EC×アプリでLTVを向上させるポイントと顧客体験の設計とは

コロナ禍の緊急事態宣言で店舗が休業に追い込まれるなどした結果としてEC需要が高まり、ユーザーの期待値も変化する中、ブランド企業にはユーザー中心のCX(顧客体験)設計がこれまで以上に求められるようになりました。CXの設計には、モバイルアプリやECサイトでの顧客データと商品データの活用が必要不可欠です。

今回は、モバイルアプリやECサイトのCXを改善するための具体的なデータの活用方法や、実際にLTVを高めたブランド企業の取り組み事例など、「ECカンファレンス2024 Summer(2024年7月10日・11日開催)」でお話しした内容を、レポートとしてまとめてお届けします。

この記事の執筆者

篠田 健吾
メグリ株式会社

IT系企業で新規事業の立ち上げに携わり、2014年、メグリ株式会社に入社。入社当初はWebサイト・アプリの分析および企画を中心に、サービスの新規営業にも従事。2020年よりプロダクト開発チームでプランニング担当として「MGRe」の新機能の企画や改善等の業務を担当。

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ECアプリでのログイン自動化の重要性

まず一つ目、LTV向上のためにはECアプリのログイン自動化が非常に大切です。一般的なアプリだと、アプリ内のブラウザでECサイトを表示しているものが主流ですが、そのECサイトを表示するときにログインを自動化するというものです。

ECアプリでのログイン自動化の重要性

これがなぜ大切かという話ですが、アプリで買い物をしたり、お店でポイントカードをアプリで表示したりする際に毎回ログインが必要になってしまい購買意欲を削がれてしまったという経験をした方は多いと思います。こういうアプリは意外と多いです。

自動ログインができていると、ECサイトへの遷移がスムーズになります。また、プッシュ通知でセールのお知らせを受け取ってECサイトへアクセスし、衝動買いするといったユースケースもあるでしょう。つまり、お客様にとってストレスなくお買い物いただけるようになるのです。

弊社ではよくアプリのリニューアルのお手伝いをさせていただくことがありますが、この自動ログインの対応を行うことで、アプリ経由のEC売上が30~50%向上したという企業様が多くいらっしゃいます。過去には旧アプリと比べて2,000%伸びたという事例もありました(あまりにも差が大きすぎてリアリティがありませんが事実です)。

この対応をして売上が落ちたという企業様の事例を僕は聞いたことがありません。効果が出ないことはないので、間違いなくやらない手はないと思っています。多少の開発費用はかかりますが、すぐに回収できますし、もし今できてないのであれば、最初に取り組んでもらいたい欠かせない機能だと考えています。

ちなみに、このログインを自動化するという話をすると、よくログイン画面のIDとパスワードの入力を自動化することと思ってらっしゃる方がいらっしゃいます。しかし、これは全く別物なので注意が必要です。ここでお話ししている自動ログインとは、アプリの中でECサイトにアクセスしたらログイン画面を経由しなくても、常に自動でログイン状態にしてしまうというものです。専門的な言い方ですとシングルサインオンなどと呼ばれています。

IDとパスワードの入力自動化では解決できない課題もあり、たとえばカゴに入れていた商品が出てこなかったり、お気に入り登録した商品がログインしたときに消えてしまったりといったことが起きることもあります。顧客体験をよくするという観点でも入力自動化ではなくシングルサインオンによる常時ログインの実現を目指すことが理想です。

アプリで買い物以外の用事を作ることの重要性

アプリでECサイトへのログインを自動化して入口を整えたところで、次にLTVを上げるためのポイントとして、購入頻度の話が挙がってきます。

小売業のアプリでよくあることとして、買い物のときにしかアプリを開いてもらえないというものがあります。これは裏を返せばアプリが購入のきっかけや気づきを与えるツールになっていないということです。この課題解決をしないとアプリでLTVを上げるのは難しくなってきます。

弊社のクライアントにはアパレル企業様が多いのでその事例を少しご紹介すると、アパレルでは、スタッフがコーデを紹介するコーディネートコンテンツが定番になってきています。

こういった眺めているだけでも楽しいコンテンツがあることで、アプリ利用頻度が上がります。このコーデコンテンツを導入している企業様のアンケートを拝見したところ、ユーザーの8割が満足している結果が出ていて、このコンテンツが買い物のきっかけになっているというデータが出ていました。

アプリで買い物以外の用事を作ることで、アプリの利用頻度が上がり、結果的に購買頻度とLTVも向上するということがよくわかる話です。

最近は天気の情報とそれに合わせたコーデの情報を提供して、毎朝アプリを開いてもらえるように工夫したコンテンツ提供をしている企業様もいらっしゃいます。

顧客体験は「購買」フェーズだけの話ではない

コロナ禍を経てお客様のECの利用の仕方に変化が出てきましたが、その影響としてECが店舗への送客や売上UPに貢献する動きが高まってきたという話があります。これは店舗における買い物以外の用事をECが作り出すようになった、と言い換えることもできるでしょう。

同様に店舗側に求められるニーズも多様化しています。EC購入品を店舗で受け取れるようになったり、店舗在庫をあらかじめオンラインで確認できるようになったり、逆に店舗で買った商品を持ち帰らずに自宅に配送してもらえる便利なサービスを提供している企業も増えました。

お店に商品在庫がなくても、支払いを店舗で済ませてECサイトから自宅に送ってもらえるサービスなんていうのも出てきています。

このようにさまざまな顧客接点でのお客様のニーズにオンライン・オフラインの区別なく対応が求められる、まさにOMOの時代がいよいよやってきたという感があります。この流れをコロナ禍が加速させたことは間違いないでしょう。

そして、ここで重要なのは顧客接点が「購買」のときだけでないということです。

顧客体験は「購買」フェーズだけの話ではない

なので、考えるべき顧客体験というのは購買のフェーズだけでは不足していて、認知や検討などの購買以外のフェーズにおいても、オンライン・オフラインの区別なくどのような顧客体験を提供できるか、知恵を絞る必要がでてきたということです。

先ほどまでのコーディネートコンテンツのお話は認知、検討のフェーズで提供される顧客体験の一例でした。ECが店舗への送客や売上に貢献しているという話もオンライン上の認知・検討がオフラインの店舗での購買につながっていく話です。そのほか最近ですと購買後の顧客接点として、返品対応や製品サポート、不用品回収、買取といった活動で顧客満足度やブランドロイヤルティを高めていく体験提供なども増えてきています。

こうした購買以外の接点でもさまざまな顧客体験をつくり、それをアプリを介して提供することで、買い物するときだけ開かれるアプリから脱却することにもつながります。

また、こういった対応が不十分な企業はいつの間にか認知、検討フェーズでお客様がほかの企業に流れてしまい、気づかないうちにお客様を失っているという事態も十分にあり得ます。

顧客体験設計のためのデータ収集とツール連携

購買以外のさまざまなフェーズで顧客接点を持ち、顧客体験を設計するにあたって、重要になってくるのがデータの取得です。

お客様の購買のきっかけとなる顧客接点を広く持ち、体験提供するチャネルとしてアプリが優秀だとしても、誰にどんなメッセージを届けるのか、タイミングなどそういったことを決めていくためにはその裏付けとなるデータが欠かせません。

このデータ取得に関してもアプリは非常に大きな役割を果たします。なぜならアプリが入っているスマホ自体がオンライン・オフライン問わず常時接続している状態なのであらゆる面で行動データを取得することができる可能性を持っているからです。これはお客様のカスタマージャーニーを把握することにも近く、より顧客理解を深めるヒントとなります。

顧客体験設計のためのデータ収集とツール連携

行動データ取得の対象としてどの画面をどのくらい閲覧したか、ECサイトへのコンバージョン数、などがありますが、こういった必要な情報をアプリ側できちんと取得できるかどうかというのは確認しておく必要があります。あとはSDKの組込やAPI連携などで企業側が持っているシステムやマーケティングツール類と連携できるかどうかも確認が必要です。

収集したデータをうまく活用できれば、その行動データを基にして、いつどのタイミングでお客様にどんなコミュニケーションを取るか、ある程度確証を持って考えていくことができますし、施策にもバリエーションが生まれてきます。

アプリからユーザー行動データを収集し、マーケティングオートメーションなどのツールと連携することで、顧客一人ひとりに合わせたきめ細かい施策を提供できるようになるのです。それらを継続的に行っていくことがお客様とって心地よい顧客体験となっていき、長期的な顧客接点の維持につながっていくのではないかと考えています。

顧客体験設計のためのデータ収集とツール連携

まとめ

  • ECアプリで売上を伸ばすために自動ログインは必要不可欠
  • 購買フェーズ以外の接点でアプリを開いてもらえる工夫が必要
  • 顧客体験を設計する上でオンライン・オフライン問わず施策を考える必要がある
  • 顧客体験を設計するためのデータ収集にはアプリが適している。それを活用し施策として提供していくには既存のシステムやマーケティングツールとアプリの連携が必要

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