
JD.com(京東集団)は2025年3月6日に、2024年第4四半期決算を発表しました。中国国内で消費マインドが回復基調にある中、リテール事業とロジスティクス事業がともに2桁の増収を記録し、これが全体業績を押し上げる形となっています。営業利益は前年同期比で約4倍の85億元(約11.6億米ドル)、純利益も約3倍の99億元(約13.6億米ドル)と、大幅な収益性の改善が見られました。
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売上・利益ともに2桁成長、営業利益は約4倍に
2024年第4四半期の売上高は3,470億元(約475.3億米ドル)で、前年同期比13.4%増となりました。主に電子・家電、日用品などの販売が好調で、物販収入が14.0%伸長。サービス収入も10.8%増加しており、コマース周辺サービスの強化が収益の多様化に寄与しています。
営業利益は85億元(約11.6億米ドル)と約4倍に拡大。Non-GAAPベースでも105億元(約14.4億米ドル、前年同期比+34.4%)と成長しています。営業利益率は2.4%、Non-GAAPベースで3.0%と、収益性も改善傾向にあります。純利益は99億元(約13.6億米ドル、前年同期比+190.8%)、Non-GAAPベースでは113億元(約15.5億米ドル、+34.2%)と、大幅な増益となりました。
セグメント別の動向

JDリテール(小売事業)
売上は3,071億元(約420.8億米ドル)で、前年比15%と高い成長率を維持しています。
同社は自社運営による物流と商品管理の強みを活かし、迅速な配送や高品質なカスタマーサポートを実現しています。2025年1月には、会員制度「JD PLUS」の特典を大幅に拡充。清掃、洗濯、車の洗浄などのライフスタイル関連サービスをポイントで利用できる「生活サービスパッケージ」が加わりました。また、家電製品などにおいて、180日以内の不具合があった場合は修理ではなく交換対応とする「修理より交換」ポリシーを導入し、購入後の安心感を高めています。
JDロジスティクス(物流事業)
売上は521億元(約71.4億米ドル)で、前年比10.4%の成長を記録しました。社外向けの物流サービスも拡大しつつあり、外部顧客からの収益比率が増加しています。 特に香港・マカオ地域では、24時間以内の配達や夜間の荷物集荷、都市内4時間以内の配送など、地域に根ざした高付加価値サービスを提供。これにより同地域での注文量が急増しました。
また、越境EC対応として、海外倉庫の拡充、航空輸送ネットワークの整備、国際宅配機能の強化など、グローバル対応力の向上にも取り組んでいます。今後は中国発のブランドや海外事業者へのサプライチェーン支援を一層強化する方針です。
新規事業(Dada、不動産、海外事業など)
売上は47億元(約6.4億米ドル)と前年から31.0%減少し、依然として赤字が続いています。中でも、国内で展開していた一部のコマース事業の縮小や、不動産開発事業の売却などが影響しています。ただし、構造改革の進行や不採算事業の整理により、長期的には収益性の改善を図っています。
サステナビリティと人材投資
JD.comは、従業員・パートナーを含む「JDエコシステム」全体で約67万人を抱えています。2024年は人材関連支出として1,161億元(約159.0億米ドル)を投じ、物流スタッフや配送員などの現場労働者への投資も積極的に行いました。2024年末時点で、JDロジスティクスの1,200人超の現場従業員が定年退職を迎え、年金、医療、補償といった包括的な退職後サポートを受けています。
また、JDロジスティクスが開発した炭素排出モニタリング技術「MRV-T」が、中国国家発展改革委員会などが発表した「グリーンテクノロジー推進カタログ(2024年版)」に選出されました。物流業界としては唯一の選出となっており、環境への取り組みにおいても評価されています。
まとめ
JD.comは、2025年以降もリテールとロジスティクスの両事業を軸に、「消費者体験の向上」と「サービスの高付加価値化」を図る方針です。
2025年1月に、会員制度「JD PLUS」において、生活関連サービスとの連携を強化した「ライフスタイルサービスパッケージ」を導入。自社配送商品における「180日以内の交換保証」や即時配送サービス「JD NOW」の送料無料拡大など、ロイヤルカスタマー向けの利便性向上施策も強化されています。
JDロジスティクスでは、香港・マカオ地域での即配サービスの拡充や、越境ECを見据えたグローバル倉庫・航空・配送ネットワークの構築を進めており、海外需要の取り込みを視野に入れた事業展開も進行中です。
今後の注目ポイントとしては、国内外での物流ネットワークの構築状況や、会員制度の進化による収益への寄与などが挙げられます。ECの枠を超えた総合サービス企業として、JD.comの今後の展開に引き続き注目が集まりそうです。
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