
2022年11月10日(木)、株式会社ネットプロテクションズはEC・後払い市場の現状と、最新型の後払い決済サービスに関する発表会を実施しました。市場の状況から新たにリニューアルされた後払い決済サービス「atone」について、atoneグループの事業統括責任者である菊池さんが解説されています。本記事では発表会の内容をまとめました。
この記事の目次
国内EC市場の動向
コロナ禍でサービス系分野のEC市場が縮小した傍ら、物販系分野の市場が成長し、BtoC EC市場は着実に成長しています。加えて、EC決済サービスの市場規模予測は2025年までCAGR(年平均成長率)10%超と、今後も継続的な成長が見込まれているのです。
不正利用の拡大で求められるセキュリティ対策
市場の成長に伴い、セキュリティ対策に注目が集まっていると菊池さんは話します。2021年にはクレジットカードの不正利用被害総額は330億円を上回り、過去最高額となりました。こういった動きから、国政としてEMV 3Dセキュア導入の義務化が検討されたことは真新しいトピックといえます。
参考:EMV 3Dセキュア(3Dセキュア2.0)とは?補償対象外となる1.0とのと違いや移行を推奨する理由を解説
セキュリティに関する話題はクレジットカードだけではなく、後払い決済にも影響しています。ユーザーによる不正利用と事業者による不当販売があり、悪質な利用者に対して後払い決済を提供している企業は各社対応に追われているようです。(各社の対応は下図を参照)

商品力・ブランド力の強化が必須に
ここ数年でEC市場の事業者数が増加し、プロモーション力だけではユーザーに継続利用してもらえない時代になっているとのことです。
特商法や薬機法の改正により、不当な販売方法は淘汰されつつあります。また、自社ECサイトを取り巻く環境が整ったことなど、より商品力とブランド力が求められる時代になっているのです。
国内後払い市場の動向
EC決済サービスの市場規模がCAGR10%超という予測に対し、後払い決済サービスに焦点を当てるとCAGR15%超と、市場の伸び以上の成長が期待されています。その背景には、ユーザーからのニーズの高まりに合わせて、さまざまな特徴を持ったBNPL/後払い決済サービスが立ち上がっていることが考えられるでしょう。その数は直近3年で2倍になっているとのことです。

後払い決済のユーザー層とニーズ
後払い決済は一般にクレジットカードを保有していない層にとって利便性が高いといわれています。しかし、ネットプロテクションズによる調査によると、後払い決済を利用しているユーザーの70%がクレジットカードを保有。世帯別平均年収では400万円以上の利用者が6割を占めるなど、日本においてはクレジットカードの有無や年収に関係なく後払い決済が利用されているのです。
そんな後払い決済はクレジットカードの代替手段ではなく、資金管理やセキュリティ・利便性など「安心・安全なお買い物」のニーズを満たすために活用されていると菊池さんは話します。
具体的なニーズとして下記の6点が挙げられていました。
- 利用の度に支払え、使い過ぎ防止になる
- 支払期限内の好きなタイミングで支払える
- カード情報の漏えいや不正利用の心配がない
- 定期通販の解約がしやすい
- カード不要・事前登録不要
- 商品を見てから支払える
既存ブランドをフルリニューアルした「atone(アトネ)」
後払い決済サービスが活発に利用されることで、事業者、ユーザーの両者が持つニーズが広がりを持ち始めました。各サービスがそれぞれ機能強化を行い、差別化を進める中で、ネットプロテクションズでは既存サービスである「atone」をフルリニューアルしたと発表しています。

会員登録不要・都度払いの機能追加でさらなる「カゴ落ち防止」へ
従来の後払い決済サービスが持つ「カゴ落ち防止」の効果をさらに向上させるため、会員登録不要かつ都度払いが可能になりました。リニューアルにより会員登録不要でSMS認証のみで決済が可能に。そして支払いのタイミングに都度払いが追加されたことで、ユーザーは今までに以上に決済の自由度が高まり「カゴ落ち防止」効果が上がっています。

ID決済サービスの提供
今回注目すべき変更点として「atoneログインサービス」を準備していることが明かされました。ネットプロテクションズのアカウントを保有しているユーザーはatoneが導入されている自社ECサイトでは、新たに会員登録をせずに、ネットプロテクションズのアカウントで買い物ができます。そのとき、Amazon Payや楽天ペイと同じようなID決済サービスとして、ユーザーがオプトインしさえすれば、顧客情報を取得できるのです。
既存のID決済サービスと比較し、会員数は520万人と桁が1つ少ない状況ではあるものの、atoneをはじめネットプロテクションズのサービスはオンラインで買い物をし慣れているユーザーに利用されている傾向があることが予測されます。そのため、「atoneログインサービス」の提供により、導入企業のECサイト内でatoneを利用したユーザーに、他の決済サービスで購入されるときと同様の販促を実践できるでしょう。
参考:ID決済とは? 代表的なサービス、導入するメリット・注意点を解説
新型「atone」は、発表会があった2022年11月10日からテスト店の受付を開始しています。本格リリースは2023年3月以降を予定しているとのことです。
ネットプロテクションズの発表会に参加して
事業者は日々のECサイト運営において画面に映る情報からでしかユーザーを知りえません。SNSのフォロワーや座談会、ユーザーインタビューなど、ユーザーの解像度を高めることはできても、ユーザー数が増加すればするほど想像できない先のユーザーが必ず存在しています。
こういった見えないユーザーの背景ひとつひとつに、サイトから離脱している理由があると思います。商品を好きになれなかったのか、価格が合わないのか、セールを待っているのか、自分が使える決済方法がないのか、そこには数え切れないほどの理由を挙げられるのではないでしょうか。イチユーザーとして、買い物をする際、まだ見ぬ新しい機能に出会うよりも、当たり前にある機能が快適に利用できることが重要だと感じています。
本発表会で日本国内の後払い決済サービスで大きな市場を持つネットプロテクションズが都度払いの導入やID決済サービスの提供を発表しました。事業者にとってもユーザーにとっても、他のサービスや他の決済手段で当たり前になっている座組を後払い決済サービスに導入することが、業界を牽引する企業として必要な視点だと感じられました。今後も後払い決済サービスの市場がどのように動いていくのか期待が高まるばかりです。
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