
この記事の目次
はじめに
「AmazonのFBAと自社配送とでどれくらい手数料が違うのか知りたい」
「配送方法を考えないといけないけど何から始めたら良いかわからない」
「人手不足、ガソリン高騰のなか自社配送でECを始めても問題ないのか心配」
本日はそんな方に向けてAmazonでEC運営する際の自社配送に焦点を絞って解説します。
AmazonといえばFBAという物流代行サービスを利用することで、自社で配送の機能を持っていなくてもECを簡単に始めることができます。その代わりFBAを使用するためには手数料がかかるため、自社配送(委託も含む)で運営される事業者も多いです。
皆さんにとって物流や配送業者はどんなイメージですか?
多くの方にとっては目立たない存在になっているはずです。意外かもしれませんがECにおいて最も重要なのが物流になります。それにも関わらず多くのビジネスパーソンにとって物流は、運送会社や物流倉庫に就職しない限り関わる機会がほとんどないため、基本的なノウハウは実務を通して学ぶしかないでしょう。
本記事ではAmazonで自社配送を使ったEC構築をするためのノウハウを共有します。記事を書く私もAmazonでEC運営をしており、FBAも自社配送も両方経験しているのでリアルなナレッジをお届けできるかと思います。
これからAmazonでECを立ち上げる方や、すでに別の方法でECを運営しながらAmazonでの出店も検討されている方に読んでもらいたいです。
AmazonにおけるFBAと自社配送の違いとは?
そもそもAmazonでECを構築するときに最初に考えることは「FBAを使うか?」です。
Amazonは皆さんのようなEC事業者向けに物流代行サービスを提供していて、そのサービス名を「FBA(フルフィルメント by Amazon)」と呼びます。有名なサービスなので知らなかった方は一度は調べてみると良いでしょう。
FBAの公式サイトはこちら
「本当は自社配送でやろうと思っていたけどAmazonならFBAを使わないと損なのかな?」と思われている方がいると思いますので、私の経験から自社配送とFBAの違いをまとめてみました。
手数料
手数料についてはFBAを選択したほうが高くなることが多いです。
Amazonの公式サイトでは「毎月49点以上の商品を販売するならFBAが適しています」という説明になっていて、継続して多くの商品を発送する場合にFBAのメリットを享受できる仕組みです。
「最初は全然売れないこともあり得るな」という場合であれば自社配送のほうが手数料は安くなるでしょう。
商品保管
Amazonは国内外に専用センターを拡充しており、FBAに加入していれば在庫保管に利用できます。自社で物流倉庫がない事業者の方に向けたサービスですが保管手数料が発生します。
例えば雑貨や日用品などサイズが大きくないものであれば、専用の倉庫でなくてもオフィスの空きスペースに保管できる場合もあります。
「ウチは小さな会社だからFBAだな」といきなり判断せずに今一度どんな商品を何点くらい保管するのか確認してみることをおすすめします。
配送
先ほど説明したようにAmazonでは専用センターがあり、専用センターに保管されている商品はAmazon側で購入者へ配送してくれます。商品保管と同じく自社で物流機能を持っていない場合はFBAだとお任せできるので便利です。
Amazonは専用センターを全国に張り巡らせることにより、Amazonプライム会員の購入者には購入した翌日に荷物を届けることができています。物流業界の一般常識ではリード2と言って「早くて2日後に到着」というサービスがほとんどでした。Amazonは物流を攻略することで顧客を獲得してシェアを拡大してきたのです。
そのため皆さんのなかでAmazonプライムに入会している方であれば、購入者のときと同じ感覚で「FBAだとコストが無料だ!」と誤解されているかもしれません。実際のところ出品者側の場合、FBAを利用することで購入者の送料を皆さんが間接的に負担する形です。
まずAmazonの専用センターまで納品するための配送料が必要ですし、購入者への配送についても梱包、ピッキング、カスタマーサービスに関する手数料が発生します。さらにセンターに納品してから受注が入らず一定期間を過ぎた商品は「置き場所を占領している」という扱いになり追加で手数料が発生するのです。加えて月額会員費用が商品が売れてなくても毎月請求されます。
購入者までの車両代はAmazonが負担してくれますが、それまでの過程でFBAならではの手数料が発生することに注意しましょう。
販売促進
Amazonのサイト上で「primeマーク」と呼ばれている目印のついた商品は翌日配送を指定することができます。Amazon内の統計ではprimeマークのある商品のほうが売れやすいと言われています。
さらにFBAを利用していない出品者はprimeマークを取得しにくくなるようにルール化されています。(primeマークの取得は可能ですが、難易度が高いです)
手数料はかかりますがFBAを利用することで販売促進の恩恵を受けるという考え方ですね。そのためprimeマークのある商品の多くがAmazonのセンターから発送されています。Amazonのロゴが入ったダンボールを見たことがあるのではないでしょうか。
出品者がFBAを利用してAmazonセンターから発送されることで購入者としては便利ですが、EC運営としては自社のブランディングがしにくくなります。
皆さんはAmazonのロゴが入ったダンボールで届いた商品のメーカーをどれくらい覚えていますか?
FBAのセンターから発送された商品は外箱にAmazonのロゴが大きく入っていますし、商品以外のパンフレットなど同梱物がないため、どうしても「Amazon社が作った商品」に見えてしまいます。自社配送であれば商品以外に販促物を同梱したり、オリジナルのダンボールに梱包できます。
意外とできちゃう?!自社配送でAmazonのECを運営する手順
「AmazonでECやるならFBA一択というわけでもないんだな」と感じてもらえたのではないでしょうか?
続いてはAmazonでEC運営をする際に自社配送でやる場合、どのような流れになるのかを解説していきます。
① 商品登録
Amazonのサイト上に商品ページを作成します。
商品名、価格、在庫数など必要な項目を入力するとAmazonのテンプレートに反映されて商品ページが完成します。商品ページが公開されると、購入者がサイト上で決済できるようになります。
決済方法についてはAmazonが主要な決済サービスを自動で連携してくれるので皆さんは何もしなくて大丈夫です。
② 注文管理
Amazon上で商品が購入されるとメールにて通知されます。
FBAの場合は「注文があったので出荷しましたよ」という完了連絡になるのですが、自社配送の場合はメールの内容をもとに送り状や納品書を作成することになります。「こういう事務作業が大変そう。。。」と思われるかもしれません。
Amazonでは自社配送をされる事業者が少しでも楽できるように、送り状や納品書を自動で作成してくれます。そのため皆さんはワンクリックで必要な書類を印刷するだけで事務作業を終えられます。
③ 梱包作業
注文内容をもとにして商品を検品して梱包します。
こちらもFBAであれば代行してもらえる作業ですが、自社配送であれば皆さんが対応することになります。「梱包なんて上手にできるかな?」と不安がられるかもしれませんが、Amazonには梱包マニュアルがあるのでEC未経験者でも大丈夫です。
商品が壊れないように詰めるのと、必要であればパンフレットなども一緒に入れましょう。最近ではスマホで読み取れるQRコードをカードにして入れることも流行っていますね。
④ 配送
商品を購入者が指定した場所まで配送します。
配送する方法は自社の車両でも運送会社への委託でも大丈夫です。ヤマト運輸については専用伝票をAmazon上で自動作成してくれます。
⑤ 入金管理
購入者から預かった売上金額から手数料を引いた金額がAmazonから皆さんの口座に振り込まれます。
仮に商品に不備があって購入者に返金することになった場合も、Amazonを介して返金することになります。そのためAmazonでECをやるときに皆さんが購入者と直接お金のやり取りをすることはありません。
⑥ カスタマーサービス
購入者側からの問い合わせについてもAmazonが窓口になっていて、Amazonが回答できることは対応してくれます。そのため皆さんが対応しないといけない問い合わせは、商品に関する質問か返金希望くらいだと思ってください。最初から自社でカスタマーチームを用意する必要がないことがほとんどです。
また商品に関するフィードバック依頼や2回目購入のオファーもAmazonが自動で購入者にメールしてくれますので、自分たちでDMを送ったりMAツールを導入する必要はありません。
大まかな流れとしては以上の通りになりますが、自社でECサイトを立ち上げる方法だと以下のような機能を事前に準備する必要があります。
- 在庫管理システムの構築
- 受注管理システムの構築
- 伝票、送り状の発行
- 決済サービスとの連携
- 返金希望の対応方法と送金の仕組み作り
- フィードバックや宣伝をするためのツール導入
ShopifyやBASEのようなツールもありますが煩雑な作業は自分たちでやらねばなりません。AmazonでEC運営すれば既存のシステムに乗っかるだけですので、仮にFBAを使わず自社配送だったとしても全然やれちゃいます。
「オフィスは賃貸物件だし従業員も少ないから自社配送なんて無理だな」と思われる方が非常に多いですがもう一度考え直してみても良いかもしれません。
これができたら最強?!運送会社に委託せずに顧客に配送する話
自社配送と言っても近年はヤマト運輸など民間の運送会社に委託して、自社で購入者の住所まで届けるケースは少なくなりました。理由としてはインターネットとスマートフォンの普及で全国対応や海外発送が当たり前になったためです。
皆さんのなかで自社車両を持っていたりアライアンスに物流会社があったりする場合は、購入者への配送についても自分たちで対応できるかもしれません。ヤマト運輸など外部に委託せずに配送できる場合に得られるメリットについても紹介しておきます。
メリット1:配送コストの削減
配送料はシンプルに表現すると「〇〇というエリアに荷物を10ケース運ぶとガソリン代とドライバーの給料を踏まえて1ケース当たり800円になる」みたいな考え方です。
何が言いたいかというと配送効率とコストが相関関係にあるので、配送料を削減するには「1回で運ぶ量を増やす」ことです。同じ区間を走るのであれば10ケース運ぼうが100ケース運ぼうがガソリン代は大きく変わらないので、物量が多いほうが1ケース当たりのコストが下がります。
もしくは「小さくて軽いもの」を扱うことです。大手運送会社が最近になってコンパクトサイズの料金プランを導入しているのも同じ理由です。積載効率と言ってトラック1台に入る物量には限りがあるため、小さくて軽い荷物であれば1台あたりに乗る物量が増えるので手頃な運賃を実現できるわけです。
外部の運送会社に新規で委託する場合、コンスタントに一定量を販売する見込みがないと安い見積もりは出てきません。加えて昨今のエネルギーと資材の高騰で基本的に配送料はどんどん値上げされるものだと思ってください。また日本だけの話をすると運送会社が少ないので相場崩れが起きにくいです。運送会社が少ないうえドライバー不足もあるので、バチバチに値下げ合戦するより共存するしかないのです。
今までは小規模事業者やフリーランスに再委託して何とかやってましたが、今年からインボイス制度が始まりましたので面を喰らってる状態です。運送会社としては依頼主からの「ちょっとまけてよ」に応じる理由がありません。それなのに皆さんとしては足がないのでは話になりません。
皆さんとしては最初から詰んでいるわけなので「配送料は高いよな」というスタンスでいるしかないわけですが、そうは言っても配送料は商品価格に反映されるので無策なのも考えものです。皆さんのライバルも同じ条件でやっているので、たった10円のコスト削減で大きな変化を起こせるかもしれないからです。
例えば翌日配送をやる場合は自社配送は諦めることになるでしょう。決まった時間に確実に届けることが最優先ですので多少の不便があってもFBAに加入するか委託配送するしかありません。しかし通常配送であればAmazonの場合は「1〜4日でお届け」というルールなので時間の余裕があります。必ずしも毎日稼働する必要はないですし自社の都合で良いので、例えば別案件で移動する車両に相乗りさせても成立するわけです。
購入者の住所次第ですがtoB向けのECをやられるのであれば可能性はさらにあります。toB向けのECは「リピート」「まとめ買い」になりやすいので、toC向けの宅配よりも採算が合うかもしれないからです。ちなみにアマゾンジャパン社の今後の展望としては「Amazon Business」という法人向け通販に注力しますので、Amazonのサイト内で法人の購入者はどんどん増える見込みです。
自社車両がある、もしくは関連会社に物流機能がある方は「自前で配送できないか?」を頭から煙が出るくらい検討しましょう。「〇〇地域は▲▲の作業で走ってるからルートが合えば一緒に運べそう」「在庫を支店ごとに分散させるのはどうか?」など柔軟な発想が企業努力の見せ所です。
メリット2:マーケティング
扱っている商品のジャンルによりますが配送するドライバーも営業マンとして活用することができる場合があります。某運送会社は「セールスドライバー」という考え方で、荷物の配送をしつつ新しい仕事を取ってくるという戦略で誰もが知る大企業にまで成長しました。
配送と言ってもただ届けるだけになるところを、例えば2回目購入の方に感想を聞いてくるだけでも立派なマーケティング活動と言えるでしょう。クレーム時の交換対応にしても、機械作業のように宅配便で送るのと自社のスタッフが直接届けるのとでは印象が全然違いますよね。
メリット3:トラブル時の対応
製造業で使われるトレーサビリティという考え方はEC事業にも当てはまる部分があります。商品の不備があったときに原因がどこにあるのかを調べることで再発予防に繋がります。
Amazonの場合、FBAを利用すると購入者の手に渡るまでにいろんな立場の人を経由しますので細かく調査することが難しいです。仮に自分たちの手を離れるときには問題がなかったとしても、外部の会社に「御社のせいでしょ」なんてアプローチは難しいですよね。
自社の関わる作業範囲が広ければトラブル時の調査や改善活動がしやすくなることも自社配送のメリットと言えるでしょう。
最後に
今回はAmazonでFBAを使わずECを運営することに焦点を絞って解説してみました。
FBAは大変便利ですがメリットを最大限受けられないケースもあります。「AmazonはFBAを使うのが当たり前」とならずに、自社の状況と照らし合わせてフラットに判断することが売上拡大とコスト削減に繋がります。
当社では「ウチはFBAを使うべき?」といったフランクなご相談にも乗っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願い致します。
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