予約販売・受注生産の決済運用に注意 クレカのオーソリ期限短縮で何が変わるのか

クレジットカード決済の「仮売上」をめぐり、国内の決済代行会社が実売上可能期間を短縮する動きが広がっています。影響が大きいのは、予約販売、受注生産、取り寄せ商品など、注文から出荷までの期間が長いEC事業者です。

Visa/Mastercardのブランドルール変更を受け、今回確認した一部の決済代行会社では、これまで60日〜90日程度としていた実売上可能期間を25日程度に短縮する対応を案内しています。カート会社各社も、これに伴い、自社サービスを利用するEC事業者に向けて注意喚起を行っています。

たとえば、GMOペイメントゲートウェイは2026年7月23日から実売上可能期間を60日から25日へ、ゼウスは2026年9月ごろをめどに90日以内から25日以内へ短縮する予定です。

なお、カードブランドが定める承認後の処理期限と、決済代行会社が加盟店向けに設定する実売上可能期間は、厳密には同じものではありません。本稿では、各決済代行会社が公表している変更内容をもとに、EC事業者が確認すべき実務を整理します。

仮売上とは 出荷時などに請求を確定する仕組み

クレジットカード決済には、注文時に売上を確定する「即時売上」と、注文時にはカードの利用枠を確保し、出荷時などに売上を確定する「仮売上・実売上」があります。

仮売上は、在庫を確認してから発送する商品や、予約販売、受注生産など、注文から出荷までに時間がかかる取引で利用されています。ただし、仮売上の状態には期限があり、所定の期間内に実売上へ切り替えなければ請求を確定できません。

今回、対象となる決済サービスでは、この実売上可能期間が25日に短縮されます。注文から出荷まで25日を超える場合は、利用中の決済サービスによっては、期限内に改めて与信を取得する再オーソリや、購入者による再決済が必要になります。

期限の考え方は以前から存在 変わるのは加盟店向けの運用

VisaやMastercardには、以前から承認後の取引処理期限が設けられています。Visaの公開ルールでは、日本国内取引の最大処理期間として30暦日が示されています。

Mastercardの公開ルールでも、承認の種類に応じて異なる期限が定められています。たとえば、Final Authorization(最終金額が確定し、原則として取引完了を前提に取得する承認)に対応する取引は、原則として承認日から7暦日以内に売上データを提出する必要があります。

ただし、こうしたカードブランド上の分類が、国内の決済代行会社における「仮売上」と一対一で対応するわけではありません。また、30日や7日という期限が2026年に初めて作られたのではなく、国内の決済代行会社が、これまで60日や90日としていた加盟店向けの実売上可能期間を25日に変更する点が、今回の実務上のポイントです。

EC事業者はカードブランドのルールを直接運用へ当てはめるのではなく、利用中の決済サービスが公表する実売上可能期間と適用日を確認する必要があります。

予約販売や受注生産は何を見直すべきか

アパレルの予約販売、発売日前商品、名入れ商品、家具や家電の受注生産、メーカー取り寄せなどでは、注文から出荷まで25日を超えることがあります。

この場合、注文時に取得した仮売上を出荷まで保持できない可能性があります。対応としては、25日以内に改めて与信を取得する「再オーソリ」や、出荷前に購入者へ再決済を依頼する運用が考えられます。

ただし、再オーソリは必ず成功するわけではありません。カードの有効期限や利用可能額などにより、エラーとなる可能性があります。エラー理由は購入者の個人信用情報に関わるため、必要に応じて購入者本人からカード発行会社へ問い合わせてもらうことになります。

商品を発送した後に売上確定漏れやシステム連携エラーが判明すれば、代金を回収できないおそれがあります。

SBペイメントサービスは、一部の国際ブランドでは、与信取得からカード会社への売上データ到着まで7日を超えると、請求遅延としてチャージバックできるルールがあると説明しています。ただし、7日を超えた取引がすべて自動的にチャージバックされるわけではありません。利用否認などの問題が発生し、対象取引がブランドルールに該当した場合にリスクが表面化します。

PAY.JPでは海外発行カードが最大7日に

海外発行カードの扱いは、利用する決済サービスによって異なります。

PAY.JPでは、2026年8月中に予定する仕様変更後、海外発行カードで7日を超えるオーソリ期間を指定しても、期限は最大7日に短縮されます。日本国内発行カードの挙動は変更されません。PAY.JPは、支払作成時に返却される「expired_at(実際に取得できたオーソリの失効日時を示す項目)」を基準に管理するよう推奨しています。

加盟店が30日を指定していても、返却された期限が7日後であれば、その日時までに売上を確定する必要があります。PAY.JP以外のサービスを利用する場合も、海外発行カードの実売上可能期間を個別に確認することが重要です。

金額変更やカード有効性確認もサービスごとに確認

一部の決済代行会社では、実売上可能期間の短縮とあわせて、他の仕様も変更します。

ゼウスは、仮売上時と異なる金額で売上を確定できない仕様へ変更します。金額を変更する場合は、変更後の金額で改めて仮売上を取得する必要があります。送料、欠品、同梱、量り売りなど、注文後に請求額が変わる店舗は、現在の運用を継続できるか確認が必要です。少額の仮売上を使った有効性確認については、仮売上方式では0円での与信決済へ変更するよう案内しています。

また、fincode byGMOは2026年9月30日から、カードの有効性確認を目的とした、売上確定を伴わない仮売上を禁止します。1円などの少額オーソリではなく、専用の有効性チェックを利用する必要があります。

これらは、すべての決済サービスに共通する変更ではありません。利用中のサービスで、金額変更、有効性確認、取消などの仕様が変わるかを個別に確認してください。

EC事業者が確認したい5つのポイント

まずは、次の項目を確認する必要があります。

  • 自社のカード決済が即時売上か仮売上か
  • 注文から出荷まで25日を超える商品があるか
  • 実売上が自動か手動か、処理エラーを検知できるか
  • 再オーソリ失敗時の再決済、顧客連絡、キャンセル条件が決まっているか
  • 金額変更やカード有効性確認の仕様変更があるか

即時売上を利用している場合、実売上可能期間の短縮による直接的な影響は限定的です。ただし、カード有効性確認や取消処理など、決済代行会社が同時に変更する仕様は別途確認が必要です。

また、予約商品では、決済を早めに確定すればよいとは限りません。PAY.JPは、商品やサービスの提供前に売上を確定すると、配送遅延やキャンセル時にチャージバックが発生するリスクがあるとして、事前決済を非推奨としています。

まとめ

今回の変更は、決済担当者だけの問題ではありません。予約販売の開始時期、在庫や出荷の管理、決済システムとの連携、再決済時の顧客対応まで含めた受注設計に関わります。

まずは利用中の決済代行会社の案内を確認し、注文から売上確定まで25日を超える取引がないかを洗い出すことが重要です。

期限を超える商品がある場合は、再オーソリや再決済を前提に、システムと顧客対応の双方を整えておく必要があります。

引用文献
・Visa「Visa Core Rules and Visa Product and Service Rules」(2026年4月18日版)
・Mastercard「Transaction Processing Rules」(2025年12月9日版)
・GMOペイメントゲートウェイ「クレジットカード決済 概要
・fincode byGMO「ブランドルール変更に伴う仕様変更について
・ゼウス「ブランドルール変更に伴う仕様変更のご案内
・PAY.JP「海外発行カードで取得できるオーソリ期限を「最大7日まで」に制限いたします(2026年8月開始予定)
・SBペイメントサービス「クレジットカード決済 サービス概要

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