
Eコマーステクノロジー企業のRokt(ロクト)が、2023年6月9日に初となるプライベートカンファレンス「ROKT DAY JAPAN」を開催。本イベントでは、米国リテール業界の最新動向やECの最先端トレンド、ECの収益性向上を実現するプロダクト「Rokt Ecommerce」の導入企業による成功事例や、Roktのプロダクトロードマップなど、ECに携わる方にとって有益な情報が多く発信されました。今回は、それらの内容をまとめてお伝えします。
この記事の目次
「購入の瞬間」に特化したリテールメディアソリューションを提供するRokt
Roktは2012年にオーストラリアで誕生し、現在はニューヨークに本社を構えるeコマーステクノロジーカンパニー。独自の機械学習技術と、ECサイトを利用するユーザーのファーストパーティデータを活用し、ECにおける購入直後の瞬間(購入完了画面や決済画面)において、一人ひとりのユーザーの関心・嗜好に合った広告を配信します。
EC事業者が、本業である物販・サービス販売の事業収入に加えて広告収入という新たな収益源を得られるようになる一方、その広告枠への出稿が可能な広告主向けソリューション「Rokt Ads」を使えば、広告主ブランドは精度高くターゲティングされた「買い物モード」にあるユーザーに対しリーチすることができるのです。
昨今耳にすることが多くなったリテールメディアは、ECサイトや小売業者が顧客とのタッチポイントをメディア化し、広告配信に活用する仕組みですが、Roktは「購入の瞬間」に特化した形で、ECサイトのリテールメディア化を支援していると言うことができるでしょう。

本イベントではまず、Roktアジア統括事業開発責任者の三島健氏がステージに立ち、今後のEC・小売業界の展望を語りました。
リテールメディア広告は「デジタル広告第3の波」とも呼ばれていますが、その市場規模は第1の波=検索広告、第2の波=SNS広告の浸透スピードと比較しても、一段と速いペースで急拡大していることがわかります。

期間と年平均成長率(Insider Intelligence)
リテールメディア広告では、買い物行動中のユーザーにリーチできるためタイミングの優位性があるほか、ファーストパーティデータの活用によって個々の顧客に対して配信する広告を最適化することも可能なため、活用次第で高い広告パフォーマンスが生み出せると注目されています。リテールメディアの成長は米国市場に限った話ではなく、予測では日本のリテールメディア市場も2023年から2026年にかけて3倍超の成長を遂げると言われているのです。
今後10年で、リテール企業の利益の50%は「本業外収益」に

(How Egnite 2 expantion can power the future of retail (Bain & Company))
上図は小売業の売上・利益の構成比の変化予測を示したグラフ。三島氏は、2021年時点では売上・利益ともに9割が小売によって構成されているが、2030年には本業での売上は65%、利益は50%へと変わっていくという予測を紹介しました。その分、周辺領域の事業の強化が必要となり、特にその変化のドライバーとなるのが、データアセットを活用したリテールメディア事業というわけです。
実際に世界トップのリテールカンパニーであるWalmart社のドメイン別成長率を見ると、広告領域での成長率がずば抜けて高いことがわかります。

(Walmart社Q4 Earning資料)
このような小売業界の収益モデルの変化を前に、自社の持つファーストパーティデータの価値に気づき、いち早く付帯収益の創出に取り組み始めているのが、Roktを導入している各EC企業と言うことができるでしょう。
イベントでは、実際にRokt Ecommerceを導入しているWILLERの藤光昭洋氏が登壇し、導入の背景や導入後の実績について語りました。

高速バスの予約サイトとして業界最大規模である「WILLER TRAVEL」(以下、WILLER)は年間405万人が利用する移動ポータルサイト。藤光氏は次のように語ります。
「ECサイトをマネタイズすることは重要なこと。WILLERが本来提供するのは移動サービスですが、サイト上で発生するトランザクションを活かして付帯収益を得られれば、お客様に還元するための新しい投資ができるようになります。そう考えると導入はスムーズでした。」
導入以降の収益パフォーマンスについて、収益性指標であるeCPM*の水準が時間の経過とともに向上していることも紹介。Roktの松田氏は以下のようにその背景を説明しました。
「機械学習によって、徐々にWILLERを利用するお客様についての理解が進み、eCPMが断続的に向上したことが1つ目の要因です。また、Roktのエコシステムは、ECパートナーが増えることで広告在庫が豊富になり、コンテンツ(広告キャンペーン)が拡充され、パートナーの収益が引き上げられるという仕組みができあがっています。WILLER様に導入いただいてからの1年で複数のパートナーに導入いただき、このエコシステムが拡大したことも収益が伸びた理由の1つです。」
*eCPM: 広告1000回表示あたりの収益効果。

コストセンターである決済ページも、今後は収益源に
またイベントの最後には、Rokt Ecommerceの新展開となる新サービス「Rokt Payments Marketplace(ペイメントマーケットプレイス)」についても発表されました。
決済サービスプロバイダーに対して支払う手数料は、EC事業者にとって決して小さな負担ではありません。それゆえ、決済画面はこれまでECにおける「コストセンター」(利益を生まず、コストだけがかかる場所)と捉えられてきました。
Roktは、この決済画面に収益を生み出す可能性があると注目。クレジットカードや後払い(BNPL)、デジタルウォレットなどの決済サービスプロバイダーにとって、ECユーザーがまさに買い物をしようとしている瞬間は、顧客にリーチする絶好のタイミングと言えます。そこで、決済画面において、これら決済オプションのオファーを表示できるプロダクトを実現したのです。

Roktカスタマーサクセス部門の小林奈央氏
決済成立直前にオファーを出すという仕組み上、離脱も懸念されるところですが、実際にはコンバージョン率への影響はほとんどなく、そこを大きく上回る収益が生めているとのことで、新たな収益軸の創出を模索している事業者にとっては関心の的になるソリューションといえるでしょう。
WILLERの藤光氏も、ペイメントマーケットプレイスについての期待を次のように語りました。
「ECを運営している事業者の皆様は共感してもらえるはずですが、決済手段が今非常に増え、決済手数料も高騰しており、これが収益を圧迫する一つの要因になっています。現在提案を受けているペイメントマーケットプレイスを通して、決済ページの収益構造を変えられることを期待しています。」
イベントに参加して:一歩踏み出して新たな収益源を獲得するチャンス
筆者は本イベントに参加する前まで「ECサイト上に広告を掲載すると、掲載企業の商品が売れなくなってしまうのでは?」と思っていました。しかし、Roktアジア統括事業開発責任者の三島氏や、実際にRoktを導入しているEコマースパートナー各社と話をする中で、Roktはカスタマージャーニーの最終地点である決済ページや購入完了ページに広告を表示することで、「顧客のお財布を奪い合わない、効果的な広告配信」が可能な仕組みであることがわかりました。

例えば、チケット予約サイトや旅行予約サイトなどのサービス系ECは、明確にそのサービスを利用する目的があるため、物販系ECの広告が表示されたとしても導入企業のサイトを利用する頻度が落ちることは考えづらいです。広告主はサービス系ECサイトの会員データをもとに、顧客となりやすいターゲットに広告を表示させられるため、広告効果が上がりやすくなります。
上記はあくまで一例ですが、ECサイトの既存の売上を損なわず収益をさらに上乗せさせられるよう、Roktではこれまでに2億ドルを超える研究開発投資を行っているといいます。ECを運営する全ての事業者が、自社のECサイトを伸ばし、収益を向上させることに日々考えを巡らせていると思います。収益をますます向上させたい、もしくはより効果的に広告を出稿したいと考えている事業者は、グローバルで多くの成功実績を持つRoktに問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
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