
前回のコラムでは、自社ECサイトが「年商3億〜5億円」というステージを目指す際に直面する「ECシステムの壁」の実態と、海外製「Shopify」と国産「futureshop」を例に推奨ポイントを解説し、システム移行後に後悔しないための基本的な選定視点について解説しました。
連載第2回となる本コラムでは「運営現場のデータ活用」と「利益を最大化するコスト・機能戦略」を含めて、中堅EC事業者が年商3億円を突破するために必須となる「データ分析によるボトルネック特定」から、それを解決し「利益を残しながら機動的にサイトを改善するシステム基盤の条件」を、具体的な数値を交えて解説します。
立川 哲夫
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
15年以上にわたり、EC事業の再定義・刷新の支援経験を豊富に持つコンサルタント。
主な経歴として、大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部としてEC事業コンサルティングに関わりながら、企業のブランディング・マーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わる。
5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。その他、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などの業界メディアへの寄稿実績も多数。
株式会社久では、自社公式ECサイトの戦略見直し、ECシステム移行検討相談・リプレイス伴走支援に関わっている。
■久(自社ECのリプレイスを検討している企業様向けの相談ページ)
https://www.qinc.co.jp/service/futureshop/
年商3億円達成に向けた「ファネルKPI」のベンチマーク
自社ECにおいて年商1億〜3億円を達成した企業にとって、次の年商5億・10億円へと向かうフェーズは、組織や運営体制を一段上のステージへ引き上げる重要な節目となります。この壁を突破するためには、単にプロモーション費用を投下して新規顧客を集めるだけでは不十分です。
顧客がECサイトに訪問してから購入に至るまでの購買プロセスに対して【ファネル】ごとに基準となるKPIを設定し、データの収集と分析からボトルネックを特定するアプローチが必須となり、「売上(KGI)=セッション数×カート投入率×カート完遂率×注文単価」で管理することができます。
【購入プロセスをファネルで捉え管理するイメージ】
例えば、年間売上3億円を目指す場合、ベンチマークとして以下のような具体的な数値目標【ファネルKPIの黄金比】を導き出すことができます。
【ファネル別目標数値例】
自社の現状をこのようなファネル別の数値と照らし合わせることで、どの段階で顧客が離脱しているのかが明確になります。
例えば「カート完遂率」が目標の40%を下回っている場合、決済手段の不足や、入力フォームの機能や入力しやすさなどが改善すべきポイントとして推測されます。このような課題に対して、Amazon PayやPayPayをはじめとする利用率の高い決済手段の導入や、カゴ落ちユーザーへの自動フォロー施策を行うなどの具体的な対応により、機会損失を最小限に抑えることが可能になります。
成長のネックとなる「データ分断」と「コストの罠」
多くの中堅EC事業者において、いざKPIを管理しようとした際に大きな壁にぶつかります。それが「データ分断」と、売上拡大に伴う「コストの罠」という2つの課題の顕在化です。
課題①:手作業による「データ分断」と集計工数の実態
既存のECシステム環境では、カートシステム、各種広告プラットフォーム、GA4をはじめとするアクセス解析ツールなどにデータが分散しているケースが多く見られます。これらを統合し、前述のような精緻な数値を把握するだけでも膨大な工数を要するのが実態です。
当社が相談を受ける企業の中にも、いまだに毎月数時間以上をかけてExcelで手作業によるデータ集計を行っている現場が見受けられます。本来であればマーケティング戦略や改善策の検討に注力すべき担当者が、事務的な集計作業に追われてしまっているのです。これでは数値を把握すること自体が目的化してしまい、成長に向けた次の施策へスピーディに移行することが難しくなります。
課題②:売上拡大に伴い膨らむ「コストの罠」
事業規模の拡大に伴い、多くの企業がシステムにかかるランニングコストの増大に直面します。売上を伸ばしたり、顧客サービス向上に向けてカートシステムに多様なアプリを追加したり、高度なマーケティングツールを導入したりすることは珍しくありません。
しかし、その結果として「追加したアプリやツールの月額利用料が毎月積み重なる」「個別カスタマイズによる追加開発費用や月額保守費用が発生する」といった事態に陥り、事業の利益を圧迫してしまうケースが見受けられます。
「売上は確かに伸びているのに、手元に残る利益が想定より少ない」「システム維持関連費用が負担になり新しい施策に予算を回せない」というコスト面の課題に陥らないためには、「売上を伸ばす機能」だけでなく「利益を残すコスト構造」を備えたECシステムを選ぶことが不可欠です。
利益を最大化し、現場の機動力を高める「futureshop」の機能・コスト戦略
データ分析によって機会損失や効果的な集客施策をスピーディに抽出したら、それを確実な改善アクションへとつなげる環境が必要です。
当社として中堅EC企業に「利益を残しながら着実に成長を目指す」場合は、国産のSaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop(フューチャーショップ)」を推奨し、リプレイスの候補に含めてもらいます。その理由を3つの戦略的視点から解説します。
【従量課金・追加機能の差で利益率が変わるイメージ図】
視点①:売上が伸びるほど利益率が向上する「コスト構造」
システム投資におけるランニングコストを評価する際、最も注意深く確認すべきなのが「従量課金(トランザクション課金)」です。
多くのカートシステムでは、月額基本料金に加えて、売上金額の数パーセントをシステム利用料として徴収されたり、受注1件あたり数十円の処理手数料が設定されたりしています。この仕組みの場合、事業が急成長して売上が2倍、3倍と伸びたとき、システムに対する手数料負担も比例して増加してしまいます。
futureshopが中堅EC事業者に選ばれている理由のひとつは、基本利用料が定額の月額費用で利用できることです。追加機能や決済利用費用含めた従量課金の比率が少なくなるため、売上規模が拡大し注文件数が増えても、基本利用料が利益を圧迫しにくいコスト構造となっています。
つまり、売上が伸びれば伸びるほど、全体の売上に占めるシステム費用の割合が低下し、利益率が向上する構造を持っています。このコスト構造により、得られた利益を新規顧客獲得のための広告費や、商品開発、社内の人材育成など「次なる成長のための投資」へ回す、健全な資金の好循環を生み出すことができます。
視点②:追加コストを抑え、現場で自走できる「commerce creator」
利益を残すためには、基本料金だけでなく、改修や機能追加にかかる「突発的なコスト」をいかに抑えるかも重要です。
一般的なECシステムでは、サイトのデザイン変更やバナーの設置、キャンペーンページの作成などに専門知識が必要となることが多く、その都度外部の制作会社やエンジニアに依頼する外注費や時間的なコストが発生します。
しかし、futureshopが提供する特許取得済みの独自CMS機能「commerce creator(コマースクリエイター)」では、ECサイトを構成する要素が「パーツ」単位で管理されており、非エンジニアの現場担当者でもドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でレイアウト変更やページ構築が可能です。
例えば、以下のような高度な施策や急な変更も、現場主導でスピード感を持って対応できます。
- ログイン状態や会員ステージに応じたバナーの出し分け
- 期間限定キャンペーンページの即時公開
- 薬機法改定などに伴うサイト内文言の共通パーツ一括修正
これにより、エンジニアの対応待ちによる時間的なロスを最小限にし、外注費や社内の開発リソースを削減しながら、機動力の高いサイト運営が実現します。
視点③:事業拡張を支えるシームレスな「外部連携力」と「安定稼働」
年商3億円規模になると、カートシステム単体で業務を完結させることは困難になり、受注管理システム、倉庫管理システム(WMS)、CRMツール、詳細な分析を行うデータ分析ツールなど、外部システムとの連携が必須となります。
通常、API連携ができない外部システムやアプリ連携には個別の開発費用と保守の手間がかかりますが、futureshopは100以上の外部システムとの標準連携機能を備えており、商品データや在庫情報、受注データを柔軟に取得できるAPIを提供しています。そのため、事業の成長フェーズに合わせて必要なツールを導入する際にも、追加の開発コストをかけずに機能を拡張することができます。
連携しているシステムやツールも国産が多く、futureshopのバージョンアップにも適正に対応し、連携の不具合などは最小限に抑えられる安心感もあります。海外製のアプリでは突然サービスが停止したり、バージョンアップに対応しきれずに不具合が起きるケースもあり、その解決にも時間と労力がかかる可能性も念頭に置いておく必要があります。
また、多様化する消費者の決済ニーズに応えるため、Amazon PayやPayPayなど各種最新の決済手段も安定して稼働させることができ、顧客の購入ハードルを下げて機会損失を抑えることができます。
中堅ECの成長段階では、利益を残しやすいECシステム選定が鍵に
今回のコラムでは、中堅EC事業者が目指す年商の壁を突破するためには、統合されたデータから抽出されるファネル数値目標と、それを支える「利益を残しやすいシステム基盤」が必須であることを解説しました。
「データ分析による課題特定」と「現場主導での迅速な改善」が回る運営サイクルを組織に定着させることが、訪問してくれた顧客の機会損失を抑え、自社ECの成長の壁を突破するための確実なステップとなります。
表面的な初期費用の安さや、目新しい機能だけに目を奪われることなく、売上成長した時に「利益を残せるコスト構造か」「成長に合わせて柔軟に拡張できるか」という中長期的な視点を持って、ブランドを育て、利益を残すECシステム刷新を検討ください。
■久(自社ECのリプレイスを検討している企業様向けの相談ページ)
https://www.qinc.co.jp/service/futureshop/
あわせて読みたい





















