KIBACOWORKSのぶさんが語るオフライン施策とは?重要なのは「場所」ではなく「ストーリー」
KIBACOWORKS のぶさん
インタビューの概要

鎌倉に工房を構え、木工&アパレルブランドを展開する「KIBACOWORKS」は、今年の10月1日に、22のブランドが集うリアルイベント「SLOW&STEADY」を開催。駅からバスで15分という立地にも関わらず、300名を超える方が来場されたそうです。

企画・運営をされているのぶさんは、オフライン施策で重要なのは「場所」ではなく「ストーリー」と言います。一体、どういうことなのでしょうか? 詳細について伺いました。

うまくいかず休止していたポップアップストアを再開した理由

――アフターコロナの今、ポップアップストアをはじめ、オフライン施策に取り組まれているEC事業者さんは増えていますが、なかなかうまくいかないという声を聞きます。

のぶさん:ポップアップストアに関しては、うちも最初は苦戦しました。もともとは百貨店などの商業施設にポップアップストアを出店していたのですが、お店の前を人は通るものの、立ち止まってはいただけなかったんです。うちのお店に興味を持っていただくきっかけ、来ていただける理由をどうやって作ろうかと試行錯誤しましたね。

結局、あまりうまくいかなかったため、ポップアップストアはしばらく控えることに。今振り返ってみると、事前告知などの情報発信が少なかったことも原因だと思います。

――どうしてまたポップアップストアに取り組もうと思われたのですか?

のぶさん:お客さんとの関係が築けてきたことが理由の一つです。その頃、オンライン接客に力を入れていたのですが、お客さんと会話を交わせば交わすほど仲良くなり、気がつけば顧客から友達になっていたんですよね。

実はお客さんとの壁を取り払いたくて、途中から「企業」としてではなく、中の人である「のぶ」として顧客対応するようにしたのです。フラットに喋ることで、話しやすい空気を作ろうとお客さんに寄り添った結果、質問や要望をいただく機会が増えました。結果、接客だけでなく、日常の中で連絡を取り合う関係に。

例えば、弊社ではギフト対応しているので、チャットでプレゼントの相談を受けることがあったのですが、購入したお客さんがギフトをプレゼントして付き合うことになった報告を頂きました。これは嬉しかったですね。

オンライン接客ツール「チャネルトーク」を活用してチャット接客に取り組む

のぶさん:お客さんと仲良くなるにつれて、「オンラインだけでなく、オフラインでも会ってみたい!会って話せばもっと仲良くなれる」と思うようになりました。オフラインって、商品を手にとってもらえるというのもありますが、何よりも自分たちの想いやこだわりをダイレクトに伝えられる良さがありますよね。

お客さんと濃いつながりが作れると、自然と購入いただけますし、リピートはもちろん、口コミにもつながります。それだけでなく、イベントやキャンペーンを企画したときに積極的に参加してくれる、応援してくれるんです。お客さんとの関係が築けている今だからこそ、再度ポップアップストアにチャレンジしようと決意しました。

商業施設から仲間のお店でポップストアをするようになったわけ

――心機一転のポップアップストアはどういったものでしょうか?

のぶさん:今は商業施設などではなく、仲間のお店でポップアップストアをしています。うちのお店に来ていただける理由が作れる場所を考えたときに、アクセスが良い、人が集まりそうというよりストーリーが大事だと思ったんですよね。それがうちのお店に興味を持っていただくきっかけ、来ていただける理由になるからです。

うちが今扱っているメインの商材は木工とアパレルですが、僕自身がもともと木工やアパレルに携わってきたわけではないので、自分にストーリー(経験や体験)がないのがコンプレックスでした。

自分は何を持っているかを考えたときに、これまでの人生でつながってきた友達・仲間を絡めてみたり、生まれ育った街を題材にストーリーを作ったりすれば、商品に付加価値を付けることができるのではと思ったんです。これは商品だけでなく、ポップアップストアやイベントなどのオフライン施策も同様で、ストーリーがあることで、共感できる方には刺さりますし、反応がいいんですよね。

2023年は「SUPPORT YOUR LOCAL」をテーマに掲げて取り組む

のぶさん:そういう背景を踏まえて、新たな取り組みのポップアップストア第一弾は、鎌倉の大船にあるエスニック料理店「骨肉酒家 市」とコラボしました。大船は僕にとって子供の頃の思い出がいっぱいあり、今も仕事の拠点となっています。大船のシンボルである観音様から名前を頂いて"KUANG NONG NIGHT MARKET(かんのんナイトマーケット)"と題し、2022年11月26日に開催しました。

「骨肉酒家 市」のオーナーである、しんちゃんは実は元KIBACOWORKSのスタッフです。「地元」「仲間」に加えて、僕がラーメン好きということが知られていたので、その日だけ提供するラーメンを作ってほしいという無茶ぶりをしました(笑)。

世の中にはたくさんのブランドがあるので、既存の枠にとらわれずに自分たちならではの味を出したいと考えたんですよね。何かあったときに、「そうえいば、KIBACOでこういうことあったよね」と思い出してもらうきっかけやネタになってもらえたら嬉しいなと。

コラボでラーメンを出すブランドってなかなかないと思います。またラーメンは30杯限定にすることで、なるべく早い時間にお客さんに来てくれるのではという狙いもありました。KIBACOWORKSからは、お店の雰囲気をイメージしてアジアンスタイルで、「大船」の文字を入れてデザインしたスウェットやロングスリーブTシャツなどを用意しました。

それまでポップアップストアはあまりうまくいかなかったので、そのときも不安で仕方なかったのですが、蓋をあけてみると大盛況で、翌年も開催することに。

この「骨肉酒家 市」とコラボして開催したポップアップストアから、2023年のKIBACOWORKSのテーマの一つとして、「SUPPORT YOUR LOCAL」を掲げようと思ったのです。仲間達のお店やブランドとどんどんコラボレーションしていって輪をつなげ、それぞれの地域を、お店を、ブランドを盛り上げようと決意し、この1年やってきました。

ポップアップストアの事前案内はInstagramをメインに発信

――事前の告知など、集客はどのようにされたのですか?

のぶさん:Instagramをメインにポップアップストアの案内をしました。告知にあたって、R6Bの対人マンさんにいろいろアドバイスいただいています。

  1. なるべく早く、遅くとも2か月以上前にはイベントを開催する旨を伝えて、お客さんにスケジュールを確保していただく
  2. その後も日にちと場所を繰り返し発信続ける。その際、合わせてイベントに関わる情報を小出しに分けて発信する

のぶさん:自分の中では、こんなに何回もイベントのことについて投稿してしつこくないかなという心配もあったのですが、お客さんには全然伝わっていないんだなとDMのやりとりで気づきました。

例えば、大阪でイベントを開催することをInstagramで発信したのですが、お客さんからDMで「大阪でイベントを開催することがあれば、行きたいです!」と言われたり、「大阪に住んでいるのですが、このイベントどこでやるんですか?」と聞かれたり……。こういうことが多々あります。

SNSではイベントに関する情報を一度に全て伝えようとするより、小出しに分けて繰り返し発信していったほうがお客さんに浸透するんです。見るのが嫌にならない長さで、いろんな角度から発信していくことが大切だと思います。その際、まとまった情報を知りたいという方向けに、イベント詳細ページのリンクを入れるといいです。

ポップアップストアやリアルイベントには、既存のお客さんだけでなく、その友達だったり、KIBACOWORKS で買い物したことはないけど、Instagramは見ている方が訪れたりするため、新規集客にも大きく貢献しています。

「SUPPORT YOUR LOCAL」の集大成であるリアルイベント

――ポップアップストアについて、企画から集客までいろいろと教えていただき、ありがとうございます。10月に開催されたリアルイベント「SLOW&STEADY」に関しては、どういうストーリーがあるのでしょうか?

のぶさん:「SLOW&STEADY」は、もともと友人のお店の周年パーティーとして、その企画・運営をしてくれないかとお願いされてやり始めたイベントです。毎年開催していたのですが、コロナ禍でお店を閉店したため、周年パーティーも控えることに。コロナが落ち着いた去年から、再開することになったのですが、せっかくなので今の自分の仕事に絡めてやったら面白いのではとなり、今のようなイベントになりました。

この1年間、「SUPPORT YOUR LOCAL」を掲げてやってきました。今年10月に開催した「SLOW&STEADY」は、その集大成だと考えています。仲間のお店・ブランドを多くの人に知ってもらいたい。参加されるお客さんには、ただ単にモノを買って終わりではなく、音楽や食事を同じ会場にいる人たちと楽しんでいただきたい、そして記憶に残ればと思って開催しました。

当日、DJを呼んでいるのですが、その方にMIXを作ってもらい、イベントが終わった後も音楽を聴けるようにすることで、参加された方が思い出してもらえるようなきっかけを作っています。

このイベントをきっかけに友達ができた、そこで知り合った人同士で飲みに行ったという報告を頂くと、やって本当に良かったなと思います。

支援企業はビジネスの関係ではなく仲間のような存在

――今回、協賛企業として3社の支援企業さんがいらっしゃいますよね。非常に珍しい取り組みだなと思いまして……。

のぶさん:僕にとって支援企業はビジネスの関係というよりは、事業を成功させるために一緒になってやってくれる仲間のような存在です。だからこそ、「SLOW&STEADY」でも何か一緒に関われたらと考えたんです。

今回のイベントではR6Bさんとチャネルトークさん、DMM Boostさんに協賛いただきました。各社さんについて簡単に紹介しますと、

R6B社

のぶさん:ECサイトのリニューアルの際に、ご支援いただきました。カートシステムをShopifyに変更したのですが、いろいろなアプリを教えていただいています。そのうちの一つが、チャネルトークです。

サイトリニューアル後もInstagramの運営支援など、サポートいただいていますね。オンライン施策だけでなく、ポップアップストアをはじめとするオフライン施策でもご協力いただき、とても助かっています。

チャネルトーク社

のぶさん:オンライン接客ツール「チャネルトーク」を活用させていただいています。チャネルトークさん主催のMeetupで、同じようにオンライン接客に力を入れている蝶結びの杉下さんミウラタクヤ商店の三浦さんと出会うきっかけをいただきました。

今回のイベントでは、出店されるブランドさんとやりとりする際にチャネルトークを使わせていただいています。お客さんだけでなく、社内や企業同士でもチャネルトークは活用できるんです。

DMM Boost社

のぶさん:LINEアカウントの機能を拡張するツール「DMMチャットブースト」を提供するDMMBoostさん。弊社でも活用しています。このイベントでは、LINEのクーポンを配布し、オフラインからオンラインに誘導する取り組みを行いました。

DMM Boostさんは事業者さんが集まるコミュニティも運営されており、今回のイベントでは、そこで知り合ったブランドさんも多く出店されています。

地元の兄ちゃんがやっているカッコいいブランドであり続けたい

のぶさん:これからも仲間のお店やブランド、支援企業さんとコラボレーションしながら輪をつなげ、盛り上げていけたらと思っています。来年は「SLOW&STEADY」を横浜で開催しようと予定していますので、楽しみにしてください。またお客さんとのリアルの接点を増やすために、今の工房を実店舗としても活用しようと動いています。

何か新しいことを取り組むにしても、地元の兄ちゃんがやっているカッコいいブランドという軸はぶらさずにやっていこうと思っています。

インタビューを通して:ブランディングと差別化のヒントは身の回りにある

数多くのお店がある中で、「どうやってブランディングしようか」「どのように差別化しようか」と悩まれている事業者さんは多いと思います。ブランディングや差別化というと、何か特別なことを考えがちですが、のぶさんのように仲間や地域のつながりをもとに、ストーリーを作ることで唯一無二なブランドになることが今回のインタビューでわかったかと思います。ブランディングや差別化にあたって何かしら皆さんの参考になれば幸いです。

▼KIBACOWORKS
オンラインストア:https://kibacoworks.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kibacoworks/

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