
最近、バーチャレクス・コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:丸山勇人)が「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施した結果、2025年版第五弾が発表されました。
■これまでの2025年調査結果
【第一弾】
「カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む」
【第二弾】
「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上
【第三弾】
タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響
【第四弾】
フェーズ分けで変わるカスタマーサクセスの成果/サクセスロードマップが新規獲得・継続売上を大幅に伸ばす
■今回の分析テーマ:カスタマーサクセスを自社で取り組んでいる839人対象
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カスタマーサクセス導入・運用にあたっての課題
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カスタマーサクセス運用課題解決のための取り組み
カスタマーサクセス導入・運用にあたっての課題
カスタマーサクセスの導入・運用にあたって、必ずと言って良いほど発生する運用上の課題に関する調査が行われました。この調査では、839人のカスタマーサクセス関係者が直面している悩みや障壁と、それを克服すべくどのような取り組みが行われているかに焦点が当てられています。
現在は解決済みの課題も多いものの、導入当初に感じた課題や障壁について調査を行った結果、カスタマーサクセスの効果実感層と未実感層の比較において、問題を早期に明確化し、対処できた企業が成功に繋がった一方で、課題を低く認識している企業は成果に差が生じる傾向が明らかになりました。
まず、効果実感層(n=494)の中で最も多かった課題は「何から手をつけたらよいか分からない/マニュアルがない」(46.0%)であり、次いで「人材や組織体制が不十分」(28.1%)および「上層部の理解不足」(27.7%)」といった障壁が挙げられます。これらの解決に成功した結果、彼らは「効果を感じている」とされています。

この一方で、効果未実感層(n=345)の結果では、第一位が「特にない」(46.4%)」で続いて「何から手をつけたらいいのか分からない」(32.5%)」という結果が得られました。課題認識が低い企業は問題を抱えていても「特にない」との回答をしがちであり、経営層の理解不足や人材不足などの障壁が潜在的に存在し、十分な成果を得られない可能性があります。さらに、ツール導入やKPI設定、顧客セグメント化の基礎的な運用が不十分なことも、効果を阻む要因とされています。

次に、「現在解決すべく取り組んでいる課題」についての質問では、効果実感層の回答で最も多いのが「特にない」(37.0%)」で、導入・運用の基礎を整えた企業が多い傾向があります。しかし、「経営層/上層部の理解が得られない」(25.9%)や「人材・組織体制が不十分」(22.5%)」など、より組織的・戦略的な課題も浮上しています。これは、初期的な悩みを乗り越えた企業が次なる経営への説明責任や組織横断の連携、成果指標の設定・評価等、高度な課題に直面していることを示しています。

対して、効果未実感層では依然として「特になし」(48.1%)」が最も多く、課題認識が薄いままで施策を続けていることが推察されます。具体的な対策なしに進めているため停滞していると考えられ、組織面での課題が存在しつつも解決が進んでいない状況が成果低迷の一因とされています。また、KPI/KGI設定の難しさやツール導入費用の負担、顧客のセグメント化に難しさ等、基礎的な運用体制の整備に課題を抱えているとも言え、これらがインジケーター設定や顧客データ活用の不足に繋がっているとされています。

カスタマーサクセス運用課題解決のための取り組み
さらに、カスタマーサクセスにおける課題解決の取り組みについても調査が行われました。
まず、「過去に取り組んだことがあるもの」に関する結果では、効果実感層からは「外部専門家に依頼/相談」(46.0%)が特に多く見受けられ、さらに「日本語・外国語の書籍やオンライン記事の情報収集」「オンラインコミュニティへの参加」などで多様なチャネルを通じて知見を得ようとする姿勢が明確になりました。また、「人材育成プログラムの作成」や「評価基準/制度の見直し」などの内部施策に積極的に取り組んでいる様子も確認されました。

一方で、効果未実感層からは「特になし」(51.0%)」という回答が過半数に達し、具体的行動が低い点が際立ちます。効果実感層が外部リソースや学習機会を活用し、制度改革やコミュニケーション強化に取り組んでいるのに対し、未実感層は行動が不足しているため、カスタマーサクセスの効果を得にくい構図になっています。

次に、「現在取り組んでいること」については、効果実感層で「日本語の書籍やオンラインの記事を読んで情報を収集」(35.8%)や「外国語の書籍やオンラインの記事を読んで情報を収集」(23.5%)といった外部情報に積極的にアクセスする企業の割合の高さが見受けられます。外部専門家に依頼して課題を明確にすることで、継続的な学習を進めている企業も多いようです。一部企業は「特になし」とも回答していますが、海外事例や外国語に関する情報を取り入れている動きも注目されています。

一方、効果未実感層では、「特になし」(48.7%)」が約半数を占め、具体的取り組みが2割以下に留まる結果が見受けられます。このため、効果を実感している企業は多様な学習・交流手段を併用して主体的に課題解決に向けて行動しているのに対し、未実感層はカスタマーサクセスへの危機感が薄く、情報収集や専門家活用を行わず停滞していると思われます。その結果、十分な効果を得られず、悪循環に陥っている状況が現れています。

課題認識と解決への行動意欲の差
今回の調査結果では、企業における課題の早期認識とその 明確化が、カスタマーサクセス施策の成功に欠かせない要素であることが鮮明に示されています。導入初期に抱えた課題を戦略的に解決し、経営層や現場を巻き込んで改善策を実施する企業は、その後「効果を感じている」結果に結びついています。具体的には、情報収集や外部専門家の活用、人材育成プログラムの整備など、多面的なアプローチが施策の成果向上に寄与していることが確認されました。
逆に、課題認識が低い企業や、対策に手遅れた企業では、必要な改善策が実施されず、カスタマーサクセス施策の効果が得られないことが明らかになっています。これにより、課題解決が限られた方法に偏るか、行動に移さない傾向が強くなっており、結果として施策全体のパフォーマンスやカスタマーサクセスの組織内定着度に大きな差が生じると考えられます。総じて、早期認識と多面的かつ積極的な実施が、持続的なカスタマーサクセスの実現に繋がることが判明しました。
【調査実施概要】
「2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025年2月21日~2025年2月26日
・対象地域 :全国
・対象者 :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138人
出典元:バーチャレクス・コンサルティング株式会社