アリババグループ、2024年第3四半期決算発表:越境ECとクラウドが好調!AIで広がるコマースの可能性

アリババグループが発表した2024年12月期第3四半期(2024年10〜12月)の決算によると、コマースやクラウド事業の回復が進み、グループ全体の売上高は2,802億元(約384億米ドル)と前年同期比8%増加しました。調整後EBITAは4%増の549億元(約75億米ドル)でした。

セグメント別の動向

国内コマース事業:取引規模と単価の改善で成長

小売事業の売上高は、前年同期比5%増の1,295億元(約177億米ドル)でした。主力のタオバオ(Taobao)とTモール(Tmall)は、オンライン取引額(GMV)の成長と単価の改善が進み、顧客管理収入(CMR)が前年同期比9%増の1,008億元(約138億米ドル)となりました。これは、ソフトウェアサービス料の導入や広告商品の「全站推(Quanzhantui)」の利用拡大が寄与したものです。

直接販売やその他の収入は、特定の直販事業の縮小により前年同期比9%減の287億元(約39億米ドル)となりました。一方で、卸売事業は、付加価値サービスの拡充により売上高が657億元(約90億米ドル)と前年同期比24%増加しています。

タオバオ・Tモールグループ全体の調整後EBITAは2%増の611億元(約84億米ドル)で、CMRの増加が収益性を支えました。

アリババ国際デジタルコマース事業:越境取引が牽引

アリババ国際デジタルコマース事業(AIDC)の売上高は3,776億元(約517億米ドル)で、前年同期比32%増となりました。これは越境ECを中心に、アリババが展開する複数のプラットフォームが牽引しました。

アリエクスプレス(AliExpress):中国から海外への越境ECプラットフォーム。低価格帯の商品を中心に、短期間配送などのサービス強化を進めています。

トレンディヨル(Trendyol):トルコ最大のECサイト。現地生産と越境の両面で成長を図っています。

ラザダ(Lazada):東南アジア向けのECプラットフォーム。今期は収益性の改善が進みました。

リテール事業は3,155億元(約432億米ドル)で36%増、卸売事業は620億元(約85億米ドル)で18%増。一方で、投資拡大により調整後EBITAは49.5億元(約6.8億米ドル)の赤字(前年は31.5億元の赤字)となりました。

クラウドインテリジェンス事業:AI製品が牽引

クラウドインテリジェンス事業(Alibaba Cloud)の売上高は3,174億元(約435億米ドル)で、前年同期比13%増。アリババ本体の子会社を除いた売上成長率は11%でした。これは、AI関連製品(生成AI・LLM向けのクラウドサービス)や、パブリッククラウドの成長が牽引しました。

特に、AI関連製品の売上は6四半期連続で前年比3桁成長を維持しており、今後もAI基盤モデル「Qwen(通義)」シリーズの展開や、Qwen2.5-Maxなどの最新モデルを中心に成長が見込まれています。

クラウド部門の調整後EBITAは33%増の31.4億元(約4.3億米ドル)で、製品構成の改善と運営効率化が寄与しました。

ローカルサービス:地図・宅配事業の収益改善

ローカルサービスグループ(Local Services Group)は、地図アプリ「Amap(高徳地図)」とフードデリバリー「Ele.me(餓了麼)」を中心とした地域密着型サービスを提供しています。売上高は169.9億元(約23億米ドル)で12%増、調整後EBITAは5.96億元(約8,200万米ドル)の赤字でしたが、前年同期の赤字(20.7億元)からは大きく改善しました。

スマート物流:Cainiaoは減収減益

スマート物流事業(Cainiao)の売上高は282.4億元(約38.7億米ドル)で前年同期比1%減となり、調整後EBITAは2.35億元(約3,200万米ドル)で76%の減益となりました。越境物流や国内配送事業の収益減が影響しています。

Cainiaoはアリババ傘下の物流企業で、ECにおける注文から配送までを支えるネットワークを国内外で展開しています。

その他の事業

その他のセグメント売上は531億元(約73億米ドル)で、前年同期比13%増でした。フレッシュポ(生鮮スーパー)やアリババ・ヘルス(医薬品ECなど)が増収をけん引しました。

一方で、Youku(動画配信)などを含むデジタルメディア・エンターテインメント部門の売上は54.4億元(約7.5億米ドル)で8%増、調整後EBITAは3.09億元(約4,200万米ドル)の赤字でしたが、前年同期より赤字幅は縮小しました。

今後の方針:ECと「AI+クラウド」に集中

経営陣は決算説明会で、今後の成長戦略として「国内外EC」「AI+クラウド」「インターネットプラットフォーム」の3領域に集中する方針を改めて示しました。とくにAIを用いた自社ビジネスの高度化と、SaaSや業務支援領域へのAI導入に注力するとのことです。

会見では「AGI(汎用人工知能)を目指すことが最優先課題」とも言及されており、AI関連の研究開発費やインフラ投資を大規模に行っていく方針が強調されました。

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