記事の概要

楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、健康食品メーカー「ミウラタクヤ商店」店主である三浦卓也さんに、「ひとりEC」をテーマにお話いただく回をご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
三浦 卓也さん
健康食品メーカー「ミウラタクヤ商店

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)

ひとりEC成功の近道は「広告活用」にあり

柳田さん:「ひとりEC」というテーマでお話を伺っていければと思います。ひとりで運営することはストレスが少ない一方で、自分の時間の中で業務をこなさなければなりません。その際に欠かせない要素は何か、お聞かせいただけますか。

三浦さん:ひとりでネットショップを始めて今年で8年目になります。さまざまな試行錯誤を重ねた結果として申し上げると、抵抗感を持つ方も多いかと思いますが、いかに広告に注力するかが、ネットショップ成功の大きな鍵だと考えています。

柳田さん:Google広告やリターゲティング広告など、いわゆるWeb広告は購入に直結する手段ですが、参入事業者が多く、CPAが高くなったり、ROASが合わなくなったりする印象があります。世の中的にも広告が使いにくくなってきたと感じている方は多いのではないでしょうか。

三浦さん:確かにそういった側面もありますが、事業を成長させるという観点では、広告が一番早く結果につながる手段だと思います。SNSでは新しい人にリーチできる手応えは強いものの、事業を成長させるにはやや時間がかかる印象です。

柳田さん:SNSには「売る場所ではない」という課題もありますよね。一般的には認知を広げて購買につなげる手段ですが、地道にファンを増やしていくスタイルのツールです。

三浦さん:事業に置き換えると、SNSでゼロから始めてネットショップで月10万~20万円の売上をつくるには、およそ3か月は必要です。組織で考えれば、その期間の人件費は赤字になります。もちろんいろいろな意見はあると思いますが、この時間を短縮できるのが広告です。

柳田さん:三浦さんはお一人で運営されているので、SNSよりも広告のチューニングに注力するほうが効果的だとお考えなのですね。

三浦さん:私の経験でも、広告の効率が悪くなっていると感じてSNSに注力した時期がありましたが、3か月取り組んだ結果、売上が下がってしまいました。そこで再び広告に注力したところ、売上が回復しました。確実かつ効率的に売上を立てるには広告が必要だという結論に至っています。

柳田さん:複数のスタッフがいれば幅広く取り組めるかもしれませんが、今回のテーマ「ひとりEC」では、効率的に業務を進めるためにも広告の優先度は高いということですね。

三浦さん:私の中では第一優先です。現在は「ミウラタクヤ商店」を運営しつつ、EC家庭教師としてスモールビジネスの支援もしていますが、SNSでフォロワーを伸ばした事例があっても、やはり初月から売上を立てたいなら広告は欠かせないと感じます。

柳田さん:私もSNSを運用していて感じますが、トレンディな商材やキャッチーな商品ならSNSで成果が出やすい一方、競合が多い商品は埋もれてしまいます。重要なのは「その商品を探している人にどうリーチするか」であり、ただ広告を出稿するだけでは投資が無駄になる場合もありますよね。

広告成功の鍵は、面白さと徹底検証

柳田さん:広告の活用法についてもお聞かせいただけますか。

三浦さん:少し属人的な話になりますが、広告の役割とは「ターゲットユーザーと商材のマッチング」だと考えています。SNSには大量のコンテンツがあり、可処分時間の奪い合いと言われる中で、最初の0.5秒が非常に重要です。SNSのユーザーは商品自体には関心が薄いため、単に商品の情報を載せただけではまず成果が出ません。

商品から得られるベネフィットや使用することで得られるメリットを、面白みを交えて表現する必要があります。TikTokやInstagramのリールでは、素人の方でも面白い動画を数多く投稿しています。その中で「これが商品です」と紹介するだけでは刺さらないのです。

柳田さん:それはそうですよね。

三浦さん:それでも、FacebookやInstagramの広告では商品のスペックだけを書いている事業者が多く見受けられます。私の場合、健康食品を扱っているため効果効能を直接訴求することはできず、差別化ポイントを打ち出しにくい状況です。そこで、メリットを前面に出すのではなく、エンタメ要素を含めた広告を配信し、成果につながった経験があります。

柳田さん:エンタメ要素ですか。

三浦さん:はい!例えばプロテインの広告を制作した際、Instagramで夫婦関係や家族関係に関する投稿がバズっているのを見て、「プロテインに興味がなくても他人のプライベートには関心がある」と考えました。そこで「嫁(プロテイン飲んだ)」という切り口で広告を配信し、リンク先をブログ形式のLPにしました。

プロテインを飲んだ結果、妻にどんな変化があったのかを紹介する内容にしたところ、大きな売上につながりました。エンタメ要素とまではいきませんが、親近感を抱かせるクリエイティブにするため、あえてコンテンツページを経由させ、そこに商品ページへのボタンを設置しています。

さらに、バナーのクリエイティブ数も重視しています。1枚の画像に対して5パターンの文言を作成し、キャッチコピーを変えたバナーを量産してA/Bテストを行います。5パターンの中で効果が高いものが見つかれば、さらに5パターンにアレンジ。その工程を3回ほど繰り返すと、消費者が求める情報が見えてきます。そのうえで受注率を高めるためにブログを調整すると、CPAが徐々に下がっていくイメージです。

柳田さん:やはり情報を集めないとチューニングは難しいですよね。繰り返し試すことで精度が上がるわけですが、三浦さんの中では「最大化のポイント」が掴めているのですね。

三浦さん:「バナーは何枚作ればいいですか?」とよく聞かれますが、私は「10枚以内に正解が出なければLPに問題がある」と考えています。

柳田さん:10枚も作れば、CVが発生しても良さそうに思います。

三浦さん:ただ、商品ページに課題があったり、そもそも商品オファー自体に問題があったりする場合は、バナーの検証よりもそちらの改善が優先されます。私がEC家庭教師として支援している事業者さんは、小規模でECに不慣れな方が多く、商品ページがスカスカというケースも少なくありません。

柳田さん:情報発信の重要性はよく語られますが、結局のところ商品の魅力が伝わらなければ、もっと言えば商品自体が良くなければ、いくらマーケティングを工夫しても売れませんよね。良い商品を売るためには、商品ページの構成や情報の書き込みも欠かせないということですね。

栄養学とダイエット経験を武器にしたコンテンツ作り

柳田さん:健康食品には薬機法の規制があり、書けないことも多いのではありませんか。

三浦さん:制約はありますが、誤認を与える表現に注意すれば、十分に記載できる内容はあります。例えば、栄養や原材料、技術に関する事実は問題ありませんし、どこで作られたのか、どのような考えで開発したのかといった情報も、効果を謳わなければ記載可能です。

私自身、栄養学を深く学んできましたので、健康への関心が高く、特にリテラシーが高い層に向けては、数字を用いて伝えるようにしています。

柳田さん:栄養学を学ばれたとのことですが、もともと栄養や食品に詳しかったのですか。

三浦さん:実は広告やWebマーケティングのほうが得意でした。過去に10kgのダイエットを経験したのですが、そのとき取り扱っていたダイエット食品がユーザーの気持ちに寄り添えていないと感じました。同時に他社の商品も購入しながら「もっとユーザービリティを高めれば売れる」と気づき、そのために栄養学を学び始めました。

柳田さん:栄養学を学ぶことで理解度が増し、コンテンツの質が上がったのですね。そして広告にも活かされていると。

三浦さん:はい。栄養学の専門知識に加えて業界知識も学ぶことで、ダイエッターが何を考えているのかを踏まえた広告文言を考えられるようになりました。

柳田さん:ご自身でダイエットを実践されたのも大きいですね。教科書通りの説明や、販売者自身が太っているようでは説得力に欠けます。その点、三浦さんは栄養学を学び、自らもダイエットに成功し、さらに広告のトライアンドエラーを重ねて成長を加速させているわけですね。

三浦さん:ユーザーに刺さる表現は、ダイエットカテゴリーで使われる言葉の中から「干し草の中の針」を探すようなものだと思います。改善を繰り返しながらその針の周囲を絞り込んでいく必要があり、しかもユーザーによって刺さるポイントが違います。ダイエッターのニーズは非常に細かいため、複数の広告パターンを用意することも大切です。

柳田さん:とてもわかりやすい表現ですね。特定のユーザーに刺さるポイントを一つずつ増やしていくということですね。

三浦さん:実際に「運動しない人のプロテイン」という広告文言がヒットしたことがあります。通常プロテインは、運動して筋肉をつける人が飲むイメージがありますが、お客様とのやりとりで「運動していないけれど、プロテインを飲んでもいいですか」という質問を多くいただきました。そこで「運動しない人でもプロテインを飲んでいい」と伝える切り口を考え、商品企画や広告に反映させたのです。

柳田さん:お客様の声からヒントを得るのは非常に有効ですね。困りごとをそのままネタにすることで、反響を得やすいのは納得です。私自身も学びが多かったです。ありがとうございます。

おわりに:広告と顧客理解で育てる、ひとりECの成長力

三浦さんの取り組みには、限られた時間とリソースの中で成果を最大化するための工夫が詰まっていました。広告を単なる販促手段ではなく、ターゲットとの出会いを生む「マッチングツール」として活用し、エンタメ性や顧客視点を盛り込むことで売上を伸ばしています。

さらに、栄養学の知識や自身の実体験、そして顧客の声を反映した広告運用は、説得力と共感を同時に高めています。これらの実践は、規模の大小を問わず、ネットショップ運営者にとって成長のヒントとなるのではないでしょうか。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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