【ゲストスピーカー】
村井 洋仁さん
株式会社マルヒサ 代表取締役
着物専門店「京都きもの京小町」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
ワクワクする小さなブルーオーシャンへ進出
柳田さん:まず、「京都きもの京小町」の販売エリアについて教えてください。
村井さん:アメリカ、タイ、バンコクを中心に、イタリアやフランス、ドバイ、台湾など、さまざまな国で着物のプロモーションや現地即売会を実施してきました。
柳田さん:着物は日本を象徴する文化でありながら、海外での販売は容易ではないと想像します。日本国内でも着物離れが進む中、なぜ海外展開に踏み切られたのでしょうか?
村井さん:大きく2つの理由があります。1つ目は、着物を着て海外に行くと、ただ着ているだけで日本の代表のようにみられることに驚き、日本人であることに誇りを感じたためです。
実は12年ほど前、楽天市場が主催する勉強会に参加した際に、「着物屋さんなのに、着物を着ていないのですか?」と参加者の方に指摘され、強い衝撃をうけました。当時、私はスーツ姿で着物を販売していたのですが、それを機にスーツを全て処分し、現在では飛行機の中も含め、常に着物を着る生活を続けています。海外では着物に対するリスペクトがあり、日本人としてのアイデンティティを強く感じます。
2つ目は、フランスの「ジャパンエキスポ」への出店経験です。楽天市場の出店企業として参加したのですが、正直なところ「本当に売れるの?」と半信半疑でした。ところが、イベント開始直後から着物が飛ぶように売れ、2日ほどでほぼ完売。残りの2日間は商品が足りない状況となり、海外市場に大きな可能性を感じました。
また、現地ではYouTubeなどを参考に自ら着付けをして着物や浴衣を着ている方も多く、帯をアレンジして楽しむ様子が印象的でした。
日本の着物市場は縮小傾向にあり、現在では約2,000億円規模と1/10ぐらいまでに減っていますが、競合は多く、国内市場はレッドオーシャンです。一方、海外は需要こそ限られますが、競争が少ない分、確実にブルーオーシャンであると捉え、海外展開を決意しました。
海外配送で世界各国から注文が集まる
柳田さん:着物を着るだけでリスペクトを受けるというのは素晴らしいことですね。
村井さん:日本は単一民族国家として最も長い歴史を持ち、文化も長く受け継がれてきました。着物も300年前までは日常着として親しまれていました。海外の方にとって、こうした歴史ある文化に触れることは貴重な体験なのです。
実際、中国の方から「着物の文化を守ってくれてありがとう」という言葉をいただいたこともあります。着物(呉服)は元々中国の文化が由来ですが、現地では民族衣装を日常的に着用する人は少なく、伝統を守り続けていることに対する感謝の言葉には胸を打たれました。
柳田さん:現在、海外では着物を購入できる場所はあるのでしょうか?
村井さん:10年ほど前までは、アメリカ主要都市にも着物店がありましたが、現在はほとんどが撤退しています。海外の方が着物を手に入れる手段は、地元の日系スーパーで限られた品揃えから選ぶか、楽天市場などの海外配送サービスを利用するしかありません。
当店は楽天市場でいち早く海外配送に対応した店舗だったこともあり、世界各国のお客様からご注文をいただいています。
柳田さん:商品ページを海外向けに対応し、しっかりと配送体制を整えたことが、認知拡大につながったのですね。
1通のメールで海外へ!着物を楽しめるよう商品の提供からスタート
柳田さん:大手企業の海外販売は少ないのでしょうか?
村井さん:そうですね。かつてはありましたが、現在はロサンゼルスなどでも着物を購入できる店舗はほとんどありません。あるとき、ロサンゼルス在住の方から「着物を売っているお店がなくなってしまったので、ぜひ売りに来てほしい」というメールをいただきました。
私はアメリカ本土には行ったことがなかったのですが、その方に会うために渡航し話を伺ったところ、ロサンゼルスなどの日系人が多い地域では日本舞踏や民芸などの日本文化が根付いており、夏場は浴衣を着用する方も多いことがわかりました。むしろ、日本人以上に着物文化が生活に浸透しているように感じました。
着物を買っていただくこと以上に、購入後に楽しんでいただくことを重視しており、当社の理念も「Enjoy!KIMONO」と掲げています。そのため、商品の提供だけでなく、現地でのイベント開催にも取り組み、着物を楽しめる機会づくりにも力を入れています。お客様からいただいた1通のメールが、大きなきっかけとなりました。
柳田さん:非常にフットワークが軽いですね。
村井さん:今でこそそう言っていただけますが、実は2004年頃、楽天市場が主催する勉強会に参加するために初めて出張したくらいで、それまではずっと京都にこもり、一人で仕入れ・撮影・出品・受注業務をすべてこなしていました。外に出る時間もなく出張自体が苦手でした。
しかし、今では外に出て人と会うことで新たなご縁や気づきを得られることを知り、むしろ京都にとどまることを良くないと感じるようになりました。経営者として成長するためにも、新たな体験に積極的に挑戦することを選んでいます。
柳田さん:1通のメールをきっかけにすぐ行動を起こし、海外展開に広げた柔軟さとスピード感が、大きなポイントだったのだと感じます。
おわりに:届けたその先の体験を想うEC
日本と海外での着物に対する印象の違いと、市場環境の違いから着物の海外販売を始めたという村井さんですが、それが実現した背景には、着物を楽しんでもらいたいという気持ちとフットワークの軽さがありました。商品を届けることがゴールではなく、楽しんでもらうことがゴールという村井さんの考えは、販売戦略や商品紹介の際に参考になるのではないでしょうか。
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