記事の概要

楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、エース株式会社(収録当時)の北山さんに、卸売メインの企業が新規でECサイトを立ち上げ、直販することをテーマにお話いただく回をご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
北山 浩さん
エース株式会社 第三事業部 次長(収録当時)
メーカー直営ストア「ACE Online Store

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」

卸売から直販へ?新たにECサイトの立ち上げを

柳田さん:大手企業におけるECの立ち上げについてお話をお伺いしていきます。普段は経営者の方にお話を伺っていますが、今回のゲストである北山さんはそうではない、特徴的な回になっています。

北山さん:元々は一担当者からスタートして、現在の職責は事業部を見るポジションです。

柳田さん:会社としてはECがゼロの状態だったとお聞きしています。

北山さん:卸売業が中心でしたので、BtoBを差し置いてBtoCに力を入れていくとなると、社内において非常にアウェー感が強かったです。

柳田さん:北山さんはどんなタイミングでBtoCの現場に参加することに?

北山さん:私達の商品は平均購買年齢が45歳以上です。俗に言うF1層と言われている方には知られていないわけです。そのような方に向けて新しいカテゴリーとしてチャレンジしていくための事業部を作った際に、オープニングスタッフとしてではありませんでしたが、そこの事業部の一員に加わりました。営業をやるのかと思っていましたが、誰もできる人がいないからと、ECの業務を振られることからスタートしています。

柳田さん:ECについての知見はあったのですか?

北山さん:お客様としては利用していましたが、運営側としては携わったことはありませんでした。ただ、社内の中ではPCを使いこなしていたほうだったため、デジタルアレルギーはなかったんです。

号令は社長から!トップが動く重要性

柳田さん:ECを始めることになったのは、どなたが声を上げてやることになったのでしょうか。

北山さん:社長です。社長の号令のもと事業部ができ上がり、各既存の部署から人員が集められました。私は事業部の立ち上げから半年遅れでジョインしたため、店舗はオープンしており、ECも既に走りつつある中で、ポンと放り込まれた状況です。スタートから入っていれば、全容がわかったんですが、走っている電車に飛び込むように担当することになりました。それからは勉強の日々です。ベンダーさんに聞いたり、ネットなどで記事を読んだり、情報収集することを習慣化し始めます。

柳田さん:それは何年のお話なんですか?

北山さん:2010年です。

柳田さん:社長的にはもう直販をやらないとまずいとなっていたんですね。会社としてECをやっていかないとまずいとなったのは大きな変化かと思います。

北山さん:主力商品をECで少しずつ売り始めたタイミングではありましたが、私のほうで新しいレディースブランドだけを切り分けて、担当したのが本当のECのスタートだったんです。

柳田さん:やはりECは始めないと厳しくなっています。北山さんの会社の場合は、百貨店さんがだいぶシュリンクしていく中で、座してそのまま指くわえて待っていればいいわけでもないでしょう。そうなると既存の取引先に迷惑かからない程度に直販をやらないとまずいはずです。

社内の味方の作り方は情報共有で

柳田さん:社外もさることながら、社内の声をどうまとめるかが一番大変だとよく聞きますが、実際はどうだったんでしょうか。

北山さん:まずは味方を作ることから始めました。味方にするターゲットは自分の上長です。当時社内でやったことがある人がいない中、上長もECについてはあまり詳しくありませんでした。

私が仕入れたECに関する情報を、有無を言わさず全部転送するんです。その際、そのまま転送するのではなく、必ず私が思ったことややりたい気持ちなどのコメントを入れていました。毎回毎回、情報が出るたびに転送し続けると、不思議なことに2年も経つとその上長が私の次に詳しくなっているんですよ。

柳田さん:そりゃあ、そうですよね。北山さんのコピーを作っている感じですからね。

北山さん:しかも、僕と同じ知識レベルの決裁権を持っている上長が判断して決裁してもらえるので、ものすごく決裁が通りやすくなります。

柳田さん:北山さんが興味を持って、良いと思う情報を転送し始めてから2年ですもんね。この動きは上長が知識豊富になると思ってやっていたんですか?

北山さん:全然そうとは思っていませんでした。共有している情報の中にはECのニュースだけではなく、直営店舗の運営もやっていたのでデベロッパーの話だったり、競合のブランドの状況だったりも含めて、一緒に転送していたんです。そうすると、上長からは北山はかなり情報を持っていると見られるようになっていきます。

柳田さん:なるほど。卸売と小売って別物ですもんね。卸売企業が小売を始める上で、小売の情報を上長に転送してわかってもらうのは、事業部だけでなく、会社全体の小売に対する知識の底上げになったのではないでしょうか。

北山さん:そう思います。上長は小売のバイヤーもやられる方なので、社内では比較的小売に詳しいほうではありました。そのため、やらないといけないECのトピックを含めて、上長が好きそうな話題をチョイスして共有したんです。

他部署・取引先とはルール設計を

柳田さん:特に卸売メインでやっている他の部署から声が上がることはありましたか?

北山さん:お小言といただく方々に対しては、私たち自身が運営するECサイトも値段は下げませんが、お得意先様もできるだけ価格を下げないことを守っていただくようお願いして、極力値崩れを防ぐようにしています。楽天市場なんかは、結構なポイントをつけて販売している方もいらっしゃるので。

柳田さん:卸先がECで販売していることは今では珍しくないですもんね。

北山さん:自社でECサイトを運用する以前から、お得意先様はECサイトで販売しています。あくまで元々のベースとしてお取引先様がいるため、直営をあえてしていなかったんだと思います。

ずっと前に、もっと小売に出て行くべきだと社内提案をしたものの、卸売業の長い歴史が染みついているがゆえに、なかなか認めてもらえませんでした。しかし、今となってはこれからの時代は、ECだ、直営だという動きが起きたのです。

柳田さん:どなたが直営を推し進めたのでしょうか。

北山さん:これはトップが言っています。強化していく事業部だと言われてはいましたが、さらに本格的に取り組んだのは、やはりコロナになってからです。

柳田さん:トップの人がそうやって言ってくださるのは仕事を進めるのが楽になりますね。ECに参入する企業にはいくつかパターンがあると思います。まず言い始めるのは大体がトップなんですよね。現場に任せっきりの丸投げパターンと、トップが先導しながら現場と推進するパターン。後者は要するに、トップは自分ではできないので誰かに一任しつつ、何かあったときの後ろ盾になることで現場が仕事をしやすくするやり方だと思います。エースさんの場合はどちらかというと後者のパターンですよね。

北山さん:はい、今となってはそうですね。数字責任という意味では事業部単位ではありますが。

柳田さん:まずはトップが意思表明して、会社の中でわかってもらえないといけません。それがないと現場の方がしっかりと動けないからです。トップが表明しても社内から文句言われるぐらいなので。

北山さん:おっしゃる通りですね。

柳田さん:前半でお話していた情報を上長に共有することは、業務を進める中での意思決定のスピード上げることに。加えて、採用の質の向上や業務の取捨選択にもつながる素晴らしいことだと思いました。

いわゆる卸先となる既存のお取引様に対し、しっかり値段を守って販売するので、できれば皆様も価格についてはご協力お願いしますと言える関係が良いですよね。

北山さん:お取引先様も、割引して販売したくないんですよね。やっぱりできるだけ正規の価格で販売すること。それができると利益が最大化されます。必ずお互いに紳士協定じゃないんですけれども、販売価格を守っていきましょうとお話すること。ただし、年に数回あるモールで行われるような大きなイベントでは、どこまで何をできるか決めています。極力、値段が崩れないような仕組みを考えていますが、ポイントはもうしょうがないですね。

柳田さん:結局いつも安いのではお客様から見たらブランドの勝ちがなくなってしまうため、メーカーも卸先もお互い値段を維持する取り組みは重要です。価格について卸先に提案をされているのが良いことだと思いました。現在卸売を主としている企業の方が今後直販を目指すときに非常に参考になると思います。

おわりに:担当者でも自分の行動から社内を変えられる

EC事業の立ち上げ当初、新しいチームに参加した北山さんが上長に情報を提供することが、上長のみならず社内全体のレベルの底上げに繋がったのは間違いありません。本記事をここまでご覧いただいた方は日頃から情報収集をしている方が多いかと思いますが、その情報を自分自身のレベルアップに留めるのではなく、組織の強化や自分自身の社内ブランディングに活用することもできるかもしれないですね。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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