
自社公式ECサイトにて年商1億円の壁を突破した企業が、次に目指す「年商3億〜5億円」の領域。事業が順調に拡大しているように見えても、このステージに差し掛かると多くの事業者が「施策スピードの低下」と「利益とのバランスが合わないシステム維持・追加費用」という壁にぶつかります。
「売上を伸ばすために新しい施策を打ちたいのに、ECシステムの機能や追加費用が足を引っ張る」という矛盾に直面する経営者やEC責任者は少なくありません。
私たち株式会社久(きゅう)は、自社公式ECサイトの構築・運用支援に特化して14年間、特定のシステムに限定しないベンダーフリーの立場から、数多くのEC事業者の戦略・運営・データ連携・分析などのEC総合支援を行ってきました。
市場には多様なECカートシステムが存在しますが、今後EC年商3億~5億円領域を目指す中堅EC企業の成長基盤として最適なシステム選定に必要な視点や推奨システム例に触れながら解説していきます。
第1回となる本コラムでは、EC年商3億~5億円突破を目指す事業者が直面する「ECシステムの壁」の実態を解説し、久がこの売上レンジの事業者が、どのような視点でECシステムを選定をすれば良いのか?移行後に「後悔しないため」のカート選定ポイントは何か?を中心に解説していきます。
立川 哲夫
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
15年以上にわたり、EC事業の再定義・刷新の支援経験を豊富に持つコンサルタント。
主な経歴として、大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部としてEC事業コンサルティングに関わりながら、企業のブランディング・マーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わる。
5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。その他、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などの業界メディアへの寄稿実績も多数。
株式会社久では、自社公式ECサイトの戦略見直し、ECシステム移行検討相談・リプレイス伴走支援に関わっている。
■久(自社ECのリプレイスを検討している企業様向けの相談ページ)
https://www.qinc.co.jp/service/futureshop/
EC年商3億〜5億円の壁:「海外製SaaS」や「大型パッケージ」が招く運営現場の課題
EC事業の成長に伴い、多くの企業が機能性の高さや有名ブランドの実績が豊富な海外発のグローバル系SaaSシステムや、大規模パッケージシステムを選定・導入します。しかし、導入後に以下のような課題が顕在化することがあります。
顕在課題①:機能追加に複数の「アプリ」が必要で、追加費用が重荷になる
海外製SaaSシステムでは、日本のECで標準とされる細やかな、ギフト対応・温度帯の配送対応・ポイント・会員ステージ・複雑なキャンペーン設定などの販促やサービスを実現するために、いくつかの外部アプリを追加導入する必要なケースがあります。
結果として「アプリや機能の月額利用料が積み重なり毎月数十万円の追加費用が発生する」「アプリ同士やシステムとの連携などにより、機能の不具合が発生する」といった課題が生じる場合があります。
顕在課題②:独自言語の壁で、専門のエンジニアに頼らないと改修できない
海外製SaaSシステムなどに多い独自言語や複雑なテンプレート構造は、社内のWeb担当者や一般的なWebデザイナーでは手を加えることが難しい場合があります。バナー1つの差し替えや簡単なレイアウト変更であっても専門知識を持つエンジニアに修正を依頼しなければならず、作業完了まで数日〜数週間かかるケースもあります。
顕在課題③:軽微な機能追加でも開発費用と期間がかかる
大規模パッケージやスクラッチシステムの場合、新しい決済手段の追加や店舗連携・新基幹システム連携対応などの時代に合わせた新機能を追加しようと、数百万円規模の見積もりと数ヶ月の改修期間が提示されるケースがあります。
結果として、中堅ECの成長にとって重要度の高い「市場のトレンドや顧客の反応に合わせたマーケティングの対応力」が低下し、対応時間による販売機会のロスや売上成長と比例しない維持費が企業の利益率低下に繋がっていきます。
【システムの壁によって起こる施策スピードと成果の差】

ベンダーフリーの「久」が推奨するECシステム選定の視点
当社がECシステム選定・推奨で重視しているのは、システム導入企業の知名度や機能数・連携アプリ数の多さという表面的な部分ではなく、「事業者の利益を最大化できるか」「現場がストレスなく対応力を発揮できるか」そして「中長期的視点で自社のブランドを育てられるか」というビジネスの本質です。
選定をサポート・アドバイスする上で「エンジニアへの依存度」「追加開発コストと時間(トータルコストの視点)」「導入後のサポート対応力」「各種ツール・データ連携の安心感」「ブランドを育てる(ファン化に繋がる機能)」の5つの要素を重視していきます。
海外製「Shopify」と国産「futureshop」を例に、推奨ポイントを解説
当社では、中堅EC企業として売上の壁の突破を目指す事業者に対して、海外製では「Shopify(ショッピファイ)」、国産ではSaaS型ECサイト構築プラットフォームである「futureshop(フューチャーショップ)」をご検討いただくことが多いため、この2つのシステムを例に挙げながら、その特徴や推奨理由を解説します。
「Shopify」の特徴と推奨理由
まず、海外製として世界規模で導入実績が豊富なShopifyは、日本国内だけでなく海外での販売をメインに考えている企業には優先的に推奨していますが、その他の推奨理由として以下2点があげられます。
推奨理由:デザインテンプレートの豊富さ
「Shopify Theme Store」には有料・無料のデザインテンプレートが豊富に揃っているため、海外の有名ブランドが採用するようなスタイリッシュなECサイトを短期間で構築できる点が魅力です。
一方で、デザインの調整や更新を行う際には、Shopify独自の言語である「Liquid」に関する専門知識が必要になる点には注意が必要です。
推奨理由:豊富なアプリの活用でファン育成ができる
「ECサイトは作って終わりではなく、いかにリピーター(ファン)を育てられるか」が重要であり、そのためには日本独自のギフト対応などの「商習慣」に対応する必要があります。この点についても、Shopifyはアプリを追加することで「のし対応」などを実現できます。ただし、アプリの初期設定やバージョンアップ時には継続的な対応が必要となるため、その点については事前にご理解いただいています。
また、ロイヤル顧客の育成に向けて、複数の外部アプリを組み合わせたロイヤリティプログラムを構築することも可能です。例えば、Shopifyの純正アプリである「Shopify Flow(ワークフロー自動化ツール)」を利用すると、CRMの配信スケジュール設定やクーポン付与などのワークフローを簡単に構築できます。
さらに、連携している複数のアプリのワークフローを1つのアプリ上で管理できるため、運用面でも非常に便利です。ただし、導入するアプリが増えるほど月額費用(ランニングコスト)が増加するほか、アプリによっては英語の管理画面での操作が求められる場合もあります。そのため、こうした点を事前に理解した上で導入することをおすすめしています。
「futureshop」の特徴と推奨理由
一方で、国産ならではの安心感やサポート体制を重視する中堅EC企業には、当社としてサイト構築実績が豊富であり、運用開始後の状況も熟知していることから、「futureshop(フューチャーショップ)」を推奨しています。その理由について、いくつか解説します。
推奨理由:売上連動の従量課金の負担が少なく、粗利率を最大化できる「コスト構造」
ECシステムによっては、基本料金に加えて「売上高に応じた一定割合の従量課金」や「追加アプリ・機能の増加」が課されるケースがあります。売上の拡大に連動して支払う手数料が増えるため、売上に連動して利益が増えづらい構造になっています。
対してfutureshopは、売上に対するシステムの従量課金の負担が少なく済みます。基本利用料は月額固定の料金体系であるため、年間売上が1億円から3億円、5億円と伸びるほど、売上高に対するシステムの基本利用費の比率は下がり、事業の利益率が向上していく構造を持っています。中堅ECにとって利益を残しながら健全に事業を拡張するための、合理的な料金形態と言えます。
推奨理由:非エンジニアでも自由なUI改善が可能な独自のCMSが実装されている
施策のスピード感を高める機能となるのが、特許取得済みのfutureshop独自のCMS「コマースクリエイター」です。
ECサイトを構成する要素が「パーツ」単位で管理されており、専門的なHTML/CSSや独自言語などのプログラミング知識がない非エンジニアの現場担当者でも、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で自由にレイアウト変更やページ構築が行える領域が多い特徴を持っています。
例えば「ログイン状態や会員ステージに応じたバナーの出し分け」「期間限定キャンペーンページの即時公開」などの高度な導線改善や施策の実行が、外部のエンジニアに頼ることなく現場担当者のレベルでスピード感を持って対応できる領域を多く持っています。また、エンジニアによる改修対応待ちによる時間的なロスを最小限にし、現場の対応スピードが高められる点が、実際の運営現場の視点で推奨できる理由と言えます。
推奨理由:「ブランドの世界観」を損なわない高いデザイン自由度と進化し続ける機能
多くのECシステムでは、トップページはある程度自由に作れても、例えば「購入手続き画面以降のデザインカスタマイズ」が制限され、突然ブランドの世界観から乖離した画面に切り替わってしまうケースがあります。
futureshopは、カート画面を含めたサイト全体のUI/UXをカスタマイズでき、ブランドの世界観を損なうことなく表現可能です。また、利用企業の現場の声が、運営担当者からも評価の高い「国内のカスタマーサポートチーム」にて集約・エスカレーションされた情報を参考にしながら、年3〜4回程度のバージョンアップにより、追加の開発コストをかけることなく「売れている店舗で活用されている機能」が利用可能な点も推奨理由と言えます。
年間流通額約2,000億円超(2024年時点)を支える、国内拠点を中心とした安定稼働のサーバーと、高いセキュリティ体制を備えている点も、EC運営を支える堅牢な基盤として推奨しやすい理由となっています。
推奨理由:顧客接点・ファン作りの場となる、実店舗連携・顧客データ統合
ECサイトでの販売や接点の重要性は高まり続けていますが、売上の多くを占めている実店舗の顧客の行動や属性がデータ化されておらず、そのデータを連携・統合しないままに全体のブランド施策やマーケティング戦略を考えてしまうケースも残っています。オンラインとオフラインの両面からブランド体験を高め、最適なファン育成の施策・CRM施策を打つためには、会員情報を中心にした顧客ごとの購買履歴や行動データ・ポイントデータを連携・蓄積しなければなりません。
実店舗とECの会員情報やポイントデータを連携するオムニチャネルの構築は、一般的には大規模なシステム改修や多額の投資が必要となるケースがありますが、futureshopが提供する「futureshop omni-channel」は、オムニチャネルの仕組みを構築しようとする、比較的導入しやすいソリューションとして推奨しています。
▼8/27 オンライン開催:Shopifyを例に「海外製」VS「国産」で考える、カートシステム選びの判断基準セミナー
https://www.commercepick.com/archives/99906
本連載で紐解く、ブランドを育て、利益を増やすためのECシステム選定の視点
ECカートシステム選定・リプレイスは、EC事業者にとって失敗が許されないプロジェクトとなります。有名企業の実績が豊富さ、初期費用の安さ、機能面などの表面的な要素だけでは決定は出来ないと考えてます。システム選定時に確認が必要な評価・判断要素は「導入後」(水面下)にあります。
【選定に後悔しないためには、「導入後」に起きていることを確認する】
今後の連載では、EC年商5億レンジを目指す中堅EC向けに、「導入後・選定後に後悔しないための視点」から、株式会社久が14年間にわたり培ってきた知見と運用経験をもとに、「Shopify(ショッピファイ)や「futureshop(フューチャーショップ)を例にしながら、導入後・本格運用後に初めてわかる特徴や機能を解剖し、今後のEC運営に必須となる「ブランドを育てながら利益を残して成長し続ける」たの視点を交えながら解説していきます。
■久(自社ECのリプレイスを検討している企業様向けの相談ページ)
https://www.qinc.co.jp/service/futureshop/
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