
EC事業を安定して成長させるためには、新規顧客の獲得はもちろん、一度購入してくれた顧客と長く良好な関係を築くことが重要です。そのために欠かせないのが、CRMです。
本記事では、EC事業者がおさえておきたいCRMの基礎知識を紹介するとともに、CRMに役立つ代表的なツールを紹介します。
CRMに取り組もうとしている方はもちろん、新規顧客獲得のコストが負担になっている、集客はできているはずなのに収益が拡大しない、売上に波があるといった課題のあるEC事業者の方も、ぜひ参考にしてください。
CRMとは?
CRMは「Customer Relationship Management」の略です。直訳すると「顧客との関係を管理すること」といった意味になります。
もう少し説明を付け加えると、CRMでは顧客のデータを活用して、「既存顧客との良好な関係の育成・維持」を行います。新規顧客をリピートにつなげ、顧客満足度・顧客ロイヤリティを向上させていくのがCRMです。これにより、最終的には売上・収益の拡大を目指します。
なお、CRMを成功させるためには、顧客のさまざまなデータを活用する必要があるため、CRMツールを導入するのが一般的です。
なぜCRMが必要なのか?
新規顧客獲得にかかるコストは、年々上昇しています。一般的に、新規顧客獲得にかかるコストは、既存顧客維持にかかるコストの5倍ともいわれます。
それだけのコストをかけて獲得した顧客が、1回きりの購入で終わってしまうと、売上・収益の拡大はなかなか難しいでしょう。あるいは、2回目の購入につながったとしても、長い関係にはならずに離れていってしまうことも、大きな損失です。
安定したEC事業の成長には、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客の維持が必須といえます。それを行うのが、CRMなのです。
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CRMを成功するポイント・失敗する理由とは?
CRMを成功させるためには、次の点をおさえておきましょう。
自社にとって最適なCRMツールを導入する
CRMを成功するための大前提となるポイントが、自社の課題や体制に合ったCRMツールを導入することです。やりたい施策に対して機能に不足のあるツールや、逆に多機能過ぎて担当者が使いこなせないツールでは、CRMの成功は難しいでしょう。
失敗しないCRMツールの選び方を、本記事の後半で解説するので参考にしてください。
「ノウハウ」「時間」「予算」の確保
ツール選びの他にCRMを成功させるためのポイントとして、「ノウハウ」「時間」「予算」の確保があります。
CRMにおいて、顧客満足度・顧客ロイヤリティを向上させ、顧客と良好な関係を維持し続けるには、顧客一人ひとりに対して、どのようなタイミング・頻度で、どのような内容のアプローチをするかという、シナリオが重要です。
成果につながるシナリオを構築するにはノウハウが必要ですし、シナリオを構築して実装するまでには時間も予算もかかります。また、施策の効果をもとに、シナリオを常にチューニングしていく必要もあります。
しかし、多くのEC事業者にとって、CRM成功のために十分な「ノウハウ」「時間」「予算」を確保することは簡単なことではないでしょう。
そこで役立てたいのが、CRMツールにセットされている標準のシナリオです。ツールによる違いはありますが、CRMツールでは、よく利用される効果的なシナリオや、定番のシナリオの設定があらかじめ準備されている場合があります。
EC向けのCRMツールであれば、EC事業者が使いやすいシナリオ設定がそろっています。まずはそういった標準のシナリオから始めることで、ノウハウがなくともすぐに施策に着手でき、予算も抑えることができます。さらに、データやノウハウが蓄積されることで、より自社に最適化させた効果的な施策を実施しやすくなるはずです。
以下ページにて無料配布中のホワイトペーパーで、CRMの成功ポイントと失敗の理由について、さらに詳しい解説を見ることができます。
CRMの成功事例
CRMで具体的にどのような施策を行い、どのような効果が期待できるのか、いくつかの成功事例を紹介します。
CRMの鉄板シナリオ
CRMにおいて鉄板といえるシナリオとして、以下の3つがあげられます。いずれも、CRMツールを使うことで自動配信が可能となります。
カゴ落ちメール
商品をカゴ(カート)に入れたまま、購入に至らずサイトを離脱したユーザーに送るメール。カゴに入ったままの商品があることをリマインドします。
通常のメールに比べて開封率・購入率ともに高い、非常に効果的なシナリオで、CRMを行うなら必ず実施したい施策といえます。同時に、カゴ落ちを減らす改善も行いましょう。
閲覧リターゲティングメール
既存顧客のECサイトにおける閲覧データをもとに配信するメール。ECサイトでユーザーが閲覧した商品、閲覧した回数・時間などのデータから、そのユーザーの興味関心が高そうな商品を紹介し、購入を促します。
商品点数が多く、回遊率の高いECサイトほど効果的なシナリオです。
レコメンドメール
既存顧客の購買データや行動データをもとに、ユーザーの直近の興味関心やニーズを推測し、それに合わせたおすすめ商品を紹介するメール。高精度な分析が必要で、AIを活用するCRMツールもあります。
以下ページにて無料配布中のホワイトペーパーで、CRMの鉄板シナリオについて、さらに詳しい解説を見ることができます。
業種・業態別のCRM事例
前述したCRMの鉄板シナリオに加えて、次のような施策が効果的な場合もあります。
化粧品通販
化粧品のように日常的に消費して定期的な購入ニーズがあり、商品ラインナップもそれなりにある商品の場合、ポイントの仕組みが継続率の向上に効果的です。
ポイントの仕組みを導入しているECサイトでは、CRMツールを活用して、ユーザーごとの保有ポイントと有効期限をお知らせすることで、購入のきっかけを作れる可能性があります。また、一定期間購入をしていない休眠顧客に対して、残りの有効期限が短いポイントがあることを知らせるメールを送ることで、休眠顧客の掘り起こしができるかもしれません。
ポイントについてのお知らせでは、ユーザーの購買データや行動データなどをもとに、おすすめ商品も一緒に紹介するとより効果的です。
以下ページにて無料配布中のホワイトペーパーで、化粧品通販企業のCRM施策について、より詳しい事例を見ることができます。
単品リピート通販
単品リピート通販のCRMにおけるポイントは、「初回購入を定期購入につなげること」と、「定期購入を解約されないこと」があげられます。
初回購入を定期購入につなげるためには、商品を使いつづけるメリット、定期購入をすることによるメリットの訴求やクーポンなどが効果的です。ユーザーの状況に合わせて、シナリオ分岐でステップメールを送ります。定期購入に至らなかったユーザーに対しては、単品セット購入の訴求などで、定期購入ユーザーとは別のシナリオでアプローチを続けます。
定期購入を継続してもらうためには、たとえば節目となる購入回数ごとに特典やクーポンを配布したり、ポイントの仕組みを活用したり、続けることのメリットがあることが大切です。また、アンケートを実施して、その回答状況や回答内容に応じたシナリオを実施することで、解約しそうなユーザーに向けた施策を早い段階で行うことができます。
失敗しないCRMツールの選び方
CRMツールの選定では、次の点をおさえましょう。
CRMツール導入の目的を明確にする
CRMツールの選定にあたっては、まず、CRMツール導入の目的を明確にします。具体的には、CRMツールの導入により、どのような施策を実施して、どんな課題を解決したいのかを明確にします。そして、それを実現できる機能を持つツールを選定しましょう。
ぼんやりとした課題はあるものの、どのような施策を行ったら良いかがわからない場合は、自社のカートシステムや基幹システムと連携可能で、CRMに必要となる基本的な指標を分析できる機能がそろっているツールを選ぶと良いでしょう。
そういったツールでまずは分析を行うことで、課題と施策を明確にできます。また、本記事で紹介したような鉄板シナリオがしっかりと備えているかどうかも、チェックポイントのひとつとなります。
導入だけでなく運用も含めて年間で必要なコストを算出する
CRMはツールを導入してすぐに効果が出るものではありません。はじめは鉄板シナリオから始めて、施策の実施と効果検証、自社の状況に合わせた改善を重ねていくことで、少しずつ効果が上がっていきます。
そのため、導入だけでなくその後の運用にかかる費用や人的リソース、時間なども含めて、年間で必要なコストを算出しておくことをおすすめします。これにより、運用途中で人的リソースや予算が不足する事態を防げるでしょう。また、かかったコストに見合う効果があったのか、費用対効果も考えやすくなります。
目標とする成果を明確にする
CRMツールを導入することで達成したい具体的な数値を設定しましょう。よく指標とされるものの例をあげると、リピート率やLTV、解約率などがあります。CRMツールを導入することで解決したい課題に関連する数値を設定することが必要です。
また、その数値を達成することで、売上や利益にどういった影響があるのかも算出します。ツール導入前に具体的な数値を設定するのが難しい場合は、ツール導入後に分析を行い、設定しましょう。
これにより、CRMツール導入・運用にかかったコストに対して、得られた成果が見合っているのかを判断することができます。多くの企業がCRMツールを導入する前に、どの程度の効果が期待できるのか概算を立てて、稟議を通すことが必要かもしれません。まずはツールの利用料に対して、利益を残すためにどの程度効果を出さないといけないのか試算してみることから始めましょう。
以下ページにて無料配布中のホワイトペーパーで、CRMツール導入の際にチェックすべきポイントについて、より詳しい解説を見ることができます。
代表的なCRMツール
CRMツールの選び方を押さえた上で、ECサイトでの導入実績の多い、代表的なCRMツールを紹介します。自社に合うCRMツールを検討する際の参考にしてください。
アクションリンク

アクションリンクは、株式会社ファブリカコミュニケーションズが提供する、ECサイト特化型のCRMツールです。ECサイトでよく利用される多くのカートシステムと連携可能で、EC事業者が使いやすい設計となっています。
レコメンドメールやかご落ちメールなど、売上向上に効果的な「鉄板シナリオ」がプリセットされており、導入後すぐに自動配信メールを利用できます。また、高精度なレコメンドメールをメール/LINE/SMSでリアルタイムに配信可能で、商品数の多いECサイトでも使いやすい機能設計となっているのが特徴です。
複雑な分析もこのツールで一括管理でき、メールの開封率、CVR、売上など、必要な条件を保存しておけばクリックひとつですぐにデータを確認できます。工数を削減しつつ、リピート売上を増やすことのできるCRMツールです。
Dotdigital(ドットデジタル)

Dotdigital(ドットデジタル)は、ロンドンにあるdotdigital社が提供している、ノーコード・オールインワンのマーケティングオートメーションを実現するCXDP(※)です。
CXDPとは「Customer Experience and Data Platform」の略です。直訳すると、顧客体験に関するデータを一括管理できるプラットフォームといった意味を持ち、CRMツールと同様のデータを扱います。
Dotdigitalは、マルチチャネル、マルチストア、多通貨、多言語対応で、世界4,500以上の企業をサポートしています。
AI機能を使ったパーソナライズ化によるOne to Oneマーケティングが可能で、追加コストなしでLP&アンケートやチャットなどの豊富なマーケティング機能を利用できます。また、配信チームによるサポートで、高いメールの到達率を誇ります。
▶Dotdigital(ドットデジタル)のサービス資料ページ
LTV-Lab(エルティーブイラボ)

LTV-Lab(エルティーブイラボ)は、株式会社LTV-Xが提供するECサイト向けのCRMシステムです。ECサイトでよく使われる主要なカートシステム・基幹システムと標準連携しており、初期設定に手間をかけずに簡単に利用開始できます。売上につながる施策にフォーカスして、効率的に施策を実施できる設計となっています。
LTV-Labでは、顧客へのメール配信/ステップメール配信を無制限に実施でき、1,300店舗のノウハウに基づいた標準のシナリオメールの利用や、購入商品・金額・期間などによる顧客セグメントが可能です。メール以外にも、LINE、リアルDMなどの掛け合わせができます。
また、主要な分析機能(RFM、CPM、LTV)を搭載しており、専門知識がなくとも簡単に分析ができます。企業に合わせた活用サポートもあります。
うちでのこづち

うちでのこづちは、株式会社E-Grant(イーグラント)が提供する、BtoC-ECサイト向けのツールです。BtoC-ECサイトでよく利用される多くのカートシステムや基幹システム、POSデータなどと連携でき、顧客分析からCRM施策の実施・効果検証に必要な機能を揃えた、CRM・マーケティングオートメーションツールとなっています。
うちでのこづちでは、自社顧客のCRMステータスをボタン一つでグラフ・数値化することができます。継続率・RFM・クロスセルなどの分析はもちろん、広告媒体ごとのLTVを把握することも可能です。
そして、分析で明らかにしたボトルネックに対して、マーケティング施策を行うことができます。メール・LINE・SMSなどのオンライン施策だけでなく、DM・アウトバウンドのオフライン施策にも対応しています。
その上で、CRM施策によりLTVがどれだけ改善・向上したか効果測定が可能です。改善効果が一目で把握できるので、PDCAを回しやすいのが特徴です。
まとめ:長く付き合うファンを育てよう
CRMに取り組むことは、ECサイトのファンを育てることです。せっかくご縁のあったお客様を一度きりのやり取りで終わらせず、お付き合いを長くすることができれば、ECサイト運営は安定します。
CRMの根本は、実店舗・ECともに共通するお店の基本といえるかもしれません。そして、ECサイトの場合、ECサイト上でのユーザーの行動や購買履歴など詳細なデータを取ることができるのが、CRMにおける大きな強みです。自社に合ったCRMツールでそれらのデータを活かし、効果的な施策を行っていきましょう。
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