統合による効果、今後のクロスユース施策に注目|LINEヤフー2023年度 第2四半期 決算説明会【参加レポート】
ニュースの概要

2023年11月7日、「LINEヤフー株式会社決算説明会2023年度 第2四半期(以下、本説明会)」が開催されました。本説明会はLINEとヤフーの統合後はじめての決算説明会となり、各サービスの連携による影響が注目されます。この記事では、特にEC事業者に関わりの深い事業や取組みについて、本説明会の要点をまとめて解説していきます。

全体感・全社連結業績

全体感・全社連結業績

LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)のFY23Q2の全社 業績推移は、売上収益が4,412億円でYoY+11.9%、調整後EBITDAは1,033億円でYoY+28.1%と、ともに2桁成長となり、Q2として過去最高を更新しました。PayPay連結化やメディア事業の回復、コスト最適化や選択と集中が増収増益につながっています。

LINEヤフー:2023年連結業績ガイダンス

全社 調整後EBITDAの進捗率は55%ですが、引き続き市況が不透明なことと、下期はクロスユース促進のための施策の実施が予定されており、ガイダンスは維持されています。なお、合併に伴い2023年度 第3四半期から全社コストの配賦の見直しが予定されています。

セグメント別業績・トピックス

メディア事業

メディア事業では広告が緩やかに回復し、増収増益となっています。メディア事業の売上収益は1,632億円でYoY+4.5%、調整後EBITDAは653億円でYoY+11.3%です。

広告は主にアカウント広告の成長により売上が回復、またLINE MUSIC連結化の影響で増収となっています。売上成長による粗利改善、コスト最適化による販管費の増加抑制が、調整後EBITDAの成長につながりました。

LINEヤフー:全社広告関連売上収益

広告関連売上収益では、アカウント広告が20%超の成長率、検索広告の成長率は鈍化しているものの、ディスプレイ広告が緩やかに改善傾向です。また、コマース事業におけるコスト最適化により、ショッピング広告の減少傾向が改善しています。

検索広告

検索広告は、収益性が低いパートナーサイト面が減収となりましたが、検索広告の80~85%を占めるLINEヤフー面はUI/UX改善を行い増収となっています。パートナーサイト面とは、提携サイトのことです。

アカウント広告

LINEヤフー:アカウント広告

アカウント広告は、2023年6月に料金プランの改定が行われ、各種機能の強化により成長が加速しています。有償LINE公式アカウント数は順調に増加しており、2023年1月から提供開始されたマネタイズ機能の強化が好評のようです。2023年度中には、生成AIなどを活用した運用効率化の施策も提供開始予定です。

コマース事業

コマース事業は、eコマース取扱高の改善により、増収増益となっています。売上収益はYoY+1.5%、調整後EBITDAはYoY+16.9%の成長率です。

eコマース

LINEヤフー:事業概況EC取扱高

eコマース取扱高については、国内物販系は引き続き販促費削減を続けており成長率はマイナスになっているものの、改善傾向にあります。また、eコマース取扱高全体では、前年プラス成長に転換しています。

LINEヤフー:事業概況EC取扱高その2

国内ショッピング取扱高は、QoQでは成長率が改善しており、想定内の着地とのことです。国内サービス取扱高は、リオープニングによる好影響は一巡したものの、トラベルは2桁成長と好調を維持しています。

ZOZO、アスクルとのシナジー

質問が多かったZOZOTOWN、アスクルとのシナジーについては、いずれもLINEヤフーの強みであるユーザー基盤や技術力が、ZOZO、アスクルの成長に貢献しています。

ZOZOTOWNでは、2019年12月のPayPayモール出店以降、購入者層のYahoo!店比率が高まるとともに本店などの取扱高も成長しており、PayPayモールへの出店がGMV拡大に貢献しています。

アスクルは、2021年6月にLOHACO本店のシステムをヤフーのシステム基盤へ移行、2023年度にBtoC事業が黒字化しました。

また、Yahoo!ショッピングのみの利用者と、Yahoo!ショッピングとZOZOTOWN Yahoo!店、LOHACO Yahoo!店の併用者の月間平均注文回数を比較すると、ZOZOTOWON併用者では約3倍、LOHACO併用者では約4倍となっています。

戦略事業

戦略事業は、選択と集中の効果により初の黒字化となりました。売上収益は695億円でYoY+110.6%、調整後EBITDAは6億円です。売上収益の成長は、PayPayとPayPayカードの成長によるところが大きくなっています。

今後の取組み

LINEヤフー今後の取組

LINEヤフーの今後の取組みとしては、豊富なグループアセットを活用し、サービス間のクロスユースを促進、収益性の高い検索・メディア事業を中心にその他サービスも含め最強化を図っていく方針です。そのなかでも重要なイニシアチブであるのが、「クロスユース」「検索」「コマース」「金融」です。

クロスユース

LINE(月間利用者数9,600万人)、ヤフー(月間利用者数5,400万人)、PayPay(登録ユーザー数6,000万人)それぞれのユーザー基盤と連携を強化、グループ内サービスのクロスユースをさらに促進していく方針。そのための施策が「アカウント連携」「LYPプレミアム」「LINEリニューアル」です。

アカウント連携

LINEとYahoo!JAPANのアカウント連携を2023年10月に開始、2023年11月6日時点でアカウント連携数1,948万と順調に拡大しています。

アカウント連携によりターゲティング精度などでユーザー体験の向上が実現することで、サービスのクロスユースの拡大、広告売上の上昇、PayPay利用者の拡大といった効果が期待されています。

2024年度にはLINEとPayPayの連携が予定されており、LINEでPayPay決済・送金などができるようになる見込みです。

LYPプレミアム

LYPプレミアム

LYPプレミアムは、2023年11月29日リリースの有料会員プランです。従来のヤフープレミアムと同じ月額508円で、既存の特典に加え、LINEの新特典が追加されます。

LINEリニューアル

LINEリニューアル

LINEリニューアルでは、グループ内の重要サービスにおけるユーザーの回遊促進、LINEの利便性向上を目指しています。なお、現在検討中の施策であり、現時点の情報から変更の可能性があります。

リニューアル内容の一部としては、まず、「ホーム タブ」にニュースやコンテンツを集約し、簡単に情報収集ができるようになる予定です。

また、ショッピング特化の「ショッピング タブ」を新設、誰にでも使いやすいUIでメッセージアプリを起点とした購入体験を提供します。

さらに「プレイス タブ」にローカル系情報や地図情報を集約して、探したい最新情報の提供、予約などもできるガイドマップ的メニューにすることが検討されています。

検索

検索強化

検索の成長はサービス領域の成長につながるという考えに基づき、検索流入の強化と重要クエリ領域の強化が実施されています。

Yahoo!検索ユーザーの約8割がYahoo!JAPANトップページ経由で流入しており、Yahoo!JAPANトップページ強化施策を継続的に実施した結果、FY23Q2のYahoo!JAPANアプリのDAUはYoY+5.6%となりました。

重要なクエリ領域としては、コマース、ローカル、ナレッジがあげられています。この3つのクエリ領域が、全検索クエリの5割以上、全検索売上の7割以上を占めるのです。これらのクエリ領域での満足度向上が重視されています。

施策

検索強化

FY23上期より、ユーザーの検索体験向上のための施策が実施されており、LINE検索の検索数増加などの効果が出ています。

下期はコマース検索をメインとした取組みの予定。モジュール最上部に表示される検索連動型ショッピング広告の提供開始が予定されています。すでに2023年4月から商品情報の掲載は行われていましたが、さらに新プロダクトを投下して検索流入を強化する施策です。

生成AI

検索と生成AIは重要な組合せであり、生成AIを活用した新たな検索体験の提供に向け準備が進められています。

検索への生成AIの活用としては、2023年10月より、Chat型UIを含む新たな検索体験の提供について、段階的にテストが開始されているそうです。

また、知恵袋への生成AIの活用として、人とAIの両方が答える・良質な質問をAIで生成して回答を募ることを、2023年11月から提供を開始されています。

コマース

グループの特徴として、多種多様なコマース体験を提供できることがあげられます。今後、LYPプレミアム会員や、総合コマース検索、ショッピング タブなどの新たな取組みにより、さらにおトクで便利なコマース体験を強化していく方針です。

金融

LINEヤフー:金融サービス

昨年度から大幅な金融事業の再編を行い、重複していた事業領域が一本化されました。今後は、PayPayを中心にしたサービス連携により、他の金融事業も拡大予定です。

説明会に参加して

LINEヤフーの2023年度 第2四半期では、LINEとヤフーの統合による良い影響と、統合前の前四半期から続く「選択と集中」の効果の継続がわかります。

EC事業者にとって、2023年度 第2四半期までに実施されている施策のなかでは、アカウント広告の各種機能や検索の強化が特に気になる点ではないでしょうか。

LINEとヤフーの統合により、関連サービスを利用しているEC事業者は、新たなユーザー層からの新規獲得も期待できます。具体的にどういった機能やサービスを利用できるのか、確認しましょう。

今後の取組みのなかでは、LINEとPayPayの連携、LINEリニューアルや検索連動型ショッピング広告の提供などを注視したいところです。これらの取組みにより、アプローチできるユーザー層のさらなる拡大や、集客の強化が期待できます。 特に、圧倒的な利用者数を持ち、日常的にコミュニケーションツールとして使われているLINEで、リニューアルによりショッピング特化のタブができるという点は影響力が大きいのではないかと考えられます。現時点の情報は確定ではないので、今後発表される情報を逃さないようにしましょう。

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