
昨今、ネットショップ開設にあたって簡単にECサイトを構築できるようになり、D2C(Direct to Consumer:メーカーが顧客へ直接販売する方式)が活発に行われるようになりました。化粧品や日用品の販売を行うにあたって欠かせないリピート通販について、基本的な考え方をまとめさせていただきます。
この記事の目次
リピート通販とは
商品を繰り返し顧客に購入してもらう通販の手法です。
顧客に繰り返し購入を行って貰う必要があるため、一つ一つの商品の魅力を多数のチャネルを用いて販促することが必要です。また、軌道に乗ると必要在庫数がある程度明確にわかるようになるため、在庫コストを抑えた運用が可能になります。
自社で企画開発したオリジナル商品を販売することが多く、商品の認知・ブランディングから始める必要があるため、立ち上げ初期は赤字になることが多いですが、リピーターを増やしていくため、事前に用意した事業計画を達成することで総合通販よりも売上の波を作らずに着実に伸ばしていくことができます。
どんな商品が向いているの?
経済産業省が発表している電子商取引に関する市場調査の結果を参考に見てみましょう。
9つに分類された商品カテゴリについてですが、食品、飲料、酒類や化粧品、医薬品が該当してまいります。向いている商品としては繰り返し利用してもらうことが必要なので「日常的に消費される商品」であることが条件です。
特に化粧品やサプリメントをリピート通販として実践している会社は非常に多いです。また、食品・飲料系としては最近、大手ビールメーカーがビールサーバーのレンタルと合わせて生ビールをリピート通販として販売している事例があります。

https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html
始める際に準備するもの
では実際にリピート通販を実践するにはどういった準備が必要になるのでしょうか。
・商品
商品の企画から開発まで行うためには、市場の動向や競合の状況を加味した上、どういった強みをもたせるのか、またその強みで解決できる課題にどの程度の市場があるかを想定する必要があります。
・梱包資材
リピート通販では商品のブランド力を高める必要があるため、梱包資材からブランドイメージを考慮して作成を行うと良いでしょう。
・商品ページ
リピート通販を行う上で、最も必要かつ大切です。顧客がページに訪れた際に、商品にどのようなイメージを持たれるかは商品ページ次第です。商品の強みから解決可能な課題に合わせて複数ページ作成を行い、広告出稿を行う際に、流入元のキーワードやセグメントによって出し分けをすると効果的に購入を促すことができます。
・広告掲載用原稿/画像/動画
商品ページを見てもらうために必要な出稿用の原稿/画像/動画の作成が必要です。どのように興味を持ってもらい、どのような課題をどういった期待値で見てもらうかを想定し、広告効果に応じて修正を行わなければなりません。
・受発注体制
総合通販と大きく違いはありません。ただし、○回目の購入時に特典を付与する場合など、通常の注文とは異なる発送を行う際は事前に提携倉庫や社内で誤発送がないように準備が必要です。
リピート通販を行うために必要な考え方
リピート通販を行う上で必要な考え方として、1顧客あたりいくらの広告費で獲得を行えば事業として成功できるか(目標CPAもしくは目標CPO)を適切に設定し、獲得した顧客の継続を伸ばして1顧客あたりの売り上げ(LTV)をいかにして引き上げていくかが重要です。
では、どのようにして算出するのか、具体的に商品やかかる費用を想定して考えてみます。
今回は「化粧水」を販売してみましょう。
商品価格は1本あたり3,000円で設定します。1本あたりの販売にかかる費用としては、
・商品原価:800円
・送料:500円
・決済手数料:200円
計:1,500円で利益率を50%で設定します。
今回はわかりやすくするために項目をかなり絞っています。

定価で1本販売するごとに1,500円の利益が出ます。
ただし、この商品はまだまだ世間的な認知が取れていないので、勝手に売れるということはありません。そこで、広告を打って集客を行う必要があります。しかし、むやみやたらに広告を打って集客をしても事業として成長できるかどうかがわからないため、1顧客を獲得するのにいくらで獲得すれば良いかを設定します。この設定する獲得金額の目標を目標CPA(Cost Per Acquisition:1顧客あたりの獲得単価)と言います。
目標CPAを設定するためには、1顧客がどれくらい継続して商品を購入してくれるかの売り上げの目安を知る必要があります。この1顧客あたりの売上額をLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)と言い、LTVに基づいて目標CPAを設定します。
LTVから利益額を算出し、CPAが上回ってしまうと赤字になるため、絶対に上回ってはいけないCPA(限界CPA)と最低限確保したい利益から算出するCPA(目標CPA)の2つの指標を設定すると良いでしょう。
事業が既に動いていれば既存の顧客のデータから算出を行いますが、今回はわかりやすく継続回数の平均を5回と設定します。また、1回あたり平均で1個商品を購入される場合、
3,000円(平均売上)×1個(平均個数)×5回(平均購入回数)=15,000円(LTV)が算出されます。

これによりLTVが算出されたので、限界CPA及び目標CPAの算出が可能になりました。利益率が50%なのでLTVが15,000円の場合、7,500円が1顧客あたりの利益となります。
よって顧客を一人獲得するために広告費が7,500円を上回ってしまうと赤字になる仕組みです。(限界CPA:7,500円)①
会社として売り上げに対して30%の利益を確保したい場合、
15,000円(LTV)×30%(確保したい利益率)=4,500円(1顧客あたりの目標利益)②
となり、目標CPAは
7,500円(限界CPA)-4,500円(1顧客あたりの目標利益)=3,000円(目標CPA)③
となります。

こうして決めた目標CPAをターゲットとして、日々の販促活動を行っていきます。
このような仕組みで顧客獲得を行う場合、1顧客あたりの初回の利益1,500円に対して3,000円の販促費を使っているので、黒字になるタイミングと手元の現金の状況は常に注意が必要です。リピート通販は積み上げ式で収益化するため、キャッシュフローを意識しながら販売をしていきましょう。
オーソドックスな売り方について
先ほどお伝えしたLTVが上がっていけば上がっていくほど、利益を潤沢に確保し、目標CPAに余裕ができたり、より大胆な販促施策を行ったり、打ち手の幅が変わってきます。
一般にネット通販を行う際に言われる売り上げの公式として
アクセス数(セッション数)×コンバージョン率×客単価=売上額
が挙げられることが多く、今回はリピート通販なのでLTV観点で公式を作ると
アクセス数(セッション数)×コンバージョン率×客単価×平均購入回数=LTV
となります。

また、項目に応じて新規顧客向けに考える施策か既存顧客向けに考える施策かが分かれるので、今回は新規顧客、既存顧客に分けて実施できる一般的な施策を記載します。
新規購入施策
アクセス施策
-デジタル広告出稿
リスティング広告やSNS広告など、デジタル広告の運用によって顧客から認知を得る方法です。企業側が見せたい層を狙って商品ページに送客できます。事前に持ち出し費用が発生するために、適切なCPAで顧客獲得ができているか適宜確認を行う必要があります。
-アフィリエイト
アフィリエイターのSNSやブログに商品を紹介してもらい、商品の認知を獲得します。
事前に商品の情報を提供することは可能ですが記事を投稿するのはアフィリエイター自身が考えた内容になるため、詳細までコントロールすることが難しいといえます。費用は媒体経由で注文が入った際に設定した成果報酬を支払う形になるため、事前の持ち出しがなく、商品の販売を行うことが可能です。
アフィリエイト広告については下記にて解説しています。
-インフルエンサー
インフルエンサーが運用している媒体に商品を紹介してもらいます。事前に費用を支払い、販売側の意向に沿った内容で情報を発信できる点がアフィリエイトとは異なります。
-SEO(Search Engine Optimization)
GoogleやYahoo!で検索された際に検索順位を上げることで顧客の流入を増加させます。リスティング広告以外に自社のページを上位に表示させることで他社商品に流れさせないことが大切です。
-アンバサダー制度
ヘビーユーザーをブランドアンバサダーとして任命し、自社商品の紹介を行ってもらいます。顧客として商品を利用しており、良い点悪い点をよく知っているため、一般の顧客に近い目線で商品紹介をしてもらえます。費用については支払うこともあればないこともあり、商品提供などで対応することもあります。
有名な事例としてワークマンのアンバサダー・マーケティングが挙げられます。下記の記事では、アンバサダーの選定方法や、アンバサダーとの取り組みについて詳細に事例を解説しています。
-SNSアカウント運用
自社でSNSのアカウントを運用し、関心を持っている顧客やファンを獲得していきます。商品の魅力やキャンペーン、季節に合った商品の使い方など、定期的な投稿によりファンを増やすことができます。
コンバージョン率
-商品ページ改善
分析ツールを用いて、滞在時間や直帰率などの数値やヒートマップを参考にABテストを行ってページの効果改善を行います。
下記記事ではECモールで競合商品との優位性を明確にしながら商品ページを作成する方法について解説しています。自社の商品ページが競合と比較し、強みを明確に打ち出せていない場合は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
-広告出稿原稿/画像/動画改善
出稿している広告の内容が誇大になっていないか等、商品ページとの期待値の差を少なくすることが必要です。商品ページやキャンペーンが変わるごとに広告内容の修正を合わせて行いましょう。
-初回購入限定特典
リピート通販は継続的な購入に顧客を促すため、入り口のハードルを低くすることが効果的です。例えば、無料サンプル提供による関心を持った顧客の獲得や初回購入者限定の割引キャンペーンなどが一般的です。
リピート購入施策
客単価
-アップセル(複数購入の促進)
1つずつしか購入しない顧客に対して、複数販売を行います。一度に複数個の販売ができるため、送料が抑えられ、その分利益を確保することができ、顧客への還元や新たな施策への投資ができるようになります。
-クロスセル(関連商品のセット販売)
商品を定期的に利用することで、ブランドへの信用が増し、ファンになる可能性が高いため、リピートで購入されている商品以外の同ブランド商品の販売ハードルが下がります。
例えば、普段化粧水を利用している顧客であれば、乳液をセット購入することでお得に利用してもらえるようキャンペーンを実施することで、客単価の引き上げを狙います。
平均購入回数
-会員グレード制の導入
繰り返し購入することで会員グレードが上がり、上げることで顧客への還元ができる仕組みを取り入れます。定期的な購入が止まりやすいタイミングに合わせて特典を付与するなどの枠組みを作ることが可能です。
-交流会の実施
商品のファンを集めた交流会やコミュニティを作成し、顧客につながりを持たせます。商品とのつながりを超えた人とのつながりを作ることで、継続的に商品を購入する動機を増やすことができます。
-ステップメール/メルマガ
商品購入後、定期的に商品の魅力や使い方、成分情報など、顧客に広げていきます。より商品への知識を高めてもらうことで、顧客がファン化し、離脱しづらい状態を作っていけます。
他にも実践できる施策は複数ありますが、今回は一般的な内容を記載しました。実際に運用を行うにあたって詳細なフローや施策については、各社に合わせた内容を考えることが必要です。
-同梱物
同梱物は商品に同梱・同封してお届けする販促物を指します。お客様の目に触れる確率が100%と言っても過言ではない施策です。購入回数や購入された商品など、お客様の状況に合わせた同梱物をお送りすることで、お客様と事業者の関係性を強固にしやすい特性を持ちます。詳細は下記の記事をご覧ください。
最後に
総合通販と異なり、事前の準備や集客への投資などが必要であるため、物販を行う上では初心者向きではないかもしれません。しかし、顧客が増えていくことで外部的要因により大きく売り上げを落とすことがないメリットがあります。
リピート通販について相談がある方はお気軽にお問い合わせください。
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