
<調査サマリ>
- 全世代が管理職に求めるのは「チームの雰囲気づくり」「褒めて伸ばしてほしい」
- 世代を問わない管理職離れ・・・半数以上が管理職拒否
- 管理職志望理由は「収入アップ」
- 良い上司との出会いが管理職志向を大きく左右、約3割は未だ出会えず
- 女性の約6割は管理職を望まずも、現役女性管理職の満足度は高い
EC業界では、急速な市場拡大に伴い以下の人材課題が顕著です。デジタルマーケティングやデータ分析など専門的スキルを持つ人材は慢性的に足りておらず、加えて進化するAIツールへの適応も求められるなど、求められる要件は増え続けています。
また、多様化する消費者ニーズに対応するため、クリエイティブ能力やカスタマーエクスペリエンス向上のための柔軟性を持つ人材が求められています。一方で、慢性的な人材不足が業務負担を増加させ、離職率の上昇を招いています。
そんな中で、時代にあったマネジメントを行うことで優秀な人材を育てていくことはどの企業にとっても重要な経営戦略の一つとなるでしょう。
フリーランスプロ人材マッチングのITプロパートナーズや、「上司代行」のメンタープロパートナーズを提供する当社が1月に公開した「管理職に対する意識調査」の結果をもとに、現代において求められているマネジメントスタイルはどのようなものかを紐解いていきましょう。
木村 直人
株式会社Hajimari
早稲田大学卒業後、大手損害保険会社を経て、株式会社アトラエ入社。成功報酬型求人サイト「Green」の立ち上げから関わり、仕組みを作る。その後人材系のベンチャー企業に参画し、取締役COOに就任。新規事業としてIT分野のプロフェッショナル人材を活用する「ITプロパートナーズ事業」を立ち上げる。 2015年4月より「ITプロパートナーズ事業」を業務移管させる形で、株式会社ITプロパートナーズ(https://itpropartners.com 現:株式会社Hajimari)を創業。代表取締役に就任。
この記事の目次
令和の理想的なマネジメント像とは

700名のビジネスパーソンに、どのようなマネジメントを希望するかを聞いたところ、全世代において「チームの雰囲気を良くすること」が最重視されていることが明らかになりました。「長所を褒めて伸ばす」指導を求める声は、「厳しい指導」を望む声の倍以上に上りました。
また、プライベートでの交流を求める声は最も少なく、ビジネスライクな関係を望む傾向が強い特徴も見受けられます。
指導・管理能力の高さが管理職のスキルとして評価された時代から、育成やコミュニケーション力の高さが重視されるようになってきたことが見て取れます。

理想の働き方を聞いたところ、「オン・オフをはっきりさせ、プライベートを大切にする」が260人で最多となり、次いで「本業の給与をしっかり上げていく」が213人、「成果にこだわらず、ストレスフリーでゆるく働き続ける」が172人と続きました。一方、「出世して組織を率いる」という回答は72人にとどまりました。
かつての出世競争や、肩書きを重んじる働き方への魅力は多くの人にとって薄れつつあるようです。
さらに、ワークライフバランスを重視しながらも、「本業の給与をしっかり上げていく」(213人)、「投資や副業で会社に依存しない収入を作る」(136人)という収入にまつわる回答も多く見られました。
賃金の上がりにくい社会状況の中で、プライベートの時間を確保しながらも、収入をしっかり得たいという傾向が強く出ています。
EC業界においても、デジタル化の進展とともに働き方は多様化し、終身雇用や年功序列がなくなりつつあります。その中で、会社への依存度を下げるキャリア戦略や、多様な収入源を模索する傾向は今後もますます強まっていくでしょう。
進む管理職離れ、全世代で浮き彫りに

管理職になることに否定的な意見をもつ人は約51%で、ビジネスパーソンの管理職離れが改めて明らかになりました。結果に世代による違いはほとんど見られず、まんべんなく分布していることから、どの世代でも管理職を避ける人が多いことが判明しています。

管理職を志向する人のみに、理由を聞くと「収入が上がるから」が最も多い回答となりました。これは「社内で出世したい」「自分の裁量が高まる」よりも多い回答数です。
「失われた30年」ともいわれ、賃金が上がらない日本において、管理職になりたい理由は、権威ややりがいよりも、収入の増加がメインの動機となっているようです。

管理職を望まない人に理由を聞くと「責任が重すぎる」「仕事量が増える」が上位となり、「プライベートの時間が減る」「メンタル面での不安」と続き、管理職の負担の増加をネガティブに捉える人が多いことがわかります。
また、「給与面でのメリットを感じない」という回答が92人にのぼっており、管理職としての責任や負担に見合う待遇が期待できないと感じている人が多くいるようでした。

管理職に対するイメージを聞いた設問では、「憧れ」や「かっこいい」などのポジティブな意見は少数派で、「ストレスが多い」(318人)「仕事が忙しくなる」(263人)などのネガティブな回答が多く見られました。
「部下の育成責任がある」(252人)という回答も多く、特に40代以降では責任感や業務負担への意識が顕著に高まっています。また、「収入が増える」や「社会的な地位が上がる」といった管理職のメリットは一定の支持を得ているものの、ネガティブなイメージの回答が優勢でした。
若い世代では一部に管理職への興味が見られるものの、年齢が上がるにつれて管理職の現実的な負担や責任が強く意識される傾向が明らかになりました。
良い影響を与える上司との出会いが管理職志向を大きく左右

過去に良い上司がいたか、その上司の存在によって管理職になることへの考えがどのように変化したかを尋ねたところ、「非常に良い上司がいた」と感じている層(113人)では、約67%(76人)が管理職を選択肢として考えるか、積極的に目指したいと回答しました。良い上司との出会いが、次世代のマネジメント人材育成のポイントとなる可能性があることがわかります。
一方で「上司との関わりがほとんどなかった」層の約76%が「管理職は絶対に避けたい」と最も否定的な回答を選びました。上司というロールモデルに関わらなかった場合、管理職に対し拒否感を感じる傾向もあるようです。

良い影響を与えた上司・指導者の属性を聞いたところ、新卒生え抜きの人物の割合は約21%に過ぎず、半数以上が自社外を経験した人の存在を挙げています。顧問や業務委託パートナーなどの社外人材を挙げる人も98人と一定数いることから、多様な経歴を持つ上司から良い影響を受けている実態が明らかになりました。
また、「いない」と答えた人が約28%と圧倒的最多の回答となったことから、良いマネジメントができる人材や、その育成体制の不足を示唆してます。
女性の約6割が管理職望まず

管理職になることについてどう考えているかという質問では、大きな男女差があることがわかりました。女性の約61%が「管理職になりたくない」と回答しており、男性の約37%と比べて明らかに多い回答となりました。
避けられがちな管理職、経験者の満足度は高め

男女問わず管理職150名を対象に「管理職という立場への満足度」について聞くと、「非常に満足している」と「まあ満足している」が全体の約半数を占めました。「どちらともいえない」を含めると、約8割の管理職が一定の納得感や現状維持の意識を持っていることがわかります。
加えて現役の女性管理職で管理職満足度に関して「非常に不満」「やや不満」と答えた人は27%にとどまり、72%はポジティブな評価をしています。
一方で、「非常に不満がある」と「やや不満がある」と答えた人も31人(20.6%)存在し、管理職としての役割や責任に対する負担感が一部で見られました。
まとめ
調査から、令和におけるリーダーシップは、プライベートと仕事の境界を明確にしながら、チーム全体の調和を保つことが求められているとわかりました。全員一律のマネジメントで統制をとることは難しくなっており、マネジメントの難易度は上がっています。
加えて、管理職人材を育成するためには、組織における上司との関係性も重要であることが明らかになりました。「良い上司との出会い」が管理職志向に大きな影響を与えるという結果は、次世代リーダーの育成において、質の高いマネジメント経験の提供が極めて重要であることを示唆しています。
働く人々の気質の変化に伴い、求められるマネジメントのスタイルも変わる必要が生じています。今の時代において、旧来型の“軍隊調・指揮命令系”のリーダーシップ・スタイルのままでは、多様な価値観を内包するチームを率いることは難しいでしょう。一方で、それは必ずしも「ソフト」に「優しく」指導することを意味しているわけではありません。最終的にはビジネス上の成果を上げることがマネジメントに求められているからです。
管理職離れや人材育成の難しさは、EC業界においても重要な課題です。当社にも、EC業界の企業様から「マネジメント層がいない」「若手に指導しても成長が見られない」など、人材育成にまつわる相談が日々寄せられています。
よくよくお話を聞いてみると、指導方法に特に工夫をしていないという企業様も多くいます。まずは、「自分が育ってきたパターンで若手に接することはできない」という自覚からはじめ、一歩ずつ変わっていくことが、EC業界を成長させるビジネスパーソン育成のカギとなるでしょう。
・調査概要
調査概要:管理職に関する実態調査
調査方法:インターネット調査(QIQUMOを利用)
調査時期:2024年12月
有効回答:ビジネスパーソン700名
年齢:20代から50代まで、各世代150名ずつ
属性:メンバーマネジメントを伴う管理職150名、それ以外の会社員550名
≪アンケート利用条件≫
1 調査結果は自由にご活用ください。但し情報の引用元として「ITプロパートナーズ」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、引用元として、下記リンクを設置してください。
URL:https://biz.itpropartners.com/blog/report/2678/
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