
2024年2月14日に、株式会社ライフェックス主催のセミナー「LINEデータ活用の極意を学ぶ 顧客理解から地方自治体の成功事例」が開催され、同社の代表取締役 工藤 一朗氏と株式会社駅探のPMP本部広告事業部長 鎌田雅道氏が登壇しました。
駅探社は、乗換案内サービスをはじめ、地域の事業者のサービスと生活者のニーズを最適に結びつける「地域マーケティングプラ ットフォーム」を展開、そのなかでLINE公式アカウントの連携ツール(LIneON)を使った支援が事業の柱のひとつとなっています。本セミナーでは、両社が取り組んでいるLINEデータの活用法が解説され、あわせて両社の協働プロダクト「LIneON」が紹介されました。この記事では、セミナーのハイライトをまとめてご紹介します。
【登壇者】
鎌田 雅道さん
株式会社駅探(えきたん)
PMP本部 広告事業部長
工藤 一朗さん
株式会社ライフェックス
代表取締役
この記事の目次
LINE公式アカウントを使ったマーケティングが注目される理由は?

①高い普及率
鎌田さん:LINEは、今や多くの人々の生活になくてはならないツールですね。国内利用者数は約9,500万人(2023年6月末時点)と他のSNSと大きく差をつけています。しかも幅広い世代に普及しているので、多様なターゲット層にリーチすることが可能になっています
工藤さん:生活インフラとして役割を確立したLINEでは、近年は企業アカウントも増えています。これは「③CRMの強化=ファン化」にもつながりますね。LINEは特にエンゲージメント率とリピート率が高いことで知られていますので、企業はこれを活用して顧客との関係を継続的に深めていくことができます。
鎌田さん:企業の公式アカウントは現在40万近くになっています。他のSNSと比較すると、LINEは双方向でのやり取りに秀でており、CRM文脈ではメジャーです。
工藤さん:各SNSに良し悪しがあるので、役割・目的に応じて設定すると良いでしょう。LINEは、双方向のインタラクティブなツールとして唯一無二と言えます。
②タイムリーな情報配信
工藤さん:LINEで発信した情報はプッシュ通知により、ユーザーの生活のなかでも気づいてもらいやすいです。また、反応を計測できるので、目に見える形で効果を把握できます。
鎌田さん:もちろん従来主流だったメールでの案内は今でも有効です。ただ、タイムリーな情報配信で開封してもらえる点で、LINEのほうが開封率、即時性に優れています。ユーザー目線で考えると、通知の未読がたまると見てしまうという気持ちの部分をくすぐり、埋もれることも極力減らし配信できます。
工藤さん:従来、データベースにおいては、氏名・電話番号・住所・メールアドレスが主たるものでした。しかし近年、SNSのIDの価値が上がっています。LINEをメールと比較すると、コンタクト率においてLINEのほうが3倍以上優れているというデータもあり、お客様とのコミュニケーションはLINEへのシフトが進んでいます。
③CRMの強化=ファン化
工藤さん:「①高い普及率」と「②タイムリーな情報配信」がつながるのが「③CRMの強化=ファン化」です。LINEは、ユーザーにとってあるべきプラットフォームで、自然な形でのコミュニケーションができます。これにより、ユーザーに対してCRMの強化=ファン化できることが、従来のツールと違うところです。
鎌田さん:事業者の視点から見ると、LINEを用いて購入や申込みといったコンバージョン(CV)に至る各ステップで効果的にコミュニケーションを行うことができ、これがLINEの大きな強みです。こうした一貫したコミュニケーションは顧客との関係強化に寄与し、CRMへ結びついていますね。
友だち登録をしてもらった情報からセグメント配信をすることができます。CVが発生したときは購入したものによってメッセージを変えるなど、ユーザーの行動に合わせたシナリオでコミュニケーションを行うことができるのです。
工藤さん:LINEを使った顧客コミュニケーションはもはやスタンダードです。従来の電話やDM、メールも含めたマルチチャネルでのコミュニケーション戦略を進めるなかで、LINEでしかタッチポイントをとれないユーザーは増えており、数字にも表れています。LINEの双方向のポテンシャルを活かしたシナリオ設計は、工夫のしがいがある面白いところです。
鎌田さん:今後大事になってくるのが、ユーザーとの関係性となるデータベースを何で築くかということです。LINEを使う場合は、LINE IDをうまく起点としたコミュニケーションが大事です。
工藤さん:クライアントを支援するなかで、データベースとして電話番号やメールアドレスは持っている状態で、改めてLINE IDを獲得する施策が増えています。どのタイミングでLINE IDを取得するかも大事な要素です。
鎌田さん:郵送などオフラインでのやり取りをオンラインに統合することで、よりダイナミックな施策ができ、O2O施策も進めることができます。その際、共通のIDとしてLINE IDが注目されています。
工藤さん:自分たちのお客様の属性に合わせたチャネルの選定が大事です。シニア寄りの客層なら電話やDMはいまだに喜ばれるツールですが、10~20代の客層ならXやTikTokなども有意義なコミュ二ケーションコンテンツと言えます。ターゲットの属性を踏まえてコミュニケーションチャネルの設計をしましょう。
公式LINEの登録数の増やし方とは?

①友だち追加の特典
鎌田さん:ユーザーにベネフィットを付与する方法は定石です。ただし、やり方を間違えると特典を獲得してそれっきりという関係性になりかねません。特典の取り扱いをどう考えるかが非常に大事です。
まずは自社のサービス・商品のクーポンを付与して、自社ならではの体験とセットで、いくつかのステップを考えます。
事例)伊香保温泉

鎌田さん:伊香保温泉の事例では、ユーザーにとっての体験のメリットを提示して、友だち登録により来店のインセンティブを働かせています。
②店頭などで促進
鎌田さん:友だちになることでイベントに参加する権利を獲得できる手法は、店頭への来店、入館を目的とする場合によく使われます。
③イベントやキャンペーン
事例)ふるさと納税サイト

鎌田さん:ふるさと納税サイトの事例では、友だち登録により購入後の配送状況の案内がチャットボットで行われるなど、ユーザーとのコミュ二ケーション接点を増やすキャンペーンを行っています。
事例)仙台市

鎌田さん:仙台市の事例は、地元の名産品やイベントなど、その地域ならではの特典との組み合わせが考えられているキャンペーンです。
④同梱物にチラシ
鎌田さん:同梱物のQRコードから友だち登録を推進する手法です。ユーザー側からは同一のQRコードに見えますが、事業者側はどのQRコードで登録されたかを管理できるので、ユーザーの流入経路を把握でき、友だち登録後の施策にも役立ちます。
工藤さん:友だちになってほしい側の気持ちと、友だちになる側の気持ちの一致が、大事な要素です。インセンティブは、お互いの目的が一致しやすくわかりやすい手法ですが、乱発するとブランド毀損になりかねません。入口はクーポンで良いのですが、目的がそれだけになると、少しずつ疲弊してしまいます。その後どういうコンテンツを提供できるかが求められています。
取得したLINE IDの活用の仕方について

工藤さん:LINEでは、アンケートキャンペーンなどで回答に応じたお客様の情報を、LINEアカウントに紐づけてデータ化することが可能です。
年齢・性別・地域などの属性以外にも、趣味嗜好などさまざまな情報を取得、蓄積できます。そのデータをどう使うかが各企業の技量の活かしどころです。まずは、知りたい属性、情報を掘り下げて、シナリオ設計に組み込む必要があります。そこでどんな情報を保持するかが、後々の施策にかかってきます。
LINEのメッセージ配信は従量課金制なので、やみくもに一斉配信すると費用対効果が悪くなる一方です。しかるべきタイミングでしかるべき人にしかるべきコンテンツをあてていくことがLINE活用のポイントです。
弊社では、カスタマージャーニーマップを活用して、お客様のどういう行動のタイミングでタッチポイントを作り、どのような思考感情をクリアしていくのか、シナリオ設計のベースにしています。タッチポイントは多すぎると敬遠され、少なすぎると埋もれてしまいます。各サービスに合わせた適切な量を設計することが重要です。
LIneON(LINE連携ツール)を導入すると何ができる?

鎌田さん:既存のマネジメントツール上での所定のセグメントでの配信では、年齢・性別・住所はわかっても趣味嗜好までは情報を得られず、異なるニーズの方々に同じ内容のメッセージを送ってしまうことになります。
そういった悩みを解決するのが、LIneONです。このツールを使うことで、セグメントごとの配信で、届けたい情報を届けたいタイミングで届けたい人に届けることができ、結果的にCRMファン化につながる施策を打てます。
LIneONで一番使われている機能が、お友だちがどういう人でどんなコミュニケーションをとったら良いのかを作る、顧客カルテです。顧客カルテを作るためには、お客様に何かしらのアクションを行う必要があります。そこでお客様の趣味嗜好を聞くことができるのがアンケート機能です。
アンケートで得た情報を顧客カルテに統合させて、セグメント機能を使うことで、お客様に合わせたメッセージ配信を行うことができます。
公式LINEの活用事例

鎌田さん:弊社の支援では、自治体や観光協会にクライアントが多くなっています。自治体においてもいろいろなニーズがあります。たとえば、ふるさと納税の利用促進、観光案内、移住の募集、市の情報のポータル化など。それらを網羅的に解決できるのがLINEとなっているのです。
工藤さん:リッチメニューの出し分けは、ECや通販の事業にも重宝されています。たとえば、定期宅配利用中の方、これから購入を検討する方など顧客のフェーズによってメニューを出し分けることができ、有意義な情報を届けられます。
観光・地方自治体におけるブランドマーケティング

工藤さん:CRM支援においては、ただ単にLINEの連携ツールを提供するのではなく、課題解決のためのパートナーとして、伴走しながら課題をともに乗り越えることを意識しています。ツールを活用して自治体様、企業様とそのお客様のハブになり、コミュニケーション設計全体を通じて自治体様、企業様それぞれの魅力を伝播し、お客様に感じていただくことが我々の役割です。
そこで大切にしているキーワードが「ブランド」という考え方です。企業様、自治体様に対する約束「ブランドプロミス」を軸に、メッセージ領域と心理的な領域の2軸で設計を行い、一番大切なブランド体験をどう提供していくか考えます。
LINEはその領域の一要素として有意義なツールです。ただLINEを使ってくださいということではなく、ブランドの価値観を可視化、言語化したものを戦略におとし、LINEをはじめとした各ツールの設計におとすことでより良いコミュ二ケーションを作れます。
LINEデータの活用注意点

質疑応答
――どのようにアンケートを行えば自然な形で情報を取得できますか?
工藤さん:お客様に「なんでこんなことを訊かれるの?」と思われないことが重要です。たとえば音楽配信サービスのSpotifyでは、登録時に好きな楽曲やアーティストを回答しますが、ユーザーは回答することで有益なコンテンツを得られるだろうなと考えます。
お客様にとって必要な情報、有益な情報が得られるというインサイトを設計することがポイントです。提供する商品・サービスごとのテクニックがあるので、別途ご相談ください。
鎌田さん:ユーザー導線のなかでどうアンケートを入れるのかというひとつの例として、たとえば靴を販売しているある企業様では、商品の同梱物にQRコードを入れておいて、そこからアンケートに回答できるようにしています。これにより、購入後の高いモチベーションのなかで答えてもらうことができます。また、何を購入したのかわかっているので、自然なコミュニケーションになります。
セミナーに参加してみて
本セミナーでは、事業者がLINEの友だち登録を促す手法、そしてLIneONに活用方法について具体的に紹介されており、LINE活用のイメージをつかみやすい内容となっています。
LINEでのコミュニケーションは、EC事業者にとっても重要性が増しています。メールなど従来のツールではなかなかアプローチできないユーザーがいるなど、コミュニケーション手段の変化に対応するために、LINE活用は多くのEC事業者に必要と言えそうです。
本セミナーの内容を踏まえ、自社のターゲットを明確にして、そのユーザーについてどのような情報を取得したいのか、その情報を基にどのような施策を行いたいのかを掘り下げていきましょう。
そのなかで、LIneONのようなツールの利用も検討することで、打ちたい施策が実現しやすくなるはずです。
LINE連携ツール「LIneON(ラインオン)」
https://lineon.jp/
株式会社ライフェックス
https://lifex-group.co.jp/
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