
皆さんこんにちは。コマースにまつわるあれこれを紹介するPodcast「コマースわいわいワイド」を配信している井谷です。本コラムでは、これまでの配信で好評だったテーマをダイジェストでご紹介していきます。
今回は、過去の配信の中でも運営側の私たちが調べていて面白かった「ニッチ系商材だけどECへの熱量がスゴイ企業」のECサイト研究シリーズを2例まとめてお届けします。
この記事の目次
CASE1 除雪機を売る工夫が満載「ハイガー」
除雪機というと雪国の人以外はなじみが薄いかもしれませんが、以下の動画のようなものです。
始めに紹介するのは、ドイツのPOWERWORKS社の除雪機の独占代理店であるハイガーです。除雪機以外にも農業機械やガーデニング、トレーニング機器など骨太な製品を扱っている、群馬県に本社を置く企業です。
ハイガーのすごいポイント1:自社ECとモールの使い分け
ハイガーでは自社ECとモールのどちらでも販売していますが、自社ECのほうがSKU数が多く、セット割引の割引率が高くなるように設定されています。また、ニーズの高そうな型番は自社ECでしか取り扱っておらず、検索などで自然と自社ECに誘導できるようになっているのです。

ハイガーのすごいポイント2:メディア運用
ハイガーは、X(旧:Twitter)、Instagram、Facebook、LINE、YouTubeなど主要どころのSNSをすべて網羅しています。動画のディスクリプションもしっかり書かれていて、YouTube SEO対策もなされています。
LINEのコメントや返信もほぼパーフェクトで、カスタマーサクセスにSNSを取り入れる昨今のトレンドも反映されているのです。

広告ではショッピング広告に出稿しており、検索すればAamzonより上位に表示される状態で、価格イメージもつきやすくなっています。
ハイガーのすごいポイント3:口コミの仕掛けがすごい
ハイガーの取り組みで素晴らしいなと思ったのは、口コミ(しかもポジティブな口コミ)を増やすための仕掛けをしっかりと設計されている点です。例えば除雪機だと、口コミを投稿すれば3か月間の延長保証がつきます。「それのどこがスゴイ仕掛けなの?」と思うかもしれないのですが、例えば除雪機は通常降雪シーズンの手前か最中に購入を検討するので、通常の1年保証だと翌年の冬にいざ使う頃には保障切れになっている可能性があり、ユーザーからすると少し不安に感じてしまいます。口コミを投稿することで3か月間保証が延長されるので、その点で安心できるため「ならば口コミを書こう」というモチベーションに繋がりやすいのです。
また、安易な値引きではなく保証の延長なので、ユーザーからしてみたら有難い気持ちになります。となると、口コミもポジティブな感情で記入する確率が高くなります。ちなみに、延長保証が可能なのは自社ECだけの特典ですので、延長保証をつけたとしても結果的には利益率を上げることになっているというのも理にかなった点だと思いました。
CASE2 トラックパーツECのSNS使い分けがスゴイ「貨物堂」
次に紹介するのは、トラックパーツのECサイトを運営する貨物堂です。除雪機以上に、一般人には馴染みのない業界かもしれません(笑)。それゆえに、トラックパーツを扱うEC事業者の数も少なく、レガシーなサイトも多い中で、貨物堂は新しいものや施策を積極的に取り入れる姿勢が素晴らしいサイトです。なお、本拠地は岡山県で、倉敷市と三原市に実店舗を2店舗お持ちです(2023年時点)。

貨物堂のすごいポイント1:自社ECと他社サービスをしっかり使い分け
ハイガー同様、貨物堂も楽天市場やYahoo!ショッピングに出品していますが、自社ECでの購入を促す仕掛けをされています。例えば自店舗限定&曜日限定のセールや、自店舗購入で貯まるポイント施策も行われています。

また、リアル店舗も持っていらっしゃるので、EC店舗との差別化を行うために、土日は店舗での購入限定でポイント5倍キャンペーンを行っており、ポイント制度をうまく活用した来店促進をされているのです。
貨物堂のすごいポイント2:SNSは媒体特性に合わせて使い分け
SNSはYouTube、LINE、Facebook、Instagram、Twitterを運用。同一担当者が複数SNSを運用していると、SNSごとの特性を考えずに同じような内容の投稿を行うことはあるある現象だと思いますが、貨物堂はしっかりと使い分けています(担当者が一人かどうかは知りませんが…)。
まず、LINE公式アカウントは、セール情報などのリアルタイム訴求系や、デフォルト機能の「クーポン機能」を活用する場として利用。友だち登録でノベルティ(エコバッグ)がもらえるのも、トラック運転手というメイン顧客のニーズを汲んだノベルティチョイスなのではないかと睨んでいます(長距離運転手さんって銭湯利用が多そうなので、エコバッグが活躍する機会が多そうじゃないですか?)。

動画系も、媒体に合わせてしっかりと使い分けされています。YouTubeのショート動画では、エアーホーンなどの音を聞き分ける系、電飾などの光の具合がわかるものを投稿し、Instagramのリール動画では、どちらかというとブツではなくデコトラの全景などの”映え”を狙えるものを中心に投稿されています。


貨物堂のすごいポイント3:コンテンツSEOも実施
貨物堂は記事コンテンツも豊富に配信しており、コンテンツSEO対策もなされている様子でした。他業界では当然のごとく行われている施策ですが、トラックパーツEC界隈では私の調べた限り貨物堂以外は記事配信をしているサイトはなさそうでした(「トラック 休憩場所」みたいなそれっぽい記事が引っかかりそうなキーワードで検索すると、物流系ニュースサイトや法律系の記事がよく出てきました)。
内容は「サンバイザーのおすすめ商品」のような商品まとめ記事から、「雪道の注意点と走行時の事故防止対策」のようなドライバー向けTIPS記事までさまざまでした。

ニッチ市場でも、競合がやっていなくても、先進的なものを取り入れるという姿勢を応援したい
ここに書いたような施策は、競合ひしめく業界では当たり前の施策ばかりかもしれません。ただ、競合他社が他に誰もこういったことをやっていない市場において、かつ、恐らくECやマーケティングの専任者もいないであろう環境で、WebマーケティングやECで活用できそうなことをどんどん情報収集して実践されていらっしゃるという姿勢がすごいと思いますし、素直に「応援したい!」です。
あと、調査者側の視点ではありますが、「この業界ではこんな売り方をするのね~」というのが、調べていて単純に面白いし参考になりました。今後も、面白くてこだわったECサイトを見つけたら、コマースわいわいワイドで取り上げていきたいと思います!
【コマースわいわいワイド】
https://waiwaiwide.com/
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