
「スキンケアブランドにおけるデータ駆動型CX(顧客体験)」をテーマに、パーソナライズスキンケアブランド「COCO.skin」を展開する株式会社Skin Code代表の三輪みゆきさんと、EC特化型CRMツール「EC Intelligence」を提供する株式会社シナブルの曽川雅史さんにインタビューしました。
前回は、「パーソナライズとコミュニケーション主体のCRM」についてお話しいただきました。今回は「購入前・購入中における購買体験のポイント」を中心にお聞きします。
この記事の目次
オンライン肌診断の目的とメリットは?
――「COCO.skin」がオンライン肌診断をするのは、どのような目的とメリットがあるのでしょうか。
三輪さん:顧客の肌質や悩み、生活習慣などに関するオンライン診断を導入することは、スキンケア商品販売において、従来の店舗でのビューティーアドバイザーの役割の一部をEコマース上で提供するということです。
本当の「肌」の状態を知れるのは、顧客にとっても、商品を提供するブランドにとっても価値があります。双方のメリットとしては、
1.詳細な顧客プロファイルの作成
- より正確で詳細な顧客情報(現状から課題へ、そしてニーズ)を収集できます。適切な商品を選択してお届けできるということだけではなく、間違った選択をして、期待通りではない商品をお届けすることのリスクをなくせます。
- 顧客自身も自分の肌について深く理解できます。現状の課題を理解できていれば、プロセスや期間をお互いに確認できるので、顧客が諦めてしまうことを、顧客サポートを通じて減らすことができるでしょう。
2.パーソナライズされた商品レコメンドの精度向上
- 顧客の具体的なニーズに合った商品を提案しやすくなることで、購買意欲の向上と顧客満足度の増加につながることになります。
- また、ブランドも「誰」の声をもとに商品の改良をすべきかが明確になり、商品の効果向上にも役立てられます。
3.エンゲージメントの向上
- インタラクティブな体験を提供しているので、エンゲージメントが醸成されることになります。
- ブランドとの関係性構築に寄与していることは、その後の購買データとしてあらわれています。
顧客データの活用で変わるCRM
――顧客のデータが収集されることで、CRMはどう変わるのでしょうか。
曽川さん:顧客データの収集という点であれば、アンケート方式のLPや、チャットボットでの対話型CV施策などでも、マーケティング視点でそれなりの顧客データは収集できます。
収集したデータを基により効果的・適切なターゲティングが可能になることで、マーケティング戦略の最適化され、コンバージョン率の向上を促せるでしょう。それは、適切な商品提案により、購入につながる可能性が高まるということです。
しかし、顧客の目的を実現することが、CXの本質ですから、顧客教育の機会を得ることが大切です。オンライン肌診断によって、スキンケアに関する知識や気づきを提供し、商品の必要性や使用方法の理解促進をする土壌を醸成することができるでしょう。たとえば、成分訴求に偏ったままであると、期待値の調整ができなく、「こんなはずではない」「実感がわかない」という不満が膨らんできてしまい、顧客は離れてしまいます。
自社サイト・店舗をもつ事業者が提供可能なCX
曽川さん:メールなどのコミュニケーションで一番大切なことは、新しい商品や最新のオファーを届けることではなく、定期的に顧客データを更新することです。スキンケアトレンドに合わせて追加診断をメール・LINEなどを基点に実施して、データを更新し、顧客のコマースサイト(リアル店舗があればそこへ)への再訪を促し、プロファイルの更新機会を作ること。これはAmazonなどのマーケットプレイスではできない、自社サイト・店舗を持つ事業者が提供可能なCXといえるでしょう。
これらの行動履歴などを顧客アカウントに保存し、次回のパーソナライズされたメールマーケティングやサイト訪問時に活用したり、新商品開発やマーケティングキャンペーンの方向性決定に活用したりすることで、深い顧客インサイトにCSチームは関与することができます。
つまり、顧客のデータを収集し、活用できると、パーソナライズされたスキンケアジャーニーの提供が可能になります。顧客の肌の変化や目標に合わせた長期的なスキンケアプランの提案、達成マイルストーンの設定と祝福メッセージの送信ができるようになるということです。
業界を変えて見れば、アパレルやファッション、ビューティーも商品を通じて、顧客の目的を叶えています。そのためにアトリビューションに応じたコーディネイトなどの提案をしています。
商品販売を通して見えた顧客インサイト
三輪さん:私たちは、2024年9月から、肌解析キットの結果もマイページに掲載できるようにしました。これは、お客様インタビューの中で、肌診断を毎年行い、それまでのスキンケアの見直しを行う、というお声を頂いたからです。
1年前の診断結果と照らし合わせ、良くなっていたら、それまでのスキンケアは効果的だった、スコアが悪くなっていたら、お手入れの方法を即刻見直す、という使い方です。スコアで客観的に比較できることがモチベーションにつながるようです。
※Part3へ続く
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