
日本では約80%の女性がデリケートゾーンに悩みを抱えているものの、誰にも相談できていない現実があります。株式会社HRC(以下、HRC)では、まだ日本では馴染みのないインティメイトケア商品を販売し、悩みの解消を通じて「女性の生き方そのもの」に寄り添うブランド『laugh.(ラフドット)』を展開しています。今回は、同ブランドの立ち上げの背景や新常識を日本に定着させるための取り組みなど、ブランドマネージャーである林 千尋さんとブランディングの支援を行っている株式会社ライフェックス(以下、ライフェックス)の遠藤 正樹さんにお話を伺いました。
この記事の目次
ブランド立ち上げの背景と日本市場が持つインティメイトケアの課題
―― まず、『laugh.(ラフドット)』のブランド立ち上げの背景について教えていただけますか?
林さん:海外では日常的にケアが行われている国もあるインティメイトケアの領域ですが、日本ではまだまだ浸透しておらず、インティメイトケアという言葉は馴染みがないかと思います。デリケートゾーンケアという言葉であれば、聞いたことがある方も多いかもしれません。
今回立ち上げた『laugh.(ラフドット)』では、女性がデリケートゾーンに悩む時間を減らし、将来悩むはずだった時間を、自分のために使って欲しいという想いが込められています。
また、ブランド名の由来として、『laugh.(ラフドット)』のlaugh(ラフ)は一番自分らしい瞬間は笑っているときであること、そしてドットは時代にピリオドを打って古い常識を変えていくという想いを込めています。
―― インティメイトケアが日本では浸透していない理由として、どういったことが考えられるでしょうか。
林さん:進んでいる国では初めて生理が来たときに、ケアの仕方を母親や学校から教えてもらうのですが、日本ではまだその教育が十分に行き届いていないことが原因の一つだと考えられます。また、女性はこうあるべき、という女性への固まった考え方がまだまだ根強いこと浸透しづらい理由として挙げられるでしょう。そういった根底にある原因を解消する力がインティメイトケアにはあると思っています。
商品開発を始める上で決めるべき重要な要素
ブレないブランドを作る考え方と役割
――『laugh.(ラフドット)』は日本国内では市場が小さいインティメイトケア商品を販売しています。市場が小さい商品を販売していく上で、どういったことが大切だと考えていますか?
林さん:新しいブランドを立ち上げる際に、流行っている商品を販売することは売上を立てる上では良いかもしれません。しかし、売上が目的になっているのではなく、お客様に想いを届けて、悩みを解決できる商品が本質的に長く愛され続ける上で大切だと思ったことがインティメイトケア商品を販売するに至った背景にあります。
想いをお客様に届けるためには、ブランドを支えるための筋の通った軸を持つことが大切です。ブランドをローンチ(販売開始)するまで時間はかかりましたが、ブランドの軸を決めたからこそ、ローンチしてからはブレることなくスピードの早い意思決定ができています。また、ブランドマネージャーである私が決めたブランドコンセプトに則って、商品デザインから紙やウェブなどクリエイティブ全般を見ていることもあり、お客様にとって一貫した世界観を提供できていると思っています。
市場調査により課題を定量的に顕在化
―― ブランドを支える軸を持つことが大切であるとのことですが、ブランドを立ち上げるにあたって、どのような工程を踏んだのか教えていただけますか。
林さん:まず、どういったジャンルの商品を扱うのか決めるため、今の市場におけるニーズやトレンドの調査をすることから始めています。色々な切り口で市場を調べていく中で、商品開発担当者がデリケートゾーンに悩みを持っていることが意見として上がりました。そこで、産婦人科医の先生にデリケートゾーンに関する質問をしたところ、日本人は正しいケアができていないことが多いと言われ、この領域について検索トレンドの動きやアンケート調査による具体的な悩みのヒアリングなど、社内外を含めて様々な角度から更に調査を深めました。
アンケート調査をしたところ、8割以上の女性の方がデリケートゾーンに悩みを持っていることがわかります。しかし、どうすれば良いかわからなかったり、産婦人科に行くまでもないと思っていたり、対処している方が少ないことが現実としてあったのです。市場調査が終わり、次はどのような商品を作っていくのか考えていきました。

魅せ方から作るお客様にお届ける価値
ゴールの世界観から逆算された商品区分
―― 女性の8割となると、今は浸透していなくとも非常に大きな市場になりそうな気がします。市場が決まった後はどのようなことを決めていったんですか?
林さん:インティメイトケアの市場で進めることが決まったタイミングからライフェックスの遠藤さんに協力いただいています。インティメイトケアに関する商品を考える上で、課題への訴求力を強くもたせられる医薬部外品にするのか、購入するためのハードルを低くするために化粧品として商品展開するかは非常に悩みました。
日本の女性に新しい常識としてインティメイトケアの文化が根付いて欲しい想いから、悩んでいる人だけではなく誰にでも使ってもらいやすくするために最終的には化粧品として販売しています。
お客様の利用シーンと習慣化を突き詰めた商品設計
―― 医薬部外品か化粧品か、商品区分によって打ち出せる販促の表現の幅が異なります。それぞれの区分でメリットとデメリットがありながら、化粧品を選んだ理由とブランドのコンセプトが一貫していると思えました。商品を作る上でもこだわった点は多いのではないでしょうか?
林さん:例えば、商品パッケージを作るとき、家族や同棲相手と生活していてもケア商品とわかりづらいような、誰にでも手に取りやすいシンプルなデザインにしています。また、デリケートゾーンに使う商品であるため、香料を入れることでリラックス効果やケアの効果を感じやすくできます。その一方で、敏感肌の方は僅かな香料であっても刺激になることがあるため、まずは女性全員が使えるように無香料で販売しています。
また、習慣化してもらうには使いやすくなければなりません。泡が出てくるポンプを付けて、ワンプッシュで使えるようにするかどうか、コスト面から社内で何度も協議を行いました。最終的に、コストを理由にブランドの考え方と商品にズレが出てしまっては自分たちが誇りを持って販売できないため、泡のポンプを取り付けるに至っています。

ブランドマネージャーによって保たれる世界観
―― 香料やデザイン、泡にするかどうかなど、商品を作るにあたって細部までお客様志向を貫く姿勢を伺えました。現在の販路はオンラインのみですが、ECサイトやSNSの運用にブランドの想いをどのように反映しているのでしょうか?
林さん:ブランドローンチ時には、悩んでいない方向けの訴求で進めたい気持ちがありましたが、プロモーションの部署と話し合い、まずは悩みが顕在化している方たちに訴求する方針で進めることになりました。
最初に上がってきたクリエイティブはインパクト重視で「ワンプッシュでこんなに泡が!」と10プッシュしても出ないくらいの泡の量がページに掲載されているものでした。過激な表現をする広告ではブランド全体のイメージを毀損してしまいます。更に、一度そういった切り口で世の中にクリエイティブを出してしまうと『laugh.(ラフドット)』に過激なイメージがついてしまい、拭えないものになってしまいます。
ブランドマネージャーとして、紙やウェブに限らず全てのクリエイティブに目を通しているため、定めたブランドコンセプトやブランドアイデンティティからブレていないか細心の注意を払って確認しています。
SNSの運用や販促は遠藤さんにお願いしています。ライフェックスさんはブランドそのものの考え方やブランドの作り方に精通しています。また、ブランド立ち上げにあたってコンセプト決めや商品開発から支援いただいていたこともあり、コミュニケーションコストをかけずに『laugh.(ラフドット)』に最適な施策をご提案いただいています。
今後は、海外経験のあるインフルエンサーさんに「自分自身が昔からインティメイトケアをしていた」という事実を伝えてもらうなど、単に商品を紹介するのではなく、商品PRを通じて、インティメイトケア自体の発信をしていきたいと思っています。

購入いただくための販促施策
―― 購入の後押しを意識しすぎたクリエイティブは過度な表現になりがちです。ブランドマネージャーの役割がブランド全体のバランスを調整し、社内とお客様との架け橋になっているように思えました。また、理解あるパートナー企業がいることで手を取られがちなSNSの運用を効率的に回せているようです。お客様に購入いただくために、どういったマーケティング施策やCRM施策を行っていますか?
林さん:商品のラインナップとしては、デリケートゾーンを洗浄するためのソープと、保湿をするクリームを展開しています。お風呂から出て10秒以内に保湿しないと乾燥が始まると言われますが、それはデリケートゾーンに関しても同じことです。そのため、ソープとクリームはどちらかを購入している方には、もう片方の商品のクロスセルをしています。特に、購入直後のサンクスページでクロスセルの提案を行うことで、一番温まっているタイミングで訴求できています。
また、当社で販売しているナイトブラをお買い求めのお客様に会報誌を同梱しています。会報誌はインティメイトケアについて、当社の思いやデリケートゾーンに関するアンケート情報、商品情報を掲載した読み物になっています。読んでから購入いただくと半分はセットで購入いただき、その場では片方の商品を購入している場合でも、その後もう片方の商品を購入いただくことが非常多いです。
会報誌のような紙媒体に限らず、メルマガやLINEなどお客様に提供するコンテンツやデザインは商品の特性上、薬機法などの表現が繊細なジャンルでもあるため、コンプラ面を含め、全て社内で作っています。ネット上に載っている情報の場合、ファクトチェックがしづらいため、専属の産業医の先生に質問をし、必ず一次情報をお客様に提供することを心がけています。
CRM施策としては定期購入していただいているお客様限定で、LINE公式アカウントを活かして、産婦人科の先生に直接相談できるサービスを行っています。対面だと聞きづらいデリケートゾーンに関して専門家に直接LINEで相談できることが、女性の悩みを解決するきっかけになればと思っています。

『laugh.(ラフドット)』の今後の成長と展開とは
―― 現在販売している2商品は相性が良く、クロスセルをしてもらうために自然な文脈で商品提案ができそうだと感じました。ブランディングを軸として企業の成長を後押しするライフェックスとして、『laugh.(ラフドット)』の今後成長をどのように後押ししていくでしょうか。

遠藤さん:ブランドマネージャーである林さんが『laugh.(ラフドット)』を「女性の生き方そのもの」につながるブランドにしようと、非常に強い想いを持ってブランドの運営をされていらっしゃいます。今まで常識ではなかったことを常識にするには、乗り越えるための壁がいくつも存在します。それを乗り越えるために必要なものは様々あるものの、何よりも大事になってくるのは、古い常識に捕らわれず新しい常識を作って伝えていこうとする想いや熱量だと考えます。『laugh.(ラフドット)』のブランドを共創する中で、まさに林さんはそれを持ち合わせている方だと、間近でひしひしと感じております。
『laugh.(ラフドット)』が、女性の活躍を応援するブランドとして多くの方から支持をいただけるように、今後も陰ながらご支援を行っていく予定です。
―― 遠藤さん、ありがとうございます。取材中、林さんから伝わる熱量に私も明るい未来への可能性を感じました。最後に、『laugh.(ラフドット)』の今後の展開について教えていただけますか。
林さん:新型コロナウイルスの影響で、今まではリアルのイベントなど直接顔を合わせてお話する機会を作ることが難しかったです。デリケートな商材であるからこそ、それではお客様にとって不安があると思います。私達も直接お客様にお伝えしたいことがあるので、今後は公の場でイベントを開催していきます。オープンな場でイベントを開催することで、インティメイトケアそのものがオープンなことであり、みんなが日常的にやることであると認識してもらいたいと思っています。
2022年には新商品の展開や容器の変更など、お客様に飽きが来ないように色々な企画を用意しているので、ぜひお楽しみいただければと思っています。
最後に:ブランドを成功に導く熱い想い
記事内には書ききれませんでしたが、林さんへの取材を通して女性が抱える課題や『laugh. (ラフドット)』を通じて解決できる問題について、いろいろな視点からお話を伺うことができました。一貫したお話の中に、確かに感じられる軸があり、一切の矛盾がない状態でブランドを展開されていることがわかりました。
今回、支援を行っているライフェックスはブランドを軸としたマーケティング・CRMを得意としています。支援先の企業が大きく伸びていきやすい傾向として、ブランドマネージャーの想いの強さだと、遠藤さんからも取材中にお話が上がりました。筋の通ったブランド形成にお悩みの事業者様はこの機会にライフェックスに相談してみてはいかがでしょうか。
▼ 株式会社ライフェックスへの相談はこちら
https://lifex-group.co.jp/contact
▼『laugh.(ラフドット)』のオフィシャルストア
https://laughdot.jp/
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