
子ども向けサプリメント「ノビルン」「ノビルンC」の表示をめぐり、消費者庁は2026年6月29日、高光製薬株式会社に対して景品表示法に基づく措置命令を行いました。対象となったのは、商品の品質や価格そのものではなく、第三者によるSNS投稿をLPなどに掲載する際の見せ方です。
消費者庁の発表によると、同社は「ノビルン」「ノビルンC」に係る表示について、景品表示法第5条第3号、いわゆるステルスマーケティング告示に該当する行為が認められたとして、措置命令を受けています。
今回の事例は、EC事業者にとって非常に示唆的です。なぜなら、問題となったLPは一見すると、いわゆる“売れるLP”の型を丁寧に押さえているからです。ランキング実績、販売実績、リピート率、メディア掲載、ユーザーの声、SNSでの人気感、定期購入の特典訴求など、購入前の不安を解消し、背中を押す要素が多く盛り込まれていました。
だからこそ、今回の事例は「どこからが景品表示法上のリスクになるのか」を考える題材として重要です。
この記事の目次
問題は「口コミ」ではなく「広告だと分からない見せ方」
第三者の投稿も、事業者が関与すれば“事業者の表示”になり得る
今回の措置命令で押さえるべき点は、第三者の声やSNS投稿をLPに使うこと自体が直ちに問題とされたわけではないということです。
問題となったのは、事業者が商品の販売促進活動のために募集を行い、応募した第三者に商品を無償提供したうえで、SNSへの投稿を依頼していた点です。その第三者が投稿した表示について、画像部分を抜粋し、自社サイトや楽天市場、Yahoo!ショッピング上の自社ページに掲載していました。
つまり、消費者から見ると自然発生的な口コミやUGCのように見える一方で、実際には販売促進活動の一環として生まれた投稿だったという構図です。
「SNSでも大人気!」が自然な口コミのように見えるリスク

LP上では、「SNSでも大人気!」やInstagram風のアイコン、商品を持つ人物の画像などが表示されていました。消費者庁は、こうした表示について、高光製薬が自己の供給する商品の取引について行う表示、つまり「事業者の表示」であると認定しています。
ここがEC事業者にとっての分岐点です。
SNS投稿をLPに貼る場合、投稿者本人の言葉や画像であっても、事業者が依頼・提供・管理した投稿であれば、LPに掲載した時点で「第三者の自然な声」ではなく、「事業者の販売促進上の表示」として扱われ得ます。
“よくできたLP”ほど、第三者感の演出が強くなる
ランキング、実績、比較、レビューが流れるように配置されていた
今回のLPは、マーケティング視点で見ると非常によく作り込まれています。
冒頭では「成長期の伸びを応援」といった大きなベネフィットを提示し、ランキング1位、累計販売数、リピート率といった実績を並べています。その後、親の悩み、栄養に関する説明、商品の成分、他社比較、品質管理、価格メリット、定期コース特典へとつなげる構成です。
LPとしては、認知から不安解消、比較、購入促進までの流れが整理されています。
ユーザーの声は、企業の主張よりも信頼されやすい

さらに、途中に「毎日食べてます」「SNSでも大人気!」といったユーザーの声風の要素が挟まれています。これはLP上では強い説得材料になります。企業が「良い商品です」と言うよりも、第三者が実際に使っているように見えるほうが、消費者は自然に受け入れやすいからです。
しかし、まさにその“第三者感”がステルスマーケティング規制上のリスクになります。消費者が「広告ではなく、自然な口コミだ」と受け取る余地があるにもかかわらず、実際には事業者の販売促進活動に基づく投稿だった場合、広告であることを明瞭に示す必要があります。
EC事業者が見直すべきポイント
まず確認すべきは、投稿がどう生まれたか
今回の措置命令を踏まえると、EC事業者がまず確認すべきなのは、LPや商品ページに掲載している「お客様の声」「SNS投稿」「モニター投稿」「インフルエンサー投稿」の扱いです。
その投稿が自然発生したものなのか、事業者が何らかの依頼・提供・報酬を行ったものなのかを整理する必要があります。商品提供、割引、ポイント付与、抽選参加、紹介料などがある場合、消費者にとって広告であることがわかる表示が必要になる可能性があります。
SNS投稿時だけでなく、LP再掲載時も注意が必要
注意したいのは、SNS投稿時だけではありません。
投稿者がSNS上で「PR」「提供」などと記載していたとしても、LPに画像だけを切り出して掲載した結果、その表示が見えなくなる場合があります。今回の事例でも、消費者庁は第三者が投稿した表示の画像部分を抜粋して掲載していた点を前提に整理しています。
元投稿では関係性がわかる状態だったとしても、LPに再利用した時点でわかりにくくなれば、リスクは残ります。
小さな注釈では不十分になる可能性がある
もう一つ重要なのは、「広告であることの表示」がページ全体の中で埋もれていないかという点です。LPは縦長で、情報量も多くなりがちです。購入ボタン、ランキング、レビュー、比較表、キャンペーン情報などが並ぶ中で、小さな注釈だけを置いても、消費者が明瞭に認識できない可能性があります。
「広告であること」「商品提供を受けた投稿であること」「モニター投稿であること」は、該当する投稿の近くに、わかりやすく表示する必要があります。
UGC活用は今後も有効。ただし運用ルールが欠かせない
食品・美容・健康商材ほど第三者の声が効きやすい
SNS投稿やUGCをLPに活用することは、ECにおいて今後も重要な施策です。
特に食品、美容、健康、ベビー・キッズ用品、アパレル、日用品など、使用感や生活者の実感が購買判断に影響する商材では、第三者の声は大きな力を持ちます。
だからこそ、広告であることを隠したり、わかりにくくしたりすることは、消費者の合理的な判断を妨げるリスクにつながります。
「自然に見える」より「関係性がわかる」を優先する
ステルスマーケティング規制以降は、「自然に見えること」だけを優先したLP設計は危険です。
企業が依頼した投稿であるなら、その関係性を明確に示したうえで、消費者が誤認しない形で活用する必要があります。
例えば、LP内では次のような表示が考えられます。
「当社から商品提供を受けた方の投稿です」
「モニター投稿を当社が許諾を得て掲載しています」
「PR投稿を一部抜粋して掲載しています」
重要なのは、単にどこかに書くことではなく、消費者がその投稿を見るタイミングで理解できることです。
売れるLPと景表法対応は分けて考えられない
CVR改善の定番要素ほど、表示確認が必要になる
ランキング、実績、口コミ、SNS投稿、専門家コメント、比較表、限定キャンペーンなどは、いずれもCVR向上に寄与し得る要素です。
しかし、それらは同時に、景品表示法上の確認が必要な要素でもあります。
「売れる表現かどうか」と「法的に問題がないか」は、本来別々に確認するものではありません。消費者の購買判断に強く影響する表現ほど、表示の透明性も求められます。
LP改善のチェック項目に“広告表示”を入れるべき
今回の措置命令は、単なるステマ規制違反の一事例ではありません。EC事業者が日常的に行っているLP改善、レビュー活用、インフルエンサー施策、UGC掲載の延長線上にある問題です。
「SNSで話題」「利用者の声」「モニターの感想」といった表現を使う前に、その投稿がどのように生まれ、どのようにLPへ掲載されているのかを確認する必要があります。
売れるLPを作るうえでも、今後は「広告であることがわかるか」「事業者の関与が明瞭か」「元投稿のPR表示がLP上でも失われていないか」といった観点を、制作・確認フローに組み込むことが欠かせません。
今回の事例は、LPの完成度が高いからこそ、表示の透明性も同じ水準で求められることを示しています。
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