【海外ニュース】広告費高騰、ドイツ攻略、AI購買、楽天フランスの行方から読む欧州ECの変化

本記事では、欧州EC市場で注目される4つの動きを紹介します。広告費の上昇、ドイツ市場への進出戦略、AIによる購買行動の変化、そして楽天フランスの再編動向から、EC事業者が押さえるべき変化を見ていきます。

Google広告のクリック単価が1年で15%上昇、ROAS悪化も鮮明に

広告費の上昇がEC事業者の収益性を圧迫

オランダのECフィード管理企業Channableが発表した「eCommerce Google Ads Benchmark」によると、2025年6月から2026年6月にかけて、Google広告のクリック単価(CPC)は前年比15%上昇しました。金額にすると全キャンペーンタイプ平均で0.06ユーロの上昇です。一方で、広告費用対効果を示すROASは大きく悪化しており、Standard Shoppingでは43%、Performance Maxでは46%低下したとされています。つまり、EC事業者は以前より高い費用を払って集客しているにもかかわらず、得られる成果は小さくなっている状況です。

年末商戦では広告予算の競争がさらに激化

同調査は、欧州の1万社超の広告主による13.8億ユーロの広告費を分析したものです。Google ShoppingとPerformance Maxを対象にしたデータでは、特にQ4の競争が激しく、2025年第4四半期のCPCは第1四半期と比べて9.1%高くなりました。さらに、広告費全体も第4四半期は第1四半期より47.9%高く、ブラックフライデーやサイバーウィーク、ホリデーシーズンに向けて、EC事業者がより大きな予算を必要としていることがわかります。単に広告出稿量を増やすだけでは、利益を残しにくい環境になっているといえるでしょう。

日本のEC事業者にも求められる商品データの最適化

Channableの共同創業者でCPOのStefan Hospes氏は、Google広告を単なる予算項目ではなく、重要なデータ基盤として捉えるべきだと指摘しています。商品フィード、在庫、価格、商品名、カテゴリー、画像、広告予算の構造が連動していなければ、CPC上昇局面では収益性が悪化しやすくなります。日本でも楽天市場、Amazon、Google広告、SNS広告など複数チャネルで広告運用する事業者は少なくありません。広告費高騰に対応するには、入札調整だけでなく、商品データの整備、売れ筋商品の見極め、粗利を踏まえた予算配分まで含めた運用が重要になります。

参照:Cost-per-click increased by 15% in 1 year

ドイツ進出はAmazon出品だけでは不十分、複数モール戦略が重要に

ドイツECでは大手への集中が進む

ドイツのEC市場では、Amazonが長年にわたり最大のマーケットプレイスとして存在感を示してきました。しかし、近年はKauflandやOttoといったローカルプラットフォームもシェアを拡大しており、ドイツ進出を目指す事業者にとって、Amazonだけに依存する戦略は十分ではなくなっています。fulfilmentcrowdによると、ドイツでは2023年第3四半期以降、オンライン売上の中央値が22%減少する一方、年間売上100万ユーロ超の大規模EC事業者では中央値が7.6%増加しました。小規模事業者の売上中央値も12.3%減少しており、市場内で大手への集中が進んでいます。

Kaufland、Otto、TikTok Shopなど選択肢が拡大

ドイツECは他国と同様に、マーケットプレイスの存在感が高まっています。Amazon Germanyが最大手である一方、Kauflandは欧州全域での拡大を進め、Ottoもドイツ国内で2番手の有力プラットフォームとして国際販売者の受け入れを始めています。また、TikTok Shopも2025年3月にドイツ市場へ参入しました。ChannelEngineの2025年レポートでは、オンライン販売者の67%が少なくとも4つのマーケットプレイスで販売しているとされ、複数チャネルを組み合わせる動きが一般化しつつあります。

モール依存ではなく、販売データを自社成長に活かす視点を

fulfilmentcrowdは、販売者がカテゴリーごとに相性のよいプラットフォームを見極め、リーチ、顧客期待、運用負荷のバランスを取ることが重要だと指摘しています。一方で、マーケットプレイスだけに依存するのではなく、そこで得られる商品・地域・顧客行動のデータを自社ECや物流、ローカライズ戦略に活かすことも求められます。日本企業が欧州、特にドイツ市場へ進出する場合も、「Amazonに出せばよい」という発想では不十分です。現地モールごとの顧客層、配送品質、返品対応、価格競争の強さを見極めながら、自社ブランドを育てる導線を持つことが重要になるでしょう。

参照:‘Expanding into Germany takes more than selling on Amazon’

AIが購買プロセスの「参加者」に、商品探索の主導権が変化

欧州主要5市場のEC成長をAIが後押し

McKinsey & Companyのレポートでは、ドイツ、英国、スペイン、イタリア、フランスの欧州主要5市場において、ECは今後3年間で年率6%の成長が見込まれるとされています。2029年には、これら5市場のオンライン売上が合計6,000億ユーロに達する可能性があり、その成長要因の1つとしてAIの活用が挙げられています。AIは単なる検索補助ではなく、最安値の探索、商品の自動再注文、価格・ブランド・配送スピード・サステナビリティといった条件に基づくカート作成など、購買プロセスに能動的に関わり始めています。

消費者は店舗内AIよりも独立型AIを好む傾向

PSE Consultingが英国、米国、フランス、ドイツの消費者4,250人を対象に行った調査では、オンラインショッピングでAIを使う消費者の74%が、ECサイト内に組み込まれたAIではなく、ChatGPTのような独立型AIアシスタントを好むと回答しました。また、41%はGeminiのように複数プラットフォームを横断できるAIを好み、33%は特定カテゴリーに特化したAIを好むとしています。一方、ECサイト内に埋め込まれたAIアシスタントを望む人は10%にとどまりました。消費者は特定店舗の中で探すより、複数の販売者を横断して比較する体験を求めていることがうかがえます。

AI時代は「選ばれる商品情報」の整備が重要に

同調査では、AIを使う主な理由として価格比較が挙げられています。ただし、AIが普及してもマーケットプレイスの利用が減るとは限らず、回答者の最大90%が、AI普及後もマーケットプレイス利用は同程度または増えると考えています。これは、商品発見はAIに任せつつ、決済、配送、返品、カスタマーサポートなどの実行部分では既存の信頼できるプラットフォームを使うという分業が進む可能性を示しています。日本のEC事業者にとっても、AIに正しく理解される商品名、スペック、レビュー、FAQ、配送条件、返品条件の整備が重要になります。SEOだけでなく、「AIに推薦されるための商品情報設計」が今後の競争力になっていくでしょう。

参照:‘AI is becoming active participant in purchasing’

PriceMinister創業者が楽天フランス買い戻しに意欲、ブランド回帰の可能性

楽天が2010年に買収した仏マーケットプレイスに再編の動き

フランスのオンラインマーケットプレイスPriceMinisterの創業者であるPierre Kosciusko-Morizet氏が、Rakuten Franceの買収提案を準備していることを明らかにしました。PriceMinisterは中古本やカタログ、コミック、マンガ、書店で見つけにくい書籍などの中古品流通で知られ、フランスEC市場で大きな存在感を持っていたプラットフォームです。2010年に楽天グループが2億ユーロで買収し、その後2018年にPriceMinisterブランドはRakutenへ統合されました。

トラフィック減少と赤字が売却検討の背景に

Rakuten Franceは前月、買い手を探していることを発表しました。過去10年でトラフィックは42%減少し、アクティブ顧客数も33%減少したとされています。また、仏メディアL’Informéによると、Rakuten Franceの売上は約5,000万ユーロ、流通総額は約3億7,000万ユーロ、営業損失は1,000万〜1,500万ユーロ規模と報じられています。買い手が見つからない場合、同社は年内第3四半期に閉鎖手続きを開始する可能性があるとされています。

P2P回帰とローカルブランド再生が焦点に

Kosciusko-Morizet氏は、投資ファンドVerdosoおよび2018年から2024年までRakuten Franceを率いたFabien Versavau氏とともに買収を検討しており、PriceMinisterブランドの復活や、個人間取引(P2P)をより前面に出す構想があるとされています。現在のプロ販売者も新体制に含める見通しです。ほかにも、Cdiscountの親会社であるCasino、Carrefour、Pixmania、Back Marketなどの名前が候補として挙がっています。

日本のEC事業者にとって、この動きは海外展開におけるブランド統合の難しさを示す事例です。買収後にグローバルブランドへ統一することで認知や運営効率を高められる一方、地域に根づいたサービス名やユーザー体験を失うリスクもあります。特に中古品や趣味性の高い商品を扱う市場では、単なる取引機能だけでなく、コミュニティ性やローカルな信頼感が価値になります。

参照:PriceMinister founder wants to buy back platform from Rakuten

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