仕入れ販売の開始から5年で年商1億円、費用を抑えて売上を伸ばす運営の工夫とは
合同会社あめおと商店の木村夫妻
インタビューの概要

2017年に楽天市場にショップをオープンした「JOUIR」は出店5年目の2021年に年商1億円を突破しました。仕入れ商品を中心に販売するJOUIRでは、規模を拡大する中で様々な工夫を凝らし、売上を伸ばすと同時に利益を堅調に確保できる店舗運営を行っています。

特に配送サイズや配送方法の最適化が、利益に大きく影響しているようです。JOUIRを運営する合同会社あめおと商店の代表社員である木村寛一さんに、軌道に乗るまでの道のりと、送料を抑えるための工夫について伺いました。

とにかく出品数を増やした立ち上げ期

――まず、JOUIR(ジュイール)の立ち上げ当初、物販を始めた頃のお話を教えていただけますか?

木村さん:今年で立ち上げから6年目になりますが、始めた頃はとにかくECモールで売るには出品数を増やさなければダメだと言われていた時代でした。まずは、NETSEAやスーパーデリバリーのような、ネットで比較的低いハードルで仕入れができる商品を出品していきます。

売上が徐々に伸びるに連れて、展示会に足を運んだり、テレアポをしたりと、直接メーカーや問屋に営業をかけて仕入先を増やしていったのです。少なくとも2,000~3,000商品が最低ラインだと教わっていたこともあり、とにかくがむしゃらに商品をアップしていきました。様々な商品を扱っているうちに、どんな商品がヒットするのか感覚的にわかるようになってきましたね。実際に、数十回に一回はヒット商品が出ており、トップラインを大きく伸ばせています。

立ち上げ当初、商品の割合として化粧品の取り扱いが多かったのですが、今はECモールに化粧品メーカーの出店が増えたため仕入れ販売が徐々に厳しくなっています。そこで、4年前にペットとして犬を飼い始めたことをきっかけに、ペット商材の取り扱いを増やすことにしました。新たなジャンルを取り入れたことが奏功し、今では売上の70%をペット商材が占めています。実際にペットを飼っているからこそ、消費者がどんな商品を求めているのかわかるのも大きいかもしれません。

楽天市場出店から5年目で年商1億円を突破
楽天市場出店から5年目で年商1億円を突破

送料を抑えるための工夫

――順調に売上が伸びる中で、同時に配送量が増えているかと思います。事業の成長に合わせて、どのように体制を構築していったのでしょうか?

木村さん:JOUIRは私と妻の2人で始めました。立ち上げた頃は2人とも本業があったので、日中は店舗運営に時間を当てられませんでした。毎日本業を終えてから夜遅くまで梱包作業を行い、翌朝に郵便局に持ち込んで発送をしていたのです。

人に任せることなく2人で2年間続けましたが、対応できる量に限界を感じ、パートさんを採用することにします。今は自社で倉庫になるワンフロアの広いスペースを借りて、受発注業務や梱包、出荷の対応をしています。

コストを抑えた定形外郵便の活用

――出荷量がある程度増えるまで、配送会社から料金面で優遇を受けることは難しいかと思います。送料を抑えるためにどういった工夫をされたのでしょうか?

木村さん:ネット通販を始めた頃は小物を中心に販売していました。そのため、60サイズ以上の宅配便の量が少なく、送料の負担はそこまで大きなものではなかったです。小物の発送については追跡可能なメール便ではなく、コストを極力抑えるために定形外郵便を利用していました。

定形外郵便のメリットはただ一点、送料が安いことです。デメリットとして、手間がかかることが挙げられます。定形外郵便で発送するには、必ず窓口に持ち込みをしなければいけません。1つずつサイズと重さを確認するため、日に30~40個持ち込みと10~30分かかります。また、発送後の追跡ができないため配送が遅くなったり、紛失が出たりと、クレームにつながるリスクを孕んでいるのです。

そのため、定形外郵便でお送りしている商品ページには注意事項を記載しています。了承の確認を取っていますが、例えば金曜日の夕方に頂いた注文は到着まで1週間かかってしまうこともあるので、「到着がいつになるのか?」とお問い合わせを頂くこともしばしばあります。2~3日程度で到着することに慣れているお客様にとっては遅いと感じられるかもしれませんが、定形外郵便を活用しているからこそ低価格で提供できている側面があるのです。

商品ページには注意事項をしっかり記載している
商品ページには注意事項をしっかり記載している

環境に合わせて宅配便を低価格で発送

――同じ商品を販売されることがある仕入れの形態で、送料を抑えて低価格を実現しているのですね。配送方法は定形外郵便だけで対応するのは難しいかと思いますが、それ以外のサイズはどのようにして配送していますか?

木村さん:現在は日本郵便の定形外郵便以外は、全てヤマト運輸にお願いしています。一時期160サイズ以上のみ佐川急便にお願いしていましたが、現在はヤマト便で対応いただけるようになりました。楽天市場を通すことで送料が安くなる時期があり、日本郵便のゆうパックやゆうパケットを活用していたこともありました。しかし、送り状発行サービスの扱いが難しく、作業時間を考慮するとかえってコストがかかってしまうため、今は利用していません。

売上が伸びて、配送量が増えてからはヤマト運輸と良い条件でお取引ができるようになりました。送り状の発行も手間なくできますし、集荷にも来ていただけるので運用は非常にスムーズにできています。

左:倉庫用のフロア 右:平均100件以上/日の出荷をしている
左:倉庫用のフロア 右:平均100件以上/日の出荷をしている

配送方法を最安にするには

――小物は定形外郵便で、それ以外はヤマト運輸で配送することで送料を最適化できていることがわかりました。商品に応じてサイズが異なるため、複数の商品を一度に購入されると配送サイズの仕分けが大変になるかと思うのですが、現場ではどういった運用をしているのでしょうか。

木村さん:採寸した商品の情報はエクセルに入れて管理しています。本当は重さも入れて全ての商品の情報を管理したいところですが、商品数が多すぎてやりたい粒度は実現できていません。管理しきれていない情報もあるため、最終的には目検でやるしかないのです。

また、複数のモールに出店しているため、各ECモールの情報はネクストエンジンで一元管理しています。ネクストエンジン上の設定で商品の配送サイズは大まかに振り分け可能です。しかし、管理しきれていない商品の注文や宅急便コンパクトのように地域によって送料が変わる配送方法は属人的に仕分けをしています。商品の重さや配送先によって送料は変わるため、妻が送料の価格表をすべて頭に入れて対応しているのです。人力であるため、非効率的ではありますが、それが強みでもあると思っています。

増員が仕組み化を促進

――最終的には職人による目検の振り分けがコスト削減の秘訣と感じます。とはいえ、パートさんに依頼している受発注の対応や梱包業務は社内で仕組みを整えなくては仕事を振りづらいのではないでしょうか?

木村さん:出荷作業を夫婦2人でしていたときは、立ち上げから2人でやっていたので商品の仕様について細かいことを理解できていました。パートさんに初めて仕事をしてもらったとき、パッケージは同じですが中身が違う商品やパッと見同じ商品のサイズ違いなど、見分けがつかない商品を誤発送してしまうことが起きたのです。

「これはまずい!」と思って、すぐに商品をバーコード管理するようにしました。出荷時に必ずバーコードを通して対応するようにしてから、誤発送はかなり少なくなっています。今では仕組みも整って、私達夫婦以外に社員1名、パート2名で業務をまわせるようになりました。

左:発送作業中の風景 右:商品棚
左:発送作業中の風景 右:商品棚

強みを活かすために選んだ内製化

――仕入れから発送までの全工程を社内で回していますが、外部に委託しようとは思いませんでしたか?

木村さん:物流業務を外部に委託しようと考えたこともありました。JOUIRでは土日祝を含めて365日年中無休で対応しているのですが、物流代行会社さんに問い合わせると土日祝は別料金が発生したり、そもそも対応いただけなかったりすることがわかりました。また、送料についてはヤマト運輸と最安値でお付き合いできているため、外部に委託するメリットがなく、自社で体制を構築することに決めたのです。

過去の経験の積み重ねから未来の成功を築く

――価格の安さと年中無休という2つの強みを活かすための運用を構築した結果が年商1億円超えにつながっているのでしょう。今を振り返って「もっとこうしておけばよかった」ことはありますか?これから同じ道を通るかもしれない方にお伝えできることがあれば教えていただきたいです。

木村さん:夫婦ともに本業がある中で副業としてやっていたことからも、人に任せずにやっていた期間が長くありました。夜中に梱包をして、朝の出勤前に持ち込んでいたことは今思い出してもきつかったです。

ルーティンになる作業と売上を伸ばす「売る」アクションは一緒にやると負担がとても大きくなってしまいます。仕組み化できる作業は早々にパートさんや外注にお願いしても良かったと今になって思います。「売る」ことに集中できる時間をもっと早く取れていれば、もっと今は売上が伸ばせていたかも知れません。

――誰かに業務を任せることは大変な一方で、自分で抱えすぎていては他のことに手がつかなくなってしまいます。ルーティン化できる業務はどんどん自分の手から離していくことが、更なら売上増につなげられることのように感じます。最後に、今後の取り組みについて教えてください。

木村さん:ペットとの時間をより楽しめる空間として、Bellos(ベローズ)というドッグフレンドリーレストランを営んでいます。そういった経験から、パスタのソースやペットフードなど、自社商品を作る予定です。

メーカーの直販が増える中で、今の仕入れ販売の形を続けていくのは難しいと思います。その中で、ブランドを持ちたいという想いが強まり、ようやく形にできそうです。今までやってきた仕入れ商品の販売とは違ったスキルが求められるため、楽しんでやっていきたいと思います。

インタビューを通して:最善を目指し、走りながら突き進む運営スタイル

元々副業から始まったネット販売ですが、本業と並行して出品業務から受発注対応、発送業務のサイクルを高速で回せるように、木村さんご夫婦は絶えず前に突き進んでいたように感じられました。

自社の強みを活かすために、外部パートナーに業務を依頼することなく、着実な成長を遂げられたのは、試行錯誤の中で常に最善を目指していたことが伺えます。今後、新たな挑戦として、オリジナル商品の販売を始めることになりますが、今までと変わらずトライ&エラーを繰り返し、ペットが喜ぶドッグフードを広く提供できるようになることでしょう。ペットを飼っている方は、ぜひJOUIRをご覧になってみてはいかがでしょうか。

■JOUIR 楽天市場店
https://www.rakuten.ne.jp/gold/jouir-japan/

■ドッグフレンドリーレストランBellos
https://bellos.owst.jp/

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