
皆さんこんにちは。コマースにまつわるあれこれを紹介するPodcast「コマースわいわいワイド」を配信している井谷です。本コラムでは、これまでの配信で好評だったテーマをダイジェストでご紹介していきます。
今回は、サイト内検索について。大事なのはわかっているけれど、改善しようにも開発が必要だったりして、なかなか手をつけられない部分でもありますよね。
ただ、検索キーワードを分析するだけでも、ビジネスに役立つさまざまなヒントが隠されています。どのような視点でキーワードと向き合えば良いのか、そのあたりを深掘りしていきたいと思います。
この記事の目次
サイト内検索が大事な理由
そもそも、サイト内検索ってどの程度大事なのでしょうか?Googleは2021年11月に、サイト内検索に関するとある調査結果を公開しています。
調査結果によると、米国の消費者の4人中3人がECサイトで商品を検索しても見つからない場合は購買をやめて、48%が他の場所で商品を購入するとのことです。
また、回答者の52%が、見つからない商品が1つ以上ある場合に、カートのすべてを放棄し、他のサイトに行くとも回答しています。
自身の行動に照らし合わせてみても、ECサイトにおいて、商品検索でうまく引っかからなかった場合、どんどん購買意欲が落ちていく…というのは結構あるあるなのではないでしょうか。
参照元:調査結果: 検索の放棄はブランド ロイヤリティに永続的に影響(Google Cloud)
大事…だけど改善が進まない理由
大事なのはわかっているけれど、改修が進まない理由として、主に環境面、技術面、費用面などの要因があります。
環境面
- 自社ECの場合、検索はカートの機能に依存している場合が多い
- 「カートの標準機能を改善する」という発想は起きにくい
- カートの検索機能の品質を図る機会や指標がない(自分で使ってみて不便さを実感するしかない)
- 点数や規模が大きくならないと不便さを実感しにくい(機会)
- どうなったら検索が改善したといえるのかの基準がわからない(指標)
- カートは機会損失なのでそもそも気づきにくい
- モールだと自社EC以上にどうしようもない(データの正規化が困難、表記ゆれ幅が大きい、SKU管理の不徹底による在庫問題など、障壁が大きい)
技術面
- カート側に検索品質をアピールするインセンティブが薄い(マーチャントが新規カート選定の際に検索を重要視するケースが少ない。手数料とか簡便さに視点がいっている)
- 結果的に技術に多大な投資をするインセンティブが少ない
- マーチャントが大きくならないと課題に気づけない
- 高度な自然言語処理や形態素解析、機械学習による類推やレコメンド機能などが必要で、カート側だと投資コストに対してメリットが少ない(ように見えてしまう)
→だから検索を売上に転換できるリテールメディアが出てくる - 検索のレイアウトやデザイン(ボタンかボックスか、ATFかBTFか、など)も重要だが、ストアのデザインやテーマ、ソースコードに依存するので地味に対応がむずかしい
- データ量次第ではサーバリソースを食うのでレスポンスが遅くなるリスクがあり自前で実装しにくい
費用面
- カートにとっては多大な投資になるのに対して、メリットが少ない
- モールにとっては自前が必須でメリットは大きいが、データの正規化ができていないので品質が上がりにくい
- 自社ECはカート機能が無料で使えるので乗り換えにはコストよりも売上や利益が上がるような見積もりが必要だが、その調査や予測はむずかしい
→だからコストではなく売上になるリテールメディアが選ばれやすい - 必要なECサイトほど規模が大きいので、結果的にコストも高い
上記の理由から、大切なのはわかるが手が回らない、優先順位が後回しになることは致し方ない部分もあると思います。
改善以外の活用方法に目を向けてみよう
システム的な改善ができないとして、では何もせずに放置していていいのかと言われると、そんなことはありません。サイト内検索を使ってユーザーが検索するキーワードは、そのまま「ユーザーのニーズ」と「ユーザーの声」に直結します。キーワードには、ビジネスを改善するヒントがたくさん詰まっているのです。
では、具体的にどのような視点でキーワードを見ていけばよいのでしょうか。コマースわいわいワイドにて、サイト内検索に造詣の深い川邉雄司さんにインタビューした内容を元に整理してみました。
キーワードの傾向を把握するための軸
まずはキーワードを上位100件分くらいCSVなどに出力して、以下の軸を参考にしながら分類してみましょう。
①揺れ揺らぎ/類語
ゲル⇔ジェルなどの揺らぎ言葉と、ジーンズ⇔デニムなどの類語です。これらがきちんと網羅されているかを確認します
②型番
ユーザー側は型番で検索しているが、企業側は製品名で検索されることを想定していてミスマッチを起こすケースです。または、ユーザー側はハイフンあるなしを気にしていなかったり、大文字小文字の区別なく検索していたり、前方一致でヒットさせたかったりするが、企業側は完全一致を想定していてうまくいかない、といったケースもあります
③サポート系
返品やカタログ請求などの質問を検索窓で行うユーザーも一定数存在します。どんなことに疑問を持っているのか、何が不満や懸念なのかがダイレクトにわかるので、サービス改善にまるっと役立てることができます
④造語
例えば「オフィスニット」「UVパーカー」のような、ユーザーが作った造語で検索されていることもあります。そんな商品はなくとも、言葉のニュアンスでどんなものを欲しているのかはなんとなく察しがつくと思います。今後取り扱う商品の選定などにも役立てることができるキーワードです
どんなページが検索されているのかを把握するための軸
検索窓経由でよくヒットするページは、ユーザーニーズが高いページといえます。ページ改善を行う際の優先度付けに活用することができます。また、どのページにも検索窓がついているタイプのサイトの場合、検索のスタートページはどこなのかにも注目してみましょう。
スタートページ率が高いページというのは、ユーザーが迷いやすいページということ。ユーザー目線では袋小路になっていたり、該当ページでなにか迷いやすい内容が書かれていたりすることがあります。
例えば、検索スタートページ率が高いページがカートページだった場合で、◯◯円以上で送料無料などのキャンペーンを行っていた場合、◯◯円に満たないから買い足すために検索窓を使ったのかもしれない、と仮説を立てることができます。
その場合、カートページに「送料無料にするためのちょい足し買いにおすすめの商品」のような形でレコメンドを設置すれば、意図した商品の購入を促すことができるかもしれません。というように、サイト設計を考える上でも検索スタートページを分析する意義はあります。
サイト内検索データはユーザーの行動データの塊
Google アナリティクスを使った流入やサイト内行動分析や、Googleサーチコンソールを使った流入キーワード分析は、行っているマーケターは多いと思います。それと同様に、サイト内でのユーザーニーズを把握することも非常に重要で、ページ改善や商品企画、ヘルプやサポートページの改善などさまざまなシーンに活用できる貴重なデータです。
サイト内検索データを活用しない手はない!ということで、ぜひ一度、ご自身のサイトの検索データを確認してみてはいかがでしょうか。
【コマースわいわいワイド】
https://waiwaiwide.com/
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