
こんにちは!生成AIの法人導入支援を社内DXやプロダクト開発の観点で行っております、株式会社エクスプラザ代表取締役CEOの高橋一生(X:@vvxo)です。
過去のEコマースの運営経験や、現在のEコマース事業者さまとの生成AIの取り組みの知見から、さまざまな観点で生成AIに関する寄稿を行っていければと思っています。
今回は「生成AIが変えうるEコマースの現状と未来」特集の最終回です。Eコマースが生成AIによってバリューチェーンの中で現状どのような取り組みがされているのか、そして今後の未来はどうなっていくのか、というテーマでお話をします。
高橋 一生
株式会社エクスプラザ
代表取締役CEO
2020年に株式会社エクスプラザを創業、テクニカルサポート事業やコマース事業の立ち上げを行ったのち、2023年より生成AIの法人導入支援事業「EXPLAZA 生成AI Partner」を開始。企業向けに、生成AIを活用した 新規サービス・業務効率化ツールの開発等を行う。生成AIに関する登壇やメディア寄稿も多数。
■ 個人
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この記事の目次
Eコマースのバリューチェーンについて

Eコマースのバリューチェーンのうち、前回の「マーケティング」に続き、今回は「カスタマーサポート・フルフィルメント」の観点で、2024年の現時点で活用されている・活用が見込まれている事例を挙げていきます。
Eコマースのバリューチェーンにおける、生成AI活用の現状 - カスタマーサポート
カスタマーサポートにおいては迅速かつ的確な対応が求められます。生成AIの活用としては24時間体制での問い合わせの応答による顧客満足度の向上や、人力の顧客対応においても回答文章の作成などでの業務効率化が挙げられます。
ChatGPT による回答文章の作成

カスタマーサポートの回答文章の作成においても、ChatGPTで容易に作成することが可能です。今回は緑茶を販売するサイトを前提に、運送業者の事情で発送が遅れてしまったお詫びメールを作成してもらいました。余計かもしれませんが(?)、お詫びのクーポン提供の文章まで追記してくれていて、確かにこういう場合はクーポンを付与するほうが顧客満足度向上に繋がるかも?という気づきも得ることができますね。
■ エクスプラザ高橋の見解
vol.3の「マーケティング編」同様ですが、ChatGPTをはじめとしたLLM(Large Language Model: 大規模言語モデル)は、大規模なテキストデータに基づいて確率モデルを活用して文章を生成する対話型AIです。つまり、「過去の情報からそれっぽい文章を生成できるAI」なので、それっぽいことは言えるのですが、みなさんのブランドや商品の内容については知りませんし、その前提情報をいかに伝えて会話するかが生成の精度を上げるコツになります。


毎回前提情報を伝えるのが面倒であれば、自分専用のGPTsを作成するのもひとつの手です。上記のようにGPTsに自分のブランド名や商品情報を与えておき、カスタマーサポートの文書作成を行うアシスタントとして構築すれば、このアシスタントに毎回お客さまの質問文章を貼り付けるだけで事前情報から文章を作成してくれます。
チャットボットによる自動応答:Zendesk AI

カスタマーサポートを行うチャットボットは、生成AIが登場する前からもちろんありますし、チャットボット自体も国内外で多くのツールが存在します。Zendeskは世界的にも有名なカスタマーサポートツールですが、AI機能「Zendesk AI」は生成AIによる会話が実現され、複雑な内容にも顧客の状況を踏まえて対応ができるAIです。
■ エクスプラザ高橋の見解
生成AIのチャットボット活用は弊社でもよく問い合わせをうけるテーマです。
従来のチャットボットとの違いは「ルールベース型かどうか」という点です。
従来の「ルールベース型」のものは、質問と回答のセットを事前に用意しておき、お客さまが質問を投げたときに事前に用意された質問と類似のものがあれば、その回答を表示する、というものでした。生成AIによるチャットボットの革命は、質問と回答のセットがなくても、類するマニュアルなどを読み込ませておけば、そのマニュアルの文章内から該当しそうな文章を抽出し、そこから回答文章を作成してくれます。
こう書いてみると工数がかからず、非常に簡単に24時間応答のチャットボットを作成できるので魅力的に聞こえるのですが、前項の「ChatGPT による回答文章の作成 - エクスプラザ高橋の見解」でも述べた通り、生成AIによる文章生成はそれっぽいことを言う機構です。いくらマニュアルを読み込ませておいても、100%言ってほしいことを言えるようにするのはさまざまな理由で難しいでしょう。
ゆえに、現段階ではルールベース型のチャットボットを前提に、事前に質問と回答をセットするうえで、その質問と回答自体を生成AIで作成することで効率化を図ることや、回答自体は生成AIに作らせず、その手前の中間処理において利用する(お客様が入力した文章から、商品名を抽出するなど)ことがよくある活用方法です。Zendesk AIも、このあたりの生成AIの得意不得意を前提に構築されているはずです。
Eコマースのバリューチェーンにおける、生成AI活用の現状 - フルフィルメント

Meet Sidekick:Our AI-powered assistant for merchants
vol.1の「販売戦略立案編」でも紹介したShopify Sidekickですが、フルフィルメントの領域でも大きく寄与するでしょう。
販売AIアシスタントとして包括的に機能するので、今後としては
「商品Aの在庫を10追加しておいて」
「商品Cが今日中に売れなかったら販売停止にしておいて」
「発送準備が必要な商品を一覧化して」
といったようなフルフィルメント業務を会話型のチャットボットや、音声によってやりとりできるようになることが期待されます。
■ エクスプラザ高橋の見解
上記では在庫の追加や確認など、シンプルな指示出しを例に挙げましたが、「在庫を元に会話できる」というのは、さまざまな活用・応用が考えられるはずです。たとえば弊社では、在庫状況を元に、顧客におすすめできそうな商品の組み合わせを提案するようなAIアシスタントを構築するようなプロジェクトがあったりします。これはつまり、在庫が確認できるだけでなく、AIが在庫を俯瞰し、顧客に合った商品を提案できるという意味では、業務効率化だけでなく、売上向上にも寄与できる可能性があるということです。
AIアシスタント的な位置づけは、Eコマースに限らない範囲で言えば、Microsoft の Copilot や、Apple の Apple Intelligence など、仕事や個人ベースの効率化の中で既に当たり前になりつつあります。これの在庫管理をはじめとする、Eコマースにおける販売アシスタントも、Shopify Sidekick しかり続々と出てくるでしょうし、既に使えるCopilotなどをいち早くお試しされている方であれば、Eコマースにおいてはどのように活用できそうか?今後どうなりそうか?というところも、細かい具体まで見えてくると思います。まだ試されていない方はぜひお試しください!
おわりに
いかがでしたでしょうか?バリューチェーンにおける生成AI活用最終回として、カスタマーサポート領域における文章作成、チャットボット、そしてフルフィルメント領域におけるAIアシスタントという幅広い内容について紹介させていただきました。
今後もEコマース領域における生成AI活用について寄稿させていただければと思っているので、お楽しみに!
■ 株式会社エクスプラザ
https://explaza.jp
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