Google、Chrome ブラウザのサードパーティ Cookieを2024年後半から段階的廃止
ニュースの概要

Googleは、2024年後半から段階的にChromeブラウザにおけるサードパーティ Cookieを廃止することを発表しています。これによりサードパーティ Cookieを活用した広告配信の効果に影響が出る可能性が高く、デジタル広告を活用した売上が多いEC事業者においては特に対策が必要となるでしょう。改めてサードパーティ Cookieとはなにか、廃止による影響、代替技術であるプライバシーサンドボックスについてご紹介します。

Cookieとは?

Cookie(クッキー)とは、ユーザーが閲覧しているWebサイトから、使用しているスマホやPCなどの端末内に保存される閲覧情報のことをいいます。サイト訪問日や訪問回数、ショッピングカートに追加した商品の情報、購入履歴など、Cookieによって保存される情報は多岐に渡ります。ユーザーの趣味嗜好や、関心事を知るための貴重な情報となるため、広告配信をはじめとする企業のマーケティング活動に活用されてきました。

サードパーティ Cookieとは?

Cookieには「ファーストパーティ Cookie」 と 「サードパーティ Cookie」の2種類があります。「ファーストパーティ Cookie」は、閲覧したWebページからサーバーに直接発行されるCookieです。ECサイトの利用時にログイン情報の入力を省いたり、過去にショッピングカートに追加した商品が引き続き確認できるのはファーストパーティ Cookieによるものです。

一方、「サードパーティ Cookie」は広告配信サーバーなど、ユーザーが閲覧しているWebサイトとは異なるサーバーから発行されるCookieになります。ターゲティング広告の配信やコンバージョン計測に利用されることが多く、広告配信の最適化には欠かせません。

サードパーティCookieの利用規制

日本では2020年6月に公布、2022年4月1日から施行された「改正個人情報保護法」において、Cookieによって保存される情報やIPアドレス、端末IDなどの情報は、個人に関連はするがそれ単体では個人を特定できない「個人関連情報」に該当すると解釈されています。

Cookieによって保存される情報は、他の情報と紐付けることで個人を特定できる可能性があるため、本人の同意が必要になるほか、第三者への提供時の配慮をはじめ、Cookieの活用方法について、企業は対策を求められるようになりました。

また、2018年に施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)では、Cookie情報を名前や住所、電話番号などと同じく個人情報とみなしており、その保護にあたって厳しい規制がしかれています。

こうした状況に対応するため、GoogleやMeta、Criteoなどの各プラットフォーム企業は、Cookieに代わる機能のリリースや対策を進めています。

サードパーティ Cookie廃止によるEC事業者への影響

では、サードパーティ Cookieが廃止されると、EC事業者にはどのような影響が、どの程度あるのでしょうか?

リターゲティング広告やアフィリエイト広告の効果が下がる

リターゲティング広告は、別のサイトを閲覧しているユーザーに自社の商品やサービスの広告を表示させる広告です。自社サイトを閲覧したことがあるユーザーに対して繰り返しアプローチできるため、高い広告効果が期待できます。リターゲティングタグが設置されているWebサイトを訪れた際に、サードパーティ Cookieを活用してリターゲティングタグが発行され、これを活用して配信を行っています。

またアフィリエイト広告は、アフィリエイトリンクをクリックしてページを遷移する際に、経由するサーバーでサードパーティCookieを発行し、アフィリエイト広告経由で流入してきたことを識別する仕組みです。

これらの広告は、サードパーティCookieが活用できないことで、これまで通りの配信ができなくなり、広告効果が下がってしまう可能性があります。

広告の効果測定の精度が下がる

配信した広告からどれだけのコンバージョンを得られたのかを測定するために、サードパーティCookieが利用されることもあります。また、コンバージョンに直接起因した広告だけでなく、興味喚起につながった広告についても計測するアトリビューション計測を行う際にも、サードパーティCookieを活用した計測ツールを導入する場合があります。

サードパーティCookieが利用できなくなることで、広告効果にとどまらず、効果測定の面でも影響を受ける可能性があるでしょう。

ChromeブラウザのサードパーティCookie廃止はどのくらい影響があるのか?

ChromeブラウザのサードパーティCookie廃止による影響を測るため、ブラウザの利用率を確認してみましょう。

PCユーザーの63%がChromeブラウザを使用

PCユーザーの63%がChromeブラウザを使用
出典:Desktop Browser Market Share Japan

StatCounterで2023年、日本のPCユーザーのブラウザの利用率を見てみると、最も多いのはChromeで63.13%、次いでEdgeが22.22%、Safariが6.59%となっています。PCからのアクセスが多いECサイトを運営している場合には、ChromeブラウザのサードパーティCookie廃止による影響が非常に大きくなる可能性があります。

スマホユーザーの33%がChromeブラウザを使用

スマホユーザーの33%がChromeブラウザを使用

出典:Mobile Browser Market Share Japan

同じくStatCounterで2023年、日本のスマホユーザーのブラウザの利用率を見てみると、最も多いのはSafariで61.74%、次いでChromeが33.1%、Samsung Internetで2.4 %となっています。利用者が多いiPhoneのデフォルトブラウザであるSafariの利用率が高いため、ChromeブラウザのサードパーティCookie廃止による新たな影響はPCユーザーに比べ少ないことが予想されます。

ただし、Safariのサードパーティ Cookieによるデータ収集の規制は2017年からすでに始まっており、2020年3月以降、サードパーティ Cookieは完全にブロックされてしまっています。ChromeとSafariの利用率を合わせると94.84%であり、スマホユーザーに対するサードパーティ Cookieは実質利用できなくなるのです。

タブレットユーザーの34%がChromeブラウザを使用

タブレットユーザーの34%がChromeブラウザを使用
出典:Tablet Browser Market Share Japan

同じくStatCounterで2023年、日本のタブレットユーザーのブラウザの利用率を見てみると、最も多いのはSafariで50.49%、次いでChromeが34.36%、Androidの13.63 %となっています。タブレットユーザーについてもChromeとSafariの合計が84.85%と高い割合となり、サードパーティ Cookieはほとんど利用できなくなります。また、AndroidもGoogleが提供するサービスなので、サードパーティ Cookie廃止の影響を受けるでしょう。

サードパーティ Cookieの代替Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)とは

Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)は、Googleが提供する技術の名称で、サードパーティ Cookieを廃止し、データのプライバシーの保護を強化しながら、広告効果を両立する技術として提唱されています。

プライバシーサンドボックスではデータの匿名性を高め、グループ単位での行動パターンを明らかにする手法を取ったり、PCやスマホの端末上で処理を実行し、外部サーバーとの通信を行わないことで個人情報の保護を強化したりする方針がとられています。

2019年にリリースされてからWebブラウザや広告技術会社、広告主、開発者などで構成されるコミュニティメンバーによって、さまざまな技術が提唱されていますが、まだ情報が少なくEC事業者としては対応しにくいのが現状です。サードパーティ Cookieの廃止までに着実に情報収集を進め、対策を講じていく必要がありそうです。

Chrome ブラウザのサードパーティ Cookieの廃止スケジュール

Chromeのサードパーティ Cookieは、2024年後半に廃止する予定と発表されています。もともと2020年の時点で、2年後に廃止予定との発表がありましたが、プライバシーサンドボックスの準備に時間がかかっており、延期された経緯もありました。

2024年後半の廃止までには、下記のスケジュールでテストが実施される予定です。

  • 2023年第4四半期:開発者向けにサードパーティ Cookieが無効化される割合をシミュレーションできる機能を提供
  • 2024年第1四半期:Chromeユーザーの1%に対してサードパーティ Cookieを廃止

また、プライバシーサンドボックスの開発スケジュールはこちらで毎月最新の情報に更新されています。

ますます重要視されるファーストパーティデータ

2020年3月にはSafari、2024年後半にはChromeと、サードパーティ Cookieの廃止が進んでいます。プライバシーサンドボックスのようにサードパーティ Cookieの代替技術の開発も進められていますが、その一方でEC事業者として売上を維持していくために、ファーストパーティデータを確保し、ユーザー獲得に努めることにも注目が集まっています。

一般にファーストパーティデータとして、メールやSNS、POSのデータ、カスタマーサービスなどが活用されます。なかでもEC事業者が活用しやすいファーストパーティデータとして、「リテールメディア」の活用が話題になっています。

リテールメディアとは、「各小売媒体に設置された媒体」のことをいい、自社サイト・自社アプリ上に掲載する広告や、Amazon・楽天市場などのECモール上に出稿する広告なども含まれます。リテールメディアでは、自社で独自に収集した顧客データや購買データ、購買に至るまでの行動データなど(いわゆるファーストパーティデータ)を活用してターゲティングを行い、広告やクーポンの配信を行います。そのためサードパーティ Cookie廃止による影響を受けないのはもちろんのこと、高い広告効果が期待できるのです。

売上の向上に加え、LTV(Life Time Value)の計測や、顧客の購買行動に基づいた適切なコミュニケーションを図っていくことで、ブランド力の向上も期待できるでしょう。

おわりに

Chromeブラウザのサードパーティ Cookie廃止についてご紹介しました。2024年後半に廃止予定ということで、その期限はもうそこまで迫ってきています。Googleは代替技術としてプライバシーサンドボックスの開発を進めていますが、まだ情報が多くはなく、各EC事業者がどの程度影響を受けるのかを正確に測るのは難しいのが現状です。サードパーティ Cookie廃止に代わる技術への対応を進めるのと同時に、リテールメディアをはじめとするファーストパーティデータを活用した売上獲得の方法についても具体的な検討を進めるべき時期がきているといえるでしょう。

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