1年でInstagramのフォロワーが10倍の2万人に!アロハシャツブランド「Eanbe」の成長ストーリーを訊く
インタビューの概要

アロハシャツブランド「Eanbe(いあんべ)」を運営するマエノリ株式会社の代表である下地希一さんは、情熱的なアロハシャツ愛を持っています。物販経験がない中、2018年にブランドを立ち上げ、2022年の4月頃には2,000人ほどだったInstagramのフォロワーが2023年6月には2.1万人になりました。毎年200%のペースで在庫数を増やしている「Eanbe」がブランド立ち上げから今に至るまで、どのようにして認知を伸ばして成長してきたのか伺います。

ブランド立ち上げはアロハシャツへの愛から

――まず、アロハシャツへの愛に目覚めたきっかけをお聞かせいただけますか。

アロハシャツをこよなく愛する下地さん(写真右上)
アロハシャツをこよなく愛する下地さん(写真右上)

下地さん:沖縄で生まれ、幼少期からずっと他のことには見向きもせずにサッカーをやってきました。ファッションに興味を持つことがないまま、高校を卒業して大阪に行ったときに自分がダサいことに気づいたんです。

そこで、ストリート系など、いろいろなファッションのスタイルを試す中で、アロハシャツに出会いました。他の人とは被ることがなく、自分の出身である沖縄らしさを醸しながら、独自の文化や個性を持つアロハシャツに惹かれてのめり込んでいったんです。コレクションが増えるに連れて自分の欲が大きくなって、具体的に欲しいアロハシャツのイメージが湧き、自分で作りたくなりました。

――アロハシャツというとズバリどういったシャツのことをいうのでしょうか?

下地さん:開襟で、半袖だと第一ボタンがない作りになっています。素材が一般のシャツだとコットンが多いかと思いますが、アロハシャツはサラサラしたレーヨンの生地を使うことがほとんどです。取り扱いは難しいですが、その分風合いやサラサラした涼しい感じを味わえる特徴を持っています。

もともとハワイの文化や歴史がモチーフになっているデザインが多いですが、最近では和柄や自分たちが好きなモチーフを載せているアロハシャツが徐々に出てきて、私も自分が好きなことや趣味、世界観をシャツ上で表現しています。

麻雀をテーマにした「Eanbe」のアロハシャツ
麻雀をテーマにした「Eanbe」のアロハシャツ

ブランド認知は高い熱量で書いたnoteの記事から

――特徴を残しながら、オリジナリティのあるデザイン性の高いアロハシャツを作り始めた下地さんですが、ブランドを立ち上げる際に、広く認知してもらうため、どのようなことに取り組んだのでしょうか?

下地さん:アロハシャツは、洋服を購入する際にパッと候補に上がることの少ないニッチなアイテムです。そこで、最初はアロハシャツが好きな人にブランドを知ってもらうことから始めました。

まず実施したのはnoteでブログを開設して、ブランド立ち上げに関する想いを書き記しました。純粋に「アロハシャツが好きな人、アロハシャツ愛が通じ合う人に1人でも多く伝わってくれ!」と気持ちを込めて書いたんです。その熱量が伝わったようで、最初に書いた記事がTwitterで少しバズり、普段のツイートと比べて多くの方にリツイートしていただけました。

アロハシャツが好きすぎてとうとうブランド立ち上げてしまった話(note)
アロハシャツが好きすぎてとうとうブランド立ち上げてしまった話(note)

――Twitterのアカウントはブランド立ち上げで新たに立ち上げたものですか?また、発信先にnoteを選んだ理由もお聞きしたいです。

下地さん:Twitterはずっと前から続けていたフォロワーが友達ばかりの個人アカウントです。noteの記事が拡散されたおかげでアロハシャツが好きな方たちにも私の想いが届いていきました。

noteを選んだ理由は、当初利用していたECサイトのシステムにはブログの機能が付いておらず、WordPressでサイトを立ち上げるには労力がかかりすぎるため、自然といきついた感じです。結果として、Twitterで拡散されたと同時にnote内でも目立つ位置に表示されて多くの方に見てもらえたので正解だったと思っています。記事を出したその日に、メディアからオファーを頂いて、取材してもらえたこともnoteを活用して良かった点です。

集客を知るために支援会社に就職

――noteに記事を書いたことを発端に良いスタートダッシュを切れたのですね。それからはどのような形で集客を行ったのでしょうか。

下地さん:現在、ECサイトへのアクセスのほとんどがInstagramからの流入です。アカウントはブランド立ち上げと同時くらいのタイミングで開設しました。EanbeのアイテムはTwitterよりもInstagramのほうがマッチしていると考え、Instagramをメインでやることを決めて運用しています。

実はブランド立ち上げ当時は、会社員としてWebのデザイナーやディレクションをしていました。しかし、ECサイトの構築の経験はできたものの、集客のノウハウなどは全くない状態でした。そこで、足りない知見を補ってから独立しようと考え、Instagramの運用を行っているスタートアップ企業に転職しました。ブランドを立ち上げてすぐは、生計を立てられないという理由もあります。

それが「Eanbe」をリリースしてから3、4か月後のことです。自分がブランドを持っており、いずれ独立することを伝えているにも関わらず、採用いただけたことは、非常にありがたく感じます。しばらくは、自分のブランドを運用しながら、クライアントのSNSのクリエイティブを同時並行でディレクションしていました。今思うと当時の経験は、知識ゼロの状態から脱却できたという点で良かったかも知れません。最終的にEanbeが少し伸びて忙しくなり、退職する際も暖かく送り出してくれました。今でも当時の同僚が商品を買ってくれたり、飲みに行ったりと仲良くさせてもらっています。

具体的な利用シーンを想起できるクリエイティブが鍵

――支援側のご経験を持ちながら、現在は完全に事業者として「Eanbe」のInstagramを運用していますが、アカウントを立ち上げてから今に至るまでどのような創意工夫があったか教えていただけますか?

下地さん:どんなコンテンツを発信していくのか常に試行錯誤しています。初期の頃は格好良い写真をひたすら投稿していました。続けていく中で、自分たちの色を出そうと格好良いだけでなく、コンセプトを表現する方向を意識し始めます。「どんな人にこのシャツを着てもらい、どんなことをして欲しいんだ?」と考えた上で、写真撮影から投稿まで作成する運用に切り替えました。

左:初期の投稿 右:利用シーンが想起される投稿
左:初期の投稿 右:利用シーンが想起される投稿

下地さん:最初の頃は商品をかっこよく見せることに重きを置いて撮影をしていましたが、途中からブランドの根幹である「いい気分」を自らの活動やライフスタイルで体現しているアーティストや芸人さん、ブランドやデザインのテーマに合う方をキャスティングして撮影しています。

――ガラリとテイストが変わりましたが、キャスティングやクリエイティブの変更にはどんな理由があったのでしょうか?

下地さん:他のアパレルブランドの中に埋もれてしまうという理由もありますが、投稿していて私が面白くないと思い始めたんです。特徴的な柄を持つアロハシャツで伝えたい世界観が当時のクリエイティブでは伝わっていないと、アカウントを運用する中で気づきました。唯一無二になるためには今のままでは駄目だと。

――「Eanbe」が考えているブランドの世界観と、その世界観を表現するために実際に取り組んだことはなんでしょうか。

下地さん:沖縄の方言で気分が良いときに使う”「いいあんべぇ」を日常”にというコンセプトに基づいて、クリエイティブやキービジュアルづくりを意識しています。色味をどうするかということよりも、アロハシャツを着ている方が良い気分になれているかどうかを軸にクリエイティブの良し悪しを判断しています。

フィルターで写真を整えて世界観をすべて綺麗にすることはあまり気にしていないんです。作ったシャツのコンセプトに似合う方に、どんな雰囲気の場所で着てもらうのが良いか考えています。例えば、パチンコがコンセプトのシャツは芸人の岡野さんに着ていただいてパチンコ店内で撮影しました。

――こういったクリエイティブは下地さんがお一人で考えているんですか?

下地さん:目指しているイメージは私の中にあるので、それをカメラマンに相談しながら理想の雰囲気に近づけています。モデルの良さや特徴に合わせて日常になじませてアロハシャツを着てもらい、世界観がわかりやすく伝わるよう意識しています。

南国でも都会でも着てもらえるようにデザインしているので、アロハシャツらしい南国感だけでなく、街中で着てもらうイメージも思い浮かべてもらうことが大切です。銭湯やパチンコ、お酒を飲んでいる様子を表現しているのもそういった理由からです。

Instagramの反応が良くなったのは、「Eanbe」のアロハシャツを着て、何をして欲しいのか考えてモデルを起用し、クリエイティブを作成するようになってからです。

コスト以上の価値があるポップアップストア

――ただ格好良いクリエイティブではなく、具体的な利用シーンが想起できる特徴的なクリエイティブはお客様を独自の世界観に引き込んでいったように感じます。「Eanbe」ではポップアップストアの開催をしていますが、こちらはどういった理由で始めたのでしょうか。

下地さん:アロハシャツのような特徴的な商品は実際に着ていただいたほうが良いと考えたことと、リアルでお会いできる場を用意して、よく買っていただけるリピーターさんと話してみたかったことがきっかけといえます。

リアルな売場は絶対に大事だと思っています。オンラインと比べると労力は何十倍もかかりますが、それ以上に得るものは大きいと感じます。2022年に1度東京で開催し、オフライン販売の大切さを実感して、2023年は全国を回ってみました。

初めての開催はどれくらいの方が来てくれるんだろうかと不安いっぱいでした。告知はInstagramのみです。心配して小さい場所を借りたのですが、蓋を開けてみると想像以上の方に来場いただき、外に長蛇の列ができる時間帯もありました。

渋谷で行われた初のポップアップストア
渋谷で行われた初のポップアップストア

――会場は商業施設ではなく、どこかのスペースを借りて実施したんですか?

下地さん:ビルの一室を借りての開催です。過去に百貨店のような施設のイベントに参加した経験はあったのですが、Eanbeを知らない通りがかりの方も多く、そういった方に接客をするのは難しいことでした。

「Eanbe」のことを知ってくれている人が来ていただけると純粋に嬉しいですし、そういった方とお会いして直接お話しながら接客するのは楽しいです。ゆくゆくは商業施設で開催することも視野には入れていますが、今はこのやり方が合っていると考えています。

ブランドを立ち上げる方へのメッセージと今後の展望

――すでにブランドを知っているInstagramのフォロワーに向けて告知をし、ポップアップストアで商品を試してから購入できるのはお客様視点で嬉しいことだと思います。ブランドを立ち上げて5年が経ちましたが、今後自分の好きなことをブランドにしようとしている方に向けて、アドバイスや注意点をいただけますか?

下地さん:「Eanbe」自体は生計を立てられるようになったくらいで偉そうなことは言えないのですが、結局のところは熱量が一番大事だと思います。あれこれ考える前にまずは熱量かと。マーケティングに時間を掛けて深く考え、お客様の理解からプロダクトへのこだわりまですべての工程に熱量を掛けないと、お金もコネも経験も少ない自分達のようなブランドは今の時代に生き残れないと感じています。

「Eanbe」をスタートする前にいろいろなブランドが立ち上がったのを見ましたが、1~2年でいなくなってしまうブランドを数多く見てきました。そういったブランドと比べると「Eanbe」はそこそこ長続きしてるほうだと思っていますが、それも熱量を維持しながらコツコツ続けてきたからこそだと思います。正直トラブルも多いですし泥臭いことばかりですが、熱量を持っていればお客様にも伝わるんじゃないかなと思います。

――好きだからこそ溢れ出る情熱を存分に注ぎ込むことが何よりも大切なことということですね。最後に、今後の展望について教えていただけますか。

下地さん:今年の4月は、すべての土日にポップアップストアを開催しました。来年は広い場所、広いエリアで開催する予定です。

アロハシャツは春から夏に売上が集中するため、冬場に繁忙期の反省や次の繁忙期に向けた仕込みに時間を掛けています。半袖のアロハシャツよりも何十倍もニッチな長袖のアロハシャツの認知を拡大する方法や、通年アロハシャツを着ることができる東南アジアへの展開など、いろいろなことを準備中です。今仕込んでいることが実を結んで、冬も暇じゃなくなるくらい活動していけたらと思います。

インタビューを通して:高い熱量から始まり、その熱を大きくし続ける

ブランドを立ち上げたときに書いたnoteの記事が広く読まれてから今に至るまで、下地さんが常に高い熱量を保ちながらアロハシャツに情熱を注いでいることが取材を通して感じられました。

以前取材したMANUALgraphさんもnoteに書いた記事をきっかけにブランドの認知が広がったお話をしていました。一念発起してブランド立ち上げたときの熱量は高いはずです。その気持ちを記事にしたためることは多くの共感を生みやすくするのかもしれません。

利用シーンを想起しやすいクリエイティブの作成やお客様との距離感を意識したポップアップストアなど、ポストコロナとなり自由度が高くなった今こそ取り入れたいノウハウではないでしょうか。私自身、「Eanbe」でアロハシャツを購入しましたが、オシャレな布の袋に入れられたシャツが手元に届いたときは気持ちが上がりました。この記事をここまでお読みいただいた方には、ぜひInstagramやECサイト、ポップアップストアなど、「Eanbe」を広く感じていただければと思います。

「Eanbe」
・ECサイト
https://eanbe.jp/

・Instagram
https://www.instagram.com/eanbe_official/

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