【海外ニュース】TikTok Shopの欧州拡大、楽天フランス売却検討、ドイツ小規模ECの苦境――欧州ECで進む再編と競争環境の変化

欧州EC市場で、プラットフォーム間の競争環境が大きく変化しています。TikTok Shopは欧州での展開国を広げる一方、楽天フランスは買い手を探していると報じられました。また、ドイツでは小規模オンラインショップの売上減少や、Temu・SHEINをめぐる議論も強まっています。

今回は、欧州ECの構造変化を読み解くうえで押さえておきたい4つのニュースを整理します。

TikTok Shop、欧州10市場へ拡大 複数国販売に対応するマーケットプレイスへ

4か国を追加し、欧州10市場体制に

TikTok Shopは、欧州での展開をさらに加速しています。2026年6月15日から、オーストリア、ベルギー、オランダ、ポーランドでサービスを開始する予定です。すでに英国、スペイン、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリアで展開しており、これにより欧州市場は合計10か国へ広がります。

今回注目すべきは、展開国の追加だけではありません。TikTok Shopは「Sell Across Europe」という機能を提供し、事業者が1つの登録で複数の欧州市場に販売できる仕組みを整えるとしています。商品説明のローカライズや、提携物流事業者を活用した他国発送にも対応する方針です。

SNSから販売インフラへ進化するTikTok Shop

これまでTikTok Shopは、動画やライブ配信を起点とした販売チャネルとして見られることが多くありました。しかし今回の動きからは、TikTokが単なるSNSではなく、クリエイター、物流、決済、越境販売をまとめて提供するマーケットプレイスへ進化しようとしていることがわかります。

実際に、TikTok Shopは新規市場でも短期間で存在感を高めています。スペインでは導入から18か月以内にGMVベースで国内16位のオンライン小売に入り、ドイツでも15位まで浮上したとされています。フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、スペインの5か国では、すでに10万以上の販売者が参加しているとのことです。

国内でも活用フェーズに入るTikTok Shop

日本国内でもTikTok Shopの提供開始から約1年が経ち、EC事業者にとっては新しい販売チャネルの一つとして捉え直す段階に入っています。TikTok上の動画やLIVE配信をきっかけに、そのまま商品購入へつなげられるため、従来のSNS運用とは異なる設計が求められます。

欧州でTikTok Shopが複数国に広がっている動きは、日本のEC事業者にとっても無関係ではありません。これまでTikTokは、商品やブランドを知ってもらうための場として活用されることが中心でした。TikTok Shopの拡大は、SNSとECの境界がさらに薄れていることを示しています。日本国内でも、まずは認知施策として使うのか、売上につなげるチャネルとして活用するのか、目的を明確にした運用が求められるでしょう。

参照:TikTok Shop evolves into a pan-European marketplace

楽天フランスが買い手を模索 欧州マーケットプレイス競争の厳しさが鮮明に

旧PriceMinister、かつての有力プレイヤーが苦境に

楽天フランスが、マーケットプレイス事業の買い手を探していると報じられました。同社はもともとPriceMinisterとして知られていたフランスのオンラインマーケットプレイスで、2000年に設立されました。かつてはフランスEC市場で大きな存在感を持ち、eBayを上回る時期もあったとされています。楽天グループは2010年に同社を2億ユーロで買収しました。

しかし、その後の成長は想定通りには進みませんでした。2016年には評価額が6,500万ユーロまで引き下げられ、2018年にはPriceMinisterブランドが廃止されてRakutenへ一本化されています。楽天は欧州でAmazonに対抗するマーケットプレイスとしての成長を目指していましたが、現実には十分な規模を維持することが難しくなっていたようです。

AmazonやCdiscountとの差が拡大

2025年第3四半期の月間ユニーク訪問者数は、楽天フランスが平均950万人だったのに対し、Amazonは3,880万人、Cdiscountは1,550万人とされ、大きな差が開いています。また、2016年以降、アクティブ顧客数は33%減少し、トラフィックも42%減少したと報じられています。

同社は2026年4月、従業員側に対して売却先を探していることを説明したとされています。買い手が見つからない場合、2026年第3四半期に閉鎖手続きへ入る可能性があります。その場合、180人の従業員に影響が出る見込みです。買い手候補としては、Fnac-Darty、Leclerc、Auchan、Cdiscountなどの名前が挙がっています。

楽天グループにとって、欧州マーケットプレイスの縮小は今回が初めてではありません。楽天ドイツは2020年に閉鎖を発表しており、スペイン、英国、オーストリアのマーケットプレイスもすでに閉鎖されています。楽天フランスは、欧州で最後に残るマーケットプレイスでした。

出店先を選ぶ視点がより重要に

この動きは、欧州ECにおけるマーケットプレイス競争の厳しさを象徴しています。マーケットプレイスは、買い手と売り手の双方を集め続けることで成り立ちます。消費者がAmazonや大手ローカルプラットフォームに集中し、販売者も流通量の大きい場所を優先すれば、中規模のマーケットプレイスは存在感を維持しづらくなります。

日本企業が海外マーケットプレイスを活用する際も、出店先の知名度だけではなく、実際に消費者が集まっているか、自社カテゴリとの相性があるか、広告投資に見合う販売機会があるかを見極める必要があります。販路を増やすだけではなく、どこで売るべきかを選ぶ視点がより重要になってくるでしょう。

参照:Rakuten France looks for a buyer

ドイツ小規模ECの売上が減少 大規模事業者への流通集中が進む

売上中央値は2023年第3四半期比で22%減

ドイツでは、小規模オンラインショップの苦境が鮮明になっています。Uptainの「E-Commerce Market Study 2026」によると、2023年第3四半期以降、ドイツのオンラインショップにおける売上中央値は22%減少しました。一方で、年間売上100万ユーロを超えるオンラインショップは7.6%成長し、年間売上5万ユーロ未満の小規模ショップは12.3%減少しています。

同調査は、ドイツ国内の3,000以上のオンラインショップと3,000万人以上のユーザーデータを匿名化して分析したものです。2025年第1四半期の売上中央値は10,247ユーロで、第4四半期には11,305ユーロまで上昇しました。ただし、これはブラックフライデーやクリスマスといった季節要因の影響が大きいとされています。2023年第3四半期の14,510ユーロと比べると、下降トレンドが続いていることがわかります。

小規模店舗ほど厳しい競争環境に

中間層のショップでも伸び悩みが見られます。年間売上5万〜10万ユーロの店舗は1.7%成長した一方、10万〜25万ユーロの層は2.4%減少、25万〜50万ユーロの層は0.4%減少、50万〜100万ユーロの層は0.8%増にとどまりました。市場全体として、規模の大きい事業者に流通が寄りやすい構図が強まっているといえます。

背景には、Temu、SHEIN、Amazonなど、大規模事業者や越境プラットフォームとの競争があります。小規模店舗にとっては、価格、品揃え、配送、広告露出のすべてで競争条件が厳しくなっています。消費者が低価格や利便性を重視するほど、小規模ショップは選ばれる理由を明確にしなければなりません。

一方で、注文単価には回復傾向もあります。2023年第3四半期には85ユーロだった中央値注文額が、2024年には76ユーロ前後まで下がったものの、2025年第4四半期には83ユーロに達しました。ただし、この上昇はインフレによる商品価格の上昇が主因と見られており、必ずしも購買意欲の回復を示すものではありません。

規模以外の競争軸を磨く必要

小規模ECにとって厳しいのは、売上件数が伸びづらい中で、広告費や物流費、システム利用料などの負担が重くなることです。単価が上がっても利益に直結するとは限らず、むしろ販促費や固定費の増加によって収益性が悪化する可能性もあります。

この状況は日本のEC事業者にも通じます。大手と同じ土俵で価格や露出量を競うのではなく、専門性、品揃えの深さ、顧客対応、ストーリー、リピート導線など、規模以外の競争軸を磨くことが求められます。EC市場が成熟するほど、選ばれる理由を持つ店舗と、そうでない店舗の差は広がっていくでしょう。

参照:Small online stores in Germany see revenues decrease

TemuとSHEIN、ドイツ経済に年間24億ユーロの損失との調査

低価格越境ECが既存小売の需要を置き換え

ドイツでは、TemuとSHEINをめぐる議論も強まっています。ドイツ小売連盟(HDE)が委託したIW Consultの調査によると、SHEINとTemuは毎日46万個の荷物をドイツへ配送しており、複数のEU規制に違反していることが不公正競争につながっていると指摘されています。その結果、ドイツ経済に年間24億ユーロの付加価値損失をもたらしているとの試算が示されました。

調査では、2026年2月に16〜69歳のドイツ在住者最大4,000人を対象にアンケートを実施しています。TemuとSHEINの利用者のうち51%は、これらの中国系プラットフォームで商品が入手できなかった場合、同じ商品を同じ価格で別の場所から購入していたと回答しました。さらに19%は、より高い価格でも購入していたと答えています。

これは、TemuやSHEINでの購入が、単に新たな需要を生み出しているだけではなく、既存の小売やECの売上を置き換えている可能性を示しています。低価格プラットフォームの成長は、消費者にとっては選択肢の拡大である一方、現地事業者にとっては売上流出の要因にもなっています。

雇用や税収への影響も指摘

HDEは、TemuとSHEINの影響によってドイツ国内で4万人以上の雇用が失われているとも主張しています。このうち小売業だけで28,300人にのぼるとされています。さらに、連邦・州・地方自治体では、年間約4億2,000万ユーロの税収が失われているとの試算も示されました。

背景にあるのは、競争条件の公平性をめぐる問題です。TemuやSHEINは、商品の安全性やEUの法規制への適合をめぐって批判されてきました。一方、現地の小売・EC事業者は規制対応を求められており、その負担は大きいとされています。HDEは税関による取り締まり強化を求めており、低価格越境ECに対する規制議論は今後も続くと見られます。

ただし、SHEIN側はこうした批判に対して、競合を悪者扱いし、競争を封じようとするものだと反論しています。低価格越境プラットフォームをめぐる議論は、消費者利益、規制の公平性、国内産業保護のバランスをどう取るかという段階に入っています。

価格以外で選ばれる理由を示せるか

日本のEC事業者にとっても、価格だけでTemuやSHEINと競争するのは容易ではありません。重要なのは、低価格競争を避けるだけでなく、顧客が高くても買う理由を具体的に示すことです。

品質の安心感、配送の確実性、返品対応、レビューの信頼性、ブランドの背景、アフターサポートなど、価格以外の価値を商品ページや広告、SNSで丁寧に伝える必要があります。低価格越境ECの存在感が高まるほど、国内事業者には「安さ」ではなく「納得して選ばれる理由」を設計する力が求められるでしょう。

参照:Temu and Shein cost Germany 2.4 billion euros yearly

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