
スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニなど日常的な買い物をするために訪れる店舗から、ファーストフードをはじめとする飲食店、お気に入りのブランドのコスメやアパレルなど、さまざまな業種の店舗がアプリを提供するようになってきました。
ユーザーがこれらのアプリをわざわざインストールして使う動機として、クーポンの存在がその理由の上位にあげられています。

最近はクーポンの提供方法がアプリやLINEなどデジタルな手段に限定されている事例も多くなっています。紙のクーポンのように常に財布などの中に入れて持ち歩き、忘れずに取り出して提示する煩わしさを考えると、スマホさえあればなくすことも忘れることもないアプリクーポンはユーザーにとってもメリットが大きい仕組みであるといえます。
また、提供する事業者側にとっても印刷代や配布コストを減らせるという明確なメリットがあり、SDGsなどのような環境配慮の取り組みの一つになり得るという点も重要かも知れません。
このようにアプリやLINEでクーポンを提供することは利用側・提供側のメリットがわかりやすく、デジタル化しやすいマーケティング施策として広く普及しているのではないかと思います。
ただ、実際は単なるデジタル化だけがアプリクーポンのメリットではありません。
アプリの場合はプッシュ通知という強力なユーザー呼び起こしの手段がありますので、クーポンをただ配るだけでなくしっかり通知でお知らせすることで来店を促すことが可能になります。また、アプリ側がポイントカードなどとの連携によって会員1人1人をしっかり認知できる仕組みになっていれば、お客様の利用頻度や趣味嗜好に合わせてクーポンを出し分けるといった、いわゆるセグメント配信も可能になります。
QRコードやNFCタグなどをきっかけにしてクーポンを入手できる仕組みがあれば、来店いただいたお客様だけにクーポンをお配りすることも可能になり、普段からお店をよく利用いただいているお礼のような形で、来店自体に付加価値をつけていくこともできるようになります。

レジ提示型と事前セット型
このように普及著しいアプリクーポンですが、この実現方法には大きく分けて2種類の方式があります。レジで使いたいクーポンをスマホに表示して提示する「レジ提示型」と、レジで会計をする前にあらかじめ使いたいクーポンをセットしておく「事前セット型」です。
※ この名称は筆者がそう呼んでいるだけで一般的な呼称ではありません
レジ提示型クーポン
レジ提示型のクーポンは単純な紙のクーポンの置き換えと考えて良いでしょう。レジでアプリクーポンの画面を提示して値引きなどの特典を適用するパターンです。マクドナルドのようにクーポン番号で管理するパターンもありますが、これはそのクーポンを同じ人が何回でも使えることが前提の仕組みになります。クーポン番号自体がSNSなどで拡散されることも容易に想像できますので、実質的に一律値引きに近い形になる可能性もあります。
利用を1回限りなどに制限したければ、アプリ上のクーポンを手動で「使用済み」にする、いわゆるモギリ操作が必要になってきます。これはお客様のスマホ上で操作することになりますが、この際にスマホ上のタッチ操作をスタッフが代わりに行うことや、スマホ自体をお預かりして操作することを、お客様が不快に感じられる場合があるので、店舗やスタッフへの周知にあたって注意が必要です。実際にタッチ操作まではOKとしながら、スマホをお預かりするようなことはルールとして禁止するといった運用をしている事例もあります。
POSが対応していればクーポンのバーコードをアプリに表示してそれを提示する方法も考えられます。ID-POSのようにPOS側で会員管理ができていれば、1回限りのクーポンを複数回使おうとしても、POS側で利用回数を管理して利用を止めるといった運用も可能になってきます。
バーコード型の仕組みに関しては、アプリ側はバーコードの表示はできても、それが読まれたかどうかを検知することは基本的にできないので、このあたりの厳密な管理はどうしてもPOS側の機能に依存する形になります。
事前セット型クーポン
事前セット型クーポンはID-POSが入っていることが大前提にはなりますが、使うクーポンをあらかじめ決めておいて、レジで提示するのはID-POSで認識できる会員バーコードのみとするやり方です。
慣れた人が使う場合はレジオペレーションが会員バーコード提示のみで済み、非常にスムーズになるため、一度の会計で複数枚のクーポンが使用されることが多いスーパーマーケットやドラッグストアでの導入事例が多い仕組みです
ただ、事前にセットしておくやり方は紙のクーポンとの利用体験の差があるせいか、ややわかりにくい感があることは否めません。利用方法などについてアプリ上や店頭での丁寧な説明が必要になってくるでしょう。
この仕組みの場合、セットされたクーポンの情報と商品を購入した購買情報のデータを後から突合してチェックし、クーポンをセットしてあった商品を実際に買っていたら、翌日以降にポイントなどで還元するというやり方が多くなっています。
ID-POSのシステムでクーポンの仕組みまで提供している場合もあれば、こういった仕組みそのものをサービスとして提供している企業もあります。これらはアプリクーポンとは言ってもアプリだけでは実現が難しい仕組みですので、あらかじめアプリ開発会社やPOS、クーポンのシステムベンダーとの確認・調整が必要になります。
この事前セット型クーポンで、ポイント還元ではなくレジで即座に値引き適用される事例はあまり見かけません。ファミリマートのアプリ「ファミペイ」では実現していますが 、これはPOSを含めたシステム連携・開発コストがかなりかかることが想定されます。以前、筆者が検証した記事がありますのでご興味ある方はご覧ください。
ファミペイのクーポン機能で考えるアプリとDX
https://note.mgre.jp/n/n9fb5a0ad50f1
アプリクーポン導入のポイント
アプリクーポンについて大きく分けて2つのパターンをご紹介しましたが、実際に導入するにあたってどのように判断していけばよいでしょうか。
まず、事前セット型に関してはアプリだけでは実現が難しく、コストがかかってしまう点が課題になります。そのため事前セット型のメリットが十分に得られるかという点が判断のポイントになります。
具体的には
- 単品値引きのクーポンが多く、1回の会計で複数枚のクーポンをお客様が使用する
- レジが混雑しがちで、事前セット型にすることでレジの時間の短縮が見込める
などが挙げられます。
業種としてはスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニなどでメリットが発揮される仕組みと言えます。
逆にクーポンの形態が「会計から10%OFF」「ポイント3倍進呈」のような、1回の会計で使うクーポンが1種類に限られることが多い業種や、接客・会計にそれなりの時間をかけられる場合は、レジ提示型で十分になってきます。アパレル、コスメなどはこれに当てはまるでしょうし、飲食店についてもクーポンの利用が1枚に限定されるパターンをよく見かけますので、この場合もレジ提示型で問題なさそうです。
ただ、事前セット型が適した業態でも、ID-POSやシステム面の都合でレジ提示型の導入しかできない場合はあります。この場合は、特にクーポン利用時のUIに配慮し、レジオペレーションが滞らないような工夫が求められます。
例えば、会計時にアプリの画面を切り替えながらクーポンを1枚ずつ提示する必要があったり、クーポンを出した後で会員証画面を開いて提示しなければならなかったりと、何度も操作が必要なアプリUIになっていると、レジの混雑を誘発してしまうことは容易に想像できます。また、それが原因でお客様がアプリを利用しなくなってしまったり、店舗でもアプリをおすすめしなくなってしまったりと、アプリが使いづらいことが原因でせっかく導入したアプリクーポンの普及が進まないという事態を引き起こしかねません。
コンビニ大手のセブン-イレブンのアプリには、あらかじめ使いたいクーポンを決めておいて「まとめて使う」ボタンを押すと、会員証バーコードと合わせて利用したいクーポンのバーコードが1画面に全て表示される機能が用意されています。これがあればお客様がレジで画面を提示するのは一度で済みますし、レジ担当の方の操作もバーコードを連続で読み取っていくだけなので簡単で間違いも起きにくくなります。こういった配慮がアプリクーポン利用の推進には欠かせないのです。
また、このようにまとめて利用する用途がない場合でも、多くのクーポンが用意されていると、使いたいクーポンを探すだけでも一苦労という場面もでてきます。こういった点への配慮として、クーポンをお気に入り登録(ブックマーク・クリップと呼ばれることもあります) しておく機能を用意し、お客様が使いたいクーポンだけをすぐに見つけられるような仕組みがあると、お客様にもレジ担当者にも使いやすいアプリクーポン機能として受け入れられるのではないでしょうか。
おわりに:まとめ
- ブランドアプリのインストール理由の上位に「クーポンを利用したい」の声
- スマホだけで利用できるユーザーメリットと 印刷・配布コストをカットする事業者側のメリットからクーポンのデジタル化が進んでいる
- デジタルクーポンには大きく分けて「レジ提示型」と「事前セット型」の2種類
- どちらの形態でもレジオペレーションが滞らないようなアプリUIの工夫が必須
- 配布クーポンの数が多い場合はユーザーが使いたいクーポンをすぐに見つけられ、お気に入り登録できる機能があると良い
アプリクーポンを導入する際は、以上のことを念頭に実装を進めるのが良いでしょう。弊社が提供するアプリマーケティングプラットフォーム『MGRe(メグリ)』では、「レジ提示型」「事前セット型」どちらも対応可能です。お気軽にご相談ください。
また、MGReのクーポン機能の詳細については公式noteでも紹介していますので、ご興味のある方はこちらの記事もぜひご参照ください。
【MGRe公式note】クーポン|MGReの機能紹介 ♯8
https://note.mgre.jp/n/n0a01c45f654a?magazine_key=maeb839c72fe6
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