MARK STYLER執行役員が語る!ソーシャルメディアマーケティング最前線【セミナーレポート】
イベントの概要

2023年11月1日にAIQ(アイキュー)株式会社主催のオンラインセミナーが開催されました。本セミナーでは、MARK STYLER株式会社が運営するレディースファッション通販サイト「RUNWAY channel(ランウェイチャネル)」におけるソーシャルメディアの事業貢献度の可視化と、Instagramの運用体制が紹介されました。本記事ではセミナーの要点をご紹介します。

【登壇者】
中見川 宜紀さん
MARK STYLER株式会社 執行役員 

大学卒業後、大手ファッション・アパレルを経てMARK STYLER株式会社に参画。営業販売・商品企画・宣伝業務の実務およびマネジメントを歴任。データマーケティングに基づき、感覚や感性を言語数値化した事業戦略立案にて、複数ブランドの運営に携わる。

今井 大貴さん
AIQ株式会社 マーケティング部 部長

株式会社リクルートライフスタイルにて広告営業を経験後、セールス担当としてAIQに参画。SaaSプロダクトの営業やインフルエンサーマーケティング事業の立ち上げなどに従事。現在はソーシャルメディア利用が進むアパレル業界のマーケティング支援に注力している。

MARK STYLERのソーシャルメディアマーケティングの事業貢献度

今井さん:ソーシャルメディアが重要なことはわかっていても、事業貢献度が計りにくいというのが現状ではないでしょうか。本日は「RUNWAY channel」における事業貢献度の計り方をお話しいただこうと思っております。

流入への貢献度

中見川さん:当社は18歳から35歳の女性に向けてモード系、フェミニン系、カジュアル系を軸にした15ブランドを保有するレデュースファッションの中堅企業です。自社ECサイトとして全ブランドを取り扱うRUNWAY channelを運営しております。

今井さん:RUNWAY channelの流入経路としては、SNSやWeb検索、Web広告などいくつかありますが、それらの事業貢献度は流入割合で測定されています。

デジタル時代におけるソーシャルマーケティングの役割と影響力

今井さん:流入割合としては、ソーシャルメディア経由が最も多く47%、次いで広告30%、検索10%、アプリ1%、その他12%となっており、約半数がソーシャルメディア経由の流入です。

ソーシャルメディア内比率

今井さん:ソーシャルメディア別のセッション数獲得割合を見ると、Instagram56%、メルマガ26%、LINE14%となっており、Instagramの事業貢献度の高さが明確に表れています。

中見川さん:この割合はパラメータを付与できる自社管理のソーシャルメディアからの流入数です。モデルやナショナルブランドの投稿ではパラメータを付与できない場合が多いので、その他の12%の中に含まれていることを考えると、実際は半数以上がソーシャルメディアからの流入になっているだろうと想定しています。

TikTokは存在感が増してきているメディアではありますが、現状は1%です。広告経由の流入はあるものの、自社運用のTikTokから直接的な売上にはなかなかつながりにくいのが現状です。そのような状況で最もWebサイトに紐づけしやすいInstagramが半数以上を占めるという結果になっています。

売上への貢献度

今井さん:ソーシャルメディアの貢献度を計るときに、流入だけでは不十分という場合が多いかと思っています。次にソーシャルメディアの売上への貢献度について見ていきましょう。

各SNSにおける経由売上比率

今井さん:RUNWAY channelにおけるソーシャルメディア経由の売上は12.1%であり、そのうちInstagramの売上構成比率は94%を占めています。その他Twitterは5%、TikTokは1%です。KPIの設計はどのようにされていますか?

中見川さん:流入セッション数やInstagramからの直接売上、そこに基づくCVRなどを主なKPIに設定しています。ソーシャルメディア経由の売上が12%というと一見少なく見えますが、全体のうち4割にあたる既存のお客様の売上が70%ほどあります。またサイト内のバナーや画像など間接的な影響を考えると約35%〜40%ほどがソーシャルメディアからの流入になっているだろうと見ています。

今井さん:ここまでのRUNWAY channelのソーシャルメディア貢献度をまとめると、自社ECサイトへの流入数が47%、直接的な自社売上比率が12%。間接的な売上貢献を考えると35%〜40%ほどということです。

Instagramの事業貢献度

今井さん:特にInstagramの事業貢献度が高く、自社ECサイトへの流入割合が20.4%、自社ECサイトの売上割合が11.2%となっておりますので、ここからはどのようにInstagramを活用されているのか戦略についてお伺いしていきます。

RUNWAY channelのInstagram運用

中見川さん:施策については「全体設計」「公式アカウント」「スタッフ・インフルエンサーアカウント」の3本の軸でお話をさせていただきます。

カスタマージャーニーに合わせたタッチポイント設計

全体設計

中見川さん:まずは重要なタッチポイントの設計です。新規顧客、既存顧客、コアファンに向けた入り口をそれぞれどこに設計するのかで発信する情報が変わります。新規顧客に向けた認知については、モデルインフルエンサーからの情報がきっかけとなって、ブランドアカウントへの導線が貼られ、情報収集が始まるような流れを設計しています。

既存顧客については、すでにブランドアカウントをフォローしていますので、接客を受けたお気に入りのスタッフがいるか、過去の投稿を見て趣味趣向が合いそうなスタッフがいるかというところから情報を収集するような設計です。

他サイトのクーポン施策などがきっかけで購入検討を行い、お客様自らのSNS発信でUGCにつなげるというようなタッチポイントも想定しています。

MARK STYLERにおけるブランド全体の戦略設計

中見川さん:アカウントの設計として、(上図の)「BRAND」と「SHOP(SNAP)」の2つはオフィシャルアカウントとして本社で管理・運用をしています。これらのアカウントの役割は、お客様との信頼関係を築くことです。一方で、店頭や本社のスタッフは個人アカウントを持っています。個人アカウントは核となる企画管理を行いながらも、運営は個人に任せることでお客様との距離感を狭め、共感を築く目的があります。オフィシャルアカウントとスタッフアカウントの連動・連携が購買意欲の醸成につながるのではないかと考えています。

基本的な戦略設計はこちらで行なっていますが、感性や感覚は十人十色だと思いますので、流入セッションや売上など先述のKPIを紐解いて、写真の取り方やコメント、ハッシュタグの使い方、投稿のタイミングなどの結果を分析しながら仮説を言語化し、因果関係を含めた課題を整理していくという考え方で進めています。

公式アカウント

公式アカウント(ブランドオフィシャル)の運用目的

中見川さん:次に公式アカウント「BRAND」の運用目的をお話します。こちらはお客様と信頼関係を結ぶ運営を心がけています。はじめてブランドを知るきっかけとなるため、ブランドイメージや世界観を重視しています。

例えば、純広告、ブック、マガジンのようなイメージで、モデルやインフルエンサーを軸にして商品を売るという観点で企画立案を行い、興味関心を広げる役割をしています。一部クーポンやセール企画のようなものも入れますが、世界観をどう表現するかという点を重視したアカウントにしています。

公式アカウント(スタッフスナップ)の運用目的

中見川さん:スタッフスナップ「SHOP(SNAP)」もオフィシャルアカウントとして運用しています。各店舗や本社のスタッフが投稿したコーディネートを集約し、投稿者のアカウントを表記。ご購入経験のある方やブランドを認知していただいたお客様が自分事化できるコンテンツをイメージしています。身長や体型、特にコンプレックスをどうやってメリットにつなげ、自分の自信につながるように見せるかというのをお客様自身がイメージを膨らませていただくアカウントになっています。

例えば動画でリアルなドレープ感や素材感を見せるというのも1つですし、スワイプ機能を使いながらこんな場所でこういうものを着たら可愛いというような着用シーンを複数見せることで興味関心から比較行動に後押しするためのアカウントです。

オフィシャルとスタッフアカウントの活用

中見川さん:ブランドオフィシャルとスナップアカウントはそれぞれが連動することが重要なポイントです。ブランドアカウントをフォローしてもらっている方に、より具体的なイメージを提供できるようにブランドアカウントのコメントのなかで、スナップアカウントを紹介したり、その反対もあって、お客様が視認するイメージを連携させたりというような取り組みをしています。

スナップアカウントの方には、スタッフの個人アカウントも紹介できるように被写体になっているスタッフのアカウント、身長、骨格、カラー診断情報などを入れています。推しスタッフを見つけられるように、オフィシャルアカウントと個人アカウントを連携しているのです。

個人の発信を強める2つの狙い

中見川さん:お客様のニーズは多様化しているので、どのようにお客様がブランドやスタッフを見つけ出し、フォローされているのか。またこんなお客様がいるからこのようなスタッフがモデルとなりやすい、近似値となりやすいというのをどう見つけていくかを念頭に置いたアカウント運用を行っています。ブランドらしいなというイメージ、こういう商品がほしいというイメージを醸成することが重要です。

スタッフアカウント運用の設計について

スタッフ・インフルエンサーアカウント

中見川さん:続いて、スタッフアカウント運用の設計については、スタッフの階層を分けて管理・運営をしています。販売スタッフはブランドコンセプトを体現する最大の理解者であり、熱狂的なファンだと思っております。ブランドへの想いや着たときの感動をどのようにお客様に醸成していくのかをイメージした階層設計にしています。

スタッフアカウントは商品の素材や品質、デザインなどの機能的な価値と、商品を手に取ったときもしくは身にまとったときに抱く承認欲求を満たすような情緒的価値を等身大で表現する存在です。

階層ごとにスキルや業務内容が設計されていて、階層が上がると業務が追加される仕組みになっています。また階層ごとにKPIの管理も行なっており、経由売上やフォロワー数、熱狂度、ビジュアルのセンスなどを定量的・定性的に設計しています。

例えば、ブランド公式インフルエンサーになるためには次の3つの業務を担うことになります。

  1. 公式アカウントや自社ECでの紹介・露出
  2. 特別撮影などの対応
  3. 雑誌・テレビ・キュレーションサイトでのモデル活動

次の2つはインセンティブとしての設計になっており、毎月、個人への報酬を提供することで社内でのキャリアステップとしての機能を持っています。

  1. 企業様とのお取り組みへの参加による個人報酬
  2. 経由売上による個人報酬

週、月単位で、全員のKPI数値が公表されるようになっているので、インフルエンサー間での競争意識を持ったり、経由売上やフォロワー数が大幅に増えた要因を横展開して情報共有したりと、各ブランドの垣根を超えてインフルエンサー同士が切磋琢磨している状況です。

公式インフルエンサーとなって、ブランドの商品企画を行える、雑誌やテレビでのプロモーション活動ができるなど、店舗から本社の業務へのキャリアステップを描きやすく、夢を持てる構成になっています。お客様が販売員に夢を描くように社内スタッフもこんなふうになりたいという夢を持てることが、活性化するための良い仕組みになっていると考えています。

スタッフアカウント運用における今後の方向性

中見川さん:ブランドにとって売上というのは、通知表のようなもので、売上=結果であると考えていますが、個々人の評価にすべてつながるわけではないという危惧があります。

それも踏まえて個々の影響力を増すことで、KPIに即した適正な利益還元を行いながら、ブランドの企画ができるかもしれない、というようなさまざまなモチベーションと、インセンティブによる経済的な自立を目指していきたいです。

スタッフアカウント運用の今後としては、一般スタッフのほうが人数は多いものの、できるだけ公式インフルエンサーを増やしていけると良いなと考えています。

社員全員がインフルエンサーになりましょうという思想の元でこのような設計をしてはいますが、社員それぞれが主業務を持っているなかで、業務時間内での活動です。被写体が輝くためには撮影や撮影準備をしますし、撮影中に店舗の業務をカバーするスタッフも必要です。また自分自身の露出は避けたいというスタッフもいます。

輝けるところでそれぞれが輝く仕組みを持つという観点で、社内の評価項目の中にはインセンティブの他にMARK STYLERとしてのクレドや、ブランドクレドへの貢献など定性評価も合わせて盛り込み、スタッフアカウントを持たない人の二次的なサポートも評価される設計を進めています。

ツールを活用した運用管理体制と運用事例

スタッフの管理体制・管理方法

スタッフの管理体制・管理方法

中見川さん:ここからは運用管理に関してお話します。数十名、数百名のスタッフを管理していくのは悩ましいところで、フォロワー数が多いスタッフや声が大きいスタッフに目が向きがちになり、粛々と頑張っている方々を見落とすというのはよくあることです。

公式アカウントだけではなく、スタッフのアカウントまで一人ひとりが日々どんな投稿をしているのか追いかけるのは至難の業ですので、それらを一覧化してくれるツールを活用しています。

例えば毎日どのような投稿を何回してくれているのか、週末や売出し商品の導入施策があるタイミングで投稿があるかなどを明らかにできます。また、店舗ごとにスタッフの投稿を集約してフォロワー数やコメント数、保存数の伸びを確認できるようになっています。

これは単純に毎日投稿できていればいいというような評価指標ではなく、投稿できないのであれば、スタッフが少なすぎる、主業務が多すぎるなどの小さな課題が多数存在するはずなので、業務量やスケジュールの再設定にも活用できています。

これだけ視認できてしまうので管理されているという感覚が強くなってしまわないよう、一人ひとりの成長に目を向けていくことが重要です。投稿数が先週の1回から今週の2回に増えたなど小さなステップも見逃さず、小さな成長を褒めることでスタッフのモチベーションや承認欲求を刺激できるツールだと思っています。

各アカウントを活用した運用事例

各アカウントを活用した運用事例のご紹介

中見川さん:次に売上につなげるために行なっている施策についてお話します。当社では次シーズンに向けて社内検討会を行った後、ご購入されたことのあるお客様の中から無作為に300名程度を抽出しアンケート調査を行なっています。

店頭やWebサイト、SNSに出る前に次に出る商品の疑似スタイリングをお見せし、そのスタイリングはブランドらしいと感じるか、欲しいと思うかなどを点数化していただき、店頭やSNSに出る前に、お客様の評価を確認しているのです。

各アカウントを活用した運用事例のご紹介

中見川さん:調査後は、点数化した「らしい」「ほしい」をグラフ化し、人気がなかったものをどのように改善していくのかを整理していきます。写真の撮り方やコメントの内容、サイズを明記するのか、身長・体型別に着こなし方をまとめたほうがいいのかなど仮説を出しながら、次のSNS投稿に紐付けるというPDCAを回しています。

各アカウントを活用した運用事例のご紹介

中見川さん:投稿後には、2つの指標で改善に向けた因果関係を分析しています。1つ目の指標は「投稿の保存率」です。お客様は購買に向けた気づきがあった投稿や写真を保存し、見返していることが推測されます。そのため、保存は投稿の一歩手前であると考えています。

2つ目は商品が購入されたあと、通常のお客様がどのくらい投稿してくれているのかを紐解いていきます。どんなシチュエーションでその品物をスタイリングしているのか、コメントからどんなところに行ったのかも分析しています。

ダイレクトキャスティングによるインフルエンサー活用事例

インフルエンサーキャスティング

インフルエンサーキャスティング

今井さん:MARK STYLERさんでインフルエンサーを起用する際には、キャスティング会社に依頼するのではなく、DMでお声掛けしているのですか?

中見川さん:そうですね。ブランドや商品が似合いそうなインフルエンサーを日々探しています。またインフルエンサーの方からお声掛けいただくこともあります。

今井さん:Instagramから直接探すとなると時間がかかりすぎてしまうかと思います。どのようにツールを活用しているのか教えてください。

インフルエンサーキャスティング

中見川さん:フォロワー数が多いというだけでなく、フォロワーの男女比率や年齢層がブランドに合致しているのか、直近のフォロワー数が伸びているか、また過去の投稿に当社の世界観を表現できているか、過去にブランドもしくは近似値のブランドの投稿をしているのかといったことを指標にしています。

フォロワー数だけで選んでしまうと、ROIが伸びないなど期待する成果につながらない場合があるため、費用対効果が上がるよう選定をさせていただいています。

インフルエンサーギフティング

インフルエンサーギフティング

今井さん:インフルエンサーギフティングの活用方法についてもお伺いします。ブランドの縦割りで施策を行なっているアパレルが多いかと思いますが、MARK STYLERさんでは全ブランド横断で管理しているのですよね?

中見川さん:直近、横断管理を始めましたというところですね。15ブランド全てで、ブランドのコンセプトやプロファイルを作っていて、机上の論理ではお客様がカニバリゼーションを起こすことはありません。ただ実際には1つのブランドで組み合わせをすることは滅多になく、ファッションは気分やシーンでブランドを選定していくものであり、それはモデルインフルエンサーも同じです。

ブランド側からすると希少価値、差別化を意図しているので許しがたいのですが、全体最適化を考えるとブランド同士のテイストなどが合うのであれば許容していくべきだと思っています。例えば展示会に来訪するインフルエンサーにギフティングをする場合にも、全体最適で考えて、着用していただいたブランドを一覧にして全体で管理するほうが有益です。ブランド間で知財を共有しながら効率的な運用管理を行なっています。

セミナーに参加して

今回のセミナーでは、数値化しづらいソーシャルメディアの事業貢献度を明確にし、なかでも貢献度が高いInstagramの効果的な運用事例が紹介されました。インフルエンサーの活用やスタッフ個人によるアカウント運用に力を入れていきたいと検討している方には運用方法の一案が得られる内容となっています。

また、複数のインフルエンサーやスタッフの運用状況を管理したり、キャスティングの際に活用できるツールの活用方法も紹介されたりしました。Instagram運用を効率的に行う方法を検討されている方は、AIQのプロダクトの活用やコンサルティングを利用してみてはいかがでしょうか。

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