
株式会社インクワイアリーの後藤です。
近年のEC市場はコロナ禍のECバブルを経て競争が激化しています。
商品が溢れ、顧客が気軽にさまざまなチャネルから購入できる一方、広告コストの増加や配送スピードの競争など、販売者にとっては非常に厳しい時代となっています。
実際に当社のクライアント様も、必ずしも順調に事業展開が進んでいるわけではありません。
そんな中、ShopifyやBASEなどの自社EC、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのモールECに共通して重要になるのが「独自性」であり、その鍵を握るのが「ECクリエイティブ」です。
今回は、EC事業者が「売れるクリエイティブ」を作るための設計方法について解説します。
この記事の目次
ECクリエイティブの2つの軸

ECクリエイティブは大きく「情報設計」と「体験設計」の2つの要素から成り立っていると考えています。
情報設計
- ビジュアル
商品写真(物撮り、イメージ写真、利用シーン)やイラスト(商品の効果、使用方法、食べ方などを直感的に伝える図解)、さらに最近だと制作のハードルが下がり、ブランディングに効果的な動画コンテンツなど、顧客の購買意欲を高める視覚的なビジュアルアプローチをすることができます。 - ライティング
商品のキャッチコピーや商品名、SNS投稿内容、商品のベネフィット説明など、あらゆる場面のライティングも売れるために重要なクリエイティブになります。 - 情報階層・構成
商品ページやランディングページ(LP)の構成、情報の順序、サムネイル画像や広告バナーの設計など、情報の構造化も重要な要素です。
体験設計
- UI/UX設計
特に自社ECでは、ユーザーが迷わず快適に購入できるように、カテゴリの整理や検索機能を整え、コンバージョンへ導く導線設計が不可欠です。 - 信頼性の構築
レビューやお客様の声、UGC(ユーザー生成コンテンツ)、専門家のコメント、ランキングなど、顧客に「このショップで買っても大丈夫」と感じてもらえる信頼性を高めるコンテンツは必須です。 - パーソナライズ&ダイナミックな要素
お気に入り追加や閲覧履歴に基づくバナーやキャンペーン、レコメンド機能、在庫希少アラート、限定数表示など、個別の顧客に適した訴求方法を取り入れることで購買意欲を高めます。 - 購入後のフォローアップ
購入後も継続的に顧客との関係性を深め、リピート購入やUGCにつなげます。ブランド紹介リーフや同梱物(カードや冊子)、サンクスメールやLINEなどの活用が効果的です。
ECクリエイティブは、「情報」と「体験」を綿密に設計・実行してこそ効果を発揮します。
自社ECにおけるクリエイティブ戦略
以前ある自社ECのクライアントでは「ブランドらしさ」の定義が曖昧で、サイトや全体のトーンにも一貫性がありませんでした。
その結果、訪問者がブランドの世界観を十分に理解できず、新規・リピーター共に定着しにくい状態が続いていました。
そこで弊社は、まず具体的なペルソナ設定を行い、その顧客像に合わせたブランドガイドラインを策定しました。
サイト全体でキーワード・カテゴリの設定、カラーやフォント、コピーの統一を図り、季節に合わせた特集も企画しました。
これらの施策を行った後、ユーザー参加型の企画が盛り上がったり、実店舗との融合をうまくはかれたりといったポジティブな声が増えていました。
このようにブランドの一貫性を明確にすることで、顧客の「共感」や「安心感」を引き出すことが可能になります。
モールECにおけるクリエイティブ戦略

モールECはトップページのテンプレート化やデザインガイドラインの制約がここ数年で大きくアップデートされています。
そんな中で、重要になるのが入口となる商品ページ(LP)です。
SKUの多いモールECのあるクライアントでは、商品ページ(LP)への訪問は多いものの、シンプルなサムネイルだけのページで離脱が多く、全体的な流入につながらないという課題がありました。
分析の結果、各ページは写真の印象が良くないうえにテキスト量が不足し、情報も整理されていないため、訪問者が必要な情報を見つけにくい状態であることが判明しました。
そこで弊社では、自社で設計した「LP設計テンプレート」を用いて情報の優先順位を整理。特に最初に見る画像やコピーをわかりやすくし、商品の魅力を端的に伝える構成に変更しました。
また、商品のベネフィットや使い方を明確に伝え、ユーザーが短時間で商品を理解できるよう改善を行いました。
結果、日の目を見なかった商品のアクセスや反応が増え、ページの訴求力・アクセスが向上しました。
このように、情報設計の改善だけでも顧客の満足度や理解度を高めることができます。
AIを活用したECクリエイティブ
近年、AIの進化に伴い、弊社でもライティングやキーワード選定はもちろん、競合LP分析や差別化ポイントの抽出、販売戦略の立案にもAIを積極的に導入しています。
また、CSVデータから売上分析や改善提案を自動化するなど、幅広い分野でAI活用しております。
今後はよりビジュアル面の写真や動画の制作もAIにより容易に実現可能になると予測しています。
まとめ
ECクリエイティブは単に「写真が綺麗」「ページがおしゃれ」という表面的なことだけではありません。
情報を整理し、体験を設計してこそ、顧客を迷わせず購入へ導き「ここで買って良かった」と思わせることができます。
デザイン、コピー、UX、信頼構築、パーソナライズ、購入後フォローまでをデータで検証しながら一貫して改善し続けるそれが売上とブランド価値を最大化する、今求められる総合的なECクリエイティブです。
株式会社インクワイアリー
https://inquiry-inc.jp/
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