
小売業とひとことで言っても業種はさまざま。また、実店舗・ECどちらもやっている企業もあれば、D2Cと呼ばれるようなEC専業で事業を行っている企業もあります。
デジタル領域への投資意欲が高かったという意味で、ECをやっている小売業はアプリの開発に早くから積極的だった印象がありますが、最近は店舗主体の業種、たとえばスーパーマーケットやドラッグストアなどのアプリも普及が進んでいます。
弊社の調査では20以上の店舗を抱えるスーパーマーケット・ドラッグストア・ホームセンターのアプリ普及率はすでに50%を超えてきており、この傾向は今後さらに加速していくものと考えています。
では、なぜいま小売業のアプリが増えているのでしょうか。
もちろん単純に競合他社がやっているから、という理由もあると思いますが、アプリの開発や運用にはコストがかかりますので、アプリに取り組む狙いや目的、メリットがなければ続けていないはずです。
今回は多くの小売業がアプリを作るようになった理由やメリット、アプリだからできることとはなんなのか考えていきたいと思います。
この記事の目次
アプリで新規の顧客開拓はできない
いきなりネガティブな感じの書き出しになっていますが、意外と見落とされているポイントなので最初にお伝えしておくと、アプリを作ることによって新規のお客様の獲得につながるということは基本的にありません。
ブランドのことを全く知らないお客様、あるいは名前くらいは知っているが実際に来店も買い物もしたことがないお客様、こういう方がたまたまアプリを見つけて即インストールしてくれたら新規獲得につながったといえると思いますが、冷静に考えてこういうことはほぼ起こりません。
- 全然知らないブランドのアプリだけど、もしかしたそのうちお店に行くかもしれないからインストールしておこう
- 1度も商品を買ったことがないけど、聞いたことあるお店だし、まずアプリ入れて何か探してみよう
といった行動が起きるか?という話です。読んでいるだけでかなり無理があると感じられると思います。
小売アプリのインストール数は伸ばしやすい
ここまでの話を読むと、ようするに小売アプリを作ってもインストールされないということなのか?と懸念される方が出るかもしれません。しかし、実は小売アプリのインストール数を増やすこと自体は比較的容易な部類に該当します。
それは実店舗やECサイトという顧客接点をすでに持っており、そこでアプリを知ってもらったりおすすめできたりする絶好の機会があるからです。
そして小売アプリをインストールしてもらえる最もよいタイミングはお買い物の直前で、そのための施策も容易に実施できるからです。
最初にお話しした「アプリでは新規の顧客獲得ができない」というのは、裏を返すと新規獲得のタイミングはアプリインストールをおすすめするタイミングではない、ということでもあります。
お客様が小売アプリをインストールするとき、そのブランドや店舗と中長期につながることを想起します。インストールすれば自分のスマホにアプリが残り続け、その後もプッシュ通知などが送られてくることは容易に想像がつくからです。
そのため「1回しかお買い物しないかも」と思っているときにインストールしていただくのは難しいです。旅先でたまたま訪れたお店でスタンプカードや会員証を勧められても断るのと同じ話です。
それが、買うかどうかもわからない、お店に行くかどうかもわからないというタイミングならなおさらでしょう。そのタイミングでアプリを知ってもインストールする動機が極めて薄いことがわかると思います。
「1回しかお買い物しないかも」どころか「1回もお買い物しないかもしれない」のです。新規獲得のタイミングでアプリインストールを期待することに無理があるのは明らかです。
しかし、お買い物の直前であれば話は変わってきます。インストールの動機はかなり高まります。そのタイミングでたとえ「1回しかお買い物しないかも」と思ったとしても、その1回でさえお得になるという情報があれば敷居はかなり下がります。
例えばアプリインストールによってすぐに使えるポイント特典だったり、いま買おうとしている商品にも適用できるお得なクーポンだったりです。
このようにもともと持っている顧客接点を活かし、適切なタイミングで魅力的な施策を組み合わせることで、小売アプリはインストール数を伸ばすことが可能です。
新規の顧客獲得にはつながりませんが、既存のお客様をアプリユーザーに転換することでインストール数を伸ばせるということです。
アプリは施策にリアルタイム性を生み出せる
このように比較的インストール数を伸ばしやすいのが小売アプリの特長ではありますが、お客様にとってその動機となっているのはポイントカードやクーポンといった、アナログでもできていた施策であることが多いです。
もちろんこれらをデジタル化するだけでもアプリ導入のメリットはありますが、それだけにとどめることなく積極的に活用していくべきなのがアプリ特有のコミュニケーション手段、プッシュ通知です。
実店舗にしてもECサイトにしてもお客様の来店やサイトへのアクセスがあってはじめて接客・施策が実施できるので、基本的に受動的な立場にあります。
この来店・アクセスを促す手段として広告やメールマガジン、新聞の折り込みチラシなどの施策が行われます。ただこれらの手段はお客様がスマホで何かサイト閲覧などをしているときやメールアプリを開いたときに気づかれることが多く、タイミングがお客様次第になってしまいがちな側面があります。これは折り込みチラシなども同様です。
これらと比べてプッシュ通知にはリアルタイム性が高いという明らかな優位性があります。
アプリのプッシュ通知はスマホを持っているだけで気づいていただくことができ、到達もほぼリアルタイムです。セールのお知らせを開始と同時にお知らせすることが可能ですし、当日決まったイベント案内などをプッシュ通知で告知することも容易です。
事業者側の意図したタイミングで施策を実施できるので企画の幅も拡がりますし、お客様もベストなタイミングでそれを知ることができるようになりメリットがあります。施策の善し悪しだけでなく、タイミングも最適化できるプッシュ通知をうまく活用することで、顧客体験を1ランク上げることがアプリによって可能になるといってもよいかもしれません
買い物以外の用事を作り、常にお客様に寄り添うアプリに
最初に「お客様がアプリをインストールするとき、ブランドや店舗と中長期につながることを想起する」と書きましたが、このつながりを「購買」のときだけにしてしまうのはアプリの活用法として非常にもったいないと感じます。

この図はオムニチャネルやOMOの話題になるときによく出てきます。
購買行動におけるお客様のフェーズの変化と、その際にオンラインとオフラインの接点を自由に行き来する時代になっているということを表しています。
この各フェーズにおいてお客様と適切なコミュニケーションを取り、オンとオフを行き来しても途切れることのない顧客体験を提供していきましょうという解説が添えられることが多いですが、アプリはこのすべてのフェーズでオフライン・オンライン問わずに顧客接点となりコミュニケーションを取れる可能性があるチャネルです。
なぜならアプリが入っているスマホを、お客様自身が常時携帯してくださっていて、本来オフラインのはずの店舗内にいるときでさえアプリを介してオンラインのコミュニケーションを可能にしてくれるからです。
アパレルの事例ではスタッフのコーデ写真をコンテンツ化し、お客様にまだ買う気がない、つまり「認知」のフェーズでもコミュニケーションを取ることで、アプリを通してブランドの認知を維持し、場合によっては衝動買いを誘発することにもつながっています。
また最近では返品対応やカスタマーサポートのサービスのような購買後のコミュニケーションを手厚くすることで、ブランドへのロイヤルティを高めLTVを上げていく戦略を取る企業も多くなっています。
このように購買以外のフェーズも含めた一貫した顧客体験を提供する際、アプリはお客様とのインターフェースを取る役割を担うことに非常に適しています。
また常にお客様と寄り添ったサービスをアプリで提供していくことで、お客様がオンライン・オフラインのどちらであるかを問わず、一貫した行動データをアプリを介して収集し、それを分析していくことで顧客理解を深めることができるという利点もあります。
ここまで実現できるとまさにOMOを体現している感じがしますが、いま多くの小売アプリが目指しているのはまさにここで、アプリ導入が増えている理由も、いわゆるDXを推進していくにあたって、お客様とのインターフェースを取るチャネルとして現状ではアプリが最適と考える企業が多いからではないでしょうか。
アプリ開発やOMOについてなどホワイトペーパーも公開していますのでご参考にしていただけますと幸いです。
「アプリを作ろう」と思ったときに読むebook
https://mgre.jp/download/create_app_howto
今、小売店に求められるOMOとは?
https://mgre.jp/download/retail_omo
まとめ
小売アプリを作る利点
- リアルタイム性の高いプッシュ通知を活用することで施策の幅が拡がる
- 購買のタイミング以外でもお客様と接点を持ち、LTV向上につなげていける
- アプリを介して行動データを集めることで、顧客理解を深めることにつながる
▼「MGRe」についてのお問い合わせはこちら
https://mgre.jp
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