在のお手入れ状況、ご使用中の商品についての感想や、使用前後の肌状態を基に、さらにパーソナライズした、商品の使用方法や効果的な組み合わせに関するアドバイスなどをご提案しています。

また、SNSの普及にともない、美容系情報を発信するアカウントは爆発的に増え、過去とは比較できないほど美容に関する情報が入手しやすくなりました。一方で、SNSに溢れる情報には根拠に基づいていないものもあり、口コミやインフルエンサーを信じて行った美容行動が期待外れだったり、かえって肌トラブルを起こしてしまったりという声も少なくありません。

透明性の確保をするために、商品の原料や製造過程などに関する詳細情報の提供や、一人一人の肌が違うこと、それにより最適なお手入れ方法もそれぞれ異なること、また間違った情報に惑わされて肌トラブルにならないように、化粧品のことを一番近くで見てきた私たちだからこそできることとして、美容への期待感やワクワク感を向上させられる正しい情報配信を開始しています。

情報過多な時代におけるCRMの変化

――単品リピート・サブスクリプションでのCXの流れについてお伺いしてきましたが、従来の施策からデータ主導に変化することでどう変わったのでしょうか。

曽川さんスキンケア商品のEコマースにおけるCXの大きな変化は、ロイヤルカスタマーが定着するF数(※)です。従来は、リピート定着率からF5-F6で判断していましたが、今はF8-F10にまで深化しています。

※F数…Fは”Frequency”を指し、購入頻度を意味する。F3であれば3回購入した経験のあるお客様を指す。

CXの基本は、従来のCRMでは、ブランドと顧客との1 to 1でした。しかし、これだけ情報が過多になった今、顧客の選択肢が増えています。デジタルにシフトしたことで、顧客にとっては、利便性とコストパフォーマンスが前面に現れた、CRMマーケティングという認識になっているので、開封されること(発見も気づきもない)から疎遠になっているのです。

これを、見直す時期にきていることは、ブランドのマーケティング担当、カスタマーサービス担当は身近に実感されています。

まずは、購入前の体験、購入中の体験、そして、一番重点が置かれている購入後の体験で、これらのデータ取得とコミュニケーション要素や、施策を効果的に組み合わせることです。通販、デジタルという利便性だけのチャネルとしてではなく、顧客との長期的な関係構築が必要になってきます。その結果として、売上収益向上から、継続率が高まることで利益の向上が期待できることは、言うまでもありません。

コミュニティを重視したCRM

三輪さん:私たちは、コミュニティ型CRMへシフトしつつあります。COCO.skinでは、ソーシャルメディアやメッセンジャーアプリにおけるブランドの公式アカウントのフォロワーを「コミュニティ」と見立て、CRMを実践しています。

広告費が発生しないこともあり、毎日情報発信することはもちろん、顧客同士でコミュニケーションが起きるような設定を施すこともできます。顧客育成、購入、リピート、また口コミ拡散までを目指すということです。

通販時代とは違い、デジタルのEコマースになってからは、再注文は、リシップメント(定期配送)であることで十分です。それは2か月ごとに2個だったり、6か月から8か月分のまとめ購入であったり、誕生月のパーソナルキャンペーンでのまとめ買いであったりでよい時代です。

曽川さん:コミュニティ型CRMには、まず2点のポイントがあります。1つ目は、オンラインとオフラインで顧客データを統合すること。オンとオフの顧客データが連携されていないと、お客さんがいつどこのチャネルで購入したかを把握しきれません。購買後のパーソナライズメッセージ施策を組むなど、リピート状況を把握するためにも、オンラインとオフラインのデータ統合の重要性は高いと考えています。

もう1つのポイントは、どの媒体でブランドのコミュニティを展開するかです。これまでのメルマガなどに加えてSNSの重要性が増していると思っています。顧客やオーディエンスが日常的に使い、滞在が長い媒体に発信基地を置くことが有効だと考えるからです。

SNSを「未顧客を顧客に育てる」リードナーチャリングのような目的で活用しているブランドもあるでしょうが、それに留まらず、「使い方のコツ」や「ライフスタイルTips」なども発信していくことで「顧客をリピーターに育てる」フェーズでも役立てることができると思っています。

一部のブランドで、SNS上に鍵付きの非公開アカウントを作成しているところもあります。ファン側から申請をし、ブランド側が承認して初めてそこに入れるという形で、完全クローズドの空間でブランド側が会話をモデレーションし、ユーザー同士の対話を促すこともできます。ファンにそういう場を提供することが、ブランドへの好意や信頼感を高めることにつなげているケースです。

※Part4へ続く

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